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そごう・西武がバーコードとRFIDに依存しないAI活用の単品在庫管理の取り組みとは

2 years 7ヶ月 ago

そごう・西武は、バーコードとRFID(Radio Frequency Identification)を必要としない画像認識AI(人工知能)よる単品在庫管理の仕組みを導入し、8月28日から在庫管理のデジタル化を始める。国内の百貨店業界で初めての取り組みという。

西武池袋本店の諸国銘菓、名産売り場、そごう大宮店の諸国銘菓を対象に実施。今後、他の自主運営売り場に広げ、全店展開をめざす。

画像認識AIを組み込んだ在庫管理業務アプリを活用。アプリで撮影した商品画像をシステム上で管理し、バーコードなどの有無に関わらず単品在庫管理ができる仕組みを実現した。画像認識AIの検知率は、実験を重ねることで約99%にまで高めることができているという。

そごう・西武は、バーコードとRFID(Radio Frequency Identification)を必要としない画像認識AI(人工知能)よる単品在庫管理の仕組みを導入し、8月28日から在庫管理のデジタル化を始める
在庫管理業務アプリ画面

2022年1月から始めた実証実験では、紙の台帳による管理が不要になったことで、発注、検品、納品作業時間の33%削減を実現。また、デジタルダッシュボードの情報を活用した過剰発注の発見により、廃棄ロス削減に向けた発注調整ができるようになった。

AIを活用した在庫管理のデジタル化は、販売機会最大化と廃棄削減の両立、業務負荷軽減、実店舗とECサイトの在庫の一元管理(OMO化)、発注の最適化をめざして実施している。

そごう・西武が導入した画像認識AIを組み込んだ在庫管理業務アプリは、Ridgelinez(リッジラインズ)が開発。今後、対象売り場を拡張しながら在庫情報のデジタル化を進め、AIを活用した需要予測や発注の自動化をめざす。庫情報を自社ECサイトと連携することで、ECサイトの商品を拡充して販売を強化していく。

抱えていた課題とは

コンビニエンスストアやアパレルなどで広く採用されている在庫管理のデジタル化は、取引先の協力のもと、商品バーコードやRFIDなどの運用統制が必要となる。そごう・西武の諸国銘菓、名産売り場は、取り扱いメーカーや商品が多岐にわたり、JANコードによる管理ができていなかった。

その結果、発注業務や在庫管理をデジタル化できず紙台帳で運用、個人の経験や勘に基づく発注をFAXで実施していた。そのため、「発注に時間がかかる」「担当者によって発注精度のばらつきが出る」「ECと連動ができない」「賞味期限がある商品の販売機会損失が発生」といった課題を抱えていた。

瀧川 正実

デサントのCVR30%増加と直帰率40%減少を実現した顧客満足度の高いECサイト改善とは

2 years 7ヶ月 ago
スポーツ用品メーカーのデサントジャパンが、公式通販サイト「DESCENTE STORE(デサントストア)オンライン」にZETAが提供するEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」とレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入した理由、今後の取り組みを紹介する
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ECビジネスの成長に欠かせない要素である「商品検索のしやすさ」「顧客満足度の高い購買体験」「サイトの利便性」。サイト内検索の充実化とレビューの改善、OMO推進を実現しているのがスポーツ用品メーカーのデサントジャパンだ。記事の前半では、デサントジャパンのブランド展開、D2Cを手がけるDTC事業について解説。後半では、デサントジャパンとZETAのディスカッションから、直帰率やコンバージョン率(CVR)の2ケタ改善を実現した取り組みを紹介する。

デサントのCVR30%増加と直帰率40%減少を実現した顧客満足度の高いECサイト改善とは

競争激化のスポーツアパレル市場、「強みを生かし差別化を図る」

デサントジャパンが展開するのは、ハウスブランドの「デサント」のほか、「ルコックスポルティフ」「アリーナ」「マンシングウェア」「アンブロ」など9ブランド。卸先を通じた販売のほか、国内では57店舗の直営店(2023年3月時点)と公式通販サイト「DESCENTE STORE オンライン」などで直接消費者に販売するDTC事業を展開。2023年3月時点での日本におけるDTC売上構成比率は42%、ECの構成比率は12%ほどを占めるという。

公式通販サイトの「DESCENTE STORE オンライン」
公式通販サイトの「DESCENTE STORE オンライン」

昨今アウトドアやゴルフへの関心が高まっていることもあり、さまざまな企業がスポーツアパレル分野に進出している。こうしたなか、デサントジャパンは自社工場での製品製造、日本と韓国に保有する研究開発施設での商品開発力を強みとして成長を続けている。

スポーツテイストの商材に参入する企業が増えていることは、それだけスポーツに関わるユーザーが増加していることの表れでもあるでしょう。競争は激化していますが、私たちにとってはより差別化を図れるチャンスだと捉えています。

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 課長 古賀雅範氏(肩書きは取材当時)
デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 課長 古賀雅範氏(肩書きは取材当時)

コロナ禍に突入してしばらくは、アウトドアや屋外スポーツの人気の高まりからECを中心に売れ行きは好調に推移。なかでもゴルフをする人口は、コロナ禍を機に国内で約40万人以上増加したとも言われ、ゴルフウェアを購入する新規ユーザー、特に20~30代女性が大幅に増加したという。

コロナ禍が落ち着いてきた今、旅行などのレジャーに消費者が分散し始めており、当時増加した新規ユーザーの2回目以降のリピート購入が、スポーツアパレル業界全体としての課題になっている。

こうした環境下、デサントジャパンはここ数年時代変化に合わせた分野にも注力し、スポーツシーンだけの着用に限らないウェア領域を強化。長年にわたるスポーツウェア開発で培ってきたノウハウやテクノロジーを生かし、日常でも快適に過ごせる「MoveWear(ムーブウェア)」というタウンユース商品を拡充。コロナ禍だけの一過性にならない製品展開にも力を入れている。

デサントジャパンは「MoveWear」で新たなニーズを開拓する
デサントジャパンは「MoveWear」で新たなニーズを開拓する

核となるデサントグループのDTC事業戦略とは

デサントグループは、2021~2023年度(2024年3月期まで)の中期経営計画「D-Summit 2023」における戦略の1つに、国内のDTC事業の強化を主とする商品企画と流通改革を掲げ、2024年3月期に国内売上のうち55%をDTC事業が占めることをめざしている

デサントグループ21年3月期決算説明資料より
デサントグループ21年3月期決算説明資料より

DTC事業で力を入れているのが、デサントジャパンが運営する直営店舗、百貨店内一部店舗、公式通販サイト「DESCENTE STORE オンライン」で利用できる会員サービス「CLUB DESCENTE」会員に向けて“特別な体験”を提供する取り組み。

たとえば、プロゴルフ選手と一緒にコンペができる企画、各ブランドの非売品商品や選手のサイン入りグッズをプレゼントする企画、プロ選手とオンライン上でコミュニケーションが取れる企画など、メーカー直営店だからこそ実現できる特別な体験の提供だ。

アスリートのビジュアルが載ったオリジナルのパッケージ、コロナ禍でも在宅時間を楽しめるようにすごろくを載せたパッケージ「ホリデーSPECIAL BOX」などの配送も期間限定で実施。限定の配送ボックスをSNSに投稿する会員も多く見られ、会員発信のネイティブな広告効果も得られたほか、「ホリデーSPECIAL BOX」は、「日本パッケージデザイン大賞2023」(主催:公益社団法人日本パッケージデザイン協会)の輸送用ケース部門で銀賞を受賞し、多方面から注目を集めた。

クロスセル率は約30%、DTC事業の中核を担うECサイトの特徴は

デサントジャパンが手がける公式通販サイト「DESCENTE STORE オンライン」の特徴は、デサントジャパンが展開する9ブランドの全カテゴリー商品を取り扱っていること。品番数はスポーツブランドのなかでもとりわけ豊富で、約5000品番にものぼる。卸先との関係性を重視しながらも、自社ECでの購買体験を楽しんでもらうため、現在は直営店限定商品のラインアップを強化している。

「DESCENTE STORE オンライン」は1つのサイトで複数ブランドを購入できるため、「ついで買い」の機会を創出しクロスセル率は約30%と高い。たとえば、ゴルフウェアを見に来た女性ユーザーが夫のウェアも合わせて購入する、親子で購入するなど、1人のユーザーが複数商品を購入するケースも多いという。

現在、店頭も含めた会員全体のF2転換率は40%超と高い数値だが、店頭でリピート購入する顧客が多くなっている。初回にECで購入した顧客がECでF2転換する割合は20%にとどまっており、ECにおけるF2転換率の向上が今後の課題だという。NPSやアンケートの結果をもとに、ユーザーの声を生かした戦略で顧客接点を強化していく。

「DESCENTE STORE オンライン」は2020年11月にリニューアルを実施し、配送のリードタイム短縮を実現。さらに2023年1月にはスタッフコーディネートやブランド・服種・性別に特化したランキングの表示を可能としたことで、ユーザーの体験価値が向上し社内からも高評価だという。

DTC事業の拡大とスタッフモチベーションを向上させる「OMO」推進

オンラインとオフラインを融合させるOMOの推進もDTC事業の拡大戦略の1つである。その一環として、ECと店舗の在庫一元化を先行して着手。DTC事業の拡大を支える店頭スタッフがコーディネートを提案しながら商品を紹介するオンライン接客、インスタライブを利用した接客など、特に接客面でOMO強化を進めている

「DESCENTE STORE オンライン」で掲載しているスタッフコーディネートの一例
「DESCENTE STORE オンライン」で掲載しているスタッフコーディネートの一例

オンライン上で商品や企業の魅力を伝えるスキルを高めるため、定期的にオンライン接客の社内講習会を実施。加えて、毎年開催している全国700人の販売員からナンバーワンを決定するコンテストも、対面の接客の様子を評価していた形式から、2022年度は初めてオンラインの接客の様子を審査するようにした。

コンテストのファイナルステージでは、オンライン接客、インスタライブ接客、自己プレゼンテーションの3つによる審査となり、これまでのコンテストでは入賞経験のなかった販売員から逸材が登場するなど、社内でも今までにないほど大きな反響があったという。

課題解決にあわせた「検索」「レビュー」機能を改善

ECに注力するきっかけは、コロナ禍に突入し直営店のほぼ全店が営業できない状態となったことだ。社内の精鋭を集めるなど、EC部門のスタッフ数をコロナ禍前の約2倍に増やしEC運営の見直しに着手した。

ECサイトの機能のうち特に改善に力を入れたのがレビューとサイト内検索だ。その理由は、9ブランド・約5000品番の豊富な商品を取り扱うサイトの特性上、いかに早く目的の商品にたどり着くことができるか、各ブランドのファンに欲しい商品を紹介できるかといった点で課題感があり、「買いやすい」ECサイトの実現が結果としてLTVや顧客満足度向上につながるのではないかと考えた。

ブランドごと展開する商品の特性も顧客の属性や好みもさまざまななかで、適切なレビューや評価を投稿できるよう、カスタマイズ性が高いレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入した。

従来のレビュー機能は5段階の総合評価のみの仕様だったため、ユーザーが商品のどのような点を気に入ったのかを把握しづらかったが、「ZETA VOICE」導入によって「サイズ感」「使用用途」「総合評価」など評価軸を細分化し、より詳細なレビュー投稿を可能にしている。

さらに、オンラインとオフラインの融合に向けて2022年12月からは店頭で購入した顧客がEC上でレビューを書き込めるようにし、店舗とECの垣根を超えた体験を提供している。

その結果、レビュー投稿数は従来の2倍以上のペースで増加。DTC事業のなかでも店頭売り上げの比率が高いため、店頭のロイヤルカスタマーによるレビューがECのコンバージョン率にも好影響をもたらしているという。

商品レビューの一例。レビュー数は全体的に増加傾向にあり、コンバージョンにも好影響となっている
商品レビューの一例。レビュー数は全体的に増加傾向にあり、コンバージョンにも好影響となっている

ロイヤルカスタマー醸成のため、2023年3月にはレビューを投稿したユーザーにポイントを付与するというキャンペーンを実施したところ、ほかの月の10倍以上ものレビュー投稿が寄せられた。このキャンペーンでは、驚くことにオンラインユーザーよりも店頭購入ユーザーからの投稿が多かったということがわかり、今後もキャンペーンをきっかけとしたレビュー機能の認知拡大や促進を積極的に考えているという。

「ZETA VOICE」に加え、2023年にはEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を導入した。以前は取り扱う9ブランド・約5000品番のなかから、求める商品に顧客がなかなかたどり着けないケースも見られ、商品詳細ページへの到達率に課題を抱えていた。また、ユーザーはブランドごとにファン化する傾向が強いため、各ブランドごとに商品検索できればノイズが少ない状況を作ることができるのではないかと考えたという。

「ZETA SEARCH」の導入後、まずはランキングをブランドごとでより細分化して閲覧できるように検索機能を改善。現在は、ブランド/性別/アイテムカテゴリ/スポーツの種類――をプルダウンで選択してランキングが見られるようにしている。

約5000品番のうちの人気商品トップ10しか閲覧できない状態では、最もシェアの高い「デサント」ブランドのみのランキングに見えてしまう。その上、男女で売れ筋が異なる傾向もあるため、ユーザーそれぞれに合ったランキングに絞り込める仕様が必要だったのだ。

ユーザーが選択した項目のランキングを細かく表示できるようにした
ユーザーが選択した項目のランキングを細かく表示できるようにした

DTC事業の成長に向け、EC化率を拡大させながら、店舗とECとの融合も推し進めていくデサントジャパン。そのためにレビューと検索はどう貢献し、今後どう発展させていこうと考えているのか、デサントジャパンとZETAによるディスカッションを見てみよう。

数値で表れた改善効果や今後の展望

ディスカッションメンバー

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 課長 古賀雅範氏デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 課長 古賀雅範氏

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏

ZETAシニアエンジニア 仲本欣司氏ZETAシニアエンジニア 仲本欣司氏

複数ソリューションをまたいだ拡張性と、アフターサービスを評価して導入

――デサントジャパンが「ZETA SEARCH」「ZETA VOICE」を導入した決め手について教えてください。

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏デサントジャパン 四十山氏(以下、四十山):ZETAさんは「ZETA SEARCH」や「ZETA VOICE」のほか、複数のサービスを展開しているので、ソリューションをまたいだ拡張性がとても高いと思いました。特に、オムニチャネルを推進しているデサントジャパンにとって、OMOソリューションを強みとされていることは大きな魅力でしたし、リリース後も定期的にミーティングをしてくださるなど、手厚いアフターサービスで伴走していただける体制も導入を決めた要因になりました。

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏
デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏ZETA 市川氏(以下、市川):デサントジャパンさんとは2018年に初めてお会いしたのですが、ランキングの改善や商品到達率の課題といった要件と、「ZETA SEARCH」がマッチしていたことから、1~2か月後には導入を決めていただきましたね。

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏
ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏ZETA 出張氏(以下、出張):ZETAのアフターサービスは、2つのチームで担当していることが特徴です。「ZETA SEARCH」を例にとると、一つのチームはユーザーの検索機能の使い方やよく検索されるワード、類義語などを分析して改善提案し、もう一つは追加開発に対応しています。ユーザー視点の開発面・運用面の双方で伴走している点を評価いただけてありがたく思います。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学)出張純也氏
ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学)出張純也氏

――「ZETA SEARCH」と「ZETA VOICE」を実装するにあたり、デサントの特徴に合わせてどういったポイントを工夫しましたか?

