アドワーズ広告に消費税がかかり、しかも広告主が納付しなきゃいけない!? リバースチャージ方式とは?

2015年10月からAdWords広告に消費税がかかるようになった。どんな影響があるのかまとめてみた。

2015年10月からGoogle AdWords広告の消費税に関して大きな変更がありました。あなたはご存知でしたか?

改正された法律の施行により、2015年10月1日以降のAdWords広告の料金に消費税がかかるようになったのです

しかし、すべての広告主が支払い対象となるわけではなく、企業の売上のうち、「課税売上割合」が95%未満の場合には消費税の課税は免除されます。

また、消費税の支払いが必要になる企業は「リバースチャージ方式」という方法で納付しなければいけないのです。

なんだか、聞き慣れない言葉がたくさんあってよくわかりませんよね。そこで、今回はWeb担当者として最低限抑えておきたい「AdWords広告の消費税」について解説します。

AdWordsの広告費にも消費税がかかるようになった!

2015年10月1日から改正消費税法(2015)が施行され、Google AdWordsなど海外事業者が提供するサービスの料金に「日本国内で利用される場合」には、消費税が課税されるようになりました

今まで海外事業者のGoogleが提供しているAdWordsの料金については消費税の課税や支払いについて明確な規定がなく、広告主も実質的に負担していませんでした。

月額の広告費が、数千円~数万円のときにはそこまで大きな影響は出ませんが、月額で運用する広告費が数百万円を超えるようなアカウントになると、この消費税分だけで数万円~数十万円の金額の差が出てきますので、広告利用者にとっては大事件です。

たとえば、次のような条件で運用していたとすると、160件もコンバージョン獲得の件数に差が出るのです。

月額540万円の予算、1件のコンバージョン獲得にCPA2,500円が必要な場合
【消費税がかからない場合】
540万円 ÷ CPA2,500円 = 2,160件 のコンバージョン獲得
【消費税がかかる場合】
(540万 - 40万) ÷ CPA2,500円 = 2,000件 のコンバージョン獲得

さらに、この差は1か月分なので、期間が長くなればなるほど、この件数の差は積み重なって大きくなっていき、長期的に見ると、売り上げにも大きな差が生まれてくるのです。

このように、今までかからなかった消費税がかかるようになるというのは、広告利用者にとってかなり大きな変更です。

と、ここまでAdWordsの料金に消費税がかかるようになるという話をしてきましたが、2015年10月からGoogleからの請求が10,000円ではなく10,800円になるのか? というとそうではなく、10,000円のままです

さらに現時点では、すべての広告利用者が消費税を支払う義務があるわけではありません。広告を使っている企業の売上のうち、「課税売上割合」が95%以上の場合には消費税の支払いが免除されます。この条件に当てはまらない広告利用者に消費税支払いの義務が生じます。

また、消費税の課税のされ方が、「リバースチャージ方式」という聞き慣れない方式になるなど、とにかくわかりづらいのです。

消費税の支払い対象事業者、リバースチャージ方式についてもう少し詳しく解説していきますが、なぜ突然、消費税を支払うことになったのかその背景から説明していきましょう。

AdWords広告に消費税がかかるようになったわけとは?

インターネット広告には、Google AdWords広告の他にYahoo!プロモーション広告などがあります。

しかし、Yahoo!プロモーション広告は日本に所在する、ヤフーが提供するサービスなので、その利用料金は消費税の課税対象です

つまり、Google AdWordsからの請求金額は広告費として使用した金額の実費のみがかかるのに対し、Yahoo!プロモーション広告の広告費には消費税がかかるので、その分だけ利用料金が割高になっていたのです。

同じようなインターネット広告を提供しており、しかもどちらも日本国内でクリックされ使用されている広告料金にも関わらず、消費税の課税の条件が異なっているために、価格競争力の点で日本の企業が不利になっていました

アドワーズ広告費100万円 消費税がかからないため全額広告費に。Yahoo!プロモーション広告 消費税がかかるため、広告費として使えるのは約92万円

さらに、もう一つの大きな問題があります。それは税収に関わる問題です。

日本で提供されているものと同等のサービスが消費税分だけ安く利用できれば、ユーザーは海外事業者のサービスに流れてしまいます。

すると、日本企業のサービスであれば課税できていたはずの消費税分の税収が、失われてしまう事態が起こっていたのです。

2014年にNHKニュースで報道された内容によると、

外国企業のインターネット取引において、去年1年間で247億円の税収が失われていたということが、民間シンクタンクの大和総研の調査でわかったという。なかでもGoogleがインターネット広告で得た2,669億円以上の売り上げに対する、133億円あまりの税収推定額が最も大きかったとのことだ。

とあります。

こちらは、2013年の試算ですので、市場規模がさらに大きくなった現在では失われた税収はさらに大きくなっているのは間違いありません。

国税庁もこの点についてずっと問題視していて、何とか対策をということで、改正消費税法(2015)を2015年10月1日から施行して、Google AdWordsの広告費にも消費税を課税できるようにしたのです。

AdWords広告に消費税を払わなければいけない事業者とは?

では、改正消費税法(2015)が施行された2015年10月1日以降は、AdWordsの広告費にも消費税を払わないといけなくなったのでしょうか?

