電通デジタルマーケティング 鳥の目・虫の目

デジタルマーケで顧客ロイヤリティとLTVを向上させるCRM「メンバーシップマーケティング」入門

会員制度やポイントプログラムによって見込客の顧客化や既存顧客のロイヤリティ向上を図るCRM「メンバーシップマーケティング」の基本を解説

会員制度やポイントプログラム/マイレージプログラムといった顧客のロイヤリティを高めるCRM戦略の1つ「メンバーシップマーケティング」について解説します。

この記事の構成

価格が同じなら、ポイントが貯まるいつものお店で買おう。

ちょっと高いけど、ポイント還元分を考慮したらむしろ安いよ。

あと2000円分買えば会員グレードがアップするから、何か買うものを探そう。

会員制度やポイント制度を導入しているECサイトの利用経験者は、似たような思考や行動をしたことがあるのではないだろうか。

このような会員やポイントの仕組みは、多くの企業が集客やロイヤリティ向上のための施策として導入している。電通デジタルでは、このようなロイヤリティ醸成といった目的を含む施策を「メンバーシップマーケティング」と捉えている。

メンバーシップマーケティングの取り組みは幅広く時間も要するため、根気勝負の面が多々ある。次のような悩みを持つ担当者も多いのではないだろうか。

会員制度やポイント/マイレージのサービスをイチから立ち上げるには、何から取りかかればいいのやら……。

社内が縦割りで分業化されていて、うまくプロジェクト化できない。
ブランドごとの制度設計で、全社統一が困難。

TポイントやPonta、楽天などとの共通ポイント事業者と連携していったほうがいいのだろうか?

本稿では、会員制度やポイントプログラムの導入を検討していたり、顧客のロイヤリティ向上に腐心していたりするWeb担当者やマーケティング担当者に向け、基本的なCRMの中でもより顧客とのつながりに焦点を当てたメンバーシップマーケティングの導入活用について、電通デジタルの伊勢亜祐子氏が解説する。

本連載「電通デジタルマーケティング 鳥の目・虫の目」では、株式会社電通デジタルで活躍しているプランナーたちが、現場で実践しているデジタルマーケティングの取り組みを具体的に紹介していく。

以下は、これまで本連載で取りあげてきたテーマと今回のテーマのポジショニングマップだ。

経営ゴト
データ分析
アウトプット
現場ゴト
データドリブンSEO
デジタル化推進4つのポイント
メンバーシップマーケティング
気になるテーマはバックナンバーでチェック

[用語の定義]
「メンバーシップマーケティング」とは

そもそも「メンバーシップマーケティング」とはなんでしょう。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。なぜならこの言葉を使い出したのは我々であり、電通デジタルの造語だからです。

電通デジタルでは、CRMのより具体的な手法として、「固有IDを付与して何らかのサービスを展開する会員制度」をメンバーシップマーケティングと定義しています。

CRMとは、「カスタマーリレーションシップマネジメント」の略で、「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」と訳されます。

ざっくりかつ理想的に言うと、事業主が個別のユーザーに対してOne to One(1対1)でコミュニケーションを図る基盤を構築したうえで、お客さまとの関係性を強化していくことを意味します。

CRMの基本はOne to Oneのコミュニケーション(を目指すこと)。

有効なOne to Oneを行うには、顧客が「どんな人か」を知ることから始まります。

顧客データを取得し、分析する、「誰が何をいつ買って、どんなモノ・コトを求めているか、どんな生活をしているか、いつ頃なにが必要か」といったお客さま自身について探るために、ID=識別子により、個客を判別するためのIDを付与する仕組みづくり、それこそが会員制度です。

メンバーシップマーケティングは、いわゆるロイヤリティプログラムの上位概念として位置付けています。

Webサイトの運営でも、再来訪を促したり、プロモーションをかけたりするために、ユーザーのメールアドレス取得やログインシステムを使った会員化の施策がありますが、それらもメンバーシップマーケティングです。

一方、会員となったお客さまに、何らかの物理的・心理的なインセンティブを提供し、ロイヤリティ(ブランドや商品に対する好意・理解・共感・「他よりコレが良い!」という気持ちの醸成)を高めることで、結果的に購買・サービス利用機会の拡大につなげる施策は、一般的にロイヤリティプログラムと呼ばれています。

