Web広告研究会セミナーレポート

インフルエンサーに期待するのは“広告ではできないこと”。だからブランドと相思相愛になってもらいたい【WAB月例セミナーレポート】

Web広告研究会の5月月例セミナー第5部は「インフルエンサーと企業の関係」がテーマ。花王、N.D.Promotion、Gushcloud、ALPHABOATが議論。
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この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

「インフルエンサーさんに期待するのは、広告ではできないこと」――花王でビューティケア全般を担当する原氏はそう語り、「情熱をもってくれるインフルエンサーさんは、こちらも好きになる」のだという。「情報伝達の手法」「関係性の明示」といった重要トピックへの議論から、「インフルエンサーに果たしてもらう役割」「人としてのインフルエンサーを、お互いに信頼する」ことの重要性がみえてくる。

Web広告研究会では、2019年5月の月例セミナーを「インフルエンサーと企業のこれからの関係づくり」をテーマに5月31日に開催。その第5部(パネルディスカッションPart 3)では、「インフルエンサーと企業の関係」をテーマに、花王、N.D.Promotion、Gushcloud、ALPHABOATが議論を重ねた。

【登壇者】(順不同・敬称略)
・原 洋子 氏(花王株式会社 商品PR企画部1室 室長)
・戸高 純 氏(株式会社N.D.Promotion アカウントプランナー)
・澤 宏明 氏(株式会社Gushcloud Japan 取締役)
・神葉 俊輔 氏(ALPHABOAT LLC, Director, Entertainment Unit)
・モデレーター: 芹沢 美稀 氏(株式会社ラバブルマーケティンググループ(LMG)/株式会社コムニコ)

インフルエンサーさんには、やっぱりブランドを好きになってほしい!

原氏は花王で、ビューティケア事業のブランドマーケティングを長らく担当。2019年度より商品PR企画部1室の室長となり、ビューティケア全般の商品・ブランドPRを推進するとともに、インフルエンサーマーケティングのあり方を模索しているという。

芹沢(LMG): ビューティブランドだと、企業側の担当者の方がインフルエンサーさんと直接やりとりしているイメージがありますね。

原(花王): もともとマーケティングセクションにいたときにも、インフルエンサーさんにPR投稿をしてもらうといった施策を行っていました。しかしいまの立場になってより一層、一般の方、メディアの方、美容のプロの方、そしてインフルエンサーさんたちの存在が重要だと感じています。さらにそこから対象者を選んで情報発信を行っています。

芹沢: 具体的にはどういったやり方で、どういった反応がありましたか?

原: 通常の20~30人ぐらいの方に集まっていただいて、そこで商品を説明するといったやり方をしています。

しかしインフルエンサーさん向けには、あえて 5~6人ぐらいの少人数に絞り、会議室に集まってもらい、近い距離で商品開発担当者が説明する、といったことを行いました。そうすると、紹介する側も前のめりになりますし、ちょっとした裏話なども交えると、聞いているインフルエンサーさんも集中してくれる。そういった空気は感じました。

伝え方次第で、ブランドを好きになってくれて、熱量になり、投稿につながる。そういった面を感じました。商品を説明するというよりも、“ストーリー”をどう伝えるかが重要な気がします。

原 洋子 氏(花王株式会社 商品PR企画部1室 室長)

伝達・表現の方法は、お任せするしかない。お互いへの信頼がキー

芹沢: ブランドへの愛着があっても、たとえば新商品であれば、そもそも商品がまだできていないので、ファンはまだいないわけですよね。そこでまず、インフルエンサーさんに好きになってほしい(ファンになってほしい)と思うわけですが、企業側として必要なことは何でしょう?

神葉(ALPHABOAT): その商品に関する情報を世の中に出していってもらうときに、表現方法というか、伝え方についてはインフルエンサーさんに委ねることでしょうか。コミュニティをもっている方たちなので、伝達方法や表現方法は、お任せするしかない。こちらから説明内容や表現を押しつけるのではなく、インフルエンサーさんを信頼して任せることで、インフルエンサーさんからの信頼も生まれる。そこから好きになってもらうチャンスも生まれてくると思います。

戸高(N.D.Promotion): インフルエンサーさんたちを特別扱いするわけではないんですが、単発の案件だけで関係を構築するのはなかなか難しいと思います。また、取り組み方によっては逆にインフルエンサー側が進んで「そのブランドの良さを伝えたい」と思ってくれるケースもあります。

たとえば、アンバサダーみたいな形で、インフルエンサー自身が思うようなプロモーションができるなら、投稿回数や利用SNSといった縛りに関係なく、熱量をもって、関わっていくところなどもあるでしょう。“自分がブランドの看板を背負っている!”とまで思ってくれることもあるので、人として向き合って大事に扱えば、ブランドも好きになってくれるのではないかと感じます。

