
2026年2月16日に開催した「AI時代の企業発信サミット2026」。本セッションでは、ゼロクリック時代に信頼と評判を獲得するコンテンツ構造について解説されました。
登壇されたのは、株式会社ヴァリューズの齋藤 ロベルト 義晃さんです。齋藤さんは、noteと『ゼロクリック時代の新GEO・AI SEO。AI経由の流入分析で解き明かす、要約後も人が訪れるコンテンツの条件とは?』という共同調査をリリースされた方でもあります。
本稿では、セッションの内容をダイジェストでお届け。AI検索が進むなかで、自社のコンテンツをどう設計すればいいのか悩んでいる方にとって、ヒントを得られる内容です。
※当日の様子は、アーカイブ動画でもご覧いただけます。

AI時代に「検索離れ」は本当に起きているのか?
齋藤さん まずはヴァリューズについて簡単に紹介させてください。ヴァリューズは事業のひとつに、インターネット行動ログの分析事業というユニークなものを手がけています。実はこのデータをもとに、noteとの共同調査も行いました。
この行動ログの独自性は、許諾を得た250万人の消費者モニターを抱えており、その方々の性別・年齢・職業などの属性情報つきで、Web上の行動ログデータをビッグデータとして扱える点です。アンケートだけでは掴みにくいユーザーの深い行動の背景も、アンケートと行動ログをあわせて調査し、可視化できるのが強みです。
では、ここから本セッションのテーマに入ります。本日持って帰っていただきたいことは以下の3つ。AI検索の波がマーケティングやコンテンツ戦略にどう影響するのか、データと事例をもとに順番に見ていきます。

ユーザーの行動に何が起きているのか
AI検索時代が始まり、この黎明期に何が起きているのでしょうか。ヴァリューズの行動ログに基づいた、検索エンジンのユーザー数の推移があります。Google、Yahoo!、Bingといった検索結果画面に触れているユーザーの推移を、行動ログで拡大推定したものです。
よく「検索離れ」が起きていると言われます。たとえば飲食店を探すとき、Instagramで検索するようになったから、検索エンジンは使わないといった話です。
しかし行動ログを見てみると、実は検索回数は減っていません。むしろ20代に至っては検索回数が増えているようです。

ゼロクリック率63.5%で、検索してもサイトを訪れない
ただし、検索をした「あと」には変化が起きています。検索をしたにもかかわらずサイトには訪れない、いわゆる「ゼロクリック」の割合が、2025年9月時点で63.5%に達していました(ブラウザ上の検索行動のみ対象。アプリ内の検索は除外)。
さらに2025年12月には64.8%と過去最大を記録しています。つまり、検索の半数以上が、サイトへの訪問なしで完結しているのです。
実は2025年3月を境に、このゼロクリック率が一段階上がりました。その要因は大きく2つあるのではないかと考えています。

1つ目は、GoogleアカウントにログインしなくてもAIによる概要(AI Overview)が表示されるようになったことです。みなさんもGoogleで検索したとき、検索結果の上部にAIがサマリーを出してくれる場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。ヴァリューズの観測では、2025年3月9日前後にこの変化が起きています。

2つ目は、AIによる概要が出現するクエリの種類と頻度が急増したことです。海外のデータによると、「〇〇とは?」のような情報収集目的のInformationalクエリでは、すでに約80%にAIの概要が表示されています。

SEO業界を揺るがす「グレートデカップリング」
こうした状況を受けて、SEO業界ではグレートデカップリングという言葉が広まり始めています。これはGoogle Search Consoleで確認できる表示回数とクリック数の乖離が拡大していく現象です。多くのサイトでは表示回数は増えているのに、クリック数は伸びない。まるでワニの口が開くように、2つの数字が離れていってしまうのです。
2025年に開催されたGoogleのイベントでは、Google社員の方がまさにこの傾向について言及しており、多くのサイトで現在進行形で起きている現象として注目を集めています。

AIにトラフィックを奪われやすいワード、奪われにくいワード
では、具体的にどのような検索ワードがゼロクリック化しやすいのでしょうか。ヴァリューズで観測できる検索ボリュームの多いキーワードをグルーピングし、ゼロクリック率を集計。すると意外にもゼロクリック率が高かったのは、「症状」「痛み」などの健康医療関連ワード、そして「〇〇とは」のような意味を調べるワードでした。
一方、ゼロクリック率が低かったのは「居酒屋」「マンション」などです。写真を見たい、口コミを確認したい、間取りを比較したいといったニーズがあるため、少量のテキストによる要約だけでは満足されにくいワードです。
全体の傾向としては、ざっと概要がわかれば済むものはAIに代替されやすく、詳細やビジュアルが必要なものはまだクリックされています。ただし、後者もわずかにゼロクリック率は上昇しています。

Google AIモードの浸透と、変わる「検索の仕方」
続いては、Googleの最新AI検索機能「AI モード」の話題に移ります。これは日本では2025年9月にリリースされた機能で、Google検索の画面上に生成AIサービスの枠が搭載されたものです。
ヴァリューズの行動ログによると、AIモードの利用率はブラウザ上の検索全体の約2%前後で推移。まだ高くはありませんが、注目すべきデータがあります。

まず、AIモードを利用するユーザーの一人あたりの利用回数が右肩上がりになっていることです。使い始めたユーザーはやめるのではなく、徐々に利用を定着させている傾向が見えています。
これが3%、5%と高まったときに企業は何をすべきか。今から備えておくべきではないかと議論を始めている方々もいるようです。

