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2021年、「アドバンストクリエーティブ」はどう進化するか?【電通デジタルコラム】

データ/AIと融合した“アドバンストクリエーティブ”実現を目指すACRCセンター長の佐久間崇氏に、これからのクリエーティブを聞いた。
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2021年、アドバンストクリエーティブはどう進化するのか?

※所属・役職は取材当時のものです。

データ/AI(人工知能)とクリエーティビティの融合した「アドバンストクリエーティブ」の実現を目指し、2017年、電通デジタルに発足したクリエーティブ組織「アドバンストクリエーティブセンター」(以下、ACRC)。

ACRCではこれまでに、AIを使って広告バナーを自動生成するツール「ADVANCED CREATIVE MAKER®」、大量に作られたバナーから広告効果の高いものをAIが選んでくれる「AIアートディレクター」、広告クリエーティブ測定ツール「MONALISA」、ツイート情報に気象データを掛け合わせることでムーブメントをタイムリーに捉え、SNSへのデジタル広告の出稿量を制御するソリューション「Multi Impact Switcher™」など、データやAIを活用したさまざまな先進的な取り組みを手掛けてきました。

「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020 登壇者に聞く(全4回)」の第2回となる本稿では、ACRCセンター長の佐久間崇に、アドバンストクリエーティブを含め、これからのクリエーティブはどのようにあるべきか、ACRCの展望などについて聞きました。

アドバンストクリエーティブのコアは「&(アンド)」

――「アドバンストクリエーティブ」という言葉を、佐久間さんはどう捉えていますか?

佐久間その言葉を聞いて、最初に思い浮かべたのは、「&(アンド)」という概念でした。

昔、「クリエーティブにおいて、『おもしろい』と『正しい』は、どっちが大事か?」という議論がありました。「おもしろい」とは、論理的なことはよくわからないけど、なんか嬉しいとか、笑えるとか、好ましい感情が起こること。「正しい」とは、データ的に正しかったり、論理的に正しかったりすることです。

ちょっと乱暴に言ってしまえば、前者はマスCM、後者はデータマーケティングやデジタルマーケティングで追求されてきました。

しかしこれからは、マス領域、デジタル、リアルイベントを分け隔てなく縦横無尽に活用していくことによって、「正しい or おもしろい」ではなくて、「正しい & おもしろい」を実現していくことが求められます。それを実現するのが、「&(アンド)」という概念にもとづいた「アドバンスト」なクリエーティブです。

ACRCは、もともとインターネット広告専業代理店でデジタルマーケティング、デジタルクリエーティブをやっていたメンバーを中心に構成されており、獲得ターゲットを絞り込み、そこに対してどう効率よく効果を上げていくかというノウハウがすでに豊富にありました。そこに電通から、アイデアで世の中や人を引きつけて、ブランドに結びつけることに長けたクリエーティブディレクターやコピーライター、プランナーが加わる形でスタートしました。

私がACRCのセンター長に就いたときに、その2つをうまく融合させていくこと、つまりは「おもしろいと正しいの掛け算」が、チャレンジだと思っていたので、この1年(2020年)は融合を促進させながら、お互いに意見を言い合い、アイデアを高め合えるような組織作りに取り組んできました。

佐久間 崇(電通デジタル)

AIはおもしろいクリエーティブを作れるか?

――「おもしろい」クリエーティブを作るということに関して、佐久間さんとしてはAI/機械学習が役に立ちそう、という感覚はありますか?

佐久間日常的なものとか、すでに存在しているものをどう売るかという領域においては、AIがパターンに沿ってクリエーティブを作ることで、やっていける部分は多分にあると思います。また人間が思ってもみなかったような組み合わせや文脈をつくりだす、という意味ではAIの方が優れている部分もあると思います。

ただ、最近は「何を言うか」よりも、「誰が」どんな「ストーリー」を持ってやっているか、ということが重視される流れにあると思います。「AIが作りました/やっています」ということで、果たしてブランドの思想や想いを伝えきれるかどうかは、疑問です。

世の中に新しい価値のあるものを生み出していくとか、こういうものが人類や社会に必要だと伝える言葉は、人の体験に基づく思想から出てくるものです。「誰が」「どんな思いで」「なぜ」が伝わるクリエーティブは、今のところ人間にしか生み出せないと思います。

――「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」では、「クリエーティブアイデアが人々に受け入れられるかどうかを評価するうえで、私が大事にしているのは『ハッとして、グッとくる』かどうか」とおっしゃっていました[1]。よいクリエーティブには共感性が大事ということでしょうか?

佐久間そう思います。新しさであったり、驚きであったり、ときめきであったりというような、理屈じゃなくて、体や心が反応するものって、いっぱいあると思うんです。

インパクトの強いもの、ニュース性の高いものといった新規性があるものは、広告において大事な要素ですが、それを使って驚かせておしまいではなくて、最終的に自分の中で腑に落ちる感覚だったり、いいな、好きだなといった、理解や納得といった感情を同時に想起させることが大事。それが、ブランドとのエンゲージメントを作るために必要だと思っています。またそうやって共感してくれた人が媒介となって広めてくれる。その拡散が現代でもっともパワフルな広告になります。

「なんでこんなことをやっているんだろう?」から「だからこういうことをやっているんだ!」へと転換できるクリエーティブが、よいクリエーティブだということです。誰もやっていない新しいことなんだけど、どこかに人間の普遍性のようなものがある、そういったものが求められるのではないでしょうか。

インパクト重視が加速する状況をどう思うか

――生活者が大量のデータ/情報を日常的に摂取する中で、クリエーティブに目をとめてもらうためには、どんどん「ハッとする」ことを尖らせないといけないような状況になっています。佐久間さんは、現在の状況をどのように感じていますか?