澤(Gushcloud Japan): 半分本気で半分冗談ですが、私は「接待力」なのかなと思います。

ある程度の影響力をもっているインフルエンサーは、それ自体がブランドなんですよね、だから「お金を払うから企業側が偉い」わけではないのです。「企業はインフルエンサーを好き、インフルエンサーも企業側のブランドを好き」になって、両者が同じ立場でファンを広げていく関係なんです。

そのためには企業はどうするか、それを「接待」と表現しているんです。たとえば、扱ってもらう商材の良さを知ってもらうために、インフルエンサーさんの趣味嗜好を事前に把握したうえでプレゼンテーションする。そうすると、契約による縛りはありますが、それを超えて、何十もの投稿を行ってくれる。ブランドを好きになってくれて、同じ立場で発信してくれるんだと思います。

芹沢: 中長期的に、お互いが人として好きになる、ということは大事ですね。

原: やっぱり情熱をもってブランドに接してくれて、投稿を行ってくれるインフルエンサーさんは、こちらも好きになっていきますよね。案件としてやってもらうこともあるかもしれないけど、リレーションを形成していくことによって、発信を期待する部分があると思います。

【左より】神葉 俊輔 氏(ALPHABOAT)
澤 宏明 氏(Gushcloud Japan)
戸高 純 氏(N.D.Promotion)

ステマにしないための「関係性の明示」は必須、期待するのは「広告ではできないこと」

芹沢: 次の質問ですが、関係性の明示についてどうお考えか、またステマ(ステルスマーケティング)にならないためのインフルエンサーさんへの依頼方法について各社さんが配慮されていることを教えてください。

※ ここでいう「関係性の明示」とは、インフルエンサーが行う投稿などを企業から報酬を受け取ってしている場合には、情報の受け手にそれがわかるように広告主名を含めて示すことを意味する。そうした関係性を示さずに広告行為を行うことは「ステルスマーケティング(ステマ)」と呼ばれ、倫理的に問題のある手法だとされている。 また「オーガニック」という言葉は、ここでは「報酬を得て行う仕事としてではなく、インフルエンサー自らの好みと判断で自発的に情報を届ける」行為を指す。

原: 現時点ではまだ、インフルエンサーさんや企業によって認識がまちまちですよね。最終的にはオーガニックな投稿にしたいんですが、少なくとも関係性の明示は必要です。

また、少し観点は変わりますが、インフルエンサーさんに「自身の言葉で発信してもらう」ことはちゃんと浸透させないといけないと考えています。企業側から「○○を訴求してください」のように言ってしまうと、それはただの広告オリエンテーションでしかありません。インフルエンサーさんに本当に望んでいることは、「広告ではできないこと」だと思うんです。

戸高: 弊社では関係性の明示はしっかり行う方針を採っています。「広告であることを明示しない」案件は受けませんし、そもそもあまりありません。フォロワー、すなわちファンに誤認させるようなことは、そもそもタレントとしてできません。

澤: 国によって若干違いはありますが、我々が気を付けて守っている2つのポリシーがあります。

・SNSプラットフォームのポリシー
・インフルエンサー自身のポリシー

関係性の明示はもちろんするのですが、そこに関係するのが後者の「インフルエンサー自身のポリシー」ですね。というのも、関係性をどう示すかの具体的なやり方がインフルエンサーさんによって異なるのです。ですので、具体的にどうするかは相談するようにしています。

また前者の「 SNSプラットフォームのポリシー」も、意外と注意が必要です。といのも、プラットフォーマー側はさまざまなアップデートを随時行っているからです。このあたりも、ちゃんとキャッチアップして守れる体制を整えています。

原: インフルエンサーさんたちも、ごまかしたり嘘をついたりといったことは、フォロワーのことを考えてやらない方が大半だとは思います。しかし、このあたりは間に入るエージェンシーさんの姿勢も大きいですよね。

たとえば、案件に対して出すオリエンシートにしても、エージェンシーさんに出すものであって、インフルエンサーさん本人に直接出すものではない。そのへんの状況は難しい面があると思います。

戸高: クライアント企業によっては熱意あるシートを出してくれる場合も多いですね。ただPR投稿をするうえでは、オリエンシートの内容をそのままインフルエンサーに伝えることがベストではない場合もあります。そうった場合には、クライアント企業にPRポイントの優先順位をしっかり聞いて回ったり、インフルエンサーさんに伝えるときは逆に要素を絞って重要なポイントだけを伝えたりと、間に立って咀嚼し調整するのが、われわれエージェンシーの役割ですね。

芹沢: ブランドと親和性がある人を探したいときは、どのような方法で探すのがいいのでしょうか?

澤: 情報を届けられる希望のセグメントのネットワーク規模がないと話にならないので、まずはジャンルでの強さでチェックします。そして過去の投稿を見てピックアップしていきます。

ただ最終的には、本人の熱意が大事ですし、そこにハマるかどうかですね。親和性がある人を探すのは難しいものです。

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Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
「インフルエンサーに期待するのは“広告ではできないこと”。だからブランドと相思相愛になってもらい、信頼し、任せる」2019年5月31日開催 月例セミナーレポート(5)(2019/09/04)

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