note #等身大の企業広報レポート

さとなお氏・深津氏が語る、いま企業に求められるコンテンツ戦略とは?

さとなお氏や深津氏らが、AI時代の顧客行動の変化に応じた企業の新たな情報発信戦略を語り合います。

note[転載元]

7:05

noteの許諾を得て、Web担で掲載しています。オリジナル記事はこちら →https://biz.note.com/n/n29930c3eb900

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AIの進化・普及により、顧客の行動が大きく変わりました。企業もそれにあわせ、情報発信やコンテンツマーケティングの戦略を考え直す必要があります。

2026年2月に開催した「AI時代の企業発信サミット」では、書籍『AIに選ばれ、ファンに愛される。』の著者である佐藤さとう尚之なおゆき(さとなお)さん、noteのCXOで生成AIの分野でも第一線で活躍する深津ふかつ貴之たかゆきさんをゲストに迎え、トークセッションを実施しました。セッションのテーマは、「AI時代に企業が再定義すべきコンテンツ戦略や、情報発信のあり方」

noteのプロデューサー・徳力とくりき基彦もとひこも登壇した同セッションの様子をダイジェストでお届けします。

※当日の様子は、アーカイブ動画でもご覧いただけます。

動画を見る
 

SEOはどう変わる?AI向けの記事を書くために必要なこと

徳力さん AIが普及して、従来のSEOを意識した発信より、AIに読んでもらうための発信が重要になってきました。

AIから「信頼できる情報源」と評価されると、AIの知識源として学習され、AI検索結果にWebサイトが引用・表示されやすくなります。このようなAI向けの発信に加え、ファンに愛される発信が組み合わさると、いい相乗効果を生み出す可能性があるということが、先程の基調講演の一つのポイントでした。

A × Fシナジー
作:佐藤尚之さん 
AIに読んでもらうための発信(AIルート)に加え、ファンに愛される発信(ファンルート)が組み合わさると、指名顧客(ファン)が生涯顧客へとなっていく。

のちほどファン向けの発信についてもお聞きしますが、まずはAI向けの発信から質問したいと思います。

AI向けに記事を書く上で、変えなければならないことはなんですか?

佐藤さん AI語にトランスレーションすることです。要はこれからの時代、AIがわかる言葉で書いてあげることが大切です。

たとえば「膝にやさしいランニングシューズ」ではAIは比較ができません。どこまでがやさしいのか、どこからが厳しいのか、わかりませんよね。だから「このランニングシューズのクッションの衝撃吸収性は、他社に比べて何%高い」のように、数字やデータを入れることが重要になってきます。

佐藤尚之さんの登壇写真
コミュニケーション・ディレクター 佐藤尚之さん

深津さん 僕は、結論そのものよりも、結論に至るまでの過程を書くことが大事になってきていると考えます。中間情報や試行錯誤の過程といった、結論の手前にある情報のほうが、AIに評価されやすくなると思うからです。

たとえば今資産形成を始めようとして、調べるとします。すると「NISAのインデックスファンドをやればいいですよ」といった答えなどがAI検索結果に出てくる。それ以上Webサイトに訪問する必要がなく、そこで解決してしまうんですよね。

でも、みなさんが応援している芸能人が、一攫千金で稼いだお金で土地を買ったりお店を出したりして大失敗し、その末にNISAのインデックスファンドが最高だという結論に至った記事があればどうでしょう。結論は同じでも、価値はそこではなく、応援している人が右往左往してたどり着くプロセスそのものにありますよね。これがAI時代の大きなヒントだなと思うんです。

いままでは、みんなが結論を探しているから、結論をきちんと書いてそれがSEOに引っかかることが勝ち筋の1つでした。でも、そこが大きく逆転しているのが、おもしろいところです。

AIに選ばれるヒントを、AIに聞く

徳力さん 以前深津さんとセッションをしたときに、これからはいままでのSEOの常識が真逆になるのではという話がありましたよね。そうなると、企業がAI向けに記事を書くときに何から手をつけるべきですか?

