効率的なWebサイト運用を実現するための5つの心得

Webサイト運用5つの心得―サイトの価値向上と運用効率化の両立は徹底した「顧客志向」の姿勢から

どのような「価値」を「だれ」に提供するのか。この2つを定めることがサイト価値向上への第一歩となる
小松夕祐(株式会社メンバーズ) 2015/9/9(水) 7:00 |
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Webサイト運用における5つの心得

前編で解説した心得

  1. Webサイト運用の課題を明確にし、向き合うことができなければ、“時代”の兆候に合わせた“新運用”は実現できない。

今回解説する心得

  1. “時代”の兆候だけに合わせてWebサイトを運用していても、“顧客”の兆候に合わせたWebサイト運用にはならない。

  2. “顧客”に対して自社のWebサイトが提供すべき価値が明確になっていない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を見出すことはできない。また、Webサイト運用における無駄を排除することもできない。

  3. “顧客”がだれかを設定しない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を実現することはできない。

  4. “顧客”を“点”としてとらえているだけでは、“顧客”との最適なコミュニケーションを行うことはできない。

効率的なWebサイト運用のためにWeb担当者が身に付けるべきものは、全方位的な対応能力ではなく、次々と発生するタスクの重要度や優先度を正しく見極め、「やる」「やらない」を都度判断していくことができる能力だ。

後編では、運用の効率化を実現しながら「Webサイトの価値をいかに向上させるか」という視点から、理想的な運用姿勢とそのために考えるべきポイントについて解説する。

冒頭で示した「Webサイト運用における5つの心得」を解説する本連載の前編では、「Webサイトの運用をいかにして最適化するか」という視点から課題解決のポイントを示した。具体的には、「達成要件の把握」と「運用プロセスの可視化&標準化」が鍵となる。

後編となる今回は、「Webサイトの価値をいかにして向上させるか」という視点から、心得2~5が示す意味について具体的に解説する。

効率的なWebサイト運用には「やるべきこと」の取捨選択が必要

心得の話に入る前に、効率化を目指さなければならない背景についてもう一度確認しよう。

昨今のWebサイト運用は、とにかく「やるべきこと」が多い。前編で解説した「運用」もさることながら、「ソーシャルメディアやペイドメディアなどのさまざまな種類のメディアへの対応」から「スマートフォンやタブレットなどのさまざまな種類のデバイスへの対応」「アクセスログを基にした現状分析から顧客ごとのパーソナライズ」まで、挙げるときりがないほど、Webサイト運用で「やるべきこと」の範囲と深さは日々増している

ThinkStock/iStock/Vectoraart

ここで大きな課題となるのが、企業のWeb担当者の体力である。多かれ少なかれ、各企業がWebサイト運営業務にかけられる体力は限られているのではないだろうか。

したがって、日々増加傾向にある「やるべきこと」を端から端まですべて対応することはほぼ不可能であり、取捨選択を余儀なくされる。取捨選択しなかった場合、すべてが中途半端に終わってしまい、“タスクをこなすためのタスク”となり、目的を見失ってしまうリスクまで発生する。

このような事態を避けるために、「やる」「やらない」を決める判断力が必要となるのだ。自社にとってより効果の高い取捨選択をするための判断基準や拠り所を見つけなければならない。この記事で紹介する5つの心得は、その助けとなるものだ。

Webサイトの価値を評価するのはだれか?
「すべてはユーザーベネフィットのために」を運用の拠り所とせよ

心得2
“時代”の兆候だけに合わせてWebサイトを運用していても、“顧客”の兆候に合わせたWebサイト運用にはならない。

心得3
“顧客”に対して自社のWebサイトが提供すべき価値が明確になっていない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を見出すことはできない。また、Webサイト運用における無駄を排除することもできない。

心得23が示しているのは、「顧客」という存在を無視してWebサイトの価値や運用効率化を議論しても意味がないということだ。この模範例ともいえるのが、世界中の数あるWebサイトのなかでも、特に多くのアクティブユーザー数および日々のトランザクションを抱えていると想定されるのがアマゾンだ。

