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ライブ配信サービス「ツイキャス」10周年のリブランディングキャンペーンを成功に導いた秘訣とは【電通デジタルコラム】

すでに知名度抜群であるツイキャスのブランディング課題は何だったのか? 実行した施策は?
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国内最大手ライブ配信サービス「ツイキャス」 サービス開始10周年のリブランディングキャンペーンを成功に導いた秘訣とは?

※所属・役職は記事公開当時のものです。

Webサイトまたはスマホのアプリを介して誰でも簡単にライブ動画を配信/視聴できるライブ配信サービス「ツイキャス(TwitCasting)」は、国内最大級のMAU(月間アクティブユーザー数)を誇る配信プラットフォームです。

ツイキャスがサービス開始から10周年を迎えた2020年、電通デジタルはツイキャスのリブランディングキャンペーンを担当しました。ライブ配信サービスとしては知名度も抜群であるツイキャスのブランディング課題は何だったのか。課題を解決し、目的を達成するためにどのような施策を実施したのか、電通デジタルのプロジェクト担当者3名に話を聞きました。

配信ジャンルが広く、サブカルに強いライブ配信サービス

――ツイキャスのブランディングキャンペーンを受注した経緯をお聞かせください。

川島当初の要件は、ツイキャスが2020年2月3日にリリース10周年を迎えるにあたって、さらにMAUを拡大したいというものでした。しかし、キャンペーンの詳細を検討している間にコロナ禍の巣ごもり消費の影響もあり、MAUに関しては目標数値を達成する見込みが立ちました。そこで、2つ目の要件でもあったリブランディングに切り替えることになりました。

――ツイキャスはライブ配信サービスでは古参の存在で、知名度も抜群だと思います。リブランディングを行う必然性はどこにあったのでしょうか?

中村現在ライブ配信ツール/アプリは競合の参入が相次ぐ発展期です。直接の競合としては、「17LIVE(イチナナ)」「LINE LIVE」「Pococha(ポコチャ)」「SHOWROOM」などが挙げられますが、それ以外にも余暇時間に利用するエンターテインメント系のアプリもすべて競合だと考えています。そうした市場環境において、ツイキャスは10年間サービスを提供し続けてきた知名度がありますが、逆に言えば新鮮なイメージはないわけです。

また、2017年にTVCMを出稿した以外は大々的な広告活動は実施していません。そのため、知名度が高くユーザー数も多いにもかかわらず、ツイキャスの具体的なイメージがユーザーのマインドセットの中で確立されていない状態でした。

――ツイキャスの特徴と強みは、どのように認識していましたか?

川島特徴としては、ゲーム、声優の他、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)という咀嚼音を聞くものや、雑談など、配信ジャンルが幅広く、また比較的オタク/サブカルチャーの領域に強いことが挙げられます。その点はクライアント自身も、他サービスと比較してストロングポイントの一つであると認識されていたと思います。

出宮今回のブランディングは、その強みを大切にしながらサービスイメージを昇華することが求められました。「ツイキャスらしさ」を強調しながら広めることで、その「らしさ」に好感を持つ人たちの心にどれだけ響くか、共感を得られるかが、今回のブランディングの目標になりました。

川島佳子(電通デジタル)

川島佳子(電通デジタル)

「ツイキャスらしさ」を再定義して強く打ち出すブランディング

――ブランディングキャンペーンはどういった点をポイントに提案しましたか。

中村まず、競合サービスと比較してどのような認知・利用意向の状況にあるのかを把握するべく調査を実施しました。その結果、ツイキャスを「詳しく知っている」「名前だけ知っている」という回答は競合と比較しても高い一方で、「興味がある」「今後利用してみたい」という回答がさほど高くないということがわかりました。そこから「知名度があるのに利用する動機づけには至っていない」という状況が読み取れます。すなわち、ユーザーが積極的にサービス利用するにあたっての、ポジショニングが確立できていないことが課題として見えてきました。

