[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

「旅行中も快適に過ごしたい欲望」と「観光DX」を考える

マーケターコラム、今回は村石怜菜氏。旅先のベトナムでの移動方法などで感じたことを紹介します。

みなさん、こんにちは。村石怜菜です。

今回のコラムは、前回の記事「5年ぶりの海外旅行!「観光DX」について気づいたこと」の続きです。前回は旅行前・中・後の旅行のあれこれを一元管理する方法や、観光DXについて私なりの考察を書きました。ベトナムの現地の写真を載せたりしましたが、現地の体験については触れることができなかったので、今回は、現地の体験と、ITで煩わしい体験を低減するちょっとしたコツをお伝えしようと思います。

なお、以下の情報は2023年8月時点で筆者が体験した情報です。時間が経過しているので、現在と異なる点があるかもしれません。その点、ご了承ください。

ハノイではホアンキエム湖の近くのホテルで滞在。朝焼けがきれいでした
ホイアンの福建会館。ハノイからホイアンはタクシーで移動。バイクの交通量が多いのは都市部のみで、ホイアンの道路は穏やかでした

自宅から空港までは、タクシーシャトル「nearMe」を初利用

ベトナム現地での移動についてお話しする前に、初めて利用した日本でのサービスもあるので、触れさせてください! 今回、自宅から空港までも従来の行き方ではなく、タクシーシャトル「nearMe(ニアミー)」というサービスを初めて利用してみました。nearMeは自宅から空港までをドアツードアで移動できるシェアタクシーサービスです。

事前決済&完全予約制で、タクシーに乗るよりも経済的かつ重いスーツケースを引きながらの公共交通機関での移動も不要。ANA、JAL、スターフライヤー、日本旅行などの大手航空会社が提携パートナーとして名を連ねています。利用方法は非常に簡単で、アプリから出発地点と目的地、利用日やフライト番号などを入力し、あとはタクシーに乗るだけ。AIが最適なルートを提案し、その地域のドライバーが運転するという仕組みのようです。

私の場合、貸切状態で、空港定額タクシーの約1/5の価格で移動することができました。nearMeには空港送迎以外にもゴルフシャトルなどの複数のサービスが提供されているようで、「行き先に特化したシェア乗り型タクシー」というビジネスモデルが面白いなと思いました。

ベトナム現地での移動は、もっぱらGrabを利用

さて、ベトナム現地での移動についてです。旅行で不安になるのは、現地での移動ですよね。特に車などの密室での移動や、現地通貨を直感的に理解できないからこそ支払時に戸惑ったり、料金を過剰に請求されたりなど、不安材料はいろいろあります。

私は以前フランスに旅行中、パリでGoogle Mapが示した最短経路が治安の悪い地区を通ることを知らずに観光客が誰もいない道を歩き、ひったくりに狙われるという、とても怖い経験をしました。海外では日本と同じように気軽に歩ける感覚でいてはダメなのだなと思った体験でした。今回は一人旅。しかも英語圏ではないので、市街地ではタクシーを手配するアプリ「Grab(グラブ)」を、空港からホテルまでの長距離移動は「Booking.com(ブッキングドットコム)」を活用してタクシーに乗りまくりました。

ご存知の方も多いと思いますが、Grabは東南アジアで展開しているモビリティプラットフォームで、タクシーからバイクの手配、フードデリバリーまで多彩な交通手段とサービスを提供するアプリです。また、「MoMo(モモ)」というベトナム大手の電子決済サービスとも連動しています。

ハノイのランドマーク「ホアンキエム湖」周辺の様子。私は、もっぱらGrabを利用して移動していました

ハノイやホーチミンという都市部では、バイクの交通量が驚くほど多く、クラクションが四六時中鳴り、横断歩道を渡っていても轢かれそうになったり、逆走する車やバイクがいたりするという状況。スパで接客してくれたスタッフの方が、危ないので反対側の道路まで送ってくれたのですが、現地の方も「怖い」と言っていたのには、少々驚きました。

ハノイのランドマーク「ホアンキエム湖」の近くのカフェから。湖を囲む道路は交通量がすごく横断するのも一苦労でした

公共交通機関ではバスも利用できるそうですが、言語の壁などハードルが高いため、観光客は基本的にタクシーでの移動になります。その時に役に立ったのがGrabでした。Grab以外の配車アプリも存在し、道端にはたくさんの客引きがいるのですが、移動はすべてGrabアプリ経由で配車しました。Grabアプリを開いていると「客引きできる!」と思われるので、スマートフォンを開くときはこそこそと開くのがおすすめです。

Grab以外では、空港からホテルへの移動のときに、Booking.comの提携するタクシー会社を利用したのですが、Grabドライバーの方が丁寧で安全な運転でした。GrabはUberと同様に評価やチップなどのフィードバックを送信することができるので、この機能がサービスの質・信頼性を高めるのに一役買っているようです。

