ファンとのコミュニケーションに有効な「自社アプリ」最新マーケティング手法と活用事例
モバイルシフトにより、生活者との接点の大部分をスマートフォンが占めるようになった。「Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」に登壇したヤプリの島袋孝一氏は、「アプリはECやオムニチャネルにとどまらず、さまざまな業界で活用が進んでいる」という。
セッションでは、クラウド型アプリ開発プラットフォーム「Yappli」によるアプリの事例を使って、最新のマーケティング手法を紹介した。
アプリによる新しい購買体験・顧客体験
島袋氏は、講演の最初に、昨今のアプリまわりの現状と動向を紹介した。
- スマートフォンは若年層だけでなく50代、60代まで普及している
- アプリ関連の経済圏が広がり、2021年にグローバルで1,390億ドルに到達すると予測されている
- 2013年まではアプリの主流はゲームだったが、最近は非ゲームアプリが多くなっている
- PayPayの登場から1年、スマホ決済が台頭してきている
- Instagramは、画像投稿プラットフォームからショッピングプラットフォームへ変化している
- 動画のライブコマースが登場した(テレビショッピングと違って国を超えた購買が可能)
- スマホのGPSを使って、実店舗と連携したプッシュ通知が配信できる
- ARで疑似体験する(バーチャルで自分の家具を部屋に置いてみるなど)
- スマホのカメラを使って採寸し、ジャストフィットの服を買う
生活者の手元にスマホがあるからこそできる購買体験が、いろいろと生まれている(島袋氏)
このような買い物体験は、これからも進化していくに違いないと島袋氏は述べ、「アプリはデジタルの中で存在感を示す手段。アプリがないのは銀座や原宿に店がないのと同じ」というニューバランス ジャパンの鈴木健氏の声を紹介した。
自社アプリはファンとのコミュニケーションに有効
マーケティングでは「2割の顧客が8割の売上を作る」という「パレートの法則」がよく知られている。島袋氏によれば、「リサーチの結果、それが2:8なのか、3:7なのかという割合はともかく、少数の熱狂的なファンが大部分の売上を作るというのはリアルな現象だった」という。そんな時代のコミュニケーション手段として、どのようなメディアを作れば良いのだろうか? 島袋氏は以下の図をあげた。
まだ商品に出会っていない「潜在顧客」には、検索や広告で出会ってもらう。その後すぐに購買に至らない「見込顧客」や一度買ってみた「新規顧客」などをSNSでフォローしたり、モールで接点を持ったりなどのプロセスを経て、「リピーター」から「ファン」になってもらうようにする。
こうしたファネルの各段階でさまざまなタッチポイントを作る必要があるが、最終的にファンになってくれた顧客とのタッチポイントとして有効なのが、「自社ECサイト」や「自社アプリ」だ。
自社アプリを作るとは、「ファンとのコミュニケーションを準備する」ということでもある(島袋氏)
アプリの活用事例
続いて、実際にファンとの接点として活用されているアプリがいくつか紹介された。
味の素の「アミノバイタル」公式アプリ
アプリの目的は、「ロイヤルカスタマーとの継続した顧客接点の創出」だ。メルマガと違い、メールアドレスなどの個人情報の入力が不要という点も、アプリに取り組んだ理由だという。
新商品の情報や商品の機能といった企業側が伝えたいことだけでなく、顧客が知りたい情報や顧客の課題解決のための情報を提供するために、商品を「目的からさがす」「競技からさがす」ことができるようにした。
- 成果:商品の継続利用につながっているとともに、社内へのデジタル活用の啓蒙にも役立った。
カフェ「プロント」公式アプリ「プ活」
カフェ「プロント」では、ブランドの経年とともに、若年層とのコミュニケーションが手薄になっていることが課題だった。若年層へのリーチとともに、数あるカフェの中から“選ばれるカフェ”になるために、アプリを導入。飲食店の定番であるクーポン配信などを用意。プロントとの時間を部活になぞらえて、アプリを「プ活」と名付けている。
- 成果:既存の自社サイトへのリーチが3倍になり、ロイヤルカスタマー予備軍との強力な接点になっていると評価されている。
「ふくや」公式アプリ
「ふくや」の明太子は、福岡の土産物として有名だ。そこで、旅行や出張などのお土産として購入してくれた一回のタッチポイントから、継続的につながるためにアプリを導入している。アプリでは、帰宅後にもう一度食べたくなった場合に買える百貨店の催事情報などが確認できる。
- 成果:スマホが幅広い世代に普及してる時代に、「60代以上の方とも継続的に繋がれるツール」として評価されている。
効果的なアプリダウンロード施策と運用
先述したように、ロイヤルカスタマーとの接点として有効なアプリだが、せっかく作ってもダウンロードされなければ意味がない。ダウンロード施策としては、渋谷「109」の事例が紹介された。
渋谷「109」のダウンロード促進施策
109には、WebサイトやSNSなどさまざまなデジタルのタッチポイントがあるが、その「すべてにダウンロードリンクを設置」している。また、リテール業界は実店舗があることが強みなので、店頭POPやキャンペーンなどによるダウンロード促進施策も行っている。ちなみにYappliには、店頭POPの制作や効果測定の機能もある。
109アプリは、施策によって以下のような成果があったという。
- 1年で10万ダウンロードを突破
- 店舗でのクーポン利用数が800件/月
- ECでは、アプリ経由の購入率がモバイルサイトの約2.5倍
顧客接点となるアプリをどう作るか
最後に、クラウド型アプリ開発プラットフォーム「Yappli」を利用し、管理画面から実際にアプリを作るデモが紹介された。Yappliの特徴は、主に以下の3点だ。
- プログラミング知識不要
- ドラッグ&ドロップでバナーやテキストの差し替えが可能
- スマホのOSアップデートなどへの対応は月次運用費用に含まれる
アプリを作成する場合は、あらかじめ用意されている機能をドラッグ&ドロップするだけで組み立てられる。その他、画像のアップロード、プッシュ通知のテキスト編集と配信設定などが、Yappli上から簡単に行える。
たとえば、アプリ開発を外部に委託している場合は、あらかじめ画像を入稿し、構成を確認して作業を進める必要があり、新商品が入荷してもタイムリーに反映できない場合がある。しかしYappliであれば、手元で画像をアップロードできるので、写真を撮ってすぐに反映できる。アプリの強みはプッシュ通知だが、これも内容やスケジュールを自分たちで設定できる。さらに、MAや接客ツールとの連携も可能だという。
島袋氏は、「300社以上、400個以上のアプリを作成してきており、Googleの審査を含めて豊富な実績と経験がある」とYappliをアピールして、セッションを終えた。
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