「私の本棚」の第3回にご執筆いただいたのは、KDDI デジタルマーケティング部 部長の井上慎也さんです。Kindleを利用するようになってから読書スピードがあがったという井上さん。その読書スタイルを、さまざまな視点から記してくださいました!(編集部)
私の読書スタイル
子供のころには本を読む習慣は全然なく、夏休みの宿題で一番苦手だったのは読書感想文でした(大人になった今でも漫画は大量に読みますが 笑)。小説などをほとんど読まなかったことは、大人になった今になって語彙力や表現力の足りなさを実感するため本当に後悔をしています。
読書にハマるようになったのは社会人になってからです。仕事上でモヤモヤしていたものが綺麗に整理されたり、新しい情報や知識に触れることが非常に効率的にできるという、ごく当たり前のことに気づいたからです。仕事に必要なテーマの本から始まり、いつの間にか大量の本が家に山積みになっていました。
引っ越しを機にIKEAで大きな本棚を買いましたが、それも埋まってしまったので一時期は読書も停滞していました。しかし、Kindleを使うようになってから、スペースを気にしなくても良くなるだけでなく、読書スピードが上がったため、現在では書籍だけでも月に6、7冊以上読んでいるような状態です。
私の読書スタイル1:本選び
読む本を選ぶときには、「深める」「広げる」「上げる」の3つを意識しています。
「深める」
マーケティング、デジタルマーケティングやビジネス書など、自分の担当している領域、担当しそうな領域についての知識を「深める」ための本を選択しています。ソーシャルメディアで流れてくる同業種の知り合いのオススメや、流行りや新しいテーマなども、とりあえずAmazonでポチッとしています。
「広げる」
営業、ファイナンスやコールセンターなど、仕事上、相対する部署・職種の仕事の仕組みや、担当者の頭の中など、理解を「広げる」ものを読んでいます。また、今とは違う業種・業界(自動車、ファッション、金融、コンサル)の本なども、また違った視点が得られると思っています。
「上げる」
メンバーの立場なら「課長本」「部長本」など、マネージャーであれば「社長本」など、常に1つ2つ上の立場の方向けの本を読むようにしてきました。上司の頭の中を理解することで、上司が何を考えているのか、自分には何を求められているのかがわかり、仕事の仕方が大きく変わります。仕事を「上げる」本選びです。
1つの領域ばかり読んでいると飽きてしまうため、Kindleのなかには上記の3タイプの本を入れておき、集中が切れると違うタイプの本を読むようにしていますが、意外なところで繋がったり、より理解が深まったりするのでオススメです。
私の読書スタイル2:メモ
もともと記憶力はそこまでよくないため、気になったところをノートにメモをしていましたが、スマホ、Kindle、iPadなどが出てきたころから、メモのスタイルが大きく変わってきました。メモをしたノートをスマホの写真で記録するところから始まり、最近は、iPadでSplit View(スプリットビュー)という機能を使って、KindleとEvernoteの2つのアプリを同時に開き、読みながら気になったキーワードや文章をどんどんとメモするスタイルになりました。
表紙や全体像を把握するための目次だけでなく、重要な図、章ごとのまとめなども全部スクショしてEvernoteに貼り付けます。メモをタイピングするのが面倒くさいときは、気になった部分をハイライトしてそのままスクショをしたりもします。
こうすることで、一度読んだ本の要点を数分で見直すことができますが、定期的にEvernote上の読書メモを見直すことを習慣にしています。当時はなんとなく気になったメモでも、改めて読むと新しい気づきやリマインダーになり、役立ちます。
また、Evernoteには気になったメディアの記事やブログなども収集する癖をつけています。仕事や話の中で気になったことは、手元のスマホから検索機能でサッとアクセスできるので脳の記憶領域はEvernoteに頼っています。
私の読書スタイル3:習慣化
通勤電車ではほとんど満員のため読書ができないので、半強制的に週末の朝や晩に自宅近くのカフェで読書をすることを習慣にしています。間が空いてしまうと頭の整理がつかないため、2~3時間まとめて時間をとり、一気に1冊を読み終えるようにしています。
私の読書スタイル4:読み方
それぞれの著者には伝えたい概念があり、時には極端であったり、そしてポジショントークもあったります。その人の経歴、立場によって捉え方や表現が違っていたり、偏っていたりするため、すべてをそのまま受け入れるのではなく、
- 疑って「ツッコミ」を入れる
- 自分の業界、立場だったら?を常に考える
ことを意識しています。
また、その領域やテーマの本を数冊買って一気読みをするようにすると、いくつかの共通点や違った見解が見えてきて、より理解が深まります。
私の読書スタイル5:雑誌や漫画
雑誌や漫画などからはトレンドや新しい領域に触れることができます。気になった領域やキーワードで新しい本を探す、出合うきっかけになったりすることもあります。最近は雑誌読み放題のサービスが増えてきており、(「ブックパス」は月額380円で300誌以上の雑誌を読むことができます【宣伝】)気楽に流し読みもできますので、オススメです。
現在の自分に影響を与えた本
現在の自分に影響を与えた本はいくつもありますが、なかでも次の3冊を紹介したいと思います。
『Web Analytics Action Hero(翻訳本無し)』 (2011, Brent Dykes:著 Adobe Press:刊)