  • メンバーシップマーケティング

    固有IDを付与して何らかのサービスを展開する会員制度。商品購入やサービスを利用する顧客に対し、会員登録を促して、会員化=固有IDを付与することで、One to Oneで顧客に応じた施策を提供するマーケティング戦略

  • ロイヤリティプログラム

    会員ユーザーに対して、なんらかの物理的・心理的なインセンティブを提供することで顧客ロイヤリティを向上させ、購買・サービス利用機会の拡大へつなげる施策

CRM
メンバーシップマーケティング
ロイヤリティプログラム
ポイント/マイレージプログラム
図1 CRMとメンバーシップマーケティング、ロイヤリティプログラム、ポイント/マイレージプログラムの関係

CRMとは(至極当然ではありますが)「お客さまに喜んでいただく仕組みづくり」です。

ちなみに、CRMという言葉を発する場合、業界や人によって、その意味する内容が異なる場合(テレマーケティングシステムを指していたり、ただ単にフォローメールを指していたり)があります。なので、行き違いが生じないためにも、筆者の場合、最初に全関係者とその事業における「CRM」が指す意味の定義を行います。

そのうえで、戦略や必要とするサービス設計を考えていきましょう。

ロイヤリティプログラムの具体的な施策としては、たとえば次のようなものがあります。

  • ポイントプログラム・マイレージプログラム
  • 優待サービス・優先案内・特典付与
  • 抽選キャンペーン

顧客のロイヤリティを上げるための施策、それがロイヤリティプログラムです。

その範囲は、商品購入やサービス利用見込みのある人々に向けて行われる、将来の顧客化につなげるための施策や、ブランドや商品に対するロイヤリティを上げる施策のすべてだと言えます。

たとえば、メーカーのサイトで会員登録すると配信される新商品のご案内や「ポイント○倍キャンペーン」といった多様なプロモーションだけではなく、口コミ募集や新着コンテンツのご案内なども該当します。自社サービスにおいて、「何をすると会員に喜んでいただけるか」という視点で考えることがキモとなることは言うまでもありません。

また、これらのメンバーシップマーケティングやロイヤリティプログラムの取り組みは幅広く、時間も要するため、根気勝負となってきます。

一定の投資、また、営業や販促を担う部署のみならず、情報システムや法務・財務までを含めた関係部署との調整が必要となるため、実現までのハードルが高いことも事実です。

図2では、メンバーシップマーケティングやロイヤリティプログラムの取り組みにおいて、会員サービス設計から運用までに想定される多様な課題の代表例を挙げました。

初期段階で、プロジェクトやサービス展開をスムーズに進めるために、あらかじめ多岐に渡る課題を把握し、準備や対策を検討しましょう。

STEP1.全体設計全体戦略
体制検討
ロードマップ策定
事業課題導出・事業戦略策定
収支シミュレーション
方向性・コンセプト策定
サービス制度骨子の設計
プログラム詳細設計
各種ルール策定
サービス提供フロー設計
等々
STEP2.個別戦術プロジェクト
会員システム・インフラ
要件定義・設計・開発・テスト・リリース準備
Webサイト(PC/SMP)・アプリ
要件定義・設計・開発・制作・テスト・リリース準備
CRMコミュニケーション(メール・ツール類)
運用設計・制作・リリース準備
運営事務局・顧客対応
要件定義・設計・集計分析PDCA策定
効果検証・集計・分析
要件定義・設計・集計分析PDCA策定
サービスリリース・運用
図2 会員サービスによくある課題

[事例の紹介]
さまざまな業界や企業で広がるポイントプログラムの利用

メンバーシップマーケティングの中でも代表的な施策として、ポイントプログラムがあります。

Webでの代表的な例としては、

  • NTTドコモ、au、ソフトバンクといった通信キャリア大手3社
  • TポイントやPonta(ポンタ)、楽天スーパーポイントなどの共通ポイント事業主
  • ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機といった家電量販
  • ZOZOTOWN、ソニーストア、ワタシプラス(資生堂)といったモールやメーカーサイト
  • イオンやローソン、ファミマなどのチェーン

などがすぐ思い浮かぶことでしょう。もちろん街中の小さな店舗でも、ポイントカードが発行されていたりします。

また、各種クレジットカードや銀行といった金融機関でも、利用に応じたポイントの付与などがなされています。EC事業者で導入されている場合が多いことは、みなさんがご存知のとおりです。