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏四十山:「DESCENTE STORE オンライン」では9ブランド・約5000品番の豊富な商品を取り扱っているため、その分さまざまな目的をもったお客さまが来訪します。どのようなお客さまがどの商品を購入し、どう評価しているのか、レビューからもわかるよう、「ZETA VOICE」で評価項目を細かく設定したり、お客さまの属性を詳細に入れられるようにしたりしました

「ZETA SEARCH」においては、サジェスト機能(検索ワードを提案する機能)を工夫しました。これにより、たとえば「デサント」ブランドのページでは「デサント」ブランドに関するサジェストが、「アリーナ」ブランドでは「アリーナ」ブランドに関するサジェストが出る――といった具合に、ブランド別にサジェスト内容が変更される仕様となっており、お客さまの好みに合わせた適切な提案が可能です。

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏市川:ZETAとしても、ブランドサイト特有の顧客体験が実現できる仕組みを提案したいと考えていました。サジェスト機能についても、ブランドの自社ECサイトだからこそ生成されるFAQはお客さまにとっても重要なコンテンツになるので、「FAQを検索できる仕組みはどうか?」といった提案などもさせていただきました。ZETAの提案を取り入れていただき、サイト改善に役立っていることがうれしいです。

「ZETA VOICE」の3つの特徴
「ZETA VOICE」の3つの特徴

導入1か月で商品詳細ページへの到達率が10%増加

――「ZETA SEARCH」を2023年1月中旬に導入して以降、検索を通じてどのような改善効果が表れていますか?

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏四十山:2022年11~12月と、2023年2~3月で商品詳細ページへの到達率を比較すると、導入後間もない時期にもかかわらず10%も増加していました。導入後もデサントジャパンとともに検索結果を細かくチューニングしていただいているので、さらに改善は進んでいます。

先日も新たに「おすすめ順」という表示ロジックを追加しました。以前は、たとえば「ベルト」と検索した際、「ベルト」の文言が含まれる商品がすべて検索結果に表示されていましたが、新しいロジックを追加したことで、お客さまが探しているであろう商品が上位に表示されるようになりました。

ZETAさんはデサントジャパンがやりたいことに対して的確な解決方法を提案してくださるので、商品詳細ページへの到達率10%増という数字も、今後ますます伸びていくだろうと期待しています。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏出張:商品検索では単純なキーワードの軸だけで切ってしまうと、「ベルト付きのコート」などまで広く拾ってしまいます。なので、商品名から確実にベルトとわかるものや、カテゴリーが「ベルト」のものを上位に表示するように改修すれば、よりユーザーが求めている検索結果に近づくことができます。

それに加えて、ブランド担当者としても新着順や価格順など「検索結果をもっとこうしたい」という意向があると思うので、キーワード検索の並び順はとても重要なポイントです。そのような点を踏まえて、伴走しながらお悩みをヒアリングしたり、課題解決に向けてご提案したりできる点が「ZETA SEARCH」の一番の強みです。これからの結果も楽しみにしていただければと思います。

ZETAシニアエンジニア 仲本欣司氏ZETA 仲本氏(以下、仲本):ブランドやカテゴリーなど、デサントジャパンさんのECサイトに合った切り口でより検索しやすくなるよう、今後も検索精度を向上させて、商品詳細ページへの到達率10%増にとどまらない成果を出していきたいですね。

ZETA シニアエンジニア 仲本欣司氏
ZETA シニアエンジニア 仲本欣司氏

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏市川:月次のレポートを分析するなかで、デサントジャパンさんのECサイトでは「雨」「防寒」のように、着用シーンや機能性のキーワードを単発で入れて検索されることが多いことに気が付きました。やはり、ユーザーはデサントジャパンさんの商品の機能性を信頼しているので、「何か良いものが出ているのでは」という期待を込めて、ざっくりとしたワードで検索しているのではないかと想定しています。

たとえば「雨」と検索したユーザーに対しては、単に雨対策の商品を表示するだけでなく、雨対策特集の商品一覧や高機能ウェア特集などを表示するような仕組みも有効ではないかと思います。

スポーツ量販店のサイトと自社ECサイトでは、同じ「雨」の検索でもユーザーの気持ちや求める購買体験は異なる可能性があるので、検索結果もデサントさんのユーザーに寄り添った、自社ECならではな体験を提供できるよう、引き続きいろいろなご提案をさせていただければと思います。

検索したユーザーのCVRが30%増加、直帰率は40%減少

――デサントジャパンが今後の「ZETA SEARCH」と「ZETA VOICE」に期待することを教えてください。

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏四十山:まず「ZETA SEARCH」においては、検索をしたユーザーの直帰率は導入前に比べて約40%減少し、さらにはコンバージョン率も約30%増加したことから、検索における顧客満足度は確実に向上していると実感しています。

今後もサイトを訪れたお客さまに良い体験を提供できるよう、UIも含めたさまざまな施策を追求していきたいですし、そのためにはZETAさんに伴走いただきながら、チューニングを重ねてさらなる満足度の向上に努めたいと考えています。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏出張:コンバージョン率30%増という数字は、検索結果一つでユーザーの“わくわく感”がまったく違ってくることの表れですね。

ZETAからデサントジャパンさんへは、今後「ZETA VOICE」のデータをもっと検索に生かしていただくことをご提案したいと思っています。検索機能のデータはブランドやサイト運営者側の思いが反映されやすいですが、レビューで得たユーザーの声や商品への思いを活用していけたら、ユーザーが商品情報を育てていってくれる状態も作り出せるからです。

先ほど「雨」「防寒」のキーワード検索が事例に挙がりましたが、「この服は風雨を全然通さないからよかった」というようなブランド側が意識していない意外なレビューが投稿されることは多々あります。そうしたユーザーの声を検索にも還元できれば、より効果的な検索結果が表示できるようになります

「ZETA VOICE」はさまざまな軸でレビュー投稿できる仕組みになっているので、たとえば「自分と同じような体格の人が高評価した商品」のなかでも、ゆったり着たい人かピッタリ着たい人かなどパーソナライズを考慮して商品を表示できるようになります。

レビューと掛け合わせることで、さらに顧客満足度の高い検索体験が可能になるということです。

「ZETA SERCH」の3つの特徴
「ZETA SERCH」の3つの特徴

ZETAシニアエンジニア 仲本欣司氏仲本:ほかにも販売員の皆さまのコメントなどもレコメンドとして生かしていけば、また新たな購買体験が提供できると考えています。

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏市川:「ZETA VOICE」に集まったレビューテキストを分析して商品企画にも生かしたいと思っています。大手アパレルメーカーの事例ですが、大量に集まったレビューデータをもとに商品改善を加えたら大ヒットしたというケースがありました。デサントジャパンさんはDTCブランドを多く展開されていることから、レビューを商品企画に活用できたら、さらに「ZETA VOICE」の価値が向上するのではないかと思います。

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 課長 古賀雅範氏デサントジャパン 古賀氏:デサントジャパンもお客さまの声が起点となって改良した商品の消化率が上がったケースもあり、レビューは商品企画にとても重要だと捉えています。商品企画チームもお客さまレビューを情報として求めており、自社ECだけでなくモールのレビューも一元で見られるダッシュボードを作って、簡易的に拾えるような体制がようやくできつつある状況です。

また、商品単体のコンバージョン率を見ても、レビューを閲覧したユーザーは50%以上高まっているので、購入の後押しになっていることは明らかです。今後購買の促進からものづくりまで、レビューを幅広い領域でよりいっそう活用していきたいと考えています。

ECの利用拡大や利便性促進に向けて、古賀氏はZETAが提供するサービスのさらなる活用を検討している
ECの利用拡大や利便性促進に向けて、古賀氏はZETAが提供するサービスのさらなる活用を検討している

デサントジャパン DTC部門 デジタルビジネス部 EC運営課 四十山貴士氏四十山:「ZETA VOICE」の機能を使って、販売員のレビューなどもサイトに載せてはどうかといったアイデアも社内で出てきています。引き続き、サービスの拡張や精度アップに向けた取り組みを積極的に進めていきます。

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朝比美帆
吉田 浩章

【UGC活用例】コーセーの通販ブランド「米肌」がCVR1.27倍アップに成功したLP改善施策とは?

2 years 7ヶ月 ago

コーセー傘下のコーセープロビジョンは、スキンケアブランド「米肌(まいはだ)」のCVRが最大1.27倍アップを実現した。ランディングページ(LP)におけるレビューの最適化が理由という。

コーセー コーセープロビジョン 米肌 CVR LP

新規獲得・定期引き上げでUGC活用

「米肌」はコーセー唯一の通販ブランド。次の2つのLPでUGC(ユーザー生成コンテンツ)を最適化した。

  • 新規獲得用の「14日間の米肌体験セット」購入LP
  • 「14日間の米肌体験セット」を購入した顧客を定期宅配コースへに転換させるための定期引き上げ用LP

新規獲得用LP:ターゲット層に肌悩みの「自分ごと化」を促す

新規獲得用LPには、収集したレビューとInstagram投稿を掲載したことで、CVRが1.27倍に改善。「肌の悩み」別にレビューを表示し、ターゲットごとに詳細を掘り下げた。これにより顧客にとって「自分ごと化」が促され、獲得効率改善につながったという。このほか、UGC上部のバナーを動画化することで、レビューの視認性を高めた。

肌の悩み別のレビュー表示。UGC上部のバナーは動画にしている
肌の悩み別のレビュー表示。UGC上部のバナーは動画にしている

定期引き上げ用LP:長く使い続けるイメージを膨らませる

定期引き上げ用LPには、長期間米肌を利用したユーザーのInstagram投稿を掲載。「長期間使い続けることによって肌にどんな変化があったのか」「長期間使い続けたことによる体験」が表現されたInstagram投稿を掲載することで、長期にわたって利用するイメージ、メリットの想起につなげた。こうした取り組みにより、定期引き上げ用LPでもCVRが1.2倍にアップしたという。

使用メリットを感じさせるような投稿を掲載
使用メリットを感じさせるような投稿を掲載
◇◇◇

レビューの最適化に当たって、コーセープロビジョンはアライドアーキテクツが提供する運用型UGCソリューション「Letro(レトロ)」を導入。「レトロ」を通じてレビューやInstagram投稿をはじめとするUGCの活用施策を行った。

高野 真維

「OMO」「オムニチャネル」「デジタル」――JUN、UAの責任者が語るファッションECの今と未来

2 years 7ヶ月 ago
コロナによって変容するアパレル業界のDXについて、ジュンとユナイテッドアローズのEC責任者が、実際の取り組み事例や今後の展望などについて語り合う

新型コロナウイルス感染症でビジネスを巡る環境は大きく変化した。なかでもアパレル業界は、店舗の一時閉鎖などの影響から一気にデジタル化が進んだと言える。そしてその動きは現在も進行中だ。アフターコロナを見据え、ファッション領域のECと実店舗はどこへ向かうのか。ジュン 取締役執行役員の中嶋賢治氏とユナイテッドアローズ 執行役員CDO兼OMO本部 本部長の藤原義昭氏に、アパレルECの今と今後について語ってもらった。

コロナによる最も大きな影響は働き方の変化。紙ベースの企画立案作業をデジタルに移行

新型コロナウイルス感染症の影響によって、アパレル業界を取り巻く環境は大きく変化している。

ジュンの中嶋氏は「コロナの影響によって、好むと好まざるとにかかわらず我々は変容せざるを得なかった」と話す。その上で、アパレル業界の変化について次のように整理する。

中嶋氏があげるコロナによるアパレル業界の変化

  • コロナ禍でさまざまなDXが誕生
  • LINE接客やライブコマースなど店舗メンバーがWebを通じてお客さまとつながる試みが進んだ
  • オムニチャネルやOMOといったコンセプトが避けて通れないイシューになった
  • リテールメンバーのWebメディアやECに対する理解が深まり、新たなソリューションが生まれた
  • 商品分野では家時間を豊かにする為のホームウエア、インテリア雑貨、コスメ、ライフスタイルやウェルネス関係など取扱商材が増えた
  • 消費者のファッションに対する興味関心の分野が広がり、今はジャンルとして定着している
  • デジタル化による働き方の変化 etc.

