note #等身大の企業広報レポート

最近、話題の「オープン社内報」って何? どんな利点があるの? ――SmartHRとエン・ジャパンに聞いた

企業が情報発信するツールはさまざまありますが、なかでも最近「オープン社内報」の取り組みが注目されています。今回はSmartHRとエン・ジャパンで広報を担当する二人に話を聞きました。

 コーポレートサイトやSNS、オウンドメディアなど、企業が情報発信するツールはさまざまありますが、なかでも最近「オープン社内報」の取り組みが注目されています。

「オープン社内報」とは、noteなどを活用して、これまで社内だけで共有していた「社内報」を、社外にも公開し、企業の情報発信ツールとして活用する取り組みです。

今回の「等身大の企業広報」では、いち早く「オープン社内報」に取り組んでいるSmartHRのたけべ ともこさんと、YouTubeを使った「オープン社内報」で話題の、「しみねー」ことエン・ジャパンの清水朋之さんをお招きしました。

「オープン社内報」を始めるにあたって試行錯誤したこと、どのように運用しているかなど、具体的な取り組みを参考にしていただければ幸いです。

noteの許諾を得て、Web担で掲載しています。オリジナル記事はこちら →https://note.com/notemag_business/n/n7e33449c39a4

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▼イベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。

「Z世代」が入ってくると、社内報も変わらなければならない

――「オープン社内報」というキーワードはSmartHRさんが最初に使い始めたそうですね。

たけべさん 確証はないのですが、おそらくそうだと思います。「オープン社内報」という名前はエンジニアが思いついたワードなんですが、本当に社内報をそのままnote上に公開しています。運用を始めて4年目、記事数は100本を超えています。

SmartHR たけべさん
株式会社SmartHR 広報 
たけべ ともこさん

あと、社員個人がnoteに書いた記事もたくさんあるのですが、それをもっと読んでいただけるように、SmartHRのアカウントで作成したnoteマガジンにまとめています。

 

―—その先輩に当たるのがエン・ジャパンさんの取り組みだそうですね。

清水さん そうですね。エン・ジャパンのweb社内報「ensoku!」がスタートしたのは2015年で、当初からオープンにしています。毎日更新で、いまでは記事数が2400本以上になりました。記事を書いて公開する権限を持っている社員ライターも百数十名います。

エン・ジャパン株式会社 清水朋之さん
エン・ジャパン株式会社 ブランド企画室 広報
清水 朋之さん

2019年11月からは、YouTubeチャンネル「しみねーのWelcomeエン・ジャパン」も運営しています。「社員のサプリになる社内報」というコンセプトで、より社員にフォーカスした内容になっています。

ほか、社長のメッセージを発信する「スズタイムズ」、noteを活用した開発部門のメディア「DIGIPORO DAYS」もあります。

 

――「オープン社内報」を始められたきっかけや経緯はどのようなものだったんでしょうか?

たけべさん 弊社の社員がもうすぐ100人を超えるよね、というタイミングで、社内報みたいなものが必要なんじゃないかという話になりました。それでオープン社内報が始まったのが2019年3月。その時点で私は入社前だったのですが、「オープン社内報」が始まったのを見て、「なにこのいいアイデア、わたしがやりたい」と思って、入社後すぐ記事を書いて持ち込みました。

SmartHRオープン社内報
 

清水さん 弊社がYouTubeを始めたのは、社員の層の変化に対応するためという面が大きかったです。いわゆるZ世代の社員が入ってくるので、社内報のありかた、社内コミュニケーションのツールも変わっていかなければならないのかなと。

それに適したツールとして、YouTubeだったら多くの社員が見ているだろうと。その流れで、私がやることになりました。

しみねーのWelcom!エン・ジャパン
 

――YouTubeをやるために入社されたわけじゃないんですね(笑)
清水さん 違います(笑)。

「せっかく社内報を作っているんだから、友達にも見せたいよね」

――しかし、社内報を社外にも公開するとなると、情報漏洩といったリスクを懸念する人も多い気がします。社内で抵抗もあったんじゃないでしょうか?