もはや物販を行う店舗・ECでは、競合優位のために欠かせないサービスとして認識されるようになりました。

ちなみに、マイレージプログラムは、飛行機の搭乗距離を積み上げる、という航空会社から始まった施策としてJALやANAをはじめ、今では、資生堂のエリクシールクラブなどでも実施されています(ポイントとマイレージは法制度上などで異なりますが、複雑な話となりますので、ここでは割愛します)。

昨今、さまざまな企業から特に注目されているのが、TポイントやPonta、楽天、といった共通ポイント事業主との連携です。代表3社を以下にまとめています。

さらに、この3社に加えて、NTTドコモの「dポイント」の展開も影響力が増してくるでしょう。

2015年12月にサービス開始とやや後発の「dポイントクラブ」ですが、2018年5月1日にリニューアルされ、会員数は約6,500万人(2018年3月現在)を誇ります。これまでは回線契約を前提としたNTTドコモユーザー向けの限られたプラットフォームでしたが、これからは「会員」を基盤としたお客さまへの価値提供を強化していくようです。

表1 共通ポイント3社の比較
ポイント名TポイントPontaポイント楽天スーパーポイント
カード名TカードPontaカード楽天ポイントカード
発行主CCCマーケティング株式会社株式会社ロイヤリティ マーケティング楽天株式会社
サービス開始2003年10月2010年3月2002年11月
※リアルでのサービス開始は2014年10月
会員数6,540万人
(2017年12月末時点の名寄せ後の数字)
8,539万人
(2018年1月末時点)
1億1,489万人
(2016年12月末時点の楽天会員数)
加盟店数775,133店舗
(2017年12月末時点)
約2万3,400店舗
(2014年11月1日時点 ※筆者の独自調査)
約1万2,000店
(2014年 ※筆者の独自調査)
提携先
  • TSUTAYA
  • ファミリーマート
  • ガスト
  • ENEOS
  • ドトール
  • マルエツ
  • ANA
  • ソフトバンク
  • ヤフー
  • 東京電力
  • ローソン
  • 日本航空
  • ケンタッキーフライドチキン
  • リクルート
  • 昭和シェル
  • 楽天グループ各社
  • サークルKサンクス
  • ミスタードーナツ
  • 出光
  • 大丸
  • プロント

なお、自社でポイント制度を立ち上げるのが良いか、共通ポイント事業主と提携するのが良いか、それぞれ良い点と懸念点があります。事業計画段階でメリットデメリットも踏まえ、自社で行う場合のあるべき姿を描きましょう。

[制度設計の準備]
どのような事業でもサービス制度設計のプロセスは共通

では、自社で会員サービスの制度を展開していくにあたり、何から手を付ければ良いのでしょうか。ここでは、制度設計のステップについて解説します。

メンバーシップマーケティングでは、集めたお客さまの情報を活用し、個別最適なアプローチでロイヤリティを上げていくことで、本来の目的である事業の発展につなげることができます。

わざわざ会員登録をしてくれたユーザーに、どのようなサービスを提供するべきか、この検討がもっとも重要です。

事業性、商品性、ユーザー像・層、何をユーザーへ提供していきたいのかによって答えは多様で、一概には言えませんが、より喜ばれ、かつ独自性もあるサービスを提供することが理想となります。