Grabでの支払いはクレジットカードを登録するか、現金で支払うか選択できます。料金も安く、私はレストランやスパの帰り道もほとんどGrabで移動しました。ただ、どうしてもタクシーが捕まらないこともあります。一度だけベトナム版人力車「シクロ」に乗ったのですが、運転手さんが道に迷ってしまって、2人で観光案内所に行って道を教えてもらい、徒歩10分のところにあるホテルまで20分以上かけてたどり着いたことがありました。今になってみれば、それも良い思い出です。

左から、乗車したシクロからの景色、開発中のビーチ沿いの高層ホテルたち、カフェ

豊富な車種と多言語対応が便利なGrab

Grabは利用者のニーズに対応できるように車種が多く、最初は戸惑いますが、慣れればうまく使い分けができそうです。

ベトナムでの一般的なGrabの車種

  • GrabCar : Grabに登録している普通乗用車
  • GrabTaxi : Grabからタクシーが呼べる
  • GrabBike : タクシーのバイク版で、バイクの後部に乗る
  • GrabCar Plus:GrabCarのドライバーのなかでも優良ドライバーが運転する車種

※上記以外にも、車の座席数も選択することが可能でした。

ベトナム在住日本人の方のブログには、「観光客はGrabTaxiがおすすめ」と記載があったので、基本的にGrabTaxiを利用しました。しかし、観光地周辺の夜ともなると、配車しても近距離だからなのか、すぐにキャンセルされ、タクシーが捕まらない状況に。20分ほど路上で客引きから逃げ、途方にくれていると、アプリ上に「GrabCar Plus」というメニューを発見。これは優良ドライバーが運転する車種で、料金は少々割高になるのですが、すぐに迎えに来てくれました。需要を見越して、GrabCar Plusのドライバーは周辺を流して走っているのでしょうか。

また、Grabの多言語対応にはとても助かりました。Grabはアプリ上でドライバーとチャットができるのですが、ベトナム語でメッセージが届いても、翻訳ボタンをクリックすれば英訳してくれます。Grabは東南アジア8カ国で展開されているため、多言語対応は大前提なのでしょう。日本語訳も可能です。ただし、精度は低いので英語で使うことをおすすめします。冒頭で記載した現地移動での不安要素である「言語の壁」や「情報の透明性」をGrabで解決できるとともに、利用履歴がアプリ1つで確認できるので、予算管理も容易でした。

滞在中、Grabのアプリから飲食店のクーポンのオファーが届くこともあり、Grabはリアルユーザーにとって、配達サービスやクーポンの利用といった日常的に接点のあるアプリなのだなと実感できました。

ベトナムのキャッシュレス事情

前述のモバイル決済サービス「MoMo」は、ベトナムの銀行口座と電話番号がないと利用できず、残念ながらQRコード決済の体験は叶いませんでした。意外なことに、ベトナムでは現金主義が根強いことがわかりました。ベトナムはカフェ文化が発達しており、街を少し歩くだけでたくさんのカフェに出会いますが、キャッシュオンリーの店もあり、入店を諦めることもありました。国として電子決済を普及させようという動きはあるようですが、個人商店などでは現金払いが依然として主流のようです。

観光地に限ったことかもしれませんが、スマートフォンで決済を行う人はあまり見かけず、唯一見かけたのはQRコード決済手段「VietQR(ベトQR)」を使用していた人、一人だけでした。調べてみると、VietQRはベトナム国家銀行「中央銀行」が定めた標準規格のようです。

ITを活用して旅を楽しもう

今回は、旅行中の移動にまつわる体験を主にお伝えしましたが、それ以外にも簡単にいくつかIT活用事例をご紹介します。

まず、日本でのパスポートの更新。私はオンライン対象外だったので、申請までに2時間以上もかかりました。次回はオンラインで更新したい所存です。オフラインで更新する場合は、パスポートセンターの混雑状況をWebサイトで確認でき、順番お知らせメールサービスなどもあるので、駆使することをおすすめします。

次に、ネット環境。WiFiを借りたり、SIMカードを購入したりするのではなく、渡航先で利用できるeSIMがおすすめです。日本で購入し、インストールすれば良いので、紛失の心配や注文・受領、差し替えなどの手間も発生しません。

◇◇◇

前回の記事では、 「散り散りに点在している体験をITの力でつなぐこと」「旅行中に起こりうるペインを事前に潰して、起きないようにサービス側から提案してもらうこと」の2点が観光DXにとっては重要ではないかと書きました。今回の後編では、予想されるペインを自分で解決したエピソードに焦点を当て、移動のリスクを避けるために利用したアプリについて実体験を書きました。

本コラムに記載されている内容は、頻繁に海外に行かれる方にとっては当たり前のことかもしれませんが、過去の経験や知識にとらわれず、「どのようにしてストレスなく旅行を楽しむか」というユーザーの視点を大切にし、情報を収集し、素晴らしい経験を追求することは、サービスの提供やマーケティングの計画を考える際にも重要な要素ではないでしょうか。

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