深津さん 真逆とまでは言いませんが、SEOに加えて、さらに必要な要素が出てくると思います。AIに選ばれるために意識すべきことが、いわば3階建ての構造になるんです。

1階はAIが企業やブランドについて学習していること。このブランドが何かということが広くAIに理解されている必要があります。そして2階は、AIが検索をして調べる部分。AIが調べ物をするときに「ここから調べよう」と想起してもらえているかですね。最後に3階は、実際にそれで検索したときに結果が上位に来ることです。

自社の情報がどのレイヤーでどのように扱われているのかを調べたり、推測したりしながら、それぞれのレイヤーでできることをやっておくといいと思います。

深津貴之さん登壇写真
note株式会社 CXO 深津貴之さん

佐藤さん 深津さんはプログラムの仕様書的なアプローチだと感じますが、別の角度でいうと、2つのアプローチがあるかと思います。

まず、いまのサイトや記事をAIに共有して、評価してもらうこと。自社のWebサイトのURLを入れて「全然AIに選んでもらえないけど、なぜ?」と聞いてみるんです。すると何が足りないのかといった、AIに選ばれるためのアドバイスをもらえます。

もう1つは、因数分解をすることです。先ほど例に挙げた「膝にやさしいランニングシューズ」を因数分解すると、ソールの反発率や特殊な形状の設計、それを裏付ける具体的なエビデンスなど、さまざまな要素に分けられますよね。

それぞれの要素に開発の苦労や失敗のナラティブ(その人自身の体験や価値観にもとづく物語)があるはずです。このように商品の情報を要素ごとに分けて、発信していくことが大切だと思います。

深津さん 僕も佐藤さんと同じようなやり方はよくやるかもしれません。自分がある洗剤を売っているマーケターだったら、AIに「洗剤のおすすめランキングを教えて」と聞く。それでAIから見た洗剤のおすすめを出してもらって、「どうして我が社の商品は3位なの?1位や2位にしてもらえないのはなぜ?うちが1位として紹介してもらうにはどうすればいいの?」と素直に聞いて、それを愚直にやるのが強いです。

徳力さん 自分たちの発信がAIに届いたかどうかは、どうやって確認すればいいですか?  

深津さん AIに、検索を使うのを禁止した上でプロダクトについて語らせるといいですね。「我が社の○○という商品について、できるだけ詳しく語ってください。ただし検索を使うのは禁止です」と聞いてみる。

そのときにすぐに答えてくれて内容がぶれないことは、AIにしっかり届いている証拠です。逆に、数字が間違っていたり、省略されたりするような情報は、まだあやふやだということです。

商品の情報ではなく、ファンとの関係性を深める発信が必要

徳力さん 続いてAIが登場する前とこれからで、ファンに向けた情報発信はどう変わると思いますか?

深津さん 商品情報の「⚪︎月⚪︎日発売」や「〇〇円」のようなファクト情報の価値は下がるのではないでしょうか。もちろん第一報は重要ですが、それ以降は自然とファンがコミュニティに広めてくれるからです。

佐藤さん 同感です。基本的に、ファンはすでに知っている商品特徴のような情報はもういらなくなると思います。それよりも意識すべきは、ファンとの関係性を深めるための発信

たとえば、Apple Watchの次のシリーズがどうこうという話は、ファンは知っているから、喜ばないんです。逆に喜ぶのは、その裏側の苦労や失敗、成功などの一次情報です。

もちろん、どんな話を喜ぶかは、ファンのタイプによります。ファンの指向性やタイプ、どんなインサイトなのかを先に調べないと、情報発信は難しいと思います。

ファン一人ひとりのナラティブを、どう表現させるか

徳力さん ここまでAI向けとファン向けの発信、2つの軸からお話を聞いてきましたが、共通するアプローチはあるのでしょうか?

