インフルエンサーを巡る「効果測定」「著作権」「未成年」「ステマ」「競合」などの疑問にプロ7社が回答【WAB月例セミナーレポート】
インフルエンサーマーケティングの「効果測定の方法」「コンテンツの著作権」「未成年インフルエンサー」「ステマとの見分け方」「競合に対する制約」など、気になるポイントを、業界を代表する各社の講師が解説。
Web広告研究会では、2019年5月の月例セミナーを「インフルエンサーと企業のこれからの関係づくり」をテーマに5月31日に開催。セミナー最終セッションでは、登壇者が一堂に会し、会場から寄せられた質問に答えた。
【登壇者】(順不同・敬称略)
・神葉 俊輔 氏(ALPHABOAT LLC, Director, Entertainment Unit)
・野村 肇 氏(indaHash Country Manager)
・石橋 尚也 氏(UUUM株式会社 執行役員/WOMマーケティング協議会 ガイドライン委員会)
・加藤 信介 氏(エイベックス株式会社 グループ執行役員 新事業推進本部長)
・戸高 純 氏(株式会社N.D.Promotion アカウントプランナー)
・澤 宏明 氏(株式会社Gushcloud Japan 取締役)
・中山 顕作 氏(THECOO株式会社 インフルエンサー事業部 執行役員)
・モデレータ: 芹沢 美稀 氏(株式会社ラバブルマーケティンググループ(LMG) 執行役員 社長室 室長/株式会社コムニコ)
効果測定の方法について
芹沢(LMG): ここからは、本日の出席者の皆さん全員にも登壇いただいて、事前に寄せられた質問に答えていきたいと思います。
まず、「ALPHABOATさんが手掛けたGINZA SIXのコラボ事例ですが、老舗百貨店というイメージとの差別化が狙いと聞きました。効果についてはどのように測定されましたか?」という質問です。
神葉(ALPHABOAT): これは多分に感覚的なお話になってしまいますが、「こういうミュージックビデオを撮ったこと自体」が差別化ですね。
インバウンドという部分では、アジア系観光客が多い銀座エリアで、ミュージックビデオに出演しているアーティストが所属するのも「88rising」というアジアン・アーティストのレーベルです。ですので、施策の効果測定では、彼らのチャンネルに載せたときの、いいねやコメントの数を指標としました。
インフルエンサーコンテンツの著作権と二次利用、未成年の扱いについて
芹沢: 次は「インフルエンサーさんが作ったコンテンツの著作権ですが、二次利用についてどういう契約にしているか。またインフルエンサーさんが未成年の場合についてお聞きしたい」との質問です。
野村(indaHash): 権利問題はいろいろな観点があると思います。
まず、本人の肖像権だけでなく、映り込んでいる人の肖像権もあります。
また、ある商品についての投稿を、Instagramで公開するだけならいいのですが、たとえば渋谷Q-FRONTや東京タワーのように商用利用する際には許可をとっておいたほうがいい建造物などもあります。
またパリのエッフェル塔のように「昼の写真は問題ないが、夜はライティングに権利があるのでだめ」といった特殊なルールもあったりします。
このように権利回りは複雑ですし、ブランドごとに難しいジャッジが必要なので、弊社の場合は、国内ではアマナさんと提携して、インフルエンサーが下書きとして提出してきた画像や動画をプロの視点でチェックしていただいています。そのうえで二次利用については、インフルエンサーさんとの契約時点で、利用規約に盛り込んでいます。
戸高(N.D.Promotion): 弊社では、未成年であってもタレント契約をしていますので、それに基づいた範囲内で行動してもらっています。二次利用については、掲載期間などを確認し別費用を発生させたりする形で対応しています。
石橋(UUUM): 弊社の場合も、案件単位の対応ですね。未成年については、親の同意がないと登録できないようにしています。それと反社会勢力との関係がないかどうか、反社チェックも全インフルエンサーにかけています。
ステマとの見分け方
芹沢: UUUM石橋さんへの質問ですが「ステマとの見分け方、あるいはPR表記の仕方について教えてください」という内容です。
石橋: そもそもステマとの見分け方における「関係性の明示」について、ほとんどの方が理解していないと思います。「関係性の明示」の意味は2つに分かれています。
・1つは「マーケティングであり、主体(依頼者)がだれかを明示する」ということ
・もう1つが「便益(金銭授受)があるかないかを明示する」ということ
この両方が満たされて、初めて「関係性の明示」がなされたと考えられます。
PR表記という表現がありますが、「そもそも『PR』という書き方がおかしいのではないか」という議論があります。つまり、これは PR(広報、パブリックリレーションズ)ではなく、広告だということですね。そのため、最近は「PR」表記は非推奨になっています。
とはいうものの、「PR」という表現はすでに広範囲で使われているので、段階を経て無くしていこうという動きです。こういった情報が、WOMマーケティング協議会(WOMJ)のサイトにアップロードされています。ぜひ参考にしてください(ちなみに私はWOMJのガイドライン委員会に所属しています)。
競合の縛りはできるのか?