コロナはアパレル業界においてもDXの誕生を引き起こした。そのことは、コロナが比較的鎮静化してきても、企業の変容という意味では「決して悪い影響ではなかった」と中嶋氏。

そして実店舗と顧客とのつながり方にも変化が現れているという。従来は来店客とつながるだけだったのが、LINE接客やライブコマースなどを通じて来店しない顧客ともつながることが可能になった

また、オムニチャネルやOMOが避けて通れないテーマとなったことで、これまで比較的理解が進まなかった店舗スタッフにもこうした考え方への理解を深める機会になった

商品の分野では、いわゆる“おうち時間”を充実させるために、ホームウエア、インテリア雑貨、ウェルネス関連商品など、取り扱う商材のカテゴリーが広がった

こうした変化があったが、中嶋氏によると最も大きな変化は働き方だという。

リモートワークになり、以前は顔を突き合わせて働いていた人々が、顔を突き合わすことができなくなった。商品開発を行う企画やMDといったメンバーに関しては、紙ベースで企画を動かしていたが、それができなくなった。(中嶋氏)

JUN ジュン 取締役執行役員の中嶋賢治氏
ジュン 取締役執行役員の中嶋賢治氏

そこでジュンでは2年ほど前から、企画情報のデジタル化に着手。その一環で、クラウドPLM(製品ライフサイクル管理)サービス「アヤトリ」を提供するDeepValley社と連携して、「デジタル短冊」を共同開発した。

ジュンでは制作業務を行うにあたって、すべて紙ベースで動かしていた。具体的には企画ごとに短冊を作成し、そこにアイテム情報や生地、枚数などを記載。さらに短冊同士を縦に並べて、コーディネートを考案していた。

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC JUNが紙ベースで動かしていた企画の短冊
ジュンが紙ベースで動かしていた企画の短冊

それがコロナ禍において紙ベース以外の方法でスタッフ全員が作業でき、情報を共有できる方法としてデジタル化を進めた結果、デジタル短冊が生まれることとなった。

これにより、スタッフがどこにいても企画の立案などの作業ができる環境が整った。この仕組みは商社や生地メーカーといった取引先との情報共有にも活用できる

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC デジタル短冊 リモートで作業が可能
デジタル短冊によってリモートで作業が可能となり、取引先との情報共有もできる

SNSのスタイリング投稿などによって1対nの接客が可能に。店舗スタッフの意識に変容も

ユナイテッドアローズの藤原氏は、コロナ禍で感じたこととして、人々の働き方が変わったことで、服のデザインが変化したことをあげている。

たとえば、パンツはベルトではなくゴムで留めるものが増えているのも、リモートワークが広がったことと関係しているのだろう。(藤原氏)

ユナイテッドアローズ 執行役員CDO兼OMO本部 本部長の藤原義昭氏
ユナイテッドアローズ 執行役員CDO兼OMO本部 本部長の藤原義昭氏

働き方が変わったことで服のデザインも変わってきているが、コロナが猛威を振るっていた際も、リモートワークよりも出社している人の割合の方が多かったと言われている。実際、藤原氏が出張で地方などへ行くと、出社している人が多く、きちんとネクタイをしたフォーマルな服装の人も多くいる。

そうした点を踏まえると、「マーケティングの文脈では、0か1かで考えてはいけない」と藤原氏。コロナによって働き方が変わったとはいえ、コロナ以前と同じ働き方をしている層も一定数は存在する。服のデザインもそうした動きを踏まえて考案する必要がある。

つまり、大切なのは「0と1の間で、どのように戦略的にバジェットを投下するか」だと藤原氏は指摘する。

また、コロナによるDXの誕生については、これまで一期一会かつ1対1で接客をしていたのが、SNSによるスタイリングの投稿などの影響で「1対nの接客が可能になった」(藤原氏)。

この動きはコロナ禍の3年間で大きく進み、Instagramのフォロワー数がそのまま給料に直結するようなケースも生じている。

そうした変化のなかで、店舗スタッフのマインドも徐々に変わりつつある。今まで実店舗での接客だけに専念していたのが、デジタルでのスタイリング投稿も接客だと捉えるように意識の変容が生じているようだ。

チャット接客の導入でコンバージョンに好影響。店舗スタッフのコーデ投稿には注意も必要

コロナは、企業だけでなく消費者側の行動にも変化を及ぼしている。

ジュンの中嶋氏は「お客さまの行動変化で一番大きいのは、買い物にかける時間を大切にするようになったこと」と述べる。

消費者には「効率的に買い物したい」「失敗したくない」という心理があるという。服の購入時に失敗しないために大切な要素の1つに試着があげられるが、ECでは試着ができない。サイズが合っているか、コーディネートはおかしくないか、そうした不安をどう解消するかがECでは重要になる。

中嶋氏があげるコロナによる消費者・企業の変化

  • ネットとリアルのオムニチャネル化
  • 買い物を効率的にしたい、買い物で失敗したくないという欲求が高まった
  • 店舗とWebの顧客体験の境をなくすサービスを模索してきている
  • 判断基準が、急速に変化している(夏場のゲリラ豪雨、台風の大型化などの異常気象、ウクライナ紛争からのエネルギー高騰などにより、無駄な物は買わないという意識がさらに進んでいる)
  • 二次流通、リユースエコノミーの拡大も進み、消費者の選択肢は新品だけではなくなってきている
  • 消費者は物を選ぶ、サービスを選ぶ時に社会問題などと切り離して考えなくなった etc.

ジュンは完全リモート体制のチャットサービスを展開

試着ができないなどのEC特有の不安を解消するため、ジュンでは店舗とウェブの間で顧客体験をどのように境のないものにしていくか検討を重ねた。その結果、チャット接客ツールを活用し、店舗スタッフによって本当に店舗にいるような接客体験を提供していくという取り組みを始めた。

これは「JUNチャットサービス」というもので、ECの顧客に対して店舗スタッフがテキストと画像を使ってコミュニケーションを図る。これにより実店舗と同様の接客体験の提供につなげる狙いだ。

自社ECでは、この取り組みがコンバージョンにつながる大きな要因になってきている。(中嶋氏)

ジュンはこのサービスを提供するために専門の組織を立ち上げ、ベテラン社員を中心に14人の人員で、完全リモート体制によってサービスを展開している

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC チャット接客の専門組織立ち上げ 完全リモートで対応
ジュンはチャット接客のために専門の組織を立ち上げ、完全リモートで対応している

店舗でチャット対応を行うユナイテッドアローズ

一方、ユナイテッドアローズでもチャット接客を実施している。ただ、同社の場合はジュンとは異なり、リモートではなく店舗でチャットの操作を行う。

ユナイテッドアローズのカスタマーセンターに寄せられる問い合わせの多くが商品に関することだという。カスタマーセンターでは実際に商品を扱っている店舗に尋ねてから顧客に返事をしている。そこでチャット対応を店舗が直接行うことで、迅速な情報発信ができると判断した。

この結果、ユナイテッドアローズでもチャット接客によって成約率が上がっているようだ。

チャット接客でインタラクティブにお客さまとコミュニケーションを行うことで、親密な関係性が生まれ、「じゃあ買います」というような形になることが多い。その意味でチャット接客は、理想的なDXだと言える。(藤原氏)

ユナイテッドアローズの藤原氏は、ジュンが取り組んでいるベテラン社員を中心としたチャット接客の体制の重要性を指摘する。「やはりもともと接客ができる人は、チャットでもしっかりとした接客ができる。当然チャットならではのテクニックもあるが、肝の部分は店頭と同じだと感じている」と藤原氏。

ツール導入だけではなく、評価制度の整備、オペレーションマネジメントが重要

ジュンの「JUNチャットサービス」では、画像の見せ方も工夫している。顧客の要望に合わせて画像をパーソナライズし、スタイリング画像を作って提示する。コラージュ画像によってインナーを変えたりボトムスを変えたりして提案することで、顧客側も着用時のイメージがしやすくなる。コラージュ画像とはいえ、見え方は自然で、短時間で制作できる。そのため顧客からも好評だという。

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC JUNチャットサービス コラージュ画像でスタイリング提案
「JUNチャットサービス」はコラージュ画像でスタイリングを提案する

ユナイテッドアローズもバニッシュスタンダードの「STAFF START(スタッフスタート)」を導入して、店舗スタッフによるコーディネート投稿を実施している。

ただ、コーディネート投稿を行う際に「ツールだけを店舗スタッフに提供しても、DXはうまくいかない」と藤原氏は語る。ツールを活用するには、店舗におけるオペレーションマネジメントが大事だという。

具体的には、業務フローの見直しやコーディネート投稿で売れた際の評価制度の整備などをきちんと実施することが重要になる。ユナイテッドアローズでもこうした課題に対して試行錯誤しながら改善に取り組んでいるようだ。

テクノロジーにお金を出せば多くのことができてしまうが、人の気持ちはお金を出しても変わらないものは変わらない。DXを考える際に、その変わらない部分にいかにアプローチするかを考えるのが大切だろう。(藤原氏)

これに対して、ジュンの中嶋氏も「リソースの分配として、ツール3に対してオペレーション7くらいのつもりじゃないと駄目だと思う」とする。

ユナイテッドアローズの店舗のなかでも、店長がオペレーションマネジメントをしっかりと行って、チームワークがよいところほど、スタッフによるスタイリング投稿の数も多くなる傾向があるようだ。

顧客に一番近い店から商品を発送して販売機会ロスの最小化へ。専用アプリで店舗スタッフの負荷低減も

アパレル業界ではコロナ禍でさまざまなことに取り組んだことで、新たな気付きや課題が浮かんできたようだ。

ジュンの中嶋氏は、シーズンごとのセールで商品を売り切るということがアパレル業界全体の傾向ではあるものの、コロナによってそれでは生き残れないことに経営層も現場も気付き始めたと指摘する。

プロパーで最終的に売り切るということが、顧客を獲得するためにはすごく大事なことという認識が浸透してきた。その結果、無駄な量を作らずに、いかにプロパーで売り切るための施策を進めていくかが、経営判断のなかで重要視する項目になってきた。(中嶋氏)

さらに、為替の影響やコロナによる中国の生産環境の混乱など、外部環境が厳しいなかで、顧客が納得して購入する商品をどのように作るかが問われているという。

中嶋氏が掲げるアパレル業界の課題

  • セールをできるだけ行わず、プロパーで売り切れる量しか生産しない。しかし、生産量を減らし、在庫回転率をどう上げていくのかという課題に対して無策のままでは、縮小均衡の未来しか描けない
  • 無駄な物は作らず、消費者の熱量を上げられるエモーショナルな商品開発をどう進めていくのかという課題
  • サプライチェーンの問題
  • 中国市場の混乱
  • Willing to Pay(製品やサービスに対して消費者が自ら喜んで支払う価格)に応えられる商品と価格のバランスをどう実現させるのか
  • 多店舗展開のビジネスモデルにつきまとう、在庫の偏在による販売機会ロスの極小化という課題

そしてコロナ以前からアパレル業界が抱える問題も依然としてある。それは、店舗や倉庫などあちこちに在庫が偏在することで、ある店舗で欠品している商品を倉庫や別の店舗から取り寄せるための時間と配送コストが生まれてしまうこと。すぐに購入できないことで、消費者が購入を見合わすという販売機会ロスも招いてしまう

販売機会ロスを最小化し、最終的にプロパーで商品を売り切るため、ジュンはおよそ3年をかけて「どこでも買える いつでも買える ストレスなく買える」という仕組みを導入。在庫のある店舗からダイレクトに商品を発送する「マイクロフルフィルメントシステム」を2022年10月から開始した。

その店舗に在庫がない場合、倉庫に在庫があれば倉庫からダイレクトに顧客のもとに届ける。倉庫にも在庫がなければ、近くの複数店舗の商品を共通の在庫とし、届け先に一番近い店舗から商品を送る。つまり「商品がその店舗になければ、お客さまに一番近い店舗から直接お届けする」(中嶋氏)という仕組みだ。

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC 店舗間で共通在庫を設定し、顧客に最も近い店から商品を出荷
店舗間で共通在庫を設定し、顧客に最も近い店から商品を出荷する

店舗オペレーション負荷を抑え、ネットワーク型の仕組みを構築

中嶋氏によると、従来の商品の流れはメーカーから倉庫に物が入り、そこから店舗に運ばれ、店舗から顧客のもとへという縦型の一方通行だった(ヒエラルキー型)。ジュンではそれをネットワーク型にすることで、商品がどこにあっても顧客に一番近いところから届けることができる仕組み作りを進めた。

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC モノの流れをヒエラルキー型からネットワーク型へ
モノの流れをヒエラルキー型からネットワーク型へ変える

ネットワーク型にする際に大事なのが、店舗オペレーションの負荷をいかに抑えるか。倉庫に商品がなければ、顧客のもとに届ける作業を店舗スタッフが担う。ただ、店舗の大きな役割は接客であり、接客によって来店客に心地よい購買体験を提供すること。そのメインの役割を阻害せず、接客をアシストするような方法が必要だった。

そこで作ったのが「RFOP店舗アプリ」だ。店舗スタッフはこのアプリを通じて、「自分の店舗の商品が今引き当たりました」「ステータスの変更はできましたか」「商品は出荷できましたか」などの情報をスマホベースで把握できる。