徳力基彦さん登壇写真
noteプロデューサー/ブロガー 徳力基彦さん

深津さん noteにも書きましたが、「まだこの世に存在しないコンテンツ」を発信することですね。その企業しか知らない「中」の話とか。これを出せれば、AIの知識源として取り込まれやすくなるし、ファンとの関係性もより深まります。

ただ、一企業がそれをやるとリソースが足りないので、ファンを巻き込みながら設計するのがいいでしょう。

例として、コンビニが何かコンテンツをつくるとき、思いつきそうなのが、お惣菜の食べレポをファンに書いてもらうこと。でもそれって書いたら終わりじゃないですか。

そこで「まだこの世に存在しないコンテンツ」を設計する。2つのお惣菜を合体させて「一番おもしろい食材を決めようぜ選手権」にしてしまうんです。組み合わせ対象は無限にあるので、どれが一番おいしいかをみんなで探すというエンターテインメントになるわけです。

つまり、ファンに参加してもらい、みんなで情報空間を埋めていけるかがポイントです。この場合、バリエーションが増えるのもメリットですが、一番の価値は、いままでにはなかった組み合わせが探索されることだと思います。

佐藤さん 深津さんのおっしゃる通り、ファンを巻き込むことは大切です。なぜなら、ファン一人ひとりにナラティブがあるから。ファンにいいお題を共有すると、ナラティブがどんどん出てくるんですよね。

徳力さん ファン一人ひとりにナラティブがあるというのはその通りで、映画の口コミにしても、人によって全然角度が違うんです。たとえば映画『国宝』は、歌舞伎ものとして捉えている口コミだけでなく、ほかにもさまざまな角度の口コミがある。また、どの口コミに影響を受けて観に行くかというのも、人によって違いますよね。

深津さん 口コミも、最終的にまとめて1冊の本になったときに、バランスよくインデックス分類ができていると理想的ですね。

徳力さん 『国宝』を例にしたのでエンタメの話に聞こえるかもしれませんが、これはどんな商品でも同じです。好きな理由や選んでいる角度は人によって違う。

いままでは「この商品の特徴はこれです」とワンセンテンスでまとめることが多かったと思いますが、ファンに聞いて、いろいろな角度から訴求することも大事になってくるのでしょうか。

佐藤さん ただ、みんな全部の口コミを読むわけではなくて。『国宝』だったら、ある口コミに「ロケ地が大津市にある歌舞伎の芝居小屋」と書いてあって、そこに引っかかる人がいる。近い価値観を持った人は、その1つの口コミだけでも行動します。

もちろん口コミの角度がばらけているほうがより多くの人に届く可能性は高いですが、たった1つの口コミでも、刺さる人には刺さって行動につながります。

セッションの様子
 

新規のお客さんよりも、ファンに伝えることが大事

徳力さん 続いて、初めて企業がファン向けに記事を1本書く場合、何からやるのがおすすめですか?

深津さん すでにファンがいて、その人たちが読んでくれるという前提であれば、まずはお礼と秘密のTipsを書きますね。「実はこんなところにこんなものがあるんですよ、試してみてください。楽しいですよ」のような。

場合によっては、「みなさんが知りたいことを教えてほしい」と素直にお願いする。本当にそれを叶えるからと言って、実際に叶える。そういうことのほうが大事だと思います。

佐藤さん やり方はいろいろあると思いますが、真っ先に企業は体質改善から始めたほうがいいと思います。いまの企業は、新規顧客獲得体質になりすぎているので何を書いてもそういう書き方になりがちです。新規のお客さんよりも、ファンに伝える。そう意識することが大事です。

深津さん そうですね。マーケットサイズを広げたいなら、バウムクーヘン状に広げていくといいと思います。センターピンになるのは、ものすごく濃い初期ユーザーの熱い熱量で、そこを中心にだんだん広げていくのが好きです。

逆に、いままでは男性向けのメーカーだったけど、女性向けにするような飛び方は、リスクが大きい。セグメントを飛ばすのではなく、バウムクーヘン上でだんだん線を巻きながら女性セグメントに行くまで直径を広げていくほうが健全なんじゃないかなと。

佐藤さん セグメントを飛ばすことの何が悪いかというと、異なるセグメントであってもファンのタイプは一緒なんですよね。たとえば、20代の女性のサッカー好きと、60代の男性のサッカー好きは、セグメントは違っても話が合いますよね。それと同じです。

ファン同士同じところにツボがあるので、いまのインサイトを大きく動かす必要がないことが多いんです。なぜかみなさん年齢や性別で区切りたがりますが、そういうのは意味がありません。

量ではなく質の評価の方向にシフトしないと、生き残れない

徳力さん ファンにコンテンツが届いたかどうか、手応えを確認するにはどうすればいいですか?