書籍『ジェフ・ベゾス 果てなき野望によると、同社のスタッフは、14箇条あるリーダーシップ理念に基づいて業務に携わっているという。たとえば「倹約」の項目は以下のように書かれている。

※ブラッド・ストーン 著、井口耕二 訳、日経BP社 刊、2014年
倹約
顧客にとって意味のないお金は使わないようにする。倹約からは、臨機応変、自立、工夫が生まれる。人員や予算規模、固定費が高く評価されることはない。
(456ページより)

アマゾンのように、日々膨大なWebサイト運営業務があると想定されるなかで、効果的なタスクの取捨選択をするためにまず拠り所とすべきは、その業務指針にもあるとおり「ユーザーのベネフィットの有無」であり、「顧客志向」の徹底である。

当然だが、Webサイトにおける「価値」とは、企業や競合が判断するのではなく、Webサイトを利用しているユーザーが判断するものである。ユーザーの生活に対して、どのようなメリットをどれだけ与えることができるか。たとえば、コーポレートサイトにおいては、Webサイトに掲載されているFAQコンテンツによりユーザーが抱いていた課題が解決されることや、ECサイトにおいては店舗の営業時間を気にせず、いつでもどこでも商品を注文できるといったことが挙げられる。これが運営するWebサイトの「価値」そのものである。

価値向上と運用効率化のバランスが重要
あくまでも現実を踏まえたうえでのユーザー利益追求を

さまざまなテクノロジーの進化により、Web担当者としては試したくなる魅力的な機能やツールが多々存在する。その一方、「導入したものの、ユーザーへのメリットはあまりなかった」「導入後、運用負荷が高くなりすぎて使いこなせない」といった声もよく耳にする。

導入にあたっては、「ユーザーにとってどのようなメリットを提供できるものなのか」を考えることはもちろんだが、同時に「運用負荷はどれだけ増すのか」も具体的に見極めて、導入の要否を判断しなければならない。

いくら「ユーザーベネフィットのため」であっても、毎日のWebサイト運用という現実を無視することはできない。ユーザー利益の追求とは、実現・運用可能なWebサイトの目的と指針を明確にするという意味であり、やみくもにタスクを増やしてしまって、実現・運用ができないという状況になってしまっては本末転倒だ。逆にいえば、目的や拠り所の曖昧なタスクや実現性や運用が考えられていないタスクは、将来的なWebサイト運用において新たに積み重なる課題となり得るので注意しよう。

自社の顧客は“だれ”なのかを定義する

心得4
“顧客”がだれかを設定しない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を実現することはできない。

心得4が示しているのは、価値を評価してもらう「顧客」の具体像を明確にしないと、そもそもサービスや運用に落とし込めないということだ。

したがって、Webサイトの「価値」を向上させるサイト運用を実行するうえで最初にすべきは、「自社の顧客はだれなのか」を定義することで、いわゆる「ペルソナを描く」のだ。

ThinkStock/iStock/Aleutie
用語解説: ペルソナ

「ペルソナ」とは、象徴的なユーザーモデル(架空の顧客像)のこと。一般的には、調査データなどから得られた明確かつ具体的なデータをもとに設定される。ペルソナのプロフィールをWeb担当者間で共有して人物像への理解を深めることで、マーケティング方針を統一できる。サービス設計やWebサイト運用はもちろん、全体的なカスタマーエクスペリエンス向上のための施策でも重要な要素となる。

参考記事

「ペルソナデザイン」それはあなたのサイトを「ユーザー志向」にする最強の味方(Web担当者Forum)

サイトによっては、取り扱うサービスや商品のバリエーションが多岐にわたり、ペルソナとして定義する顧客のバリエーションが多くなることがある。もちろん、それぞれに担当者がいて、多数のバリエーションを網羅的に策定できるなら話は別だが、そこまで体力のある企業は多くない。それでもスムーズに導入するには、ペルソナのバリエーションを最小限に絞り込み、ミニマムスタートで集中的に検討することが解決の糸口になる。

この絞り込みを行う際のポイントには、次のようなものがある。

  • アクセスログからアクセスの多いコンテンツを利用するユーザーをペルソナとして落とし込む。
  • 企業とユーザーとのコミュニケーションにおいて、Webサイトがおもな接触ポイントとなっているコンテンツを利用するユーザーをペルソナとして落とし込む。
  • 企業にとってWebサイトにてビジネス成果をもっとも出しやすいユーザーをペルソナとして落とし込む。