芹沢: エイベックス加藤さんとTHECOO中山さんへの質問ですが「競合の縛りはできるんですか?」という内容です。
加藤(エイベックス): 基本は契約に付帯していますが、ケースバイケースで対処することが多いですね。
中山(THECOO): YouTubeやInstagramで競合の縛りをかけてしまうと、だれも案件を受けてくれなくなります。縛りをかけたいケースは多いんですが、実質かけられてないのが現状だと思います。
ただ海外のブランドさんだと、ワールドワイドで一律のルールを設けていたりするので、そういう場合はそれに従います。金額による部分もありますよね。
PR投稿に慣れているインフルエンサーは、アリ? ナシ?
芹沢: 類似の内容で「すごく良い投稿をしてもらった。ところが翌日に、別の商品についても続けて投稿している。こういうことがあると、ガッカリするしPR臭を強く感じてしまう。防ぐ方法はないですか?」という質問です。
中山: 各インフルエンサーさん(やそのフォロワー)の定性的な話になってしまう部分もあるのですが、そういうことがあっても、そこまで残念だと思わない人もいると思います。ただ、同じ価格帯の競合商品だったりすると、当て付けみたいに受け取られますよね。そういう空気は伝わってしまうと思います。案件のなかでインフルエンサーさんを教育していく必要があるかもしれません。
戸高: 過去の投稿をさかのぼって見れば、インフルエンサーさんの傾向がわかってきます。PR投稿に慣れているか否かもわかるし、投稿頻度もわかります。
そうして見ているとわかるのですが、PR投稿に慣れている方ほど、
・うまくアピールしてくれるメリット
・こなれている空気が伝わってしまうデメリット
の両方があると思います。
また、マネジメントがどうなされているかという観点もあります。事務所側のマネジメントがしっかりしていれば、投稿内容だけでなく、競合の扱いや投稿頻度まで調整していることもあります。しかし、マネジメントもご自身でやっているインフルエンサーさんの場合、案件を受ける頻度などを意識していない方もいるかもしれないのは事実ですね。
ですので、過去の投稿をさかのぼってチェックしながら、気になる点がある方は外していきます。
インフルエンサーマーケティングのKPIは?
芹沢: 「KPIについて意見を聞かせてほしい」という内容がありました。
石橋: 私は3つ考えています。
1つ目は、「インフルエンサーリレーションシップマネジメント」。どれだけブランドのことを好きになってくれて、自発的に熱意を持って関わってくれるか、この要素が右肩上がりになっているかということ。
2つ目は、「日常投稿より案件投稿のほうが、エンゲージメントが上回る」ということ。
3つ目は、「トラッキングできない領域で、売り上げが伸びる」ということ、ですね。
芹沢: ありがとうございました。
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「今すぐ知りたいインフルエンサーを巡る課題――「効果測定」「著作権」「未成年」「ステマ」「競合」などの疑問にプロ7社が回答」2019年5月31日開催 月例セミナーレポート(6)(2019/09/04)
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