一方で、制度設計のプロセスは、いずれの事業においても同じように進めることができます

図3~4は、サービス制度設計における、一般的なタスクとロードマップの例です。

事務局(顧客対応・運用)
全体戦略
システムインフラ
Webサイト・アプリ開発
CRMコミュニケーション
★プロジェクトキックオフ
戦略策定
要件定義
与件整理
STEP1.全体設計
ロードマップ策定
関係者調整
全体戦略策定
STEP2.個別戦術プロジェクト
要件定義
要件定義
制作物
CIガイドライン策定
要件定義
企画・設計
与件整理
要件定義
サービス設計・制度設計
設計・開発
基本設計・詳細設計
基本設計・詳細設計
実運用・バックシステム運用検討
システム開発・API開発
Web制作・システム連携
ツール類制作
全体進行管理・プロジェクトマネジメント
各種調整・リスクマネジメント
実装・単体テスト
事務局準備・運用マニュアル策定
テスト
テスト(運用・セキュリティ・パフォーマンス)
リリース
判定
事務局
教育
★サービスリリース
運用
プロジェクト推進(施策実施、チューニング等)
システム運用(メンテ、会員データ抽出、追加開発、状況に応じた更新等)
Webサイト運用(改修、機能追加等)
各種コミュニケーション運用
メール配信・登録促進
運用・稼働状況確認
図3 会員サービス/プログラム構築におけるタスク(大項目)の例
箱・仕組み
会員
運用
会員サービスによくある課題
制度設計・立ち上げに関する課題
ID統合に関する課題
会員サイト構築・改修に関する課題
システムに関する課題
各種施策に関する課題
集客・会員獲得に関する課題
会員マインド・育成に関する課題
運用に関する課題
効果・測定・分析に関する課題
その他もろもろな課題
ポイント制度を立ち上げたいが、何から手を付ければいい?
ブランドごとに異なるIDサービスを提供してきたが、統合したい
スマホファーストにしたい・スマホファーストに切り替えたい
DBがバラバラに存在していて、統合したいが…
店舗・流通側から施策への協力を得るのが大変
対象者に、なかなか登録してもらえない
会員インサイト・会員モチベーション把握ができていない
オペレーションが煩雑で平準化できない
KGI、KPIが曖昧
店頭への送客や店舗回遊、店頭購買に活用したい(O2O)
ポイントサービス開始に向けた事業計画を立てたい
ポイントサービスが、ECサイトや事業部会員サイトなどでバラバラ
アプリをつくりたい
アプリもつくりたい
情報システム部門と会話が通じない
会員セグメントに応じたレコメンドやコンテンツを発信したい(1to1)
会員を増やしたい
どの層に注力すべきか…
会員データを活用できていない
運用の人員が不足。
効率化したい
分析で何を見たら良いか分からない
グローバル対応したい
今のサイトを変えたいが、予算獲得のために改善案を出してほしい
社内関係部署・関係者が多く、足並み揃えるのが大変
社内の様々な顧客データの名寄せができていない
システムのセキュリティに不安がある
PDCAを回して施策の精度の高めたい
関与度の高い人に会員になってほしい
会員の育成戦略/CRMプログラムがない
発注先がバラバラで取りまとめが大変
BIツールを導入したが社内に分析できる人材がいない
広告収入を得るため媒体化したい
今のサイトを変えたいが、予算を付けるために協力してほしい
他社ポイントとの連携を考えている
施策が個別場当たり的で最適化できていない
どこまでのシステムが妥当なのか、判断できない
競合に比べて、どうなのだろう?
広告収入を得るため媒体化したい
一部の上位層しかアクティブ稼働していない
休眠会員比率が高い
MAを導入したい
どのような体制を組めば良いか
右肩下がり傾向にあるがどうしたらいい?
図4 サービス/プログラム構築におけるロードマップの例

通常、新しい制度を設計する場合でも、既存のサービスを改訂する場合でも、まずは大前提として、「何のためのサービスか」という目的を設定します。

最終的には事業成長を狙うのは当然ですが、そのために、「既存顧客を離反させずにLTVを上げる」「新規顧客を増やす」「店舗に足を運んでもらう」「ブランドを好きになってもらう」といった中で、どれが重要なのかを探る、ということです。

そのためには、顧客データや購買データ、現状のサービス利用状況など、各種データからのひも解きをして課題を洗い出し、それらの課題について目指すべき方向性に応じて優先順位を付け、現状のボトルネックや事業目標に対して実現できていないことなどを見つけ出します。

この段階を経て、事業計画やコストシミュレーションを行い、KGIやKPIも策定し、実際のサービス制度設計を具体的に着手、進行する流れとなります。

その「具体的に」が大変なのですが、筆者はこれまで、せっかく登録してくれたお客さまに個別にアプローチできるチャンスであるにもかかわらず、単なるプロモーションの一斉メールを送るだけにとどまっている例を数多く目にしてきました。

一方で、このような取り組みに十分な人と時間を費やせる企業は、ユーザーや顧客の重要性を理解し、大事にしているということであり、実際に多くのファンを獲得して事業成長につなげている事業主は、顧客と真摯に向き合っているからこそ成果を上げられる、と言えるでしょう。

[制度設計のポイント1]
プログラム設計は中長期の視点で考える

では、お客さまのロイヤリティ向上につながる魅力的な制度の作り方とはどのように行うのでしょうか。ここでは、制度設計のポイントについて説明します。

メンバーシップマーケティングの成功は、人々が「入会したい」と感じ、「ずっと会員でいると自分にとってメリットがある」と思えるような魅力を作り出せるかにかかっています。