結論からいうと、現時点でほとんどの広告利用者は、AdWordsの広告費にかかる消費税を支払う必要がありません!

これは、当面の間適用される「経過措置」によるもので、
AdWordsを使って広告費を払っている企業の売り上げが、「課税売上割合」が95%以上
の場合には、今回の法改正による消費税の支払いが免除されるからです。

この条件にある、「非課税売上」に該当するのは、次のようなものです。

  • 不動産の売買で生じた売り上げ
  • 医療機関などの売り上げ
非課税売り上げに該当する取引例、土地不動産、商品券・プリペイドカード、医療サービス、学校教育など
画像:Fotolia

詳しくは、国税局のHPの「非課税取引」についてのページで確認する必要がありますが、会社の売り上げのうち、「課税売上割合」が95%未満にならない限りは、AdWordsの広告費に対する消費税の支払いが免除されるのです

ただし、医療機関や不動産販売業者でGoogle AdWordsを積極的に利用している会社の場合、この「経過措置」が適用されない可能性があるので注意が必要です。

最終的には、顧問の税理士さんに確認をしてもらうのが一番確実ですので、一度確認をしておきましょう。確認したうえで、「課税売上割合」が95%以上の企業であれば、経過措置が終了するまでは今まで通りの運用方法で問題ありません。

では、「課税売上割合」が95%以上に満たない企業で、経過措置が適用されない場合はどのように消費税を納めるのでしょうか?

「リバースチャージ方式」での消費税の支払いとは?

「課税売上割合」が95%以上に満たない企業で、例外規定が適用されない場合、法改正によりリバースチャージ方式で消費税を支払わなければいけません。

また、経過措置も「当分の間」と条文に記載されているように期間限定のものなので、いつかすべての広告利用者がリバースチャージ方式での消費税の支払いを求められるようになるときが来る可能性があります。

いずれ必要になったときに、スムーズに対応ができるように、リバースチャージ方式での消費税の課税がどのようなものなのか解説していきましょう。

通常の場合、消費税は、「売り手」が預かって税務署に納付する形が取られています。

たとえば、Yahoo!プロモーション広告で、10,800円(税込※消費税率8%)の広告費を使った場合、内訳は次の通りです。

  • 10,000円が広告料金
  • 800円が消費税

このとき、消費者は800円の消費税を含んだ、10,800円をヤフーに支払います。「売り手」である日本の法人のヤフーが消費税を一旦預かって、最終的に申告納税をするのです。

ところが、これを海外事業者が提供するサービスに置き換えてみると、消費税を徴収するのはかなり大変です。

だったら「売り手」ではなく、「買い手」から消費税を支払ってもらうようにしよう、というのがリバースチャージ方式です

リバースチャージ方式では、「買い手」が、税金の申告納税をする必要があります。

ですから、Google AdWordsで10,000円の広告費を使った場合には、Googleに支払うのはあくまで

  • 10,000円の広告費

のみです。2015年10月以降も消費税分をGoogleに対して支払うことはありません

消費税分については「買い手」である広告の利用者が申告納税を行います。

事業者向け取引にかかる課税方式(リバースチャージ方式)、国内事業者が申請・納税を行います。消費者向け取引にかかる課税方式(国外事業者申告納税方式)国外事業者が日本の税務署に申告・納税を行います。
画像:Fotolia

このように、サービスの提供者や販売者でなく、サービスの利用者が税金を支払うのが、リバースチャージ方式での課税方式です。

経過措置の対象にならない企業や、今後経過措置が終了になる場合には、リバースチャージ方式での申告の方法を詳しく確認して対応するようにしてください。

詳しいリバースチャージ方式での申告の方法については、国税局のホームページにPDFで公開されています。

また、2015年10月1日から施行された、改正消費税法(2015)はGoogle AdWordsだけでなく、Facebook広告、Instagram広告などの他の海外事業者が提供する広告媒体でも同様に対象となるので注意してください。

将来的に消費税は10%になり、AdWords広告を利用する事業者すべてが課税対象になる

広告の運用者の立場からすると、消費税の負担が増えることはパフォーマンスを維持・改善していくうえで歓迎できませんが、そんななかでも成果を上げていけるように対応をしていかなければいけません。

今後、ネット広告からの新規顧客の獲得コストは高くなることはあっても、安くなることは時代の流れからして考えにくいのが現状です。よりインターネット広告が主流になれば、ライバル競争が激化しより獲得コストは高騰していくのが通常の流れでしょう。

獲得コストの高騰に加えて、消費税がプラスされていくわけですから、いかに最終的な顧客獲得コストが高騰したとしてもそれに耐えうるビジネスモデルを構築していかなければならないのです。

インターネット広告を適切に使うことはもちろんのこと、獲得コストの高騰にも耐えうるだけのリピート性の高いビジネスモデルや、ライフタイムバリューを意識したビジネスモデル構築が今後ネット広告を味方にしていくうえでの最重要課題になっていくことでしょう。

広告媒体の機能やルールのアップデートに敏感になるだけでなく、強固なビジネスモデル構築にも力を入れてみてください。

◇◇◇

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