JUN ユナイテッドアローズ OMO オムニチャネル アパレルEC JUNは店舗スタッフ向け「RFOP店舗アプリを開発」
ジュンは店舗スタッフ向けに「RFOP店舗アプリ」を開発

このアプリによって接客をしながらでも、店舗のバックストックにいても、出荷作業ができる。店舗スタッフの負荷をできるだけ下げるために、こうしたものが必要だった。(中嶋氏)

ジュンの取り組みについて、藤原氏は「ここまでできるとすごい」と賞賛する。ユナイテッドアローズでも、偏在する在庫への対応に取り組んでおり、ECの物流倉庫を1つの店舗と見立ててそこに商品を集約するのか、店舗など別の場所にその都度移動させるのか試行錯誤をしている。「そのためには専用の商品データベースが必要になるので、今はそこの構築に取り組んでいる」と藤原氏。

そして藤原氏も店舗スタッフに商品出荷を任せる際に作業負荷をいかに軽減させるかを課題にあげる。

たとえば天候が悪化してECの売り上げが増えて店舗からの発送が大量に発生するということもある。こうした繁閑の波動をいかに先読みして対応するかが課題。(藤原氏)

「デジタルがなんでも解決してくれると思ってはいけない」「デジタル担当者は現場にコミットできることが大切」

多くの企業がOMOやオムニチャネルなどデジタルを活用してより良い顧客体験を提供することをめざしている。ただ、何から始めて、どんな組織を作ればいいのかは判断に悩むところかもしれない。

これに対して中嶋氏は「間違ってはいけないのは、デジタルは解決のための1つの手段に過ぎないということ。デジタルがなんでも解決してくれると思ってはいけない」と強調する。

では、新しい施策の実施や仕組みの導入はどのように始めれば良いのだろうか。ジュンでは効率化の施策など何かに着手する場合、たとえそれがアナログであれすぐ始める、早く進める、駄目だったら変える、良ければ残す、というスタンスで展開する。

まずはスピードを上げてアジャイルに取り組むことが大切。最初から大きな仕組みをプランニングして、結局使われないのが一番不幸なので、それは避けたい。過去の成功体験に縛られず、新しいことを小さく始める。それをデジタル化するかどうかは次の段階でいい。(中嶋氏)

中嶋氏が考えるデジタル化に取り組む際の注意点

  • デジタルはあくまで手段、目的をはっきりさせる必要がある
  • 顧客目線での事業創造
  • 昔からのセオリーが通用しない時代になったのでやってみなければわからないことも多い
  • 駄目だったらすぐ変えるというアジャイルな取り組み姿勢が重要
  • 範囲は狭いが融通の利くスモールなシステムを連携して使っていくモジュール型が適している

こうしたデジタルへの考え方や取り組み姿勢は、藤原氏も「まったく同じ」だと言う。たとえばSaaS型のサービスなどは簡単に導入できて、成果が出なければすぐにやめることができる。大事なのはすぐに取り組むこと。ただし、その際に注意すべき点として、「PoC(Proof of Concept=概念実証)を何度も続けていて、現場にインプリメント(実装)できないようであれば単なるお遊びになってしまう」と藤原氏は指摘する。

デジタルの担当者は現場にコミットメントができることが大切。そしてこれは採用と育成にも関わる問題。つまり人を採用して育てる段階から現場とコミットできるような戦略を持つ必要がある。(藤原氏)

デジタル人材が作り込んだものを現場に導入する際には、開発側と現場とのコミュニケーションが欠かせない。しかし、そこのコミュニケーションがスムーズに進まず現場の実装がなかなか進まないというケースも往々にして起こり得る。

そうした問題が起きるのを避けるために、ユナイテッドアローズのDX推進チームのメンバーは全員が店舗出身者だ。その結果、「たとえば無人レジを導入するという時も、非常に早く進む」(藤原氏)のだという。

このように現場オペレーションや業務フローを熟知しているスタッフがデジタル化を担うことで、実際の運用に即したデジタル化が進むようだ。

今後のアパレル業界はサプライチェーンが一番重要なテーマになる?

コロナによってアパレル業界にも大きな変化が訪れているが、今後はどのような未来が待ち受けているのだろうか。

中嶋氏は「国内需要が縮小していくなかで、どのようにシェアを保ちつつサービスを展開するかが問われている」とする。

そこでヒントになるのが領域だという。つまり、ファッション・フード・フィットネスという3つのFの領域を、どのように組み合わせるかが大事になる。

また、インバウンドに対するサービスの提供もポイントになる。日本で商品やサービスを消費して帰国した旅行者に対して、次は越境ビジネスによってアプローチするというイメージだ。

そして中嶋氏が「一番鍵になるポイント」にあげるのが、商品を作る際のサプライチェーンだ。いい商品を競争力のある価格でタイムリーに提供することが求められるが、これをいかに成し遂げるかが大きなテーマになりそうだ。

中嶋氏による今後のアパレル業界の展望や課題

  • 今後のアパレルは国内需要が減っていくなかでの事業になる
  • 事業自体をFashion Food Fitness(FFF)の領域でファッションを提供していくVISION、FFFというコンセプトと事業開発が重要になる
  • 海外で売れるコンテンツの開発
  • 為替の影響、インバウンドによって現在、日本は最大のチャンスを迎えようとしている。観光資源のある日本にとって、世界一サービスが良く、商品セレクトに優れ、商品を安く購入できる国だと思ってもらえる観光産業は、日本最強の産業と言える。体験してもらった商品を越境ECで売る仕組み作りもしたい
  • 顧客の熱量を上げる商品を競争力のある価格でタイムリーに開発生産するサプライチェーンの課題を解決しなければならないという危機感がある

藤原氏は「アパレル企業の強みは、簡単にいうと格好悪いものを格好良くすること」と定義する。その強みを生かして、顧客満足度をどのように上げるかが、問われてくる。

サプライチェーンに関しても、今後はサステナビリティという要素が切り離せないと予想する。ユナイテッドアローズでは2週間に1度役員が集まり、勉強会を行っているという。

藤原氏はアパレル業界の今後について、部分だけを見るのではなく、全体を見ながら数年後を見据えて動くことが大切だとした。

キヨハラサトル

J.フロントがコレクター向けトレカ専門店「magi」に出資・業務提携した理由とは?

2 years 7ヶ月 ago

大丸松坂屋百貨店やパルコを傘下に持つJ.フロント リテイリングは、コレクター向けトレカ専門店「magi(マギ)」を運営するジラフに出資し、業務提携契約を締結した。

J.フロント リテイリングのコーポレートベンチャーキャピタル「JFR MIRAI CREATORS Fund」(運営はイグニション・ポイントベンチャーパートナーズ)を通じて、ジラフに出資した。

リアルの場でコレクター向けアイテムを核とした業態開発、ファンコミュニティの共創をめざす。第1弾として9月8日、「名古屋 PARCO」にトレカショップ「magi 名古屋 PARCO 店」の出店を予定している。

ジラフは創業事業である買取比較サイト「ヒカカク!」のほか、トレカ・スニーカーフリマアプリ「magi」、コレクター向けトレカ専門店「magi」、ポケモンカード専門店「magipoke」、スニーカーショップ「Magi Kicks」などを展開している。

大丸松坂屋百貨店やパルコを傘下に持つJ.フロント リテイリングは、コレクター向けトレカ専門店「magi(マギ)」を運営するジラフに出資し、業務提携契約を締結
トレカ・スニーカーフリマアプリ「magi」(画像は編集部が「magi」からキャプチャ)

消費の目的が多様化するなか、J.フロント リテイリングは新たな消費の価値観や目的に対応したコンテンツの発掘、それらを通じた体験価値を共有するコミュニティの共創強化が重要と捉えており、ジラフの優れた「品ぞろえ」「集客力」「売買の利便性」を評価し、出資を決めた。

求人サイトによると、ジラフの2023年3月期売上高は23億1142万円。2023年5月には単月売上高で6億円を突破している。

ジラフは第三者割当および借入によりシリーズDラウンドとして2023年3月に2ndクローズ、2023年7月に3rdクローズを実施し、1stクローズと合わせて累計約13億円(第三者割当にて約8億5000万円)の資金調達を実施した。J.フロント リテイリングのほか、丸井グルー、MIXIなどが出資している。

瀧川 正実

SNSのシェアで割引購入+商品は工場直送で低価格販売+ターゲットは20~30歳代のアパレルECサイト「12HiTOE」とは?

2 years 7ヶ月 ago

越境EC事業を手がけるKENTOSHIは、アパレルECサイト「12HiTOE(ヒトエ)」を開設した。海外のアパレル商品を国内向けに低価格で販売する。「12HiTOE」は通常の商品購入フローのほか、SNSで商品をシェアすると割引価格で購入できる「シェア割」機能を備える。

KENTOSHI ファッション アパレル EC 12HiTOE 越境EC

ターゲット層は20~30代女性で、ECサイトのユーザーインターフェースはモバイルに特化している。配送フローは、工場から商品を直送するF2C(Factory to Consumer)モデルを採用。工場から消費者に直接届けることでコストダウンし、低価格販売を実現しているという。商品のラインアップは毎月約3000点ずつ追加する。

KENTOSHIが採用する「F2C」モデル(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャ)
KENTOSHIが採用する「F2C」モデル(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャ)

「シェア割」で購入する場合は、ECサイトのなかの「シェア割」ページに遷移し、購入したい商品を選択。「シェア割に参加」ボタンをタップすると、割引がスタートする。割引率はランダムだが、購入したい商品をSNSでシェアすると割引率がアップする。

「12HiTOE」が提供する「シェア割」のイメージ。顧客はソーシャルを利用することでお得に購入できる(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャ)
「12HiTOE」が提供する「シェア割」のイメージ。顧客はソーシャルを利用することでお得に購入できる(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャ)
「シェア割」による割引イメージ(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャし、商品画像と商品名はボカシ加工を追加)
「シェア割」による割引イメージ(画像は「12HiTOE」から編集部がキャプチャし、商品画像と商品名はボカシ加工を追加)

「12HiTOE」では、サイト訪問でユーザーにポイントを付与する制度を採用。たとえば、7日間連続でECサイトを訪問すると合計330ポイント、毎日ログインすると1か月で合計1320ポイント貯まる。商品購入時に1ポイント1円で換算できる。

ECサイトの開設について、代表取締役の山本達郎氏は次のように話している。

海外工場からの直販ルートによって、しっかりした品質の商品をリーズナブルに提供する。「シェア割」のように日本ではまだ少ないサービスや、コストパフォーマンスの良い買い物体験を日本のお客さまに楽しんでいただきたい。

ECサイトの開設・運営に大きく携わる取締役のJohnny Jeon氏は、次のようにコメントしている。

運用モデルをできるだけ簡潔にして、その分をユーザーに還元できるサービスを意識している。たとえば低価格での商品提供など。KENTOSHIでは、この「12HiTOE」を皮切りに、今後も越境ECを中心としたサービスの提供を計画していく。

高野 真維

物流費が上がり続ける今、「送料無料」と「返品無料」あなたの会社はどちらを選ぶ?【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

2 years 7ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年7月31日~8月6日のニュース

「2024年問題」が目前に迫り物流費が上がっています。送料無料と返品無料どちらも効果的な施策ですが自社の利益を圧迫しかねません。メリットとデメリットを把握して冷静に対応しましょう。

消耗品は送料無料、アパレルは返品無料が向いています

返品無料VS送料無料 どちらの方が効果が高い施策?利益・コスト・リスクを徹底比較 | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/39040

今まで、ECサイト運営において主流の施策だった「送料無料キャンペーン」で発生する送料コストが大きくなったため、送料無料施策の廃止を検討し、それに代わる施策を探しているという事業者様のお話はよく聞きます。

今回は、送料無料に代わる新施策「返品無料」についてお話します。

新施策というか、どちらもECにはよくあるサービスです。とはいえ、なんとなく無料にしていたり、面倒な感じがするから返品無料にしていなかったりするところも多いと思います。送料無料と返品無料についての考え方の記事を紹介します。

◇送料無料のメリット

  • カゴ落ち防止
  • 購入単価向上

◇送料無料のデメリット

  • 配送料金の負担増加
  • プロパー消化率の低下

欲しいものを買おうとして最後の最後に送料が高くて断念することってありますよね。送料無料ラインを超えるように数百円のものを買うこともあります。送料って購入直前に最も気になるものなので、ここにメリットがあれば購入率が上がるわけです。反対に、送料無料の時だけ買うユーザーも出てきてしまうので、やみくもに実施すれば良いというものでもありません。

◇返品無料のメリット

  • 購入率向上
  • 新規顧客獲得の増加

◇返品無料のデメリット

  • 在庫の流動性の低下
  • 返品対応コストの向上

返品無料は新規獲得に力を発揮します。悩んでいるときに「とりあえず買ってみればいい」と思ってもらえますので。デメリットにある在庫の流動性は意識しておきたいです。売れるはずのものが戻ってきますし、買いたい人に行き渡らないので。返品期間を決めるなどして対応しましょう。

◇送料無料施策が向いているブランド

  • 返品想定で購入される商品を取り扱っていない企業(食品、日用品など)
  • 取り扱っているSKUが少ない、もしくは、在庫数を多く積んでいない企業
  • 再販ができない商品を取り扱っている企業
  • 低単価商材を取り扱っており、複数買いを促進したい企業

簡単に言ってしまうと、低単価で消耗品なら送料無料をメインにしたほうがいいということですね。頻繁に買うものですし不良品でない限りは返品がない商品ですから。あと、一気に返品されてしまうと困るようなところには向いていません。