たとえば、ANAなど航空会社のマイレージサービスであれば、上位顧客は明らかに(あるいは下位顧客には見えない部分でも)魅力的な優遇サービスを享受しており、これが上昇・継続のモチベーションとなっています

上位を目指すための「修行」や、本質的なサービスを受けなくてもメリットを受ける「陸マイラー」がマイル獲得に奔走するのも、ユーザーから見て上位クラスの魅力が格段に高いからであり、広く世の中にステータスとして認識されていることが大きいのです。

ひるがえって、1つのブランドサイトや小売りECで、そこまでの魅力的なサービスを提供できるものなのでしょうか。答えは「イエス」です。

制度設計には、事業規模が重要で、緻密に細かくOne to Oneアプローチをしていくことが最善とは、必ずしも言い切れません。一般的には、保有ID数や現状の売上利益などに基づいて、試算シミュレーションを数パターン作ることから始めます。その中で、具体的な制度仕様の青写真を描いていきます。加えて、関連法規による規制などにも配慮することが必要です。

また、自社の顧客戦略において、そもそも会員制サービスをする必要があるのか、それで何を得たいのか考え、自社内で認識を合わせることも重要です。

通常、顧客を優待するためのサービス制度設計では、図5のように、①顧客構造を把握し、②顧客のLTV最大化のために、何を行えばよいかを検討し、③具体的に設計していきます。

1.プログラム設計
①顧客構造把握
顧客データ基本集計・分析
EC・POS等購買動向分析
定性調査
顧客層振り分け・定義
②育成ドライバー(仮説づくり)
客層判別:牽引層/育成が望める層/見込み薄層
事業構造との照らし合わせ
育成ドライバー・ボトルネック要因検討
③プログラム設計
会員ランク定義
ランクごとのサービス設計
システム検討
ROI検討
事業試算シミュレーション
2.プログラム構築
3.運用改善
図5 サービス制度・プログラム設計のプロセス

実は、この点をあまり考えず、大手の共通ポイント事業者と提携してすべてを任せてしまい、本来なら自社に集まるべき顧客情報を共通ポイント事業者が取得しているため、顧客の把握に苦難する企業も少なくありません。

たとえば、2017年8月に三越伊勢丹グループにおけるTポイントサービスの利用終了が発表されました。

これまで、三越伊勢丹ホールディングスとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では、合弁でマーケティング事業を推進する新会社を設立。三越や伊勢丹での買い物にTポイントを付与・利用できる仕組みを2016年5月から導入するなど、当初は若年層を取り込む狙いなどがあったと聞いています。

その後、導入から1年が経過して撤退を決めた背景には、三越伊勢丹ホールディングスにはエムアイカード(エムアイポイント)という自社カードもあって利用者にメリットが伝わりづらい側面があり、思うような成果が得られないと判断されたのかもしれません。

もちろん、共通ポイント事業者と良好な関係を築ける方策もあります。時代の流れを踏まえ、いかに設計するかが成否のポイントになると言えるでしょう。

[制度設計のポイント2]
顧客層の構造を把握する

では、お客さまに、そのサービス制度を継続的に利用していただくために、何をすればよいのでしょうか。

顧客ロイヤリティを上げるために設ける顧客への優待基準として、次のような要素があります。

  1. 入会からの年数
  2. 購入金額
  3. 購入回数
  4. 蓄積マイル・ポイント数
  5. 来訪・ログイン回数
  6. 年会費や入会金の一定金額以上を支払
  7. 他者への影響度

顧客全体を俯瞰的に見たうえで優待基準を決めるために、現状の顧客構造を分析し、顧客をある程度の層に分類します。

図6は、とても基本的な顧客セグメントの例となります。

顧客育成にあたり
顧客育成
もちろん、全てに手を打てれば良いのですが
すぐに活性化できるのは誰?
すぐに・効果が上がる施策は何?
費用対効果が高いのはどれ?
どこを活性化すれば、ビジネスインパクトが大きいか?
超優良顧客
何度も、高額な買い物をしている
リピーター
恒常的に買い物をする
購入候補者
たまにチェックする
購入者
買ったことがある
動きなし
登録しただけ
何をゴールとして
①どのお客様に
②いつ
③なにを
④どのように
最優良化
継続購入
継続購入
購入経験
来訪
興味・関心
ずっとファンでいてもらう
他者へ影響を与えてもらう
もっと購入単価を上げる(購入点数増)
もっと購入回数を増やしてもらう
購入単価を上げる(購入点数増)
購入回数を増やしてもらう
買い物をしてもらう
Webに来てもらう
Webの様々なコンテンツを見る
Webの様々な機能を使ってもらう
商品を探してもらう
興味をもってもらう
当該ブランド商品に興味をもってもらう
優先順位を決めましょう。
図6 顧客構造化の基本例