改めてツイキャスのポジショニングを定義すると、①テレビのように単方向的なメディアではなく、双方向でコミュニケーションがとれるプラットフォームである、②配信者は芸能人ではなく、ごく身近な人が多い、③幅広いコンテンツがある、の3点です。これらを強く打ち出すことが「ツイキャスらしさ」、つまりツイキャスのブランドイメージを強調することになると考えました。

しかし、ブランドイメージの根拠となるタグラインがなく、ロゴも創業時のままだったので、アプリアイコンに併せてロゴのリデザイン、タグラインの開発も提案しました。ユーザーが目に触れるところをトータルでリブランディングすることで、新規ユーザー、既存ユーザーすべてに向けて「ツイキャスらしさ」を浸透させていくことを図りました。

ツイキャス

――ブランディングキャンペーンにおけるメディアプランニングの概要についてご説明ください。

川島今回のキャンペーンにおいては、ユーザーが日常的に使っているメディアを中心に設計しました。具体的にはYouTube、TVer、AbemaTVといった動画メディアや、Twitter、LINE、InstagramといったSNSになります。接触機会が多くなるからこそ、トータルで波及効果が期待できるメディアプランニングを心掛けました。

その一方で、イメージキャラクターとして、黒沢ともよさんという人気声優をキャスティングした効果を最大限に生かすためにも、Spotify、TikTokなど、音声に特色があるメディアへの露出も強く意識しました。

ツイキャス2

また、電通デジタルには「Cross Media Planner™(CMP)」という、認知率や好意度などを予算内で最大化するために、各媒体のコスト比率やフリークエンシーなどを、過去のデータを参照して自動算出するソリューションがあります。これを活用しつつ、プランナー3人の経験値も加味しながら設計していきました。

――クリエーティブの概要について教えてください。

出宮ブランディングキャンペーンの期間は、2020年8月の1ヵ月間。広告配信によるリーチ拡大を狙って3段階の施策を展開しました。

まずはティザーとして、キャンペーン開始日の前日に、

「ツイキャス プレミア配信」[注1]にて、黒沢さんが生配信を実施し、レアな弾き語り&トークライブを行いました。ブランドムービーの撮影場所と衣装で配信を行い、ブランドムービーで歌うカバー曲も熱唱。キャンペーンでプレゼントするサイン色紙もその場で書き、告知を行うことでキャンペーンの注目度を高め、自然な形で話題化を行うことができました。黒沢さんのファンもSNSで盛り上げてくださり、非常に良い状態で初日を迎えることができました。

そして、ローンチと同時にYouTubeの「マストヘッド広告」[注2]Premium Viewインストリーム動画広告」をはじめ、Twitter、Instagram、TikTokなどの各種SNSやSpotifyで広告配信を開始。YouTubeで840万回と多くの方に視聴いただけて、SNSでも「配信本来の楽しさを思い出した」「ツイキャス久々にやりたくなった」などの嬉しい声を非常に多くいただくことができました。

ローンチ後のサスティン施策として、Twitter「プロモトレンドスポットライト」[注3]と「ハッシュフラッグ(ブランド絵文字)」「ファーストビューオンリー(現ファーストビュー)」を活用して、「#好き被り選手権」というユーザー参加型のプレゼントキャンペーンを展開しました。タグラインとして設定した「みんなの好きが集まる場所」に合わせて、ユーザーの好きなものをツイートしていただく施策を実施。愛に溢れた投稿で非常に盛り上がり、ツイキャスらしい投稿を多くいただくことができたなと思います。

ツイキャス3

ツイキャス4

キャンペーン設計の際に強く意識したのは、発信慣れしていない人も参加しやすいような仕組みです。例えば、プレゼントキャンペーンなら「あなたの好きなものをツイートして、友達を見つけよう」という形にすることで、ツイートに対する敷居を下げました。また、カンバセーショナルカードを活用し、選択肢形式の参加ボタンとすることで様々な人が気軽にツイートできるように心がけました。