最近のアクセス解析ツールには、サイトを利用しているユーザーの属性(年齢、性別、地域、趣味嗜好など)を統計的に把握できる仕組みを備えた製品もある。上記のようなポイントに基づいて、ペルソナを定義する際の参考データとして活用すると、より効果的だ。

また、想定したペルソナが想定したサイト行動を必ずしも取るということはなく、実際には想定もしていないサイト行動をしていたということも十分起こり得る。そのため、最初に設定して終わりではなく、ログデータなどを確認しながら軌道修正を継続的に実施するということが、ミニマムスタートを行う何よりも大きな理由である。

モバイルによって動き出したインターネットユーザー
状況と環境によって最適なコミュニケーションも変化

心得5
“顧客”を“点”としてとらえているだけでは、“顧客”との最適なコミュニケーションを行うことはできない。

ペルソナの定義ができたら、次はペルソナの行動について検討する。数年前までのインターネットユーザーには「動かない」という前提があった。インターネットを利用する場合には、家もしくは職場などの固定された場所で求める情報を検索するという利用方法が主流であったからだ。

しかし、スマートフォンやウェアラブルデバイスの登場と普及により、ユーザーは生活のなかで常時インターネットに接続できるようになった。ユーザーの生活におけるインターネットとの関わり度合いはますます高まっており、この傾向は今後も続いていくと考えられる。

心得5が示しているのは、まさにこの変化への対応だ。同一の顧客であっても、アクセスする場所や方法は1つではない(固定された“点”ではない)ということだ。

ThinkStock/iStock/Ellagrin

このように、ユーザーのインターネット利用状況が変化するなかで、Webサイトの「価値」を最大化するためには、どのような対応を行うべきであろうか。ポイントの1つは、ユーザーの利用デバイスである。

昨今のインターネットユーザーは、利用場所や利用シーンなど、用途ごとにデバイスを使い分ける傾向にある。

たとえば、入会申し込みなどの複雑なタスクが必要な場合はPCで操作を行い、メールやSNSなどのコミュニケーションに関するタスクはスマートフォンを利用する傾向が高い。このようなユーザー行動を前に、いわゆるマルチデバイス対応を欠くことは、ユーザーとのコミュニケーション欠落の直接的要因になる可能性が高い。

ここでのマルチデバイス対応とは、単純にWebサイトやアプリケーションをデバイスごとの操作性やデザイン性に最適化することだけを示すのではない。ユーザーがサービスを利用する各シーンにおいて、ユーザーが求める「コンテンツ」や「機能」が備わっているかという視点で考えることが重要である。

すなわち、単純に今までPC向けに提供していたコンテンツや機能を、ユーザーの利用シーンを考慮せずに、そのまま他のデバイスの操作性やデザイン性のみを最適化するだけでは、ユーザーニーズを満たすことができない可能性がある。

たとえば、リアル店舗を探しているユーザーに対して、これまでPC向けとして提供していた店舗案内(地図)コンテンツを、デザインのみスマートフォン向けに最適化したら、はたしてそれは真のユーザーニーズを満たすことになるのだろうか。

もちろん、PC向けのみに提供してスマートフォン対応が皆無というよりは、利便性は高いだろう。しかし、真のユーザーニーズを満たしているかという点では疑問が残る

ユーザーは、スマートフォンで店舗を検索する際の利用シーンとして、店舗案内を確認しながら店舗に向かっている可能性がある。このときに、ユーザーが真に求めるものは、現在地から目的の店舗までわかりやすくナビゲートをしてくれることである。

たいていのスマートフォンにはGPS機能が搭載されており、現在地の取得から目的値までのナビゲートをグーグルマップなどの標準搭載アプリで提供している場合が多い。したがって、ここで理想的な店舗案内コンテンツとは、スマートフォンのナビゲーション機能を活用するようなコンテンツであり、それはPC向けコンテンツとは異なるものだ。

