「今どきのワカモノ」は数年後の顧客かも? 企業が知っておくべき若者の6つのセグメントとは
- 今どきの若者は何を考え、どう行動しているのか?
- 企業は若者とどのように接点を持ち、アプローチすればいいのか?
「今どきの若者は何を考えているかわからない」そう考えてはいないだろうか?
6月7日、ビデオリサーチの「ひと研究所」が「若者」をテーマにしたセミナーを東京・丸の内で開催し、「企業がどのように若者にアプローチしていけばいいか」が語られた。
第一部では同社の若者研究チーム「VRわかものラボ」リーダーの石倉裕大氏が研究成果を発表。第二部では資生堂ジャパン、日本コカ・コーラ、ディー・エル・イー3社の事例紹介が、第三部では「若者」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。
ここでは、第一部の内容を中心に「企業が若者にアプローチする方法」をお伝えする。次の図は、石倉氏が第一部で紹介した「若者の6つのセグメント」を表したものだ。
若者が普段のマーケティング対象ではない企業の担当者にとっても、新しい視点を得るきっかけとなるのではないだろうか。
若者は自ら「枠」を作り、その中で生活している
第一部はビデオリサーチの石倉裕大氏が登壇。石倉氏は、まず若者の定義を「自分の意思で消費を始め、価値観を形成する18歳~24歳」と定めたうえで、「今どきの若者が見えにくくなっている」と語った。
その理由は、次の要因による「同調圧力による自由度の低下」にあるという。
- 目に見える差が減った「消費社会の成熟」
- 「社会保障不安」による無理して背伸びしない考え
- 競争を避けて調和を優先する「ゆとり教育」
- SNSに行動や発言のログが残る「デジタルネイティブ世代」
その結果、若者の間では「空気の読み合い」が強まり、「若者は自らマナーや不文律の「枠」を作ってその中で生活している」とした。枠の中であれば仲間から後ろ指をさされる心配がなく、逆にその枠から外れる行為や枠外にあるものは嫌う傾向があるという。
若者が作った枠を外からの力で動かすことは難しく、それゆえに企業から若者へのアプローチは難しい。しかし、5年や10年という長い目で見たときに、今から若者と接点を持っておくことや若者にファンになってもらうことは無駄ではないはずだ。
石倉氏は、企業が若者にアプローチするには、外から力をかけるのではなく「枠の中に入り込む」ことが必要だと説明。
若者のスタイルをきちんと理解して枠の中に入ることで、枠の内側からその枠を拡げたり、越えたり、壊したりできるようになる。それぞれ、次の例を挙げて説明した。
- 枠を拡げる: 「あまり飲めない」人の枠を少し拡げたサントリー「ほろよい」
- 枠を越える: イベントを理由にそのときだけいつもの枠を少し越える「ハロウィン」
- 枠を壊す: 見たら発言が消えるという安心から枠を少し壊した「Snapchat」
しかし、遠目で見ると同じ枠の中にいる若者でも、近寄って見ると均一とは限らないと補足。一人一人を見ると若者は多様化しており、企業から画一的にアプローチするだけでは枠を動かすことはできないという。
多様化する若者を分類する6つのセグメント
それでは、企業はどう若者にアプローチすればよいのか? 石倉氏は、興味・関心や物事のとらえ方を軸に若者は6つのセグメントに分類でき、それぞれ響くアプローチ方法が異なると語る。
前向きオープンマインドタイプ
自分に対する意識が高く、上昇志向も高め。自分の意見や考えを持ち、発信力もある。消費も活発で、新商品に対する興味もある。
このタイプに響くアプローチ
「東洋経済で紹介された」など、自分を高めてくれる「権威」のアプローチ。
ノリノリオープンマインドタイプ
コミュニケーションが活発で、自分と周囲が楽しいかどうかを重視。話題のイベントで盛り上がるのが好き。おしゃれや美容にこだわりがある。
このタイプに響くアプローチ
USJやオクトーバーフェストなど、自分と周囲が楽しくなれそうな「ノリ・勢い」のアプローチ。
優等生オープンマインドタイプ
何でもそつなくこなす優等生。環境に恵まれており、ガツガツしていない。消費力はあるものの、ブランドに関する意識は低め。大きな変化に対して積極的ではない。
このタイプに響くアプローチ
自分の地位をしっかり固める「老舗・手堅さ」のアプローチ。
リアリスト協調タイプ
周りにうまく合わせて行動し、良い意味で現実的。他の人がどのようなことをしているのか気になり、流行などの情報を追いかける。友人にすすめられたものやことが好き。
このタイプに響くアプローチ
周囲の意見を取り入れるので、オープンタイプが動けばこのタイプも協調する。
もやもや協調タイプ
周りに合わせてはいるものの、自分の現状に満足できていない。どこかもやもやしているが、行動力はあまり高くない。商品やサービスを比較はするが、自分で明確な基準は持っていない。