佐久間刺激の強さを求められているような、そういった傾向は確かに感じますね。今は、主だったキャンペーンは、プレキャン(プレミアムキャンペーン)か、IP(知的財産)と言われるキャラクターを使ったコンテンツものが主流。すでに好意度が高いものと親和性があるものを起点にしてどうやるか、といったクリエーティブが求められることも多くなっています。

――それはクリエーティブディレクターからすると、ちょっとおもしろくない状況でしょうか?

佐久間そうともかぎりませんが、どうしたらいいんだろう、というのが正直なところです。それに抗うよりは、IP自体を一つのメディアと捉えて、その中でどうおもしろくしていくか、ファンはなぜそれを楽しんでいるんだろうというところまで、深く探っていくことが大事なのかもしれません。そういう発想の方が、前向きですし。

もちろん、最新のトレンドはきちんと理解するように頑張っていますけど、まぁ大変です。だからこの業界には必ず若い人の力や多様性が必要です。

クライアントに納得してもらうためには

――ブランドの若いファンをターゲットにしたクリエーティブが、クライアントの担当者からなかなか理解を得られないこともあるかと思います。

佐久間大事なのは、その表現の必然性をどのように説明するかです。「なぜこの表現がこのブランドにとって良いことなのか」ということを、きちんと説明する必要があります。

そこを適切に言語化できないまま、「世間ではこれがウケているので」という形で説得しようとすると、「何万人が知っているのか」「数字はどれぐらい持っているのか」といったリーチの話になってしまう。そうではなく、「こういうストーリーがあって、ファンはここに共感していて、ここのポイントを突いていきましょう」と、適切に説明ができれば、クライアントもきちんと納得できる普遍性を獲得できると思うんです。

――ACRCとして、そういった提案をするときに、クライアントに納得してもらうために工夫していることなどはありますか?

佐久間仕組みとしてはまだこれからなのですが、Twitter、Facebook、Instagram、Google、YouTubeなど、プラットフォーム別にラボを立ち上げて、それぞれの技術や楽しみ方、日々のニュースなどをスタディしていくチームがあります。そこで得た最新トレンドや、Tipsをメンバー内で共有して、プレゼンテーションの中に織り込めるような仕組みを作ろうとしています。

InstagramとTwitterとYouTubeとでは、ユーザーが求めるコンテンツも体験も違います。Instagramの投稿でも、フィードとストーリーズではまたちょっと違う。それぞれを使うときの気持ちは微妙に違うので、そこに親和性のあるコミュニケーションを行うためにも、どうすべきかということは、よく考えています。

ACRCはこの先どう進もうとしているのか?

――佐久間さんは2020年いっぱいでACRCのセンター長を退任されます。ACRCには今後、どのような課題や仕事に取り組んでいってほしいとお考えですか?

佐久間2020年に重点的に取り組んだことの一つに、クライアントのサービス開発があります。サービスの認知を広めるにあたって、どういう思いを込めているのかということを、最終的なクリエーティブだけで表現しても伝わらない。その企業がなぜ存在して、何をやって、どんなことを実現したいのか、というところから一緒に考えて、形にしていくことが、これから大事にはなっていくと思っています。

そのためにも、クライアントと一緒にサービスを作っていくとか、一緒にブランドを考えていくところから関わっていけるような仕事を増やしていかなくてはいけないと思います。

――いわゆる、ブランドパーパスを考えるという仕事ですね。

佐久間そうですね。ブランドパーパスを考える仕事は、最近増えています。そういう案件は、電通デジタル内では、基本的にはビジネストランスフォーメーション部門が主導してやっていきますが、今、いくつかの案件では彼らと組んでコンサルティングしていく中で、パーパス策定の言語化作業にアイデアを提供したりしています。

もう一つは、大きな野望でもあるのですが、ACRCにはさらにマーケティングそのものから考えることができる組織になってほしいと思っています。

認知してもらい、理解を推進して、買ってもらう、という購買ファネルはマーケティングの基本ですが、「でも、人間の購買行動ってそれだけじゃないよね?」とも思うんですよね。実際は、知ると同時に買うこともあるだろうし、2年前に欲しかったものを思い出して買うこともあるでしょう。本質的な「人間の気持ち」をどう捉えて、動かしていくかを考えることがクリエーティブにとって大事だと思います。

モデル化できるかどうかは別として、体験の作り方や、コミュニケーションの作り方は、ファネルに囚われすぎずに、都度都度、新しいやり方を作り出していく方がいいと思うんです。一つひとつの成功事例が後からモデルとして蓄積されていく。そこを突き詰めていくのが、ACRCの進むべき道なんじゃないかと思っています。

――セレンディピティのような偶然性、偶発性を考慮しながら、購買体験を設計していくということでしょうか。

佐久間偶然のような必然をつくるというか。必要だと感じたり、欲しいと思わせるブランド体験を丁寧に編んでいくのは、時間も手間もかかるし、大変です。しかしその一方で、これからはなんでも型にはめるのではなく、そのブランドならではの体験をつくりだすクリエーティブが求められているのは確かです。

電通グループと言えば、大掛かりな案件ばかりやっているイメージがあるかと思いますが、そればかりでもないということを知ってもらいたい。「デジタルがきっかけで売れたよね」と言われるようなクリエーティブを一つでも多く手掛けてもらいたいと思っています。

脚注

出典

「電通デジタル トピックス」掲載のオリジナル版はこちら2021年、アドバンストクリエーティブはどう進化するのか?

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