清水さん 弊社の場合、オープン社内報をはじめた理由が、そもそも「せっかく社内報を作っているんだから、親とか友達にももっと見せたいよね」というものだったんです。だから抵抗とかはほとんどありませんでした。エン・ジャパンの社風なのか、記事の作成を嫌がられることもほとんどありませんし、顔出しも、むしろ喜んでもらえることが多いです。

たけべさん 弊社も元々情報をオープンにするカルチャーが強いため、「公開してもよい情報だけ選ぶ」よりも「個人情報など、公開NGな情報だけ載せない」という、オープンを前提にした考え方です。

あと、「オープン社内報」を読んでから入社されるケースが多いので、新入社員も最初から「社内報はオープンにするのが当然」という雰囲気を感じていると思います。

 

――実際に公開してみて手応えのあった記事はありますか?

たけべさん 特に手応えがあったのは「バレンタインデーのカンパ禁止」の記事です。弊社の場合、個人的な贈り物はもちろんOKなんですが、チームでお金を集めたりするのは禁止してるんですね。強制力が発生してしまうので。

そのルールを記事にして2年前に公開したのですが、いま入社した方も同じ記事を読むことができるので、社内の情報共有に役立っています。

また、社外からも大きな反響がありました。SNSで拡散されたことで、他の会社の方からも「自分の会社で検討する上で参考になった」という声をいただきました。

清水さん 人気企画というと、「ensoku!」上でやっている「7RULES」があります。3カ月に1回のキックオフイベントで、その四半期に活躍した社員に社長賞を授与しているんですけど、その社員に仕事で大切にしていることを7つ質問しています。

作りこみすぎないことで、ハードルを下げる

――「オープン社内報」を始めたことで、具体的なメリットはあったのでしょうか?

清水さん 採用活動にはメリットがあったと思います。面接の際に、記事のことが話題に出ることが多いです。特に中途採用の場合、入社前に同じ部署の人がどういう風に働いているかが分かるので、会社のカルチャーを理解した上で入社していただけて、マッチングの問題が起こりにくくなっています。

たけべさん コロナ禍で新入社員の受け入れが難しいという問題があると思うのですが、SmartHRではどのように対応しているかを記事にして公開したところ、この記事だけで、取材依頼が3件来たりと、大きな反響がありました。

モデレーター徳力基彦さん
モデレーター /noteプロデューサー 徳力基彦さん

――記事を毎日更新するのって大変だと思うのですが、ネタ集めはどうやっているんですか?

清水さん それこそコロナ前は社内あちこち練り歩いて探していました。ただ、作りこみすぎないことが大事だなと思っています。ランチの様子を紹介したりとか、ネタを探すというよりは、普段の様子をネタに仕立てています。

「え、こんなのを紹介してくれるんですか?」と逆に喜んでもらえたり。そうなってくると、社員からネタを持ってきてくれるようになります。

たけべさん 同じように、社内報に載せられるネタがあるのに、載せないのはもったない、くらいの勢いで社員のほうからネタを持ってきてくれます。

社外からの反響があるほうが、書く側のモチベーションアップになります。採用候補者の方から、「オープン社内報読みましたよ」と言ってもらえることも、みんなで社内報を作っていこうという雰囲気づくりに役立っている気がします。

 

――オープンにする情報の選別はどうやって決めているんですか? 社内報をオープンにすると、「社外に顔出しをしたくない」という人もいると思うんですが。

たけべさん 弊社の場合は、顔出しをしたくない人は、無理に顔を出さなくてもいいということにしています。そういう個人の希望に合わせた選択肢を用意しておくことで、参加するハードルを下げるのは一つの手だと思います。

清水さん 会社を背負って、みたいな話になると負担が大きくなるので、もっと気楽に出て、気楽に読めるものにしたいんですよね。

広報がつくった見せ方より、「本人の言葉」を大事に

――「オープン社内報」に出演した社員が退職した時はどうしているんですか?