AIが好むコンテンツは「一次情報」
では、AIはどのようなコンテンツを好むのでしょうか。
ヴァリューズの行動ログでは、各ドメインへの検索エンジンからの流入数と、生成AIサービス(Gemini、ChatGPTなど)からの流入数を分析できます。
下記のグラフは横軸に検索エンジン流入、縦軸に生成AI流入で、基本的には相関関係があることがわかります。しかし、この傾向から外れるサイトが現れ始めている。その代表例がWikipediaとnoteです。

noteは、検索エンジンからの流入規模ではInstagramとほぼ同水準です。しかし、AIからの流入はその約4倍にのぼります。つまり、期待値以上にAIから人が訪れている。逆にWikipediaは、YouTubeと同じくらいの検索エンジン流入があるにもかかわらず、AIからの流入は期待値の半分くらいにとどまっています。
この違いを生んでいるのは、一次情報か二次情報かという性質の差ではないでしょうか。noteには、ユーザーの体験や独自の見解など、そこにしかない一次情報があふれています。だからこそAIの要約だけでは満足されず、もっと詳しく知りたいとサイトに遷移されやすいと考えられます。

ヴァリューズと共同研究をしたnoteのデータアナリスト・中川さんによる分析でも、AI経由の流入が多いnoteの記事には、以下の2つの特徴があることがわかりました。

構造が明確とは、目次を使っていたり、見出しがきちんと書き分けられていたりする記事を指します。これらを考えると、一次情報を豊富に含み、ボリュームは多いが構造化されていることで人にもAIにも読まれやすくなっている。これがAIに好まれるコンテンツの条件です。
またAIからの流入が多いサイトカテゴリーをみても、政府・地方公共団体のページ、Webツール(CanvaやGitHubなど)、論文・研究データベースが上位に並びます。共通しているのは、専門性・独自性・一次情報という要素です。
企業がつくるべき「トピック・ハブ」という構造
このようなAI時代に、企業はコンテンツをどのように発信していけばいいのでしょうか。
私は、自社のブランドやメディアそのものが、ユーザーの課題や悩みに対する「答え」である状態を目指すべきだと考えています。
ここで紹介したいのが、トピック・ハブという考え方です。これは、あるトピックにまつわるコンテンツ群を体系的にまとめ上げ、そのトピックにおいて自社が頼られる場所をつくっていくことです。ユーザーの課題を解決する情報を1つの場に集約していくという視点が、これからはさらに重要になっていきます。
事例:大手カメラメーカーのオウンドメディア
具体的な事例として、大手カメラメーカーのオウンドメディアを紹介します。

このオウンドメディアのターゲットはカメラの初心者です。カメラは決して安い買い物ではありませんから、ユーザーは失敗したくないという切実な課題を抱えています。そのような方々に向けて、使い方や基礎知識といったコンテンツに加え、有識者による解説、利用事例といったコンテンツを発信していきました。
その結果、このクライアントでは、検索エンジンにおけるAIの概要表示が増加したタイミング以降も検索流入が堅調に推移しています。表示回数は増えるのにクリックが増えないというグレートデカップリングに陥らず、流入拡大を実現できている事例です。

もっとも大事な問い。「自社はどのトピックを引き受けるのか」
最後にトピック・ハブに取り組むうえで、もっとも大切な問いがあります。
それは、自社はどのトピックを引き受けるのかということ。ここが一番むずかしいところで、クライアントからもよく相談される点です。判断のポイントとしては、以下の4つの観点があると考えます。
1. 自社ならではの見解を語れるテーマであること
2. 自社ならではの独自性を構築できるテーマであること
3. そのトピックについて外部からの評判がすでにあること
4. 専門的な一次情報を生み出せるテーマであること
簡単には決まらないかもしれません。しかし、この問いに向き合うことが、AI検索時代を生き抜くための第一歩になるはずです。
検索ボリュームが大きいキーワードに即したコンテンツをつくることに、もうそこまでフォーカスする必要はないと思います。もちろん検索ボリュームも大事ですが、それよりも、ユーザーが意思決定をするときに必要な情報を充足させていくほうが重要です。
そうした取り組みの結果として、ユーザーがこの情報は参考になったとブックマークしてくれたり、ソーシャルメディアで拡散してくれたりします。展開チャネルもオウンドメディアだけに閉じる必要はなく、ソーシャルメディアやnoteなどのプラットフォームも組みあわせながら、トピック・ハブをつくっていくといいでしょう。
ここまで、AI検索によるゼロクリックの実態から、AIに好まれるコンテンツの条件、そしてトピック・ハブの考え方までをお話ししました。本セッションのまとめをスライドに整理していますので、ぜひ振り返りにお役立てください。本日はありがとうございました。

noteでは、法人向け高機能プラン「note pro」を通じて、AI時代にあった発信を応援しています。ご興味のある方は資料をご覧ください。

登壇者プロフィール
齋藤 ロベルト 義晃さん
株式会社ヴァリューズ データプロモーション局 ゼネラルマネジャー
株式会社ヴァリューズクリエイターズ 執行役員

麻布高校、一橋大学(一條和生ゼミ)卒業。ネット証券会社黎明期にデジタルマーケティング立ち上げに携わり、約10年にわたってWEB戦略を推進。2014年の東証一部上場を経て、マーケティング部長、経営企画室長を務めたのち、2018年にヴァリューズに入社。データプロモーション事業の責任者として売上昨対比2倍を3年連続で実現。2019年2月より現職。
photo by 林 美夢 text by 須賀原優希