◇返品無料施策が向いているブランド

  • 高単価商材を取り扱っている企業(単価が高いとECでの低効果が高い)
  • サイズ感や素材感などが重要な商品を扱っている企業(アパレル、服装雑貨など)
  • 送料無料施策による配送料の負担に課題感がある企業
  • 新しいマーケティング施策を検討している企業
  • 取り扱っているSKU数、在庫数が多い企業

アパレルなど身に着けないとわからないものは返品無料が向いていますね。商品の在庫も多めに持ちますし。あとは買うまでに心理的な抵抗が強い高単価の商品。

「○○無料」のようにお得な施策は効果がある反面、自社の利益を減らしてしまう場合があります。「他がやっているから」ではなく、扱っている商品によって柔軟に使い分けたいですね。

今週の要チェック記事

「無理のない高LTV」をめざす。 老舗企業の富澤商店が仕掛ける“日本人の特性にあった次世代ソーシャルコマース”とは? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11123

SNSがどれだけ進化しようと最後は人の接客力ということ。

三木谷氏が語る「物議をかもす楽天モバイル」の今とOpenAIとの協業の狙い――Rakuten Optimism基調講演 | ケータイ Watch
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1521169.html

もはやAIはどんなサービスにも必須。楽天はどのようにAIを活用するのか。

ヤフー社長でeコマース革命旗振り役の小澤社長が退任、「LINEヤフー」では顧問に | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11242

「eコマース革命」に一区切りついた感じがしますね。Zホールディングスの次の動きはどうなるのでしょうか。

【超速報】Shopify Editions Summer ’23で公開された主要トピックを解説【2023年版】 | Shopify 日本
https://www.shopify.com/jp/blog/editions-summer23_jp

先週お伝えした記事の解説です。かゆいところに手が届くAIのようです。

EC物流のプロが解説、宅配クライシスの再来「2024年物流問題」+通販業界に与える影響 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11182

「運賃の値上げ、集荷時間の繰り上げ、配送日数の繰り下げなどさまざまな宅配クライシスが再来する恐れ」。先の備えを。

奇跡のV字回復!売上が30倍に成長した、実績を活かしたページ改善&SNS販促の取り組みとは? | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog/archives/6075

ちょっとした事の積み重ねなんですね。学んだことを即実行する行動力も。

値段の「\マーク」を小さくしたら購入率が大きく改善された。機能は「体験」で成果が激変する。10周年の「メルカリ」に聞く新機能の開発の裏側。3つの成功施策 | アプリマーケティング研究所
https://markelabo.com/n/ne9bed1488bda

こちらもちょっとしたことの積み重ね。ダメだと思う前に試してみましょう。

「メルカリShopsアワード2023 上半期」を発表 | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/39053

昔の楽天っぽい感じのショップが受賞しています。楽天で売れている人には相性がいいかも?

軌道力あるチームECを実現するには?欲張らない施策展開とメンバーのやる気維持に必須な項目を伝授 | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/13161

結局のところ、ECといえども組織の話になってきますよね。

今週の名言

人の心を揺さぶるプレゼン | 鈴木結衣
https://note.com/yui_suzuki_/n/n64d759731722

私が尊敬している国語の先生はいつもこう言う。

プレゼンはプレゼントだ。」と。

相手にプレゼントをするように伝えたいことを伝えられるプレゼンをしたい。

ショップから発信する内容もプレゼンだと思えばプレゼント。そんな気持ちで作っていけばファンが増えてきます。

筆者出版情報

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ファッションEC「fifth」事業をGSIクレオスがCODESHAREから買収

2 years 7ヶ月 ago

繊維や工業製品を輸出入するGSIクレオスは、CODESHARE(コードシェア)が展開するファッションEC事業「fifth」を買収した。

EC事業を手がける新設子会社のSHARE(シェア)を通じて、2023年4月1日に「fifth(フィフス)」事業を譲り受けた。新たにファストファッションECサイト「fifth」の運営を開始し、アパレルEC事業に本格参入した。

CODESHAREはECビジネスとECソリューションを展開するアパレルEC企業で、「fifth」は2013年4月に開設。売上高は初年度(2014年1月期)に約4億円で、次年度(2015年1月期)に約14億円と急成長を遂げた経緯がある。

「fifth」を中心としたファストファッションサイトの会員は約290万人。ファッション感度の高い女性をターゲットにロープライスなトレンドアイテムを提供してきた。

繊維や工業製品を輸出入するGSIクレオスは、CODESHARE(コードシェア)が展開するファッションEC事業「fifth」を買収した
「fifth」のサイトイメージ

SNSの活用とインフルエンサーマーケティングを強みとする「fifth」業はGSIクレオスグループの今後のEC事業拡大に寄与すると判断。SHAREを通じた買収でアパレルEC事業への本格参入を決めた。

GSIクレオスは近年、素材力や企画力を活かした自社ブランドを展開。ECやTV通販などのダイレクトマーケティングに力を入れている。

GSIクレオスグループの祖業は繊維事業商社。商品開発力・調達力、CODESHAREから引き継いだECビジネスのノウハウを融合し、「fifth」を女性のライフスタイルを応援する提案型総合ファッションサイトへと発展させる。3年後には売上高30億円をめざす。

今後は、「もっと自由に、もっと楽しく、ファッションを届けたい」をコンセプトに、「fifth」ブランドをリブランディングするという。また、ECサイトを媒体とした広告事業、ECサイトで蓄積したデータを活用した取引先への提案など、新たなビジネス展開の可能性も模索する。

瀧川 正実

送料無料表示やスピード配送の見直しも? 「物流2024年問題」が通販・EC事業者に与える影響とは | E-Commerce Magazine Powered by futureshop

2 years 7ヶ月 ago
「送料無料」表示が禁止になる? 物流2024年問題が目前にせまるなか、政府が発表した「物流革新に向けた政策パッケージ」などを交えて具体的に解説します

トラックドライバーの時間外労働に対する規制強化に伴い、運送業界の人手不足が深刻化し、物流が停滞すると懸念されている「2024年問題」が目前に迫っています。

政府はこの問題に対処するため、さまざまな対策を盛り込んだ「物流革新に向けた政策パッケージ」を2023年6月2日に公表しました。荷待ち時間の削減や運賃の適正化など、荷主に新たな義務を課すことを検討しているほか、「送料無料」の表示を規制する可能性にも言及。政府は次の通常国会での法制化や、業界団体による自主行動基準の策定などを通じて、対策を具体化する方針です。

「物流革新に向けた政策パッケージ」の内容を解説するとともに、「2024年問題」がEC業界に与える影響を考察します。

物流の「2024年問題」で輸送力が14%不足

物流の「2024年問題」とは、働き方改革関連法案によってトラックドライバーの時間外労働が規制されることに伴う問題です。

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働時間の上限は年間960時間に制限されます。トラックドライバー1人あたりの労働時間が減るため、対策を講じなければ、2024年度には国内の輸送力が14%不足すると政府は試算しています。

運送業界は慢性的な人手不足と言われています。2023年4月における「自動車運転従事者」の有効求人倍率は2.43で、全業種平均の1.32を大きく上回りました。(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年4月分)について」

EC市場の拡大などで宅配便の取扱個数が今後も増え続けることが予想されるなか、「2024年問題」によってトラックドライバーの人手不足が一層深刻化すると考えられています。

「2024年問題」への対策を講じなかった場合、国内の輸送力は2024年に14%不足し、2030年には34%不足すると政府は試算している(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

配送業界で大手同士の協業進む

「2024年問題」を目前に控え、配送業界ではさまざまな改革が進んでいます。2023年6月には、ヤマトホールディングスと日本郵政が協業を発表。「2024年問題」の緩和への貢献などを目的に、ヤマト運輸が「クロネコDM便」などのメール便、「ネコポス」などの小型荷物の配送を日本郵便に委託すると発表しました。

配送業界や物流業界では今後、こうした協業が広がる可能性があります。共同配送などによって配送効率の向上が期待できる一方で、配送会社の寡占化が進むと荷主に対する交渉力が強くなり、運賃の値上げを打診しやすくなることが懸念されます。

ヤマトホールディングスと日本郵政は、ヤマト運輸のメール便や小型荷物の配送を日本郵便が担うと発表した(出典:2023年6月19日 ヤマトホールディングス株式会社「日本郵政グループとヤマトグループ持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意について」

政府が公表した「物流革新に向けた政策パッケージ」とは?

政府は「2024年問題」への対策を検討するため、省庁をまたいだ会議「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を2023年3月に設置しました。

同会議は6月2日、2023年度中に実施すべき対策をまとめた「物流改革に向けた政策パッケージ」を公表。具体的な対策として①商慣行の見直し ②物流の効率化 ③荷主・消費者の行動変容――という3つの項目に分け、合計24個の施策を列挙しました。

「物流改革に向けた政策パッケージ」の具体的な施策は次の通りです。なお、太字で記載した施策は、次の通常国会での法制化を含めて確実に実施するとしています。

①商慣行の見直し

【概要】物流の適正化や生産性向上を図るために、荷主企業と物流事業者(運送・倉庫など)の双方において非効率な商慣行を見直す。

【具体的な施策】

  1. 荷主・物流事業者間における物流負荷の軽減(荷待ち、荷役時間の削減等)に向けた規制的措置等の導入
  2. 納品期限(3分の1ルール、短いリードタイム)、物流コスト込み取引価格等の見直し
  3. 物流産業における多重下請構造の是正に向けた規制的措置等の導入
  4. 荷主・元請の監視の強化、結果の公表、継続的なフォロー及びそのための体制強化(トラックGメン(仮称))
  5. 物流の担い手の賃金水準向上等に向けた適正運賃収受・価格転嫁円滑化等の取組み
  6. トラックの「標準的な運賃」制度の拡充・徹底

②物流の効率化

【概要】物流のGX(グリーン・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)、標準化などを通じて、新技術も活用しながらハード・ソフトの両面で物流を効率化する。

【具体的な施策】

  1. 即効性のある設備投資の促進(バース予約システム、フォークリフト導入、自動化・機械化等)
  2. 「物流GX」の推進(鉄道・内航海運の輸送力増強等によるモーダルシフト、車両・船舶・ 物流施設・港湾等の脱炭素化等)
  3. 「物流DX」の推進(自動運転、ドローン物流、自動配送ロボット、港湾AIターミナル、サイバーポート、フィジカルインターネット等)
  4. 「物流標準化」の推進(パレットやコンテナの規格統一化等)
  5. 道路・港湾等の物流拠点(中継輸送含む)に係る機能強化・土地利用最適化や物流ネットワークの形成支援
  6. 高速道路のトラック速度規制(80km/h)の引上げ
  7. 労働生産性向上に向けた利用しやすい高速道路料金の実現
  8. 特殊車両通行制度に関する見直し・利便性向上
  9. ダブル連結トラックの導入促進
  10. 貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直し
  11. 地域物流等における共同輸配送の促進
  12. 軽トラック事業の適正運営や輸送の安全確保に向けた荷主・元請事業者等を通じた取組強化
  13. 女性や若者等の多様な人材の活用・育成

③荷主・消費者の行動変容

【概要】荷主企業や消費者の意識改革と行動変容を促すため、広報活動にとどまらず、新たな仕組みの導入を含めて取り組む。

【具体的な施策】

  1. 荷主の経営者層の意識改革・行動変容を促す規制的措置等の導入
  2. 荷主・物流事業者の物流改善を評価・公表する仕組みの創設
  3. 消費者の意識改革・行動変容を促す取組み
  4. 再配達削減に向けた取組み(再配達率「半減」に向けた対策含む)
  5. 物流に係る広報の推進

次期通常国会での法制化も見据え、確実に実施する施策

前章で列挙した24個の施策のうち、通販事業者やEC事業者を含む荷主に直接影響するのは「①商慣行の見直し」と「③荷主・消費者の行動変容」だと考えられます。

そのなかでも、次の通常国会での法制化を含めて確実に実施するとしている項目への対策は、荷主にとって優先度が高い課題です。

該当する4つの施策について、「物流改革に向けた政策パッケージ」の内容を解説します。

なお、すべての施策について詳しく知りたい方は、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」の第2回(2023年6月2日開催)の「配布資料」をご覧ください。

荷主・物流事業者間における物流負荷の軽減(荷待ち、荷役時間の削減等)に向けた規制的措置等の導入

政府はトラックドライバーの労働時間を削減するために、「荷物を出す企業」と「荷主を受け取る企業」の双方に、物流業務の改善を促すとしています。

運送契約に含まれる荷待ち時間(荷物の積み下ろしを行う際に、トラックドライバーが待機する時間)や荷役(荷物の積み下ろしや、倉庫への搬入といった作業)などの範囲を明確化し、トラックドライバーが正当な対価を受け取れるようにすることも明記しました。取り組みが不十分な事業者には、勧告や命令などを行うとしています。

なお、政府は荷主企業や物流事業者が取り組むべき施策の目安となるガイドラインを作成する方針です。その上で、業界団体などに対して、業界別・分野別の「自主行動計画」の作成を要請するとしています。

ガイドラインや自主行動基準は、EC事業者にも適用される可能性があります。今後の動向に注意が必要でしょう。

1回の運行あたりの荷待ち・荷役の時間は平均3時間を超えており、トラックドライバーの長時間労働を解消するには荷待ち・荷役の削減が重要になっている(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

以下の文章は、政府が公表した「物流改革に向けた政策パッケージ」の原文です。やや長い文章ですが、目を通してみて下さい。

【引用】待機時間、荷役時間の削減等を通じてトラックドライバーの労働時間を削減するとともに、納品回数の減少等を通じた総輸送需要の抑制や物量の平準化により効率的な物流を実現するため、発荷主企業、物流事業者、着荷主企業が連携・協働して、改善を図る必要がある。このため、事業規模や貨物特性といった事情を勘案しつつ、それぞれの事業者に対して、物流負荷の軽減に向けた計画作成や実施状況の報告を求めるとともに、取組みが不十分な事業者に対して、勧告、命令等を行う規制的措置等の導入等に向けて取り組む。