このタイプに響くアプローチ
明確な基準を持っておらず周囲に合わせざるを得ないので、オープンタイプが動けばこのタイプも協調する。
マイウェイタイプ
自分の好き嫌いが判断基準で、趣味にお金をかける。インターネット上の同じ趣味のコミュニティには積極的に参加するが、全体に向けての発言力は低め。物事を自分の意思で選択・判断する。
このタイプに響くアプローチ
周りに流されにくいタイプだが、オープンタイプと協調タイプが行動を起こせば「判断する基準」を作ることはできる。
企業が若者にアプローチするには、まず興味・関心が広く発言力がある3つのオープンマインドタイプを動かすことが重要だと石倉氏。オープンマインドタイプが動けば、2つの協調タイプもそれに合わせてついてくるという。
タイプごとに反応するアプローチが異なるので、どのタイプからどういう反応を引き出すか、その工夫が必要だとした。
3社の事例紹介とパネルディスカッション
第二部は、若者へのアプローチを実践した3社の事例を紹介。各社の担当者が成功事例を語った。ここでは、事例のみを簡単に紹介する。
第二部 事例1: 資生堂「High School Girl?」は940万回再生
資生堂ジャパンの仙田浩一郎氏が登壇し、YouTubeに公開した「High School Girl?」と、MixChannelで行った「メイクでヘンシン! コンテスト」の2つの事例を紹介した。
「High School Girl?」は、若者のメイクへの興味・需要喚起を狙ってしかけたもの。当初は100万回再生を目標にしていたが、ネット媒体での掲載やマスメディアでの紹介というプロセスを経て最終的に940万回再生となった。
「メイクでヘンシン! コンテスト」は、若者自身の「投稿」をきっかけに若年層とのファンコミュニケーションを狙ったもの。期間を学生が参加しやすい冬休みに設定し、トンマナも若者の文脈に合わせることを意識して、1万以上の投稿、総再生回数2000万以上、UUで72.5万人という結果となった。
第二部 事例2: 日本コカ・コーラ「コールドブリュー」で若者の投稿を創出
日本コカ・コーラの井田孝氏が登壇。俳優の山田孝之氏を起用したジョージアのLINEスタンプ、ジョージア プレミアムエールとかけてTwitterで若者に直接エールを送る試み、そしてまさに若年層をターゲットにした新製品「ジョージア コールドブリュー」の3つの事例を紹介した。
ジョージア コールドブリューは、雑味のない澄みきった味わいが特徴の、ボトルのデザインにこだわった新製品。インフルエンサーとなる有名人に先行試飲をしてもらい、それに反応したファンにインフルエンサーから直接先行試飲の案内をすることで、活発なやりとりが生まれたという。
また、デジタルだけでなく実店舗でもしかけを用意。5月に原宿で4日間限定のコールド ブリューカフェを開設し、訪れた若者から1,400以上のSNSへの投稿を創出した。
第二部 事例3: DLEの「貝社員」は日テレ「ZIP!」のレギュラー番組に
「秘密結社 鷹の爪」や「パンパカパンツ」などを制作し、IP(知的財産)ビジネスを手がけるディー・エル・イーの松本淳氏が登壇。若者の心をとらえて、日本テレビ「ZIP!」のレギュラー番組になった「貝社員」の事例を紹介した。
「小さく始めて大きく育てる」ことを狙い、貝社員はTOHOシネマズの幕間の放送からスタート。最初に反応したのはコアな若者で、肯定的なツイートをした人の中から10代の若者をピックアップして、特性とペルソナを徹底的に分析。何度もPDCAサイクルを回してチューニングすることで、日本テレビの朝番組ZIP!でレギュラー放送される人気コンテンツになったという。
第三部: パネルディスカッション
第三部では、登壇者4名にファシリテーターの亀田憲氏(ビデオリサーチ ひと研究所 所長)が加わり、第二部の事例を6つのセグメントに当てはめて分析しながら「若者」をテーマにディスカッションが行われた。
最後の「若者にアプローチするコツをひと言で表すと?」という質問に対しては、それぞれ以下のように回答。
- DLE 松本氏: いい波を探して乗りこなす「波ノリ」
- 日本コカ・コーラ 井田氏: 若者に気付いてもらうための「何これ? を創る」
- 資生堂ジャパン 仙田氏: 若者とコミュニケーションをとる「聴く→反応する」
- ビデオリサーチ 石倉氏: 若者と「真剣に向き合う」
石倉氏は、若者の文脈をきちんと理解すること、そして、若者自身がワクワクして自ら動いてくれるようなアプローチを考えることが大切だと述べてディスカッションを締めくくった。
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