引いたくじを戻さない場合の確率計算は? 2回引いて同じになる割合とは
5種類×4個のドーナツ、チョコ味を2個食べたい!
今日の発表会お疲れさまー。ドーナツの差し入れでーす。今、部内に何人いる?
(やったああ! ドーナツ大好き! チョコドーナツ食べたいな!)ありがとうございます〜!! 先輩を含めて10人です!
5種類を4個ずつ買ってきたから、1人2個ずつだね。アユムさんの好きなチョコドーナツも入ってるよ。
今日、いつもよりがんばったので、自分へのご褒美として、先にチョコドーナツを2個、もらってもいいですか?(ワクワク)
いや、ドーナツの選択は公平にしよう。くじ引きをつくったよ。
え~。くじで決めるんですか…。あ、前回学んだ確率の求め方から計算すると、2個ともチョコドーナツをもらえる確率は4%ですね! エッヘン。
違うよ。アユムさんが2個チョコドーナツを選択できる確率は、 3 95 だよ。
なんで?(4%じゃないの? さらに、なんか、いかつい分数でいわれた…)
4%より低い3%強だね。では、がんばってるアユムさんに、先に2回、くじを引く権利をあげるね。
(ちょっと確率が気になりすぎて、くじを引けない…)
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。
その確率、どういう計算になるの???
そこに登場したのは、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているモリさん。
この記事を読むべき人:確率の意味を理解していない方
この記事を読む必要がない人:確率をすぐに算出できる方
この記事でわかること:引いたくじを戻さない場合の確率の求め方
2個ともチョコドーナツをもらえる確率は?
モリさーん! 20個のうち、2個のチョコドーナツが当たる確率がよくわかりません!!
ちょっと何を言っているかよくわからないです。
5種類4個ずつ20個のドーナツがあります。そのうち、4個がチョコドーナツです。くじを引いて、公平にドーナツを分けるのですが、最初に2回連続で引いたとき、どちらもチョコドーナツになる確率を求めたいです!
確率は ことがらが起こる場合の数 すべての場合の数 で求まりますよね。
となると、積の法則を利用して、
4 20 × 4 20 = 1 25 = 4% じゃないんですか?!
答えは違いますが、確率の考え方は身についてきているようですね。
えー、違うんですか。先輩からは、なんかいかつい分数で確率をいわれたんです。
(いかつい分数!?)
どういう計算なんですかね?
前回、確率は分数で考えたほうがいいという話をしましたね。
はい、でも、前回は分数を書くのが面倒だったから、小数で書いたんですよね?
(はっ、思っていても言わなかったことを!!)
今回の確率は、前回の確率の求め方と何が違うんですか?
1回くじを引くと「すべての場合の数」がかわる
前回のデジタルくじは、常に一定の確率で当たるように調整できます。今回のドーナツの場合との違いは何ですか。
う~ん、あ、最初にもらったドーナツを持って行ってしまうから、一定の「すべての場合の数」じゃないということですか?
そうです、その通りです。この引き方を「非復元抽出」といいます。
(火吹くゲンさんによる抽出?)
まあ、言葉は覚えなくてもいいですが、戻さないということだけを意識してください。
最初にくじを引くアユムさんが、2個ともチョコドーナツをゲットするケースを考えましょう。1回目のくじ引きで、アユムさんがチョコドーナツをもらう確率は?
ことがらが起こる場合の数 すべての場合の数 = 4 20 = 1 5 です。
アユムさんが1個目のチョコドーナツをゲットした後、ドーナツの数は全部でいくつですか?
19個ですね。
チョコドーナツの数は?
1個もらったから3個ですね。
ということは、2個目にチョコドーナツをもらう確率は?
あ、 3 19 ですね。
ゴホン、ゴホン…とすると?
連続しているので、積(せき)の法則ですね!
だから 4 20 × 3 19 = 3 95 いかつい分数になりました!
なるほど~! 2個目にドーナツをもらうときに、すべての場合の数が変わるだけでなく、チョコドーナツの数も変わるので、 4 20 ではなくなるんですね! 納得しました!
2回目にチョコドーナツ以外が当たる確率は?
それでは、次の問題です。アユムさんは、1回目のくじでチョコドーナツを当てました! このとき、2回目にチョコドーナツ以外が当たる確率は?
全体の数は、19個。チョコドーナツ以外は、16個。
つまり、 16 19 ですね。
となると、1回目にチョコドーナツが当たって、2回目にチョコドーナツ以外が当たる確率は?
4 20 × 16 19 = 16 95
さらに、1回目にチョコドーナツが当たって、2回目にクリームドーナツが当たる確率は?
2回目は全体の数が19、クリームドーナツは4個だから
4 20 × 4 19 = 4 95 ?
はい、その通りです。 分数で考えると、すべての場合の数を分母に、起こることがらの数を分子に入れるだけでOKです! 小数で計算するよりも、確率を求めるほうが楽になりますね。
なるほど、だから、分数で考えるのが便利といっていたんですね!
1個だけチョコドーナツが当たる確率は?