たけべさん 特に該当記事を削除するといった対応はしていません。社員に出演承諾書なども書いてもらっていません。ただ、弊社の場合、いまのところ退職者が少ない状態ですので、今後は作成プロセスを見直すタイミングが出てくるかもしれません。

清水さん 弊社も出演承諾書はないのですが、勝手に載せているわけではなく、そのつど社員の同意をもらって進めています。出演者が退職した場合は、人事と連携して、その記事は非公開にしています。集合写真の一部に退職者が映り込んでいた、という場合でも、広報で判断して必要なら落としています。できるだけ丁寧に対応していますので、いままでトラブルになったことはありません。

 

――誰に記事を書いてもらうかの選定はどうやっていますか?

たけべさん そのテーマに一番ふさわしい社員にお声がけするようにしています。Slackで依頼することが多いのですが、メンションを飛ばしてみると、「そのテーマなら〇〇さんのほうが適任」と言われて、別の方に依頼し直すこともあります。

社内では「オープン社内報」に、ポジティブなイメージがあるので、社内報の執筆依頼も快く受け止めてもらえることが多いです。

清水さん 「オープン社内報」を実施する意味って、社外のレピュテーション(評価)を獲得することだと思います。なので、誰に執筆を依頼するかは、多くのレピュテーションを獲得できるのは誰かによると思います。広報がイベントレポートのようなかたちで書いたほうがいい場合もあれば、イベントの主催者である社員が自分で執筆したほうがいい場合もある。傾向でいうと、やっぱり当事者が書いたほうがシェアされやすい気はします。

たけべさん 記事を公開するときには、必ず記事を書いた本人に社内にシェアしてもらうようにしています。以前は社内報の編集長として、私自身でシェアしていたんですが、そういう紹介って、自分ごとになりづらいというか、いかにも広報からのアナウンスっていう雰囲気になりがちなんです。やっぱり本人がこういう意図で書きましたとシェアしてくれるほうが響くと思います。

 

――ほか、「オープン社内報」を実施するうえで、気を付けるべきことはありますか?

清水さん 「オープン社内報」で何を伝えたいのかを考えるところから始めるといいと思います。私の場合は、エン・ジャパンの人が好きなので、それを社外の人にも知ってもらいたいっていう気持ちが、モチベーションになると思います。

弊社はおそらく、もともと「オープン社内報」と相性がいい社風だったのかと思います。なので、文化が違う会社や、業種によっては、広報のやり方も変わってくるのかなと。どんな会社でも必ず「オープン社内報」にしなければならない、ということはないと思います。

たけべさん 社内で自分を知ってもらうというのも大事だと思います。なんとなくこの人が社内報の担当だなとか、ネタがあればあの人に伝えれば社内報に載る、と思ってもらえるようになるのが大事だと思います。

あと、記事の「数」を追わないようにしています。社員にとってメリットのある記事しか載せない。「数」を追って「質」を落とすことがないように気をつけています。

 

――なるほど。これを伝えたい、これが社員にとってのメリット、というものをはっきりさせておくことが大事なんですね。今日は非常にいいお話をありがとうございました!

登壇者プロフィール

たけべ ともこさん
株式会社SmartHR 広報

接客・イベント運営・人事・ライターを経て、2016年にPR会社勤務。

同年、クラウドファンディングで「お見合い相手を募集するプロジェクト」を実施。プロジェクトをきっかけに株式会社CAMPFIREに広報として入社。2019年5月に株式会社SmartHRに入社し、広報を担当。同年12月より同社で「オープン社内報」の編集長を兼任。

清水 朋之さん
エン・ジャパン株式会社 ブランド企画室 広報

2014年に新卒でエン・ジャパンに入社。企業の中途採用支援を4年間行ない、2018年に広報へ異動。現在は自社の各サービスのPRのほか、採用広報、Web社内報「ensoku!」の編集・執筆を行なう。2019年に新たな社内報としてYouTubeチャンネル「しみねーのWelcomeエン・ジャパン」を立ち上げ。メインMCを担当している。

text by 名古屋 剛

 
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