川島最初の段階から「歌」に強いこだわりを持って、プランニングをしています。一般的に、長尺の動画広告がすべて視聴されることはほぼありません。しかし、歌であればコンテンツとして楽しみながら視聴してくれるユーザーが多いと考えたからです。

出宮ブランドムービーのカバー曲として、若年層に人気のバンドsumika(スミカ)さんの「フィクション」をご提供いただきました。sumikaさんのバンドコンセプトが、今回のタグライン「みんなの好きが集まる場所」とマッチしていることや、歌詞がツイキャスで配信を楽しむユーザーの心境と近いな感じたんです。この曲を弾き語る配信者風の黒沢さんの歌声に乗せて、ツイキャスを楽しむ配信者と視聴者の姿を表現したいという思いがありました。クリエーティブ制作に際して、そういったツイキャスの楽しい瞬間の表現を強く意識しました。

出宮百合絵(電通デジタル)

出宮百合絵(電通デジタル)

認知と利用意向が全体的に上昇し、ユーザーから高い好感度を得られた

――効果測定は、どのような形で行いましたか?

中村まずは、最大の目的であるユーザーのブランドリフトの数値を精緻に出す必要がありました。また、次のPDCAを回すためにも、どの媒体がもっとも認知効果を高めたか、もっとも効率よく効果を上げられたかを明らかにしなければなりません。しかしながら、今回は非常に多くの媒体を実施したため、媒体固有のブランドリフト調査や既存の測定ツールの導入では、精緻に効果計測を行うことが難しい状況にありました。

そこで、今回活用したのが「ROO(Return on Objective)分析」という電通デジタルの独自ソリューションです。弊社のデータアナリストが構築したモデルをもとに、そのキャンペーンに対してどのくらいの態度変容があったか、媒体ごとに分析するものです。このような最先端のソリューションを使うことで、トータルの広告効果はもちろん、媒体ごとの貢献効果の精緻な分析も実現しました。

ブランドリフトに関しては、もともと知名度に関しては「詳しく知っている」「名前だけ知っている」を合わせて68.9%と高ポイントでしたが、そこからさらに7.4ポイントを上積みし、76.3%まで上がったことがわかりました。また、認知だけではなく利用意向に関しても上昇しました。その理由に「身近な存在の配信者が多い」や「気軽に挑戦できる」という選択肢を選ぶユーザーが多かったことからも、今回のキャンペーンで伝えたいバリュープロポジションは狙いどおり達成できたのではないかと考えています。

――クライアント企業からは、どういった点を評価いただきましたか?

川島ブランドムービーを配信したYouTubeは合計840万回再生、キャンペーン開始時にはTwitterのトレンド入りを果たしたことも含めて、全体として高い評価をいただいたと思います。

出宮高いクオリティーのクリエーティブによって今までのツイキャスのイメージを変える取り組みは特に、クライアントからご評価いただきました。タグラインからアプリストア内スクリーンショットまで一貫して制作したことで、ブランドステートメントと連動したフルファネルでのブランディングキャンペーンになったと思います。

クライアントも当初、自身のサービスのポジショニングに関して、サブカル方面に尖っていくのか、より幅広い人を取り込んでいくのか、明確に定まっておらず迷いがありました。ですが、サービスの将来や競合他社の状況を踏まえながら意見交換を密に行い、お互いに理解を深めることで、タグライン・ステートメント・キャンペーン内容がビシっとハマった高品質のクリエーティブが作れたのだと思います。今回の事例は『販促会議(2020年11月号)』にも取り上げていただき、さまざまな利用シーンを描いたクリエーティブは、ユーザーのサービス理解に貢献した、とご紹介いただきました。

また、Twitter社から提供された、プロモトレンドスポットライトのセンチメンタル分析[注4]では、87%がPositive、13%がNormalで、なんとNegativeは0%という驚きの結果でした。ツイキャスのようなすでに歴史があり、既存ユーザーがある一定数いる企業のキャンペーンは、Negativeが付きやすいものなのですが、「好き」にフォーカスした企画がうまく作用し、ユーザーにも好意的に受け止めていただけたのかと思います。

