「香り」と「スピード感」には関係あり? バニラの香りがすると動きを速く感じる【NICT調べ】
情報通信研究機構(NICT)は、“香りで映像のスピード感が変わる(低次の感覚)”現象を発見した。今回の研究では、「ヒトはレモンの香りがともなうときは、映像が遅く、バニラの香りがともなうときは、映像が速く見える」現象が確認された。
この研究では、“香りで映像のスピード感が変わる”という、新しいクロスモーダル現象を発見したという。「クロスモーダル現象」とは、視覚と味覚、視覚と聴覚など、異なる感覚がお互いに影響を及ぼす現象を指す。クロスモーダル現象において、「香りで感情や記憶が呼び覚まされる」といった高次の脳機能ではなく、「映像のスピード感が変わる」という低次の感覚が変わることが発見されたのは、世界初とのこと。
香りを漂わせることで体感速度を加速・減速できる?
今回NICTは、心理物理実験の手法やfMRI実験(functional MRI、MRIを使って脳活動を調べる手法)を駆使することで、香りで映像のスピード感が変わることを科学的に実証した。
具体的には、実験参加者は画面に小さな動く白点が出る前に、1秒間、レモンかバニラの香り、もしくは無臭の空気を噴射される(NICT発のベンチャー企業「アロマジョイン」のAroma Shooterを使用)。その後、1秒間提示されるモーションドットが速かったか遅かったかをキーボードで回答した(わからない場合でも、速いか遅いかの二択)。
その結果、同じ速さでも、レモンの香りがともなうときは遅く、バニラの香りがともなうときは速く感じることを発見したという。
心理学の問題では「レモンは速いか遅いか」という問いに、多くの人が「レモンは(どちらかといえば)、速い」と答えているにもかかわらず、実際の香りを感じた場合は、動きを遅く感じていることが明らかとなったことについて、NICTは「クロスモーダル現象とは何か、感覚とは何か、ヒトの情報処理の特性を知る上で、今回の研究結果は非常に示唆に富んだ研究成果である」としている。
NICTでは、「香りによって、なぜ映像のスピード感が変わるのか」「変わる理由は、時間感覚が変わるからか、注意の配分が変わるからか」など、その詳細なメカニズムを引き続き調査するとしている。なお本成果は、2021年8月2日に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Neuroscience」に掲載された。
五感の1つ「臭覚」についても「香りがするコンテンツ」がさまざまに開発されており、重要な課題となっている。今回の調査結果をWebコンテンツに応用するなら、香りの発生装置を使うことが前提になるが、コンテンツ内容や読み込み速度に合わせて、香りを漂わせると言ったことが、将来的な可能性としてありえるかもしれない。
調査概要
- 【香りの強度】レモン、バニラが各2段階(レモン100%、レモン50%、バニラ100%、バニラ50%)
- 【モーションドットの速さ】7段階
- 【実験回数】参加者は休憩をとりながら、計525試行の実験を実施
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