次に、各顧客層に応じて、上の段階へ進んでいただくために何をすれば良いのか、理想を描き、それに対する課題や解決策を考えていきます(図7)。

各層に応じた多様な施策が考えられるが… 闇雲に手当り次第実施はできない。
顧客育成
超優良顧客
何度も、高額な買い物をしている
リピーター
恒常的に買い物をする
購入候補者
たまにチェックする
購入者
買ったことがある
動きなし
登録しただけ
最優良化
継続購入
継続購入
購入経験
来訪
興味・関心
ずっとファンでいてもらう
他者へ影響を与えてもらう
もっと購入単価を上げる(購入点数増)
もっと購入回数を増やしてもらう
購入単価を上げる(購入点数増)
購入回数を増やしてもらう
買い物をしてもらう
Webに来てもらう
Webの様々なコンテンツを見る
Webの様々な機能を使ってもらう
商品を探してもらう
興味をもってもらう
当該ブランド商品に興味をもってもらう
考えられる多様な施策
優良顧客を手厚くもてなす&見える化
特別イベントご招待
優良顧客限定サービス
ポイントプログラム改訂
口コミ・SNS発信でインセンティブ
ユーザー相互コミュニケーション場づくり
優良顧客の声を魅力的に披露
クロスセル
セット買い推奨
あと○円で▼▼
レコメンド強化(さらに緻密な設計)
複数購入インセンティブ
頒布会
お楽しみ袋
○円以上でインセンティブ
期間内に○回買うとインセンティブ
WebとSMP(モバイル)と店舗、期間内いずれか○か所で購入したらインセンティブ
Web限定超おトク・超低価格なセット販売
初購入プレゼント
スマホ購入インセンティブ
MGMプログラム
Web来訪でプレゼント
コンテンツ閲覧、サービス・機能利用でプレゼント
コンテンツ・機能の紹介強化
アニバーサリー施策
話題づくり
ゲーミフィケーション的コンテンツづくり
(すべてにおいて)各種キャンペーン施策
図7 顧客構造化ののち、具体的な施策を検討

具体的な施策案を考えられるだけ洗い出し、実現可能性や費用対効果などから、施策の優先順位を付けていくのですが、魅力的なサービスや制度かどうか、One to Oneコミュニケーションでのアプローチに走る前に、十分に検討しきれていない例も散見されます。

課題の優先順位を付けていくと、どうしても「結果がすぐに出る改善」=「一番短期的に売上貢献できること」に着手しがちです。

しかし、ここでは全体を俯瞰して中長期の視点で考えることが肝要となります。

また昨今では、マーケティングオートメーション(MA)の導入が花盛りで、「ツールさえあればいろいろ試せる!」と施策内容そっちのけで導入したものの、結局使いこなせずにいる例も多いです(電通デジタルでは、そのような企業のMA活用サポートも数多く手がけています)。

あくまでもツールは手段であり、もっとも重要なのは「何を実現するか」「ユーザーにどのような気持ち・行動をもたらしたいのか」を考えることです。

[制度設計のポイント3]
会員の継続モチベーションを生み出す仕組みを忘れずに

制度設計における重要なポイントとして、通常、新しく会員登録するユーザーは、物理的なインセンティブを目当てに入会してくることがほとんどだという事実があります。

割引クーポンがもらえる人々は、先行セール案内などを目的に加入したり、あるいはキャンペーン応募の条件だからとりあえず登録したりします。

しかし、毎日のように通うスーパーやコンビニであれば加入し続けるメリットはあるものの、そうではないブランドサイトや小売りECなどの場合は、メンバーシップマーケティングをどのように機能させ、会員のロイヤリティを上げていくのかをよく考える必要があります。

メンバーシップマーケティングを機能させる要素、つまり会員であることを継続したいと思ってもらうための基本的な要素は6つあり、展開するサービスに応じて付加要素を取り入れます(図8)。