当時在籍していたアドビのUS本社のメンバーが書いた書籍。データの分析だけでなく、その情報をいかに建設的に経営陣にアピールできるかたちで伝えるか、意思決定につなげていくかが書かれています。データを活用して、マーケターとしてどのようなビジョンをもって組織の目標や目的を達成するか、当時の自身の仕事スタイルに大きく影響を与えた一冊です。
『次世代コミュニケーションプランニング』(2012, 高広伯彦:著 SBクリエイティブ:刊)
ツールや手法ありきでない、本質的なコミュニケーションについて書かれた本です。いろいろなフレームワークや手法が乱立する状況だからこそ、定期的に読み直しています。
『マーケティングは進化する ークリエイティブなMaket+ingの発想ー』(2014, 水野誠:著 同文館出版:刊)
伝統的&先進的なマーケティング概念について、論理と手法・実務を共に解説したマーケティングサイエンス(アート&サイエンス)の良本です。マーケティングを勉強し始めたが、概念的な話でモヤモヤしている人、特に理系・数字的な考え方をもっている方におススメの本です。
『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか』(2019, 西田宗千佳:著 講談社:刊)
この本自体が私に影響を与えたわけではないですが、前職のアドビ時代の歴史と経験が、今の自分のマーケティング、組織やビジネスの考え方に大きく影響を与えました。この本ではそのアドビの変化や活動、他の先進的な会社の事例をかなり詳しく解説しています。
Web担当者あるいはマーケターにオススメしたい本
人によって立場や状況が違うので、オススメする本を問われたときにはそれぞれに変えています。そこで、会社のメンバーに1つのきっかけとしておススメした書籍のリストを次にあげてみました。
- 『ここからはじめる実践マーケティング入門(21世紀スキル)』(武井涼子他:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊)
- 『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』(足立光、土合朋宏:著 朝日新聞出版:刊)
- 『売れるもマーケ当たるもマーケ マーケティング22の法則』(アル・ライズ、ジャック・トラウト:著 新井喜美夫:訳 東急エージェンシー出版部:刊)
- 『マーケティングプロフェッショナルの視点 明日から仕事がうまくいく24のヒント』(音部大輔:著 日経BP:刊)
- 『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(森岡毅、新井喜美夫:著 KADOKAWA/角川書店:刊)
- 『マーケティングは進化する ‐クリエイティブなMarket+ingの発想‐』(水野誠:著 同文館出版:刊)
- 『たった1人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(西口一希:著 翔泳社:刊)
- 『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(クレイトン・クリステンセン他:著 依田光江:訳 ハーパーコリンズ・ ジャパン:刊)
- 『マーケティングの革新ー未来戦略の新視点』(セオドア・レビット:著 土岐坤:訳 ダイヤモンド社:刊)
- 『サブスクリプション・マーケティングーモノが売れない時代の顧客との関わり方』(アン・H.ジャンザー:著 小巻靖子:訳 英治出版:刊)
- 『ハッキング・マーケティング』(スコット・ブリンカー:著 東方雅美:訳 翔泳社:刊)
- 『データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標』(マーク・ジェフリー:著 佐藤純 他:訳 ダイヤモンド社:刊)
- 『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略 顧客の心とつながる経験価値』(田中達雄:著 東洋経済新報社:刊)
- 『次世代コミュニケーションプランニング』(高広伯彦:著 SBクリエイティブ:刊)
- 『いちばんやさしいデジタルマーケティングングの教本』(田村修:著 インプレス:刊)
- 『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』(小霜和也:著 宣伝会議:刊)
- 『デジタル時代の基礎知識 ブランディング』(山口義宏:著 翔泳社:刊)
- 『ブランド論 --無形の差別化を作る20の基本原則』(デービッド・アーカー:著 阿久津聡:訳 ダイヤモンド社:刊)
- 『圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術』(足立光:著 ダイヤモンド社:刊)
- 『これからの会社員の教科書 圧倒的な成果を生み出す社内外のあらゆる人から今すぐ評価されるプロの仕事マインド71』(田端信太郎:著 SBクリエイティブ:刊)
- 『学習する組織‐システム思考で未来を創造する』(ピーター・M.センゲ:著 枝廣淳子 他:訳 英治出版:刊)
- 『マーケティングの仕事と年収のリアル』(山口義宏:著 ダイヤモンド社:刊)
- 『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(伊藤羊一:著 SBクリエイティブ:刊)
- 『両利きの経営』(チャールズ・A.オライリー、マイケル・L.タッシュマン:著 入山章栄 他:訳 東洋経済新報社:刊)
- 『コーポレートファイナンス 戦略と実践』(田中慎一、保田隆明:著 ダイヤモンド社:刊)
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