中村Negativeがまったくなかったという分析結果には私も驚きました。これは業界の課題感でもあるのですが、デジタル広告は効果計測の容易さなどからボトムファネルでの活用が重視される傾向にあります。しかし、今回のキャンペーンのように上質なクリエーティブを適切なコミュニケーションでユーザーに届けることによって、ユーザーはポジティブな印象を返してくれること、デジタルのみでも態度変容を促すことができるとわかったことは非常に収穫のある成果でした。

中村匠(電通デジタル)

中村匠(電通デジタル)

全体最適化の観点から、統合力と専門性を駆使することで、真の課題解決を達成できる

――今回の成果を通して伝えたい、電通デジタルのケイパビリティは何になりますか?

中村「統合力」に尽きると思います。ユーザーもさまざまな広告に見慣れており、従来までの広告の大量出稿などによるコミュニケーション量の増加やクリエーティブを多少工夫するだけでは態度変容を促しづらくなっています。つまり、個別最適化ではなく多方面での全体最適化をしないと、マーケティング自体がうまく回らなくなっています。

「メディア」「クリエーティブ」「アナリティクス」「データ」といった領域それぞれでの専門性の高さはもちろんですが、その理解を踏まえてマーケティング戦略からオペレーション、効果検証まで一気通貫でご提供することができる点は、特に大きな競合優位性だと考えています。

出宮多様な人材による幅広いアプローチができるということだと思います。私が所属するACRCでは、マスクリエーティブ(プランナーやコピーライター、アートディレクター)やデジタルクリエーティブのプロフェッショナル、AIやストラテジーを活用したクリエーティブ展開など、さまざまな得意領域を持った人間が集まっています。それによって認知から獲得までのフルファネルはもちろん、ファンマーケティングなどのデュアルファネルに対しても一貫して対応することができます。

本案件のクリエーティブディレクター村上一輝は、「点でクリエーティブを考える時代は終わったと思っています。今は、線でクリエーティブをプランニングすることで、どのように効果を最大化させるか考えることが重要だと思います」と言っていましたが、私もまさしくそのとおりだと思います。多様な人材によって隅々まで目配りの効いた完成度の高いクリエーティビティを担保し、それによって広告効果の最大化につなげていくことができることが、一番の強みです。

川島デジタル領域の中でも、特に計測とかデータ分析と言われる分野は本当に進化が早くて、少し前だったら「こういう計測は無理」「このデータは出せない」と言われていたことが、普通にできるようになっている世界です。ですので、何か課題があるのなら、まずはとにかくご相談いただきたいです。

そういった個別のご要望に丁寧に寄り添う中で、クライアント自身も気づいていなかった課題を発見でき、真の課題解決につなげていけるのが電通デジタルの強みだと思います。最適な人材、クリエーティブやメディアの知見、さまざまなツールやソリューションなど、多彩な武器を駆使して解決へのご提案をさせていただきます。

今回の施策の概要

課題

ライブ配信サービスのブランディング

施策

デジタル動画広告(YouTubeマストヘッド、Twitterプロモトレンドスポットライト、Twitterファーストビューなど)、クリエーティブ制作(ロゴ、タグライン、ブランドムービー、アプリアイコンなど)

効果

ブランドリフト調査7.4ポイント向上(68.4%→76.3%)、ブランドムービー840万回再生

脚注

注釈

1. ^ ツイキャスのチケット制有料ライブ配信機能。
2. ^ YouTubeのトップページ画面に掲載される広告。CPD(掲載日数課金型の広告)とCPM(インプレッション単価)が選択できる。
3. ^ Twitter広告メニューのひとつ。「話題を検索」タブの「おすすめ」セクション上部に動画/画像/GIFと共に表示される買い切り型広告。
4. ^ テキストマイニングによる感情分析。ポジネガ分析ともいう。

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