初代編集長ブログ―安田英久

人間は幸福度が高いとモノを見つけやすくなる――UXに活かせそうなNICTの研究結果

ページ表示速度や誘導につかった広告クリエイティブで、サイト訪問者の幸福度が変わって視覚探索に影響が出ている可能性も
Web担のなかの人

今日は小ネタです。「人間は、幸福度が高いときは、ターゲットを見つけるのが早くなる」そうした研究結果を、NICTが発表しました。これはUX改善にも参考になるのではないでしょうか。

人の幸福度が、障害物の中のターゲットを探す速さに現れる

日常生活の中で刻々と変化する人の幸福度が、障害物の中のターゲットを探す速さに現れることをスマホアプリを使って実験的に明らかにしことを、NICTとアストン大が発表しました。

「視覚探索」は、雑踏の中で友人や子どもを探したり、ショッピング中に欲しい物を探したりするなど、人にとって基本的で重要な機能の1つです。

NICTとアストン大の研究によると、この「視覚探索」機能に、その時に感じている幸福感(幸福度)が影響するということです。

研究では、独自のスマホアプリを開発し、日常生活で刻々と変化する「人の幸福度」を記録すると同時に、視覚探索課題を遂行することを可能とし、これにより、幸福度の高低が視覚探索課題の速度に影響を与えることを明らかにしました

NICT発表資料より

下側の四角のマーカーで示されているのはコントロールとして行ったもので、幸福度によって腕や指の動きが速くなったわけではないことを示している。

つまり、「幸福度が高いほど、障害物の中のターゲットを早く見つけられる」ことがわかったのです。

幸福度によって視覚探索に影響があるのならば

この研究自体は、「視覚探索課題のパフォーマンスを継続的にモニタしていけば、うつ病などの心の病気の兆候を見つけられる」というものです。

しかしこの研究から得られる知見は、Web担当者にとっても価値があるのではないでしょうか。

もちろん、サイト訪問者のキモチがハッピーな状態なのかどうかは判断できません。

しかし、たとえば「ページの読み込みに時間がかかると、訪問者がイライラして幸福度が下がり、本来なら見つけられたはずの注意書きやお知らせを見つけにくくなる」という観点ではいかがでしょうか。

ECサイトでも企業サイトでも、サポートセンターへの問い合わせ内容をみて「それ、サイトに書いてあるんだけどな」ということは、よくありますよね。

根本的には、ユーザーが認識しやすいように掲載場所を調整するのが正しい対応でしょう。

でも、サイト表示速度などのちょっとしたストレスのせいで視覚認識にマイナスの影響が出ているとしたら、もったいないことですよね。

ページ表示速度を改善してユーザーの快適さを向上させると、ユーザーは目当てのものをすばやく見つけてコンバージョンに進んでくれるかもしれません。

ほかにも、テレビCMやバナー広告からサイトに誘導する際にも、そのクリエイティブによってユーザーの幸福度に何らかの影響が出ているかもしれません。

広告クリエイティブで、すごく好きなアニメのキャラやタレントさんが、そのファンにとって好ましいステキな状態で出ていたら、もしかしたらサイト訪問時にユーザーの幸福度が上がった状態になっているかもしれません。そうならば、よりサイト内の適切なコンテンツを見つけやすくなっているでしょう。

NICTの研究結果からは上記のようなことがそのまま「有り得る」と導き出せるわけではないので、あくまでも推測ではありますが、こうした研究結果をもとにユーザー体験を改善していくというのは、いかがでしょうか。

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