基本的な要素
コンセプト
明快なコンセプト
可視化
効果を確認でき、直観的に「いい!」と感じられる表現
必要に応じて選択する要素
エンターテイメント
楽しめる場であること
楽しめるものがあること
協力
(他の)会員と助け合うこと
インセンティブ
会員を動かすための刺激
物理的な報酬・心理的な報酬
知識提供
会員が必要な・興味のある知識・情報
目標設定
達成可能な目標を提供すること
励まし
(他の)会員をサポートしたり、相談に乗ったりすること
パーソナライズ
各会員1人1人に合ったサービス提供
サプライズ
会員の想像を超える、期待をいい意味で裏切るモノ・コト
ソーシャルグラフ形成
サイト内、サイト外での他者とのつながりがあること
競争
他の会員の状況との比較ができ、競い合うこと
図8 メンバーシップマーケティングを機能させる要素

さらに、継続モチベーションの向上と保持には、「物理的なインセンティブから心理的なインセンティブへの転換」が重要となります。

長期的にロイヤリティの醸成を図り、企業と顧客との絆を形成するモデルを、電通デジタルでは「絆形成モデル」と定義しています(図9)。

長期的にロイヤリティの醸成を図り、企業とお客様との絆を形成するモデル
継続モチベーションを、ポイントや割引などの物理的インセンティブから
自己実現欲求や承認欲求などを満たすような心理的インセンティブへとスライドさせる設計が必要
最初はモノ目当てで入会したけれど
オファー・特典
ランクアップ
よりおトク
サプライズ
メンバーシップ プラットフォーム
物理的インセンティブ
継続モチベーション
入会
購入に必要
心理的インセンティブ
楽しみ
パーソナライズ
よろこび
私に合う
続ける喜びがある。
自分に合っている。
図9 会員サービス/プログラムを機能させる「絆形成モデル」

「絆形成モデル」では、おトクさを感じられるクーポンや、何かがもらえるかも!といったキャンペーン展開(これらが「物理的インセンティブ」)などで会員化を促し、会員数を増やしつつ、会員サービスを提供するプラットフォームの中で、会員顧客が次第に「この会員でいることは自分にとって良いことがある」と感じさせる(これが「心理的インセンティブ)へ転嫁させていく構造を作ります。

継続モチベーションを、ポイントや割引などの物理的インセンティブから自己実現欲求や承認欲求などを満たすような心理的インセンティブへとスライドさせるような制度を設計し、また、制度自体を進化させていくことに、筆者も日々取り組んでいます。

[効果測定]
「何をもってユーザーに喜んでもらうのか」を自社基準で定義

もちろん、制度を立ち上げて終わりではありません。ここからが本当の始まりです。次に、施策展開後の効果測定について解説します。

ECなど、購買がともなう場合の顧客分析手法として、RFM分析を行う事業主は多いです。また、マインドを図る指標としてNPS(ネットプロモータースコア)を見ている企業も多いです。ただし、それだけを指標とすると結論が偏るおそれがあります。

重要なのは、自社なりの基準をまず決めることと、決めたら継続的に定点観測を続けていくことです。「この事業は、何をもってユーザーに喜んでいただくのか」という定義付けが必要です。

たとえば、サービスの存在意義や目的を「ユーザーが欲しい情報を高い鮮度で届けること」と規定するならば、発信している情報が有用か、既視感のある情報になっていないかを測る必要があります。

また、「楽しく買い物をしてもらうためのサービス」と規定するならば、購買につながったかは当然としても、どのくらい楽しんでもらえたか、類似競合サービスと比べて楽しめるところが多いかなどが継続指標になります。

顧客アンケートなどで四半期・半期ごとに定点観測して施策をチューニングし、顧客に寄り添ったサービス提供を行うことで、持続的な事業成長につなげていく、それこそがメンバーシップマーケティングなのです。

[まとめ]
成果が出るまで長期間の取り組みが必要だと心得る

CRM領域の中でも、メンバーシップマーケティングは長期に渡り続いていく、気合と熱意が必要なチャレンジです。

成果が出るのに時間がかかるため、社内への説得や予算確保にも奔走しなければなりません。

しかしながら、自社ならではのサービス開発は、仕組みづくりにおける一定のセオリーに則ることで失敗のリスクを激減させます。また、他業種・他社の新たなやり方を知ることで、ヒントが得られることでしょう。

顧客課題を抱えていらっしゃる皆さまの地道な努力と熱意を応援します。

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