この規制的措置の導入を前提として、物流の適正化・生産性向上に向けて荷主企業・物流事業者が取り組むべき事項(ガイドライン)を示し、これに則して大手の荷主企業・物流事業者が業界・分野別に「自主行動計画」を作成し、今年度中に前倒しで実施することを図るとともに、運送契約に含まれる荷待ち・荷役等の範囲を明確化し、正当な対価の収受を促進する。

(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

物流産業における多重下請構造の是正に向けた規制的措置等の導入

荷物を運んでいるトラックドライバーに適正な賃金が支払われるように、トラックドライバーの台帳作成を運送事業者に義務付けるなど、新たな規制の導入が検討されています。

また、トラック事業に関する安全規制の見直しを図るとともに、悪質な事業者が利益を得るといったモラルハザードが生じないよう、国による監査体制を充実させ、悪質事業者に対する監査を強力に実施することも明記されました。

多重下請構造によってトラックドライバーが搾取されることを防ぎ、トラックドライバーの賃金水準などを改善する意図が強くにじむ内容になっています。

具体的な規制の内容については現時点では不明ですが、荷主に対しても規制がかかる可能性がありますので、行政の動きを注視しておく必要があるでしょう。

こちらの施策についても「物流改革に向けた政策パッケージ」の原文を引用します。

【引用】多重下請構造にあるトラック事業において、実運送事業者の適正な運賃の確保による賃金水準の向上等を実現するため、元請事業者等が実運送事業者を把握できるよう、台帳作成等に係る規制的措置の導入等に向けて取り組む。この規制的措置の導入を前提として、上記①と同様、ガイドラインの提示や自主行動計画の作成等により、今年度中に大手の荷主企業・元請運送事業者が前倒しで実施することを図る。また、トラック事業に係る必要な安全規制の見直しを図るとともに、悪質な事業者が利益を得るといったモラルハザードを生じさせないよう、法令遵守への意識が低く、悪質な法令違反が常態化していると認められるトラック事業者に対し、強力かつ重点的に改善を促す観点から、適正化実施機関が行う巡回指導の強化に伴い、国の監査体制を充実させ、悪質事業者に対する監査を強力に実施する。

(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

物流の担い手の賃金水準向上等に向けた適正運賃収受・価格転嫁円滑化等の取組み(送料無料表示の規制など)

荷主企業に起因する長時間の荷待ちや、運賃・料金の不当な据え置きといった問題を解消するため、政府は既存の法律の厳格な運用や新たなルール作りによって、荷主に対する働きかけを強化するとしています。

また、通販などにおいて「送料無料」の表示を規制する可能性も示されました。荷物の運賃が消費者向けの送料に適正に反映されるべきという観点から、消費者の意識改革を目的とした施策です。

景品表示法を所管している消費者庁の河野太郎内閣府特命担当大臣は、2023年6月6日の記者会見で、「送料無料」という文言の扱いについて「運賃がかからないという(消費者の)誤解につながらないように、見直しに取り組んでいきたい」と明言しました。

規制の導入に向けて、「送料無料」という表現が使われている理由や、「送料無料」の表示を規制した場合の影響などを把握するために、「運送事業者や荷主事業者に対するヒアリングを始めていく」と説明。「なるべく早く方向性を打ち出したい」と今後の方針を語りました。

通販やECで「送料無料」という表現が使えなくなると、販売戦略に大きな影響が出ることは間違いありません。今後の動向に注意が必要です。

こちらの施策についても、「物流改革に向けた政策パッケージ」に盛り込まれた文章を引用しますので、ご一読ください。

【引用】トラック事業、内航海運業及び倉庫業に係る燃料等の価格上昇分を反映した適正な運賃・料金収受に関する周知及び法令に基づく働きかけ等を実施する。また、トラック事業者をはじめとする物流事業者は荷主企業に対する交渉力が弱く、コストに見合った適正な運賃・料金が収受できていないことから、取引環境の適正化を強力に推進する。また、運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべきという観点から、「送料無料」表示の見直しに取り組む。

労務費を含めた、適切な価格転嫁の実現を図るため、下請Gメンによるヒアリング結果を踏まえた自主行動計画の改定・徹底や、価格交渉促進月間の結果に基づく情報公開と指導・助言などに、関係省庁でより一層連携して取り組む。特に、トラック運送業については、依然として荷主企業起因の長時間の荷待ちや、運賃・料金の不当な据え置き等が十分に解消されていないことを踏まえ、トラック法に基づく荷主企業等への「働きかけ」「要請」及び「標準的な運賃」の制度について、延長等所要の対応を検討する必要がある。また、適正運賃の収受を確保するため、契約の電子化・書面化を図る規制的措置の導入等に向けて取り組む。

労働条件の改善と取引環境の適正化を図るため、国土交通省、公正取引委員会、経済産業省、農林水産省、厚生労働省等の関係省庁でより一層緊密に連携し、トラック法に基づく荷主企業等への「働きかけ」「要請」等を徹底する。上記④及び⑤に掲げた適正な運賃収受・価格転嫁の円滑化やトラック法に基づく荷主企業等への要請の強化、情報公開等の措置の具体的内容について、今年中に成案を得る。

(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

荷主の経営者層の意識改革・行動変容を促す規制的措置等の導入

荷主企業の経営層の意識改革を促すため、荷主企業が物流管理責任者(役員クラス)を配置する新たなルールが検討されています。仮に、すべての荷主企業に物流管理責任者の配置が義務付けられれば、ECの組織作りにも影響するでしょう。

物流危機に問題意識を持っている企業は84.5%だが、対策に取り組んでいる企業は54.3%に留まっており、対策を促す仕組み作りが必要とされている(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

【引用】経営者層の意識改革により荷主企業における全社的な物流改善への取組みを促進するため、荷主企業の役員クラスに物流管理の責任者を配置することを義務づけるなどの規制的措置等の導入に向けて取り組む。

(出典:令和5年6月2日 我が国の物流の改革に関する関係閣僚会議「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)

「物流革新に向けた政策パッケージ」の今後のスケジュール

政府は「物流革新に向けた政策パッケージ」の実行スケジュールも定めています。「速やかに実施」「2023年末まで」「2024年初」という3段階で進めていく方針です。

①「速やかに実施」する施策

○規制的措置の導入を前提とした「ガイドライン」の作成・公表

規制的措置の導入や、自主行動計画の作成を前提として、荷主企業や物流事業者が取り組むべき事項に関するガイドラインを政府が作成し、公表する方針です。

ガイドラインを荷主企業や物流事業者などに広く周知するとともに、業界団体などに対して、業種別・分野別の「自主行動計画」を年内目途に作成するよう要請するとしています。

②「2023年末まで」に実施する施策

○トラック輸送に係る契約内容の見直しに向けた「標準運送約款」や「標準的な運賃」の改正

トラック法にもとづく「標準的な運賃」の水準を見直すとともに、運送契約に含まれる荷待ち・荷役や、附帯業務など輸送以外のサービスについて、範囲の明確化や標準的な水準などを示す方針です。

また、荷待ち・荷役に関する費用や、下請けに発注する際の手数料などの明確化・有料化も促すとしています。

トラックドライバーのコストを荷主企業や元請事業者に適正に転嫁できるよう、2023年中に「標準運送約款」の見直しを図ることも明記しました。

荷主企業などへの要請の強化や、適正な取引を促進するための情報公開などについても、具体的な内容について成案を得るとしています。

○再配達「半減」に向けた対策

再配達率が現在の12%から6%へ半減するように、緊急的な施策を具体化する方針です。

○2024年度に向けた業界・分野別の自主行動計画の作成・公表

業界団体などに対して、物流の適正化や生産性向上に関する「自主行動計画」を作成するよう要請し、政府は年内目途にそれらを公表する方針です。

○2030年度に向けた政府の中長期計画の策定・公表

モーダルシフト(トラックで行っている輸送を、鉄道や船舶による輸送に変えることで、環境負荷を抑えること)に必要となるハード整備をはじめ、各種施策について、2024年度予算案の編成過程において、政府としての中長期計画を策定・公表することで、民間企業による計画的な投資を可能にするとしています。

③「2024年初」に実施する施策

○通常国会での法制化も含めた規制的措置の具体化

荷主企業と物流事業者の間における物流負荷の軽減、物流産業における多重下請構造の是正、荷主企業の経営者層の意識改革・行動変容などに向けた規制的措置について、2024年の通常国会への法案提出を視野に入れ、具体化するとしています。

2024年問題でEC事業者に求められる対応

「2024年問題」が目前に迫るなか、EC事業者にはどのような対応が求められるのでしょうか。

まず、「物流革新に向けた政策パッケージ」に盛り込まれた施策が法制化されたり、ガイドラインが公表されたりした場合には、それらのルールを遵守する必要があります。

具体的なルールについてはガイドラインや自主行動基準の公表を待つ必要がありますが、たとえば、物流を自社で行っている企業はトラックドライバーの荷待ち時間の短縮を求められるかもしれません。物流を外部に委託している場合であっても、荷主として何らかの義務を負う可能性もあります。また、「送料無料」という表現が規制された場合には、販売戦略の見直しも必要になるでしょう。

運賃の上昇で物流全体の見直しが必要に

「2024年問題」の影響で、路線便や宅配便の運賃が今後さらに上昇する可能性もあります。

トラックドライバーの人手不足が深刻化すれば、運送会社は賃金アップなどの待遇改善を行わなければトラックドライバーを確保できません。トラックドライバーの人件費が上がれば運送会社にとってはコストアップになりますから、価格転嫁によって路線便や宅配便の運賃が上昇する可能性があるでしょう。

足元ではインフレが進行しており、ガソリン価格の上昇なども相まって、運賃が上昇しやすい状況にあります。

今後のEC業界では、運賃の値上がりをECサイトの販売価格に転嫁するか、他の方法でコストを吸収することが必要になると考えられます。

そういった流れのなかで、物流全体を見直すことでコストダウンを図ることが、これまで以上に重要になるのではないでしょうか。

物流コストは「保管費(倉庫の賃料など)」「作業費(倉庫での荷役費)」「運賃」などに分かれます。「運賃」が上がるのであれば、「保管費」「作業費」にも目を向け、物流全体でのコストダウンを考えなくてはいけません。

たとえば、在庫回転率が悪い商品を廃番にし、保管スペースを減らして倉庫の賃料を下げる。あるいは、シーズンごとの物量の波動に合わせて、倉庫の保管スペースを柔軟に拡張・縮小する。また、梱包に使用する段ボールのサイズを見直し、ワンサイズ下の運賃が適用されるようにする。

こうした業務改善を積み重ねることで、物流コストを削減していくことが重要になるでしょう。

「スピード配送」や「送料無料」を続けるべきか

運送業界の人手不足が深刻化すると、EC業界で一般的になっている「翌日お届け」といったスピード配送を行いにくくなるかもしれません。

また、「送料無料」の表示が法律によって規制されるか否かに関わらず、配送会社の運賃の値上げによって、送料をEC事業者が負担すること自体が難しくなる可能性もあります。

スピード配送や送料無料を売りにしたサービス競争を今後も続けるべきか。EC業界全体の課題になるでしょう。

EC物流の専門家に相談する

EC物流の見直しに取り組む際は、物流の専門家から助言を受けることで、自分達では気付けなかった改善策が見えてくるかもしれません。

この記事はフューチャーショップのオウンドメディア『E-Commerce Magazine』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。

E-Commerce Magazine

ヤフーのショッピング事業取扱高は8%減で「想定内での着地」。「Yahoo!ショッピング」の粗利率は22ポイント改善

2 years 7ヶ月 ago

Zホールディングスが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、国内ショッピングの取扱高(Yahoo!ショッピング、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなど)は前年同期比8.0%減の3780億円だった。

「Yahoo!ショッピング」のポイント還元投資抑制などが影響したと見られるが、ショッピングについては「想定内での着地」と言う。伸び率は2022年1-3月期(第4四半期)の13.3%減から減少幅が縮小。加えて、収益性も大幅に改善している。

ショッピングモール事業へのポイント還元投資はいったん抑制し、コストコントロールの範囲内で取扱高の成長に取り組むとした「Yahoo!ショッピング」。第1四半期の粗利率は前年同期比22.0ポイントの改善したという。

ヤフーは「2020年代前半に国内物販EC取扱高No.1」というeコマース取扱高に関する経営目標を変更。従来の「ポイント・販促中心」から、「グループアセットを最大限活用することに注力し、成長と収益性のバランスを両立」に変えている。

コマース事業の損益計算書を見ると、販売管理費は同8.2%減の846億2100万円。販売促進費・広告宣伝費は143億円で同42.7%減っている。その影響もあり、調整後EBITDAは465億6100万円で同24.2%増えた。

Zホールディングスが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、国内ショッピングの取扱高(Yahoo!ショッピング、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなど)は前年同期比8.0%減の3780億円だった コマース事業の損益計算書
コマース事業の損益計算書(画像はIR資料からキャプチャ)

「Yahoo!ショッピング」では新規ユーザー向け販促やアプリ利用の促進、優良配送ストア優先表示施策の継続実施などでサービス面を強化。第1四半期における新規顧客の翌月継続率は同19.0%増、優良配送比率は同47.9%増だったという。

Zホールディングスが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、国内ショッピングの取扱高(Yahoo!ショッピング、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなど)は前年同期比8.0%減の3780億円だった コマース事業の収益性改善と施策
コマース事業の収益性改善と施策(画像はIR資料からキャプチャ)

