いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本(全11回)

サイト担当者が知っておくべき法律「著作権」「個人情報」「表現に関する規制」を紹介 #11

Webサイトの担当者が知っておきたい法律について紹介します(最終回)。
いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本

この記事は、書籍『いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

Webサイトは全世界に公開されており、誰もが見ることができます。気軽な気持ちで行ったことが、大きな波紋を呼んだり問題を引き起こしたりすることもあります。ここでは、運営時に気をつけるべき「著作権」「個人情報」「表現に関する規制」について理解しましょう。

Chaper 2 オウンドメディアを正しく運用しよう
Lesson 20 [オウンドメディアと法規制]
オウンドメディア運営において気をつけるべき法律

○無断コピー、無断利用はNG!

デジタル時代の特徴のひとつに、「複製が容易になった」ことがあげられます。音楽、写真、イラスト、文章など、アナログ時代には相応の時間と費用をかけなければ複製できなかったものが、デジタルデータでは容易に大量にコストも低く、しかもほとんど劣化することなく複製できてしまいます。

またインターネット上のデータは、ネットにつながっていさえすればどこからでも容易にアクセスできます。検索で調べた説明文の一部や、画像検索見つけた写真やイラストなどをコピーするのも簡単です。

しかし、文章や音楽、写真、イラストなどの著作物は、著作者の権利が保護されているので、無断で使用してはいけません。オウンドメディアで使用する著作物は、自社で作成したものか、正しく権利処理されたものだけを利用するものとしましょう。

クリエイティブコモンズについて

著作権の保護は重要ですが、音楽や画像などをすべて自前で制作するのは大変です。その場合、インターネット時代の著作権のルールとして、権利を保護したままで作品をより多く流通させようというコンセプトの「クリエイティブコモンズ(CC)」という考え方があります。CCライセンスの著作物は、比較的自由な利用が認められていますが、著作権が放棄されているわけではないので、十分にルールを理解して利用しましょう。

▼クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは
https://creativecommons.jp/licenses/

○個人情報の取り扱いポリシーを定めて公開しよう

個人情報とは、氏名、生年月日、住所、連絡先、など、個人を特定できるものことをいいます。企業としてはさまざまな活動の中で、名刺や問い合わせ先の管理など、何らかのかたちで個人情報を取り扱っています。

インターネット上で商取引を行わない企業であっても、サイト内に問い合わせフォームを設置して問い合わせを受け取ることが多いでしょう。その際には、問い合わせ内容に加えて企業名、担当者名、連絡先などの個人情報も記載してもらうことがほとんどです。

したがって、すべての企業が個人情報に関するポリシーを定めて、社員や社外に対して宣言を行う責務があるといえます

個人情報の取り扱いに関するポリシーを企業として定めて、サイト上に公開しましょう。

▶個人情報保護方針の例 図表20-1
アイレップの個人情報保護方針
http://www.irep.co.jp/policy/

個人情報の取扱方針のひな形(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_house/pdf/009_s15_00.pdf

個人情報保護(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/

プライバシーマーク制度について(一般社団法人日本情報経済社会推進協会)
https://privacymark.jp/

▶個人情報保護法の参考資料 図表20-2

会員登録などがなく、個人情報を明確に取り扱わないWebサイトでも、プライバシーポリシーは掲示する必要があります。

○サイト上や広告の表現は「消費者保護」に注意する

企業が自ら運営しているサイトだからといって、商品の説明やサービス内容について、自社に都合のいいことをなんでも書けるわけではありません。

実際の商品よりも大げさに特徴を表現していたり、虚偽の内容が書かれていた場合には、消費者は多大な不利益をこうむることになります。そのため「消費者保護」の趣旨を理解し、企業としての社会的責任を常に意識するようにしましょう。

消費者保護の観点ではさまざまな法律が定められていますが、特に次に解説する「景品表示法」は、Webサイトの運営にも深く関わってきます。

そのほか、医薬品、化粧品、健康食品、特定保健用食品などを取り扱う場合には「薬機法(医薬品医療機器等法)」を確認する必要がありますし、広告などで他社商品と比較をする場合には比較広告についての取り扱いや表現について注意が必要です。

消費者トラブルに知らず知らずのうちに加担してしまうことがないように、消費者保護のルールをしっかり理解しておきましょう。

○景品表示法のポイント

景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。

景品表示法は、「より良い消費をしたい」「商品を購入する際には、失敗したくない」と考える消費者を保護するために、消費者の選択を誤らせてしまうおそれのある行為を制限し禁止する法律です。

特に「商品の説明に関すること」と「キャンペーンなどの景品の規制に関すること」の2つが、マーケティング業務に関わってきます。

①商品の説明に関する「有利誤認」と「優良誤認」

有利誤認」とは、自社の提供する商品やサービスの取引において、価格や条件などが通常の場合や競合他社に比べて著しく有利であると、誤って理解させてしまうことをいいます。

一方、「優良誤認」とは、自社の提供する商品やサービスの取引において、品質や規格などが実際のものや競合他社と比べて著しく優良であると、誤って理解させてしまうことをいいます。

▶有利誤認の例 図表20-3
▶優良誤認の例 図表20-4

有利誤認と優良誤認は、間違って行った場合でも故意で行った場合と同様に規制されるので、注意が必要です。

二重価格の表示

有利誤認を起こしやすい表示として、「二重価格」があります。二重価格の表示そのものは禁止されているわけではありません。

しかし、機能や性能が単に似ているからといって別の商品の価格を比較対照価格(参考となる別の価格)としてしまう場合や、過去や将来の価格を比較対照価格とする場合、またメーカー希望小売価格を比較対象とする場合なども、その内容によっては不当表示に該当するおそれがあります。

特に以下の図のように、値下げの前の価格と後の価格を同時に表記しようとする場合には、最近相応期間にわたって値下げ前の価格で販売されていたとみなされないと、不当表示とされるおそれがあります。

②キャンペーンなどの景品に関すること

景品表示法上の「景品」とは、店舗への誘引やWebサイトでの販売、会員登録などを促進させるための手段として、取引に関連して、消費者に商品やサービスなどのメリットを提供するものです。

また、商品・サービスの利用者に対し、くじや抽選などによって景品類を提供することを「懸賞」といいます。過大な景品の提供は消費者を惑わせる可能性があるため、景品の内容は規制されています。

景品や懸賞の例としては、買うと必ずもらえる「総付け景品」、ポイントを貯めてもらえる「一般懸賞」、クイズに答えて誰でも応募できる「オープン懸賞」などがあります。

また、商店会など複数の主体者が共同で行う「共同懸賞」もあります。

それぞれ、懸賞の内容や取引金額によって、提供可能な景品の最高額や総額に上限があるので、懸賞キャンペーンを実施する際にはその内容が規制内に収まっているかどうかの確認が必要です。

▶キャンペーンなどの景品規制 図表20-5
▶懸賞規制の例 図表20-6

参考:

「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)消費者庁
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_35.pdf

よくわかる景品表示法と公正競争規約(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/110329premiums_1.pdf

事例でわかる景品表示法 - 消費者庁
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0001.pdf

早わかり改正薬事法のポイント
http://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/45550/45550.pdf

比較広告に関する景品表示法上の考え方
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_37.pdf

  • 著者:田村 修
  • 発行:株式会社インプレス
  • ISBN:9784295002307
  • 価格:1,980円+税

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