成功するために失敗?『失敗の科学』を読んで学んだ失敗との向き合い方
みなさん、こんにちは。
岐阜でマーケティングの仕事をしている瀬川です。
突然ですが、みなさんは「失敗」という言葉を聞くと、どんな印象を持つでしょうか。おそらくきっと多くの人が、「あまり良くないこと」「避けるべきこと」といったネガティブな印象を思い浮かべることでしょう。実際、私も正直なところ、失敗はあまり好きではありません。
しかし、ある書籍を読んでから、その考え方が変わりました。その書籍が、マシュー・サイド著『失敗の科学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016年)です。この書籍では、さまざまな業界の事例を通して、失敗から学ぶ姿勢の大切さが紹介されています。私も読んでみて、マーケティングの仕事にも通じる学びがありました。
そこで今回の記事では、『失敗の科学』から私が学んだ重要な考え方をご紹介します。
成功事例を真似したらうまくいく?
私がここ最近感じているのは、成功事例への過剰な期待です。
書店へ行くと、成功事例を取り上げた書籍が数多く並んでいます。また、成功のノウハウを提供するようなセミナーは多く、人が集まります。「この施策をしたら、売上が○倍になりました!」といった話は、多くの人の興味を惹くのでしょう。
しかし、はたして成功事例を真似したら、自分たちも同じように成功できるのでしょうか。
私は、難しいのではないかと思います。なぜなら、成功の裏には多くの前提条件があるからです。
成功要因を単純化しすぎるのは危険
成功事例は、たまたまその会社が、自社の置かれている環境で、そのタイミングで、その施策をしたからこそ、うまくいった可能性が高いはず。もし他の会社が、できるかぎり条件を同じにして実行したとしても、成功するとは限らないでしょう。しかし、私たちはそういった複雑な背景を忘れて、その施策だけが成果を出したと感じてしまいやすいのです。
さらに成功事例ばかりにフォーカスしてしまうと、本当かどうかを試してみることを怠ってしまいがちです。『失敗の科学』でも、このように書かれています。
実は我々は知らないうちに、世の中を過度に単純化していることが多い。ついつい「どうせ答えはもうわかっているんだから、わざわざ試す必要もないだろう」と考えてしまうのだ。(p.161)
「○○のセミナーで、△△という施策は意味がないと聞いたので、試す価値はない」と切り捨てるのは簡単です。しかし、本当に意味がないのでしょうか。その業界や商材とはたまたま合わなかっただけで、もしかしたら成果が出るケースがあるかもしれません。
もちろん成功事例から学ぶことは有益です。しかし、成功事例を盲信してしまうのは危険ではないでしょうか。
失敗から学ぶことはもっとも費用対効果が高い
成功事例から学ぶことだけが有意義でないなら、どうしたらよいのでしょうか。それは「失敗から学ぶこと」です。
『失敗の科学』では、失敗についてこのように説明しています。
失敗は、予想を超えて起こる。世界は複雑で、すべてを理解することは不可能に等しい。だから失敗は、「道しるべ」となり我々の意識や行動や戦略をどう更新していけばいいのかを教えてくれる。(p.50)
私たちは失敗をしたときに、つい振り返ることを怠りがちです。失敗した原因を追究するよりも、次のことに取り組んだほうが気持ち的にも楽だからです。しかし、失敗にきちんと向き合い、正しく失敗から学ぶことで、私たちは最短距離で成功というゴールに辿り着けるのです。
「449回失敗した」ユニリーバのスプレーノズルの事例
『失敗の科学』では、失敗から学んだ事例として、ユニリーバを取り上げています。
同社では、かつて粉末洗剤を製造するために重要なスプレーノズルが、目詰まりする問題が起きていました。当初は科学や物理の専門家に依頼しました。専門家らは、詳細な分析をもとに長時間の研究を行い、ようやく1つのデザインを考案しましたが、結果は失敗でした。
そこで同社は、自社の生物学者チームに再度依頼しました。生物学者チームは、目詰まりするノズルに小さな修正を加えたものを10パターン用意し、どのように失敗するかを観察しました。その中で少しでも改善が見られたパターンをベースにさらに10パターンつくり、最終的には449回の失敗を経て、ノズルの課題を解決したそうです。
ここでの学びは、ともかく失敗をしながら試行錯誤したことで、優れた結果を残すことができたことです。生物学者チームは、決して物理の専門家ではありませんでした。しかし、あえて失敗し学ぶ中で、誰も知らない答えを見つけ出したのです。
100回ブログ記事をリライトした結果
私もかつて同じような経験をしました。当時、ブログを運営していた私は、とある商材を紹介する記事を書いていたのですが、月に数件しかコンバージョンがありませんでした。
そこで成果アップのために、ありとあらゆる施策を試してみました。記事の中にあるコンテンツの順番を入れ替えてみたり、自分で撮影した画像を増やしてみたり、漫画家さんにお願いして4コマ漫画を入れてみたり。あるときは想定した結果が出ず、元に戻すこともありました。
最終的には100回近いリライトをしたところ、なんとコンバージョン数は当初の100倍ほどに増加したのです。まさに失敗を繰り返したからこそ得られた知見でした。
デジタルマーケティングの良さは、小さな失敗をしやすいところ
デジタルマーケティングの良さは、間違いなく低リスクで何度でも失敗できることです。
たとえば、マス広告では出稿するためにかなりの額の予算が必要なので、効果検証するのにも多額のコストと時間がかかります。その点、Web広告では数万円から試してみて、数日で効果検証までできてしまいます。
だからこそ、あまり議論に時間をかけすぎず、まずやってみることが重要です。以前に聞いた話だと、とある会社では「最初に出すメルマガのタイトルを何にするか、2ヶ月かけて議論した」そうです。決して議論することが無駄とは思いませんが、その時間があれば、まずは何本か出して反応を見てはどうでしょうか。
メルマガ配信ツールの中には、ABテストを実施できる機能を持つものがあります。実際に、複数パターンをつくってABテストをしてみれば、どういった文言や表現のほうが反応がよいか、数値として見られます。そういった小さな学びを積み重ねていけば、確実に成果を上げられるようになるはずです。
失敗を良しとする企業文化をつくる
ここまで失敗から学ぶ重要性を紹介してきましたが、実際問題として「失敗できる環境」がなければ、成果を出すことは難しいでしょう。
『失敗の科学』は、このように述べています。
何かミスが起こったときに、「担当者の不注意だ!」「怠慢だ!」と真っ先に非難が始まる環境では、誰でも失敗を隠したくなる。しかし、もし「失敗は学習のチャンス」ととらえる組織文化が根付いていれば、非難よりもまず、何が起こったのかを詳しく調査しようという意識が働くだろう。(p.244)
実際、MicrosoftやGoogleといった企業ですら、マーケティング施策の成功確率はよくて20~30%程度だそうです。逆を言えば、施策の70~80%は失敗ということです。もし失敗を許容しないような環境であれば、打ち手は相当限られて、インパクトもとても小さくなってしまうはず。
だからこそチャレンジと失敗を奨励し、きちんと失敗から学ぶ企業文化をつくることが、成果を出す上で重要ではないかと思います。
おわりに
今回の記事では、『失敗の科学』を引きながら、失敗から学ぶ大切さをご紹介しました。マーケティングにおいて、成功の方程式はありません。成果を上げるためには、ともかく失敗しながら学び続けるのみです。この書籍を通して、改めて失敗から学ぶマインドを忘れないようにしようと思ったのでした。
なお『失敗の科学』には他にも多くの事例が掲載されています。私自身とても勉強になったので、失敗の活かし方についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひお読みください。
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