国内物販系取扱高、落ち込みは「底打ち」

eコマース取扱高は前年同期比0.7%減の9825億円で、2022年1-3月期(第4四半期)の同3.3%減から改善。国内物販系は同1.9%減の7177億円で、2022年1-3月期(第4四半期)の同7.8%減から縮小し、「国内物販系取扱高は底打ち」(ZHD)と言う。

Zホールディングスが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、国内ショッピングの取扱高(Yahoo!ショッピング、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなど)は前年同期比8.0%減の3780億円だった 全社 eコマース取扱高と成長率
全社 eコマース取扱高と成長率(画像はIR資料からキャプチャ)

なお、国内サービス系が同8.8%増の1428億円、国内デジタル系が同0.9%減の452億円、海外ECの取扱高は同5.3%減となる766億円だった。ショッピングとリユース、トラベルなどのサービスを合計した国内eコマース取扱高は、同1.8%減の7691億円。

Zホールディングスが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、国内ショッピングの取扱高(Yahoo!ショッピング、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなど)は前年同期比8.0%減の3780億円だった 国内eコマース取扱高
国内eコマース取扱高(画像はIR資料からキャプチャ)

Zホールディングスは2023年10月1日に、LINEやヤフー、Z Entertainment、Zデータといった子会社を合併。合併後の社名はLINEヤフーに変更する。新会社は2ケタ増益を維持しつつ、2024年以降のコア事業の再成長を最重要課題と位置付ける。

ヤフー、LINEの合併で、ヤフー会員5498万人とLINE会員9500万人のIDを連携。将来的にはIDの統合も視野に入れている。

LINEと「Yahoo!JAPAN」のID連携は2023年10月開始予定。連携後の会員はグループ横断の会員プログラム「LYPプレミアム」としてスタート、2023年11月にはプレミアム会員特典をアップグレードする。2024年中にはPayPayとのID連携も計画している。

瀧川 正実

送料、配送業者の選定、破損・汚損対策、禁制品の確認――国際配送で気を付けるべき4つのポイント | プロが解説! 越境EC運用ノウハウ

2 years 7ヶ月 ago
越境ECを行う上で重要な「国際配送」。梱包の工夫、送料コストの抑え方、配送業者の選び方など気を付けるべきポイントを解説します【連載1回目】

コロナ禍、歴史的な円安を経て、海外販路を積極的に拡大するために越境ECを始める企業数は大きく増えました。海外の越境ECモールへの出店、「Buyee(バイイー)」のような海外向け代理購入サービスの利用、越境ECサイト構築サービスを活用した自社サイト運営など、取り組みは多岐に渡ります。ただ、自社で越境EC対応を始めた企業のなかには、手探りで運用しているケースは少なくありません。ここでは、自社商品を海外に配送する上で重要なポイントを解説します。

プロが解説! 越境EC運用ノウハウ
  1. 送料、配送業者の選定、破損・汚損対策、禁制品の確認――国際配送で気を付けるべき4つのポイント

この連載では、長年海外向け代理購入サービス「Buyee(バイイー)」の配送、決済手段の追加、サイト機能の追加といった運用面を主導してきた筆者が、「越境ECの配送」「カスタマーサポート」「決済」について解説します。

国際配送のポイントは「破損対策」「禁制品の確認」

国際配送の留意点は、荷物の汚損・破損、紛失リスクの高さがあげられます。いくら発送前に責任を持って商品を丁寧に扱っても、配送業者に商品を託した後は商品の扱いをコントロールすることができません。

また、国際配送では、配送業者だけでなく税関や空港など、日本国内以上にさまざまな人の手で荷物が扱われます。その過程で、荷物は日本の丁寧かつ高品質な配送サービスに慣れた私たちからは驚くような過酷な状況にさらされる可能性があります。

そこで、梱包の段階でさまざまなリスクをできるだけ減らすことが重要となります。たとえば、破損対策では、緩衝材や箱の素材を工夫し、国際配送に耐えられる梱包にすると良いでしょう。「Buyee」でも、商品の品目が多い時や破損の危険性が高い商品に対しては、専用容器を用意するなどの対応を行っています。

一方、梱包を厳重にするほど重量が増増え、送料が高くなります。容積・重量をなるべく抑え、配送料を安くするための工夫も必要です。たとえば、衣類などは箱で梱包せず、防水性・耐久性のある袋などを利用し、配送コストを抑えるといった対応が考えられます。

越境EC 国際配送 破損・汚損対策 梱包の工夫 配送コストの削減 BEENOS Buyee

自社商品が禁制品でないか確認する

2つ目の留意点は、国によって配送できない禁制品が存在すること。国ごとに禁制品の対象は異なるため、自社の取扱商品が該当しないか把握しておく必要があります。

たとえばハンコ、ベルト類、バッグ、靴、ギターなどでは、ワシントン条約で国際取引が規制されている象牙や特定の皮革・植物が使用されていないか確認しておきましょう。特にこうした素材が規制されていなかった頃のアンティーク品、ヴィンテージ品を扱う場合には注意が必要です。

日本国内では問題なく取引されていても、国によっては禁制品の場合もあります。たとえば女性の写真集、特定の生産地の陶器、ゲームに登場する武器を模したおもちゃなども問題になるケースがあります。

こうした細かい規制に対し、すべての国の禁制品を確認することは現実的ではないでしょう。まずは、自社のECサイトにおいて購入者が多い国の禁制品をあらかじめ政府のWebサイトなどで確認しておき、海外発送時に注意すると良いでしょう。さらに細かいモノについては、事前に配送先のユーザーに禁制品かどうかを確認してもらうといった対策も考えられます。

越境EC 国際配送 禁制品 輸出できないもの BEENOS Buyee
万国共通の禁制品の一部(画像は「Buyee」サイトから編集部がキャプチャ)

手続きの違い、書類作成作業の負荷など考慮する

こうした配送に伴う留意点以外にも、国内と海外では手続き上の違いもあげられます。国際配送では通関のためにインボイスが必要になります。また、航空機に載せられない商品もあるため、品目のチェックが必要で国内配送よりも煩雑になります。

海外からの注文が増えてきた場合、手動で行う作業が増え、負担が大きくなってきます。そのため、海外配送の物量がある程度見込める場合は、書類作成作業がスムーズになるようにシステム対応をしておくことが理想的です。配送業者によっては、システム連携のメニューが用意されていることもあります。

海外ユーザーの懸念点は「送料」「配送業者の選定」

国際便の運行回復が進む一方、ウクライナ情勢の影響などにより空輸コストが増加しています。また、温室効果ガス削減の世界的な取り組みも大きな影響を与えています。

航空各社はサービス料金を値上げすることで、環境負荷の低い設備への投資を強化したり、持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ)の導入を進めたりしています。温室効果ガス削減は各企業が連携して解決すべき重要な課題であり、こうした取り組みが送料に影響を与えることは避けられません。

一方で、海外ユーザーが越境ECを利用する上で最も気にしているのが「送料」です。少し古いデータですが、「Buyee」がユーザーに行ったアンケートでは、商品を購入する際に最も気にすることは「送料」という結果が出ています。

越境EC 国際配送 日本の商品購入時に気にすること 送料 アンケート調査 BEENOS Buyee
2021年7月に「Buyee」ユーザーへ行ったアンケートより

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」の過去データでも、配送において「購入前における配送料金の情報提示」「一定額以上の配送料金の無料化」をとても重視している割合が高く、越境ECを利用する海外ユーザーが国際配送料を非常に重要視していることがわかります。

越境ECでは購入したい商品があっても、送料がネックで購入をためらうユーザーは少なくありません。購入の機会損失を減らすためにも、送料の課題には向き合う必要があるでしょう。

「Buyee」では、物流事業者の選定・組み合わせで、さまざまな国際配送サービスを開発し、この課題に向き合っています。たとえば、2023年5月には米国向けに軽量帯の荷物がお得になる「Buyee Economy Air」を開始しました。 

送料の値下げは自社でコストを負担する、配送業者と交渉を行うなど、複合的な要因によるものなので簡単には実現できないかもしれません。

しかし、たとえば海外ユーザーが「到着までに時間がかかっても問題ない」と判断できるような商品であれば、船便を選べるようにすると送料を抑えることにつながります

直接的な送料の値下げが難しい場合でも、配送手段の選択肢を複数用意することで、結果的に「送料を安く抑えたい」というユーザーのニーズに応えられるのではないでしょうか。

自社に合う配送業者を選定する

日本から海外に商品を発送する場合、一般的に信頼性などの観点から日本郵便を選ぶ人が多いかもしれません。

しかし「配送コストを抑える」という観点から見て、複数の配送業者から自社にベストな業者を検討することも必要です。配送業者を選ぶ上で、配送業者によって配送できる商品に違いがある国によっては中古品が運べないということがポイントになります。

配送業者独自で配送のクオリティチェックを行っているか、といった点も参考になります。先述したように、商品を発送するまでは自社で商品の扱いに責任を持てますが、発送後は配送業者のクオリティに左右されるためです。

また、先ほど紹介したアンケート結果から「購入前に配送料金の情報を明示すること」も重要視されていることがわかります。特に国際配送の場合、ユーザーの安心感のためにも送料・関税を含めトータルでいくらコストがかかるのかを明示することは重要です。

なるべくコストを抑えられる配送業者の選定、ECサイト側で購入前にトータル金額を明示する、配送手段を選べるようにするなどで、国際配送に対するユーザーの不安を解消し、購入の後押しにつなげることができるでしょう。

ユーザビリティ向上を実現した、台湾の事例

配送におけるユーザビリティ向上事例として、ローカルの習慣に対応した配送手段をご紹介します。

台湾では、ECで購入した商品の受け取り方法として、コンビニ受け取りが主流です。そこで、国際配送でもコンビニ受け取りができるサービスを開発しました。この配送方法は台湾ユーザーのライフスタイルに合わせた配送方法の提供だけでなく、ユーザーの自宅まで運ぶ「ラストワンマイル」の配送費がかからないため、結果として送料負担の軽減にもつながりました。

こうした配送方法のローカライズも、利便性とコスト両方の観点からユーザビリティ向上の手段の1つと言えるでしょう。

コロナ禍、ウクライナ情勢、SDGs――世界情勢の影響を考慮した対応策を講じる

新型コロナウィルスの感染拡大により、国際物流が大きく混乱したことはまだ記憶に新しいでしょう。世界的な外出自粛を背景にEC利用が飛躍的に増加した一方で、国際便の減少による輸送スペース不足が続く状態でした。日本から海外への越境ECにおいては、「海外からの需要が増えていても発送ができない」という状況だったといえます。

「Buyee」でも、当時主力の配送方法だった「EMS(国際スピード郵便)」の配送が停止し、それに変わる配送手段として船便も検討していました。しかし通常の配送方法より時間がかかり、場合によっては商品到着まで数か月かかることもあります。膨大な種類の商品を扱い、商品をなるべく早く手に入れたいユーザーのことを考えると、ユーザビリティの観点からも他の手段を検討する必要がありました。

そこで、自社で国際航空機を保有している国際配送会社との契約を締結。さらに、国・地域によっては「ラストワンマイル」を結ぶために現地業者と新たに契約することで、航空機の減便による影響が少ない配送手段の確保に努めました。

コロナ禍に限らず、国際配送は世界情勢による影響を大きく受けるため、それまで利用していた配送手段が使用できなくなる可能性もあります。そうした場合に備えて、複数の配送手段を持っておくことや、通常時には配送手段・配送会社を1つだけ利用していたとしても、非常時に備えて複数の選択肢を持っておくことが重要になってきています。

西尾 里美

年間700トン以上のCO2排出量を削減する大日本印刷の環境配慮型「ラベル伝票」、通販・物流・宅配業者に提供開始

2 years 7ヶ月 ago

大日本印刷は、宅配・通信販売・物流の事業者などに提供している「ラベル伝票」を、CO2排出量を削減する環境配慮型の「ラベル伝票」に切り替えていく。

製造工程で有機溶剤を使わない剥離(はくり)紙に切り替えることでCO2を削減するラベル伝票を開発した。環境配慮型ラベル伝票への切り替えを進めることで、2025年時点で年間700トン以上のCO2排出量の削減が期待できるという。

段ボールに貼った、ラベル伝票のイメージ
段ボールに貼った、ラベル伝票のイメージ
ラベル伝票から剥離紙をはがすイメージ
ラベル伝票から剥離紙をはがすイメージ

ラベル伝票のように、異なる用紙を複数の層に重ねて貼り合わせる製品は、一般的に反りやゆがみが発生しやすいという課題があった。材料の構成や工程を工夫することで、従来品と同等の品質で環境配慮型のラベル伝票を製造できるようになったという。

今後は大日本印刷グループで製造する大半のラベル伝票を環境配慮型に切り替えていく。このほか、ラベル伝票以外の製品でも、環境配慮型の製品への切り替えを検討する。

EC利用拡大に伴いラベル伝票も増加。CO2削減は喫緊の課題

昨今のデジタル化、コロナ禍の巣ごもり需要などが理由でECの利用が拡大。配送量の増加に伴い、荷物に貼付するラベル伝票も増加している。従来は剥離紙の製造工程で有機溶剤が使われていたため、剥離紙の製造時に揮発(きはつ)した有機溶剤を回収して燃焼処理する工程でCO2が排出されていた。

大日本印刷は環境問題への対応を重要な経営課題の1つとしている。特に「脱炭素社会」の実現に向けて、2050年度(2051年3月期)までに自社拠点での事業活動に伴うCO2などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。

高野 真維

【機能性表示食品で初】にさくらフォレスト措置命令を下した背景+変わる消費者庁の調査体制 | 通販新聞ダイジェスト

2 years 7ヶ月 ago
消費者庁はさくらフォレストが展開する機能性表示食品に対し、景表法の優良誤認があるとして措置命令を下した。機能性表示食品の届出表示そのものを不当表示と判断した消費者庁。この処分は業界内で混乱と反発を招いている