このまま続けましょう。先ほど求めた、1回目のくじで当たったのがチョコドーナツで、2回目がそれ以外のドーナツのとき、確率は 16 95 でしたね。
この話の流れだと、1個だけチョコドーナツが当たる確率を求めよ、ですか?
すばらしいですね。求めましょう。
求めよ、さらば与えられん、ということで1回目にチョコ、2回目にそれ以外が当たる確率は
4 20 × 16 19 = 16 95
1回目にチョコ以外、2回目にチョコが当たる確率は?
16 20 × 4 19 = 16 95
よって、和の法則を利用して、 16 95 + 16 95 = 32 95 ですね!
少なくとも1個はチョコドーナツが当たる確率は?
次は、「少なくとも」です。
考え方は前回と同じですよね。「全体の事象の数」から「起こらない事象」を引いて求める方法でしたよね?
その通りです! 余事象です。私が大好きなアジアゾウではありません。
(モリさん、ゾウさんアイコンになりたいのでこの話題をしているのでは……)
ゾウです。よくわかりましたね。
(心を読まれた!?)
それはおいておいて、少なくとも1個はチョコドーナツということは、1個、または2個、ですよね。
せっかくここまでで、2個ともチョコドーナツ、1個だけチョコドーナツの確率を出しているので、和の法則を利用して、求めますか。
はい、2個ともチョコドーナツが当たる確率は 3 95 、 1個だけチョコドーナツが当たる確率は 32 95 なので、それを足して 35 95 、約分して 7 19 ですね。
これを、余事象で求めてみましょうか。
はい。「少なくとも1個はもらえる」の余事象は、「2個ともチョコドーナツではない」なので、1回目は、全部で20個のドーナツのうち、16個がチョコ以外、2回目は、ドーナツの数は19個になって、チョコドーナツ以外のドーナツの数は……。
そう、1個減っていますね。
ですよね、15個ですね。
つまり 16 20 × 15 19 = 12 19 これを1から引くと…、
1- 12 19 = 7 19 先ほど求めた答えと同じになりました!
ゾーウ! 「余事象」「和の法則」「積の法則」を忘れてしまったら、前々回も復習してみてくださいね。
元に戻す「復元抽出」と戻さない「非復元抽出」
今回のドーナツのくじ引きのように、取り出したくじを元に戻さず続行するくじ引きのようなケースを「非復元抽出」といいます。
分母の「すべての場合の数」を変える方法ですか?
はい。数学の問題だと「同時に」などという文言があるときも、非復元抽出です。「赤玉4個、白玉6個が入っている袋から同時に2個とりだすとき、2個とも白玉である確率を求めなさい」とかですね。
あー! 高校のときに、「同時に」って出てきたのを思い出しました! 同時という言葉に、イマイチ納得できなかったような。
はい、これは、「同時に」という言葉が、同じタイミングで袋から取り出しているので、袋の中に戻していない、さらに、スローモーションで見たら、同時とはいえ、順番があると考えて、非復元抽出なんです。
なるほど。同時にということで、戻していないのがポイントなんですね。
一方、元に戻す方法を「復元抽出」とよびます。
非にあらず、なんですね。
取り出したものを戻します。
前回の記事のデジタルくじや、サイコロを転がすのも、復元抽出に当たるんですね。
その通りです。基本的な確率を求めるときに、復元抽出なのか、非復元抽出なのかを意識することが大切です。
毎回、事柄が起こる場合の数とすべての場合の数を気にして、分数の形にすればいいんですよね。
はい、これからの時代、ビジネスに確率は欠かせないといわれています。確率の基本的な考え方をしっかり身につけておきましょうね。
ポイント
- 確率は、 ことがらが起こる場合の数 すべての場合の数 で求める
- 非復元抽出とは、引いたもの(起きたこと)をもとに戻さないこと
- 連続している(同時に起こる)ときは、積の法則を利用する
- パターンに分けて考えるときは、和の法則を利用する
- 特定の事象が起こらないことを考えるときは、余事象
今日の問題をおさらい
Q1.5種類×4個のドーナツくじ。最初に2回くじを引いて、どちらもチョコドーナツの確率は?
4 20 × 3 19 = 3 95
答え: 3 95
Q2.1回目にチョコドーナツが当たって、2回目にチョコドーナツ以外が当たる確率は?
4 20 × 16 19 = 16 95
答え: 16 95
Q3.1回目にチョコドーナツが当たって、2回目にクリームドーナツが当たる確率は?
4 20 × 4 19 = 4 95
答え: 4 95
Q4.1個だけチョコドーナツが当たる確率は?
1個だけチョコドーナツが当たる確率は?
4 20 × 16 19 = 16 95
1回目にチョコ以外、2回目にチョコが当たる確率は
16 20 × 4 19 = 16 95
よって、和の法則を利用して
16 95 × 16 95 = 32 95
答え: 32 95
Q5.少なくとも1個、チョコドーナツが当たる確率は?
2個ともチョコドーナツは 3 95
1個だけチョコドーナツは 32 95
3 95 + 32 95 = 35 95 、約分して 7 19
答え: 7 19
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