深津さん テクニックの1つとして、完璧なコンテンツにしない、突っ込まれやすいものにするというものがあります。完成されすぎたコンテンツだと、ファンがそれを読んで終わりになってしまう。でも、突っ込まれやすいコンテンツだと、ファンが反応してくれます。

もしファンが反応してくれないとなると、そもそもファンがいないか、そのコンテンツを置く場所が間違っているかのどちらかです。

もちろん、一言くれたファンのことは、すごく大事にしてくださいね。

佐藤さん ボクは、これにも体質改善が必要だと思っています。みなさんは効果測定というと量を見ますよね。人数とか。それはファンを考えるときには本当にどうでもいいことです。

ファン向けの場合は、1つの記事がある一人に深く届いて反応があれば、それがファンの中で熱狂的に伝わっていく。すごい効果なんです。量ではなく質の評価の方向にシフトしないと、AI時代には生き残れません。

セッションの様子
 

徳力さん 最後におふたりに、企業発信の担当の方たちが明日から取り組むべきことについてアドバイスをお願いします。

深津さん AIのせいにする練習をしてもいいのではと思います。AIは定性的な情報の重要さと定量的な情報の有用性を両方理解しているので、「うちの会社は生成AIと一緒に計画を立てながら定性/定量のアロケーション(予算や工数の配分)をやっています」とすれば、社内稟議を通すときにも「AIがこう言っています」と言えます。

部下が上司に意見をするのは角が立ちますが、AIのせいにすれば意外と通るのではと。

佐藤さん ボクからは、ぜひみなさんに、自分が世界で一番賢い生活者であるという意識を持って買い物をしてみてほしいと思います。いまの生活者はAIという"相棒"を手にしたことで、情報の収集や比較がこれまでとは比べものにならないほど速く、広くなっています。

その上で、そういう「世界一賢い生活者」が普段の買い物でどうやって商品を選ぶのかを実際に体験してみてほしいです。そうするだけで、発信する側ではなく、生活者側の目線が身についてきます。

そして、逆算してください。世界一賢い生活者は、こう買うんじゃないか。その人がこう買うためにはどういう商品だったらいいのか。このように、発想を変えていくといいと思います。

深津さん 結局、最後は「よい会社とは何か」「よいプロダクトとは何か」という定性的なところに落ちついてくる話ですよね。

徳力さん AIの発展は、みなさんにとって追い風になるはずです。ぜひ明るい未来を感じながら、明日からのお仕事に活かしていただければ幸いです。本日はありがとうございました。



noteでは、法人向け高機能プラン「note pro」を通じて、AI時代にあった発信を応援しています。ご興味のある方は資料をご覧ください。

note pro資料ダウンロード
 

登壇者プロフィール

佐藤尚之さん
コミュニケーション・ディレクター

佐藤尚之さんプロフィール写真

大手広告会社でのクリエイティブディレクターを経て、2011年に独立。(株)ファンベースカンパニー創業者/取締役会長。 災害支援団体、患者団体、コーチング団体などの代表を務める傍ら、コミュニティの主宰や花火師などもやりつつ、平日夜は都内某所のバーのカウンターにも立っている。著書に『AIに選ばれ、ファンに愛される』『ファンベース』『ファンベースなひとたち』「明日の広告」『明日のプランニング』など。“さとなお”の名前で『うまひゃひゃさぬきうどん』『沖縄やぎ地獄』『沖縄上手な旅ごはん』『極楽おいしい二泊三日』など。

note株式会社 CXO
深津 貴之さん 

深津 貴之さんプロフィール写真

インタラクションデザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブファームTHE GUILDを設立。現在はnoteのCXOなど、領域を超えた事業アドバイザリーを行う。執筆、講演などでも精力的に活動。

noteプロデューサー/ブロガー
徳力基彦さん

徳力基彦さんプロフィール写真
 

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログとSNSのおかげで人生が救われる。
その際の経験を元に、書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版。noteやSNSを活用したビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている。


Text by 渡邊敏恵 Photo by 林美夢

「note」掲載のオリジナル版はこちらいま企業に求められるコンテンツ戦略とは?【AI時代の企業発信サミット2026 パネルディスカッションレポート】

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