消費者庁は6月30日、さくらフォレストの機能性表示食品に、景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を下した。届出の「科学的根拠」に踏み込み違反とした。初の事例。制度を所管する食品表示企画課の所掌を侵し、表示対策課が断行した処分は、混乱と反発を招いている。

消費者庁の主張は「根拠に合理性欠く」

処分は、機能性表示食品の根拠に踏み込んだ点でこれまでの処分と異なる。過去に機能性表示食品を対象にした処分は、「葛の花事件」(17年)の1件。「広告」の届出表示からの逸脱が対象だった。

今回、厳密に届出表示の逸脱から問題になった広告表示は、血圧低下をめぐる「グーンと下げる」のみ。それ以外は、届出表示の裏づけとなる根拠が合理性を欠くとの判断から、届出表示そのものを不当表示と判断した。

さくらフォレストの措置命令をめぐる行政対応
さくらフォレストの措置命令をめぐる行政対応

対象は、「きなり匠」「きなり極」の2商品。「きなり匠」は、中性脂肪低下(機能性関与成分・DHA/EPA)、血圧低下(同・モノグルコシルヘスペリジン)、LDLコレステロールの酸化抑制(同・オリーブ由来ヒドロキシチロソール)を、「きなり極」は中性脂肪低下(同・DHA/EPA)を表示していた。

措置命令の対象となった「きなり匠」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
措置命令の対象となった「きなり匠」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
同じく措置命令の対象となった「きなり極」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
同じく措置命令の対象となった「きなり極」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)

SRと届出表示不一致を問題視。さくらは機能性の届出撤回

消費者庁の合理的根拠の提出要求(不実証広告規制)を受け、さくらフォレストは、DHA・EPAで30報を超える論文など根拠資料を提出。モノグルコシルヘスペリジンでは、トクホの許可論文も提出している。だが、消費者庁は、研究レビュー(SR)と届出表示の不一致を問題視。根拠と認めず「優良誤認」と判断した。

「きなり」2商品は、DHA・EPAを4~500ミリグラム配合(総量)していた。一方、提出論文の多くは、その倍近い量で検証したものが大半を占めた。医薬品、トクホも成分量は、860~1800ミリグラム(同)配合するものが中心。

一部論文は少量で機能を示す評価もあったが、同量で機能を否定するものも同程度あり、「SRは肯定・否定の両側面から評価する必要があるが、適切な評価と認められない」(田中誠ヘルスケア表示指導室長/取材時点)とした。

モノグルコシルヘスペリジンは、減塩しょうゆを対象に提出論文を評価。論文は、「成分+減塩」による効果を確認したものであり、「成分単独の使用の効果を裏付けるものではない」(同)とした。ヒドロキシチロソールは、摂取群とプラセボ群の有意差の評価手法を不適切と判断した。

さくらフォレストは、「処分は仕方がない。真摯(しんし)に受け止める」(西尾和剛取締役)とコメント。同日、届出を撤回した。

同種のSR製品88件、表示の根拠を再検証へ

制度を所管する食品表示企画課は、処分を受け、(1)2商品と同一の根拠(SR)を使用したもの (2)DHA・EPAは、とくに「きなり」の配合などを下回るもの――をメルクマール(編注:指標のこと)に、同種の届出を行う事業者に対し、根拠に基づく表示かを確認。7月17日を期限に回答を求めている。

さくらフォレストの違反事実
さくらフォレストの違反事実

対象数は、DHA・EPAは31件、モノグルコシルヘスペリジンは12件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは47件(2成分の重複4件を含む)の計88件。

今後の対応は、「確認を求め、回答に応じて個別案件による」(食品表示企画課・蟹江誠保健表示室長/取材時点)と話す。加えて、業界団体に届出の再検証を通知した。

「合理性欠く」と判断する理由は不透明

「根拠」に踏み込み、他の届出企業を巻き込んだ今回の処分は反発を招いている。

消費者庁は、処分にあたり、不実証広告規制を適用している。規制は、企業に表示の裏づけとなる合理的根拠の提出を求め、これを認めない場合、優良誤認とみなすことができる“みなし規定”。

だが、機能性表示食品は、そもそも届出の根拠が事前に提出・公開される建付けだ。「あえて規制を適用して否定する意味がわからない。根拠の問題に踏み込み、“根拠がなかった”と説明するための適用」(業界関係者)との指摘がある。消費者庁は、根拠が合理性を欠く理由を「評価の一部」(田中室長)として詳細を明らかにしないが、説明責任を尽くすべきだろう。

「事後チェック指針」は機能せず

機能性表示食品は、「葛の花事件」、処方薬と同一の表現から複数社の届出撤回に至った「歩行能力の改善問題」など、制度育成の障害となる諸問題を解消するため、20年に「事後チェック指針」を策定した。

業界と協調的に届出の根拠の疑義、広告上の問題に対処し、景表法上のリスクを避ける調整が図られた。ただ、今回、さくらフォレストが調査以前に指導はなかったとみられる

外部から一体に見える消費者庁だが、実際は、各省庁からの出向で構成する寄合所帯。公正取引委員会の出向を中心にする表示対策課、農林水産省からの出向を中心とする食品表示企画課の連携も密ではない。

届出根拠の精査など「事後チェック指針」の運用は、食表課傘下の保健表示室の所掌。ヘルスケア表示指導室は、疑義のある根拠について有識者に意見を求めるセカンドオピニオン事業などを担う。「根拠」の問題は制度を所管する保健表示室が食表法で対応するのが筋だが、表対課がこれを侵し処分に至っている

措置の公平性が不均衡になる懸念も

さくらフォレストは中核商品に打撃

措置の公平性の問題も生じる可能性がある。

さくらフォレストは、景表法による措置命令の公表、今後、課徴金調査も受ける。同社の売上高は、63億円(22年3月期、民間調査機関調べ)。取り扱う約40品目のうち、「きなり」は、「新規獲得に使う商品の一つ」(同社)。中核商品であり、「半分までいかないが、相当量を販売していた。半分近く占めるのでは」(OEM関係者)という者もいる。

届出表示そのものを対象にしているため、違反表示は「容器包装=販売期間」におよぶ。表示期間は、「きなり匠」が約1年半、「きなり極」は少なくとも約3年。課徴金が課されれば億単位が予想される。根拠を否定する処分の影響は甚大だ。

「不公平感が強い」「指導で済んだのでは」――。措置に疑念の声

一方、同種の届出製品に想定される他社への措置は、行政指導のほか、食表法に基づく撤回の指示・命令。業界関係者からは、「単独での処分公表と課徴金、かたや指導、撤回ではあまりに影響が違う」「不公平感が強い」「指導で済んでいた案件ではないか」との声がある。

発売以降、国民生活センターのPIO―NETに寄せられた2商品の相談も約4年で「取引関連」が32件、効果に関する苦情は4件だった。

課徴金は、事業者が「相当の注意」を払っていれば免責される。指標は、表示管理体制の整備。表示管理責任者の配置や表示根拠の確認などがある。免責されるかも今後のポイントになる。

◇◇◇

制度を所管する食表課保健表示室は、処分に「非常に遺憾。届出者は関係通知をよく理解して届出してもらう。絶えず見直すことを周知したい」と話すが、本来、「事後チェック指針」が適切に運用されていれば避けられた処分。消費者庁内の連携不足からくる怠慢が招いた処分ではないか。

消費者庁・田中誠室長が離任。10年にわたり影響力

消費者庁表示対策課・ヘルスケア表示指導室の田中誠室長が7月1日付で同職を離任した。公務員の異動が一般的に2年周期とされるなか、約10年にわたり同課に籍を置き、事件調査で影響力を行使してきた。

田中 誠 氏
田中 誠 氏

「トクホの初勧告かな」。ライオンに対する健康増進法での初の勧告を、最も思い出深い事件にあげる。事件は16年。通販を拡大していたライオンは以降、勢いを削がれ、今年5月、日清食品に機能性表示食品事業の譲渡を発表した。

以降も機能性表示食品の初処分となった「葛の花事件」(17年)、認知機能関連の機能性表示食品に対する一斉監視(22年)など大型事件を手がけた。最後の置き土産が、さくらフォレストの処分だ。

事件による業界の動揺を背景に、「事後チェック指針」「切り出し表示」の業界自主基準への反映など、規制強化も求めた。長期期間の在職は組織において職務の専門性を高める一方、裁量行政のリスクをはらむ。一人の行政官の思想信条が、業界に影響を及ぼすことこそ、裁量行政そのものだろう。

今後は、消費者教育推進課食品ロス削減推進室長専任として、食品ロス削減法の改正作業にあたる。

業界に対しては、「機能性のエビデンスは努力されている。一方、根拠に問題がなくとも広告には配慮が必要。これは制度の育成が進んでも変わらない」との言葉を残す。離任にあたり、「公正競争規約の策定が道半ばという思い。トクホも規約策定以後は1件の指導・処分もない。ルール化されればリスクはぐっと減る」と提言する。

後任は、今年4月、食品表示対策室長に就任した農水省出身の綾戸隆英氏が兼任する。

◇◇◇

一難去ってまた一難となるか。もう一つ、業界に影響を与えそうな人事が7月3日付、同庁食品表示企画課保健表示室・蟹江誠室長の離任だ。

後任は、厚労省の今川正紀氏。昨年、同省新開発食品保健対策室長として、機能性表示食品を含む「いわゆる健康食品」について、因果関係が不明確なままで健康被害情報を公表すると政策を仕掛けた人物だ。かつて、消費者庁で食品表示法の策定に携わったこともある。

着任後、初めて担当するのが、田中氏が置き土産として残したさくらフォレスト関連の届出製品の再検証。届出企業に根拠の確認を求め、食表法に基づく撤回の指導等を判断する。健康被害情報の公表をはじめ、安全性管理を軸にした健食の制度化に意欲を持つ。今後どのような判断が飛び出すか注視する必要がありそうだ。

同種SR88件の根拠「確認」、届出撤回の可能性も

同様のSRを行う企業を巻き込み燃え広がる「根拠」に踏み込む処分は、業界に混乱を招いている。制度自体が大きく揺らいでいると言えよう。制度を所管する消費者庁食品表示企画課の担当官(課長補佐)に、88件に対する今後の対応を聞いた。

――――調査の理由は。

「機能性表示食品は、『根拠がある』ことを前提に自己責任で表示できるもの。根拠がないことが明らかになったので確認している」

――――どのような確認を行っているか。

「『表示の根拠を十分説明できているか』という確認を行っている」

届出の段階では「1つひとつ見ていない」

――――制度は食表課が所管する。届出の段階で根拠は確認していないのか。

「制度は、事業者責任が前提。1つひとつの論文まで見ているわけではない」

――――届出から公表まで時間を要しているのはかねてからの課題だ。確認していないのであれば、時間をかける必要もない。

「内容確認はそれなりに時間がかかる。SRの記載内容と届出表示の齟齬(そご)がないかを確認している。たとえば血圧関連の根拠で中性脂肪の表示を行っていては問題なので形式的に確認している」

――――届出が不備事項の指摘で受理されないことがある。形式的な確認であれば、記載漏れがなければ受理すればよいのではないか。

「SRと届出表示が正しければ受理する。一定の根拠は見るが、詳細までわからない」

――――処分は、食表課が受理したものを表示対策課(以下、表対課)が問題視し、処分を受けて食表課が企業に確認する構図だ。職分に踏み込み、食表課が窓口に見える。

「見えてしまうということはあるかもしれないが、それぞれの所掌がある。制度は一定の根拠があれば届出できる。表対課は、表示を調査する。今回は、その内容が根拠にまで及んでしまったため当課が対応することになった」

――――食表課の保健表示室は、「事後チェック指針」の運用を担う。処分に至らないための指針ではないのか。

「一義的に届出者が注意してもらう必要がある。問題ないようにしてもらいたい」

撤回の指示は「あり得る」

――――確認後の法律上の措置の可能性は。

「食品表示法上は、撤回の『指示』、これに従わない場合の『命令』がある。いずれも公表される。命令に従わない場合は、300万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役という罰則がある」

――――撤回の指示はあり得るか。

「そうなる」

――――指導は。

「やり取りを行うなかで企業側が気づかれて自ら撤回するかもしれない」

――――根拠を問題視する点は同じだが、景表法の処分と措置の影響が大きく異なる点はどう考えている。

「法律が異なる。食表法の範ちゅうで確認、対処するのが限界といえばそうなる」

――――対応が異なるのも仕方がないと。

「そうなる」

――――根拠に問題が見つかった際に表対課と連携して対応しないのか。

「別になる。88件に対応して従わないからといって景表法違反にはならない。これと別に景表法に基づく調査がされれば、判断されることもある」

――――情報提供など緊密な連携はとらない。

「広告関連の情報提供があれば担当課が異なるので伝えることはあるが、今回の対象は根拠。当課としても今回の商品以外に調査しているかはわからない」

――――互いの動向は関知しない。

「というより関知できない」

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通販新聞

ビデオリサーチ、視聴率測定領域を拡張

2 years 7ヶ月 ago

ビデオリサーチは、コネクテッドテレビやPC・モバイル端末での動画配信プラットフォームの利用実態を把握すべく、視聴率の測定領域を拡張する。テレビ視聴率調査対象世帯に対して、従来の視聴率測定機に加え、動画測定用センサーを新たに設置する。2024年4月より関東地区を試験提供し、2025年10月から全国32地区で正式に提供する予定。

https://www.videor.co.jp/press/2023/230719.html

noreply@blogger.com (Kenji)

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