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CROの注力ポイント(2):データから顧客の「行動ペルソナ」を作る【CROの基礎知識・第3回】

ターゲットユーザー像を明確にするために行う分析方法「行動ペルソナ」について紹介。
CROの注力ポイント(2):データから顧客の「行動ペルソナ」を作る

※所属・役職は記事公開当時のものです。

CRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)の基礎知識を解説する連載の第3回。電通デジタルのCROグループでは、どのようにしてターゲットユーザーを可視化しているのか、一部ご紹介します。

ターゲットユーザー像は「行動ペルソナ」で作る

Webサイトに訪れるユーザーは、何かしら解決したい課題を抱えています。そのため、コンバージョン率(CVR)を増加させるには、ターゲットユーザーを可視化して理解し、行動を線で捉えることが重要です。

電通デジタル CROグループでは、分析のアプローチとして、さまざまな角度から多様なデータを駆使し、課題を定量的な側面から判断します。本稿では、そのさまざまなアプローチの中の1つで、ターゲットユーザー像を明確にするために行う分析方法である「行動ペルソナ」について紹介します。

行動ペルソナとは、デモグラフィックデータに基づく属性(年齢、性別、職業、年収、家族構成、居住地域など)だけでなく、行動によって定義されるペルソナ(架空のターゲットユーザー像)のことです。Webサイトに来訪したユーザーのアクセスログを解析し、特徴を抽出、類型化して作成します。

「自分の知っているペルソナと違うな......」と思った方がいるかもしれませんので、ペルソナについて少し補足しておきます。

ペルソナには、「行動ペルソナ」と「感情ペルソナ」があります。感情ペルソナは、ユーザーの志向性や感情、趣味嗜好、スキルや行動、ライフスタイルなどから定性的な特徴を抽出し、課題やニーズを設定して作るペルソナです。一般的に「ペルソナ」といった場合は、感情ペルソナを指すことが多いです。

感情ペルソナと行動ペルソナに優劣はありません。「ターゲットユーザーを明確にする」「よいサービスやWebサイトを作る」という目的では共通しています。ですので、感情ペルソナをCROに使っても大丈夫です。大事なことは、

  • プロジェクトメンバーが共通して参照し、目線を合わせること

  • 作りっぱなしではなくPDCAにより精度を向上させること

です。場合によっては、感情ペルソナと行動ペルソナの両方を作って使用することがあるかもしれません。その際、仮に2つが大きく乖離しているように見えても、参照しているデータが異なるので問題ありません。PDCAによりアップデートしていけば、おのずと1つのターゲットユーザー像に統合されると思います。

データドリブンで行動ペルソナを作るには?

行動ペルソナを作る手順は以下のとおりです。

  1. デモグラフィックデータでターゲットユーザーの大枠を捉える

  2. 主要導線の行動ログから特徴値を抽出する

  3. データから類型化して行動ペルソナを作成する

順に説明します。

1. デモグラフィックデータでターゲットユーザーの大枠を捉える

まずは、CVユーザーのデモグラフィックデータを分析し、主要な特徴を見ます。分析するデータは、「利用デバイス」「性別」「年齢」「曜日別アクセス」「時間帯別アクセス」「月別の獲得CV」です。

上記の例では、以下のような特徴があります。

  • 利用デバイス......mobile(スマートフォン)の割合が多い

  • 性別......男性がわずかに多い

  • 年齢......男性は35~44歳が多い

  • 曜日別アクセス......平日と土日でほとんど差がない

  • 時間帯別アクセス......11~17時が多い

  • 月別の獲得CV......2月、3月、8月、9月が若干少ない

2. 主要導線の行動ログから特徴値を抽出する

CVしたユーザーのWebサイト内行動ログを定量分析(データドリブン)し、特徴的な値がないか探します。分析方法としては、おもに「サイト回遊分析」「ランディングページ分析」「ユーザー行動分析」を使います。

CVに至ったユーザーを、

  • CV量の多さ

  • 回遊深度の深さ

  • 離脱量の多さ

などの軸で分析し、母数に占める割合や特徴値の明瞭度に応じて、分類していきます。例として、ある単一商材サービスサイトを分析したところ、回遊深度によって大別できそうな特徴値が判明。大きく「回遊深度が4ページ未満」「回遊深度が5ページ以上」の2つに分類できました。

3. データから類型化して行動ペルソナを作成する

次に、特徴量を示したデータにより、ユーザーを類型化します。横軸にCV量、縦軸に回遊深度をとったグラフで類型化したところ、以下の3つのユーザー群が浮かび上がってきました。

  • 即決検討......短い遷移行動でCVに至っており、すでに意欲が高いユーザー群

  • 不安検討......回遊行動が長く、必ずQ&Aページを見ている。CVに至るには不安があるユーザー群

  • 地域検討......特定行動経路の中で、必ず「対象となる地域ページ」を見ている。希望地域をまずは確認するユーザー群

今回のサイトでは、3つのユーザー群のうち、「地域検討」「不安検討」という2つのユーザー群を「地域即決派」「不安解決派」という行動ペルソナとして利用することとしました。

この後は、行動ペルソナごとにサイト内行動パス(閲覧するページ)を細かく確認し、CVを引き下げているボトルネックはないか、数値から読み解き、改善施策を検討していきます。

行動ペルソナの利用に関しての注意点

行動ペルソナを利用するにあたり、注意すべき事項が2点あります。

1. 細かくしすぎない

作成する行動ペルソナの数は、多くても4つまでにしてください。

ユーザーを細かく類型化し、多数の行動ペルソナを作れば、より具体的にターゲットユーザーを可視化できますが、同時に複数の施策を走らせるのはリソース的に無理が出ます。

行動ペルソナは、作ることよりも作ったあと施策につなげることが重要です。あまりに細かいと対象母数が少なく、明確な解が得られませんので、大枠で捉え、MECE(漏れなく、ダブりなく)であることを推奨します。

もしサイトに複数のゴールがあり、行動ペルソナが多くなりそうな場合は、まずはCROの対象とするゴールを絞るようにしてください。

2. 非CVを属性分類はしない

ユーザーは多種多様でさまざまな行動をサイト内で行います。そのため、非CVのユーザー行動を類型化することは非常に難しく、類型化しきれません。CROでは、CVに至ったユーザーのみを対象とし、CVに至る前後の行動から類型化を行うことをおすすめします。

行動ペルソナはアップデートし続けること

行動ペルソナは作ることが目的ではなく、改善対象のユーザーを線で分析するために必要なアプローチです。作って終わりとならないよう、必ずAction(改善施策)につなげましょう。

また、Action後に得られたデータで行動ペルソナをアップデートすることで、より施策の精度が向上します。完成度が高まった行動ペルソナは、一段階ブレイクダウンして複数に分割し、さらにターゲットユーザーを絞り込んでいくこともおすすめです。

ユーザーを取り巻くデジタル環境は、刻々と変化しています。ユーザーの行動も、ずっと同じであり続ける保証はありません。オウンドメディアからの売り上げを恒常的に増やしていくためには、ユーザーと向き合い、常にユーザー目線でいることが重要です。

電通デジタルのCROは、「顧客に向き合いデータドリブンでCVを向上させていく」ことが強みです。CROに関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

「電通デジタル トピックス」掲載のオリジナル版はこちらCROの注力ポイント(2):データから顧客の「行動ペルソナ」を作る

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