真のユーザーニーズに対応するためには、ユーザーが求めている「体験」を考え、それに対するアプローチを実際のユーザー行動を思い描いたうえで、必要コンテンツや機能の設計を行っていくことが重要なのである。

インターネットによって顧客の思考は多様化
購買行動の判断軸は拡大するとともに個人志向へ

昨今インターネットユーザーの環境は劇的に変化している。デバイスやテクノロジー、メディアの進化により情報取得活動が以前と比べて容易になり、さまざまな判断軸を持つようになった。

たとえば、家電製品を購入する際に、今までは近くの店舗に出向き価格や機能、製品の使用感などについて店員に確認をした内容が、購買行動におけるおもな判断軸になった。仮にその他の選択肢があったとしても、近くの店舗数軒で同じ内容を確認したり、同商品を所有する友人知人に確認してみたりといった程度である。

しかし現在は、価格を比較する場合には、「価格比較サイト」で日本中の最安値を知ることができる。製品の使用感についても、各ECメディアにおけるコメントやソーシャルメディア上でのコメントを閲覧することで、対面での人間関係や地域性を超えた領域での情報取得が可能だ。

このように、これまでは情報を取得するうえで、「地理的制約」を超え、「対面での人間関係」以外でのアプローチは非常に困難であった。すなわち、今と比較しユーザーが持ちうる判断の選択肢が圧倒的に少なかったのだ。そのため、マスマーケティングに代表されるような、いくつかの選択肢から、周辺がより多く利用しているものを選択していくようなマジョリティー思考が強かったと考えられる。

しかし今や、ユーザーは企業と比べても遜色のない情報取得インフラによって、これまでにない幅広い判断軸を手に入れると同時に、個人としての判断軸も重視されるようになった。求められているのは、個人のライフスタイルに最適なモノや、最適にカスタマイズされるモノである。

◇◇◇

前後編の2回に分けて、Webサイト運用における課題解決のポイントを「運用」と「サイト価値向上」という2つの視点から解説してきた。

Webサイト運営を効率化するための「5つの心得」を提示し、その実践方法について解説を行ってきたが、その要旨をまとめると以下のようになる。

  • 足下の運用における大きな課題は、「可視化」や「標準化」がされておらず、組織全体としての「生産性」や「品質」が低いことが大半である。このようななかで、新たなタスクを追加したところで、どれも中途半端に終わってしまい、新たな課題が積み重なっていくリスクが高まる。まずは足場固めとして、日々のタスクを整理し、「可視化」「標準化」を行ったうえで、タスクの「分散」や「自動化」によって新たなタスクを取り入れられる土壌をつくることが必要。
  • 新たなタスクを闇雲に増やすことは、限られた体力のなかでオーバーフローしてしまい、タスクに追われ本来の目的を見失ってしまうリスクがある。Webサイトの「価値」を高めていくためには、「ユーザーベネフィット」を第一に考え、タスク実行に対する具体的な「ユーザーベネフィット」と「運用体力」の兼ね合いを考慮し、継続可能な範囲での導入を着実に行うことが必要。
  • デバイスやテクノロジーなどの進化によって、インターネットユーザーの情報取得量は今後ますます増加していく。そして、さまざまな制約から取り放たれ、より個人のライフスタイルに適合したパーソナライズ化された判断を行うようになる。そのなかで、Webサイト運用においては網羅的なユーザーアプローチを行うのではなく、ねらうべきターゲットを可能な限り絞り込み、ミニマムスタートでユーザーと向き合うことが成功への鍵になる。
Webサイト運用における5つの心得
  1. Webサイト運用の課題を明確にし、向き合うことができなければ、“時代”の兆候に合わせた“新運用”は実現できない。

  2. “時代”の兆候だけに合わせてWebサイトを運用していても、“顧客”の兆候に合わせたWebサイト運用にはならない。

  3. “顧客”に対して自社のWebサイトが提供すべき価値が明確になっていない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を見出すことはできない。また、Webサイト運用における無駄を排除することもできない。

  4. “顧客”がだれかを設定しない限り、“顧客”に合わせたWebサイト運用を実現することはできない。

  5. “顧客”を“点”としてとらえているだけでは、“顧客”との最適なコミュニケーションを行うことはできない。

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