初代編集長ブログ―安田英久

Webも広告もECも、業界で自浄しなきゃ法律でがんじがらめにされちゃうよ

業界による自助努力・自浄作用がなければ、もっと厳しい法律による規制が導入されて非常に面倒なことになるのです
Web担のなかの人

今日は、短いけど重要なことです。ネット広告など業界団体があり、さまざまなガイドラインを作っていますが、これは不要なことなのでしょうか。いえ。こうした業界による自助努力・自浄作用がなければ、もっと厳しい法律による規制が導入されて非常に面倒なことになるのです。

業界団体とかガイドラインって何のためにあるの? うざいだけじゃ?

ネットやオンラインビジネスに関する、さまざまな業界団体があります。

こうした団体のなかには、「ガイドライン」という形で、業界で守るべき規制を作っているところがあります。

わかりやすいところでは、JIAAが出している「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」や「ネイティブ広告に関する推奨規定」などですね。

団体が定めるルールに則った活動をしている事業者にのみ利用を認める「マーク」という形で、行うべきこと・行うべきではないことを浸透させている団体もあります。

業界団体というものは、上記やさまざまな形で「こういうことをしてはいけない」「こうするべきだ」と定めているため、「めんどくさいなー」「うざいなー」と思っている人もいるかもしれません。

では、こうした業界による努力がないと、どうなるのでしょうか。

それは、「法律による厳しい規制」「厳しい罰則の法制化」です。

現実にあった「法律による厳しい規制」の動き

行政は、消費者にとって不適切ではない状況があれば、それを是正しなければいけません。その手段の1つが「法制化」です。

たとえば、消費者契約法が昨年から見直しを進められていて、個人を認識しターゲティングするネット広告は「勧誘」と同等であるとして、消費者契約法の対象として厳しいルールが定められそうになっていました。

結果として今回の見直しではその内容は見送られたようですが、いつ何時こうした法律による規制が増えるとも限りません。

業界団体や業界の代表企業は、事前に行政とやりとりし、こうした規制をどのように行うべきか、具体的な規制をかける前に状況を改善できないか、協議しているのです。

行政としても、本来ならば法律を増やしたり規制を増やしたりするのは、本当はやりたくありません。ですから、業界団体などと協力しています。自主規制やガイドラインによって、結果として問題がない状況になれば、法律を作らなくて済みますからね。

業界団体というもの、そして業界団体がつくる「ガイドライン」「推奨規程」というものは、こうした「法律による規制の防波堤」としての役割もあるのです。

ヤフーさんが最近ステマをやってるメディアを配信元から外しましたが、これも大手としての自浄のための動きだと考えていいでしょう。

ソーシャルゲームのガイドライン(ガチャ規制)も、遅きに失してはいますが、同様の動きですね。

こうした動きは、法律で身動きがとれなくなる前に業界として「消費者にとって不利益な状況」を改善するためのものという側面があるんですね。

法律としてちゃんと定められるほうがいいのでは?

こうした背景を説明すると、こんな風に思う人もいるかもしれません。

中途半端にガイドラインとかマークにするよりも、法律として作っちゃうほうが正しいのでは?

間違ってはいません。でもね、特にネット関連では、法律として作ってしまうと、こうなるのです。

  • まっとうなところは、法律でしばられて、以前よりも効率が悪くなる
  • まっとうでないところは、法律なんて気にせず、無茶をし続ける

そう。世の中には「金さえ稼げればモラルも法律も関係ない」という人はたくさんいるため、法律ができたとしても、そういう人たちは、あまり変わらないのです。

そしてその分、正直に法律を遵守している組織が割を食う結果になり、社会全体の効率が悪くなるのです。

もちろん、摘発されたり指導されたりすればそうした悪質な組織は間引けますが、社会的に大きな問題にならない限り、積極的にそういう動きにはなりませんからね。

◇◇◇

リアルだけでビジネスが動いていた時代と比べて参入障壁が非常に低いネットでは、ガイドラインや業界の自助努力・自浄作用を無視して自分に都合の良い動き方をする企業を排除するのは、なかなか難しいものです。

今はマシになりましたが、一時期のSEO業界は、本当にひどい企業が多かったですよね。業界団体っぽい名前で活動している組織がスパムを行っていた業界なんてのもありましたね。

Web担当者のみなさんも、「Web」「広告」「マーケ」という社会の一員として、自社の利益だけで判断するのではなく、「業界がどのように健全に発展していけるか」に関しても、少し意識を向けてくださいませ。

そうすれば、誰も得しない法律が作られて日本の効率が悪くなるということを、少しでも防げるのではないでしょうか。

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