企業ホームページ運営の心得

チャンピオンデータを駆使するライザップに学ぶ広告効果の高め方

ライザップのテレビCMは堅実で基本に忠実。効果の高い広告の基本が踏襲されています
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の420

ニワトリと卵の論争ではない

ViewApart/iStock/Thinkstock

今回は、前回予告したように「ライザップのテレビCM」について。広告制作の実務者から見れば、ライザップのCMは面白みに欠けるほど堅実で基本に忠実です。初めて目にしたときから、その変遷に惜しみない賛辞を贈るものです。SMAPの香取慎吾まで引っ張り出したのは、笑いに走ったきらいもありますが、なにより効果の高い広告の基本が踏襲されているのがライザップのCMです。

リスティング広告はもちろん、チラシや地域新聞、雑誌など、出稿したのに効果が薄い、あるいはまったく効果がないと頭を抱えるWeb担当者は、ライザップの広告に学ぶべきでしょう。「知名度」は関係ありません。前回でも触れたように、上場企業の「健康コーポレーション」ならともかく、まったく無名だった「ライザップ」が全国区になったのです。ニワトリと卵どちらが先かという論争の余地はなく、間違いなく「広告」が先に立つからです。

このライザップのCMには、広告の基本がつまっています。CMを例に「広告効果を高める3つの基本」を見ていきましょう。

前後のわざとらしさ

最も印象に残る一方、広告に不慣れな人がひっかかるのが、「ドゥドゥド、ドゥ」から「タータッタラーラ」とBGMが差し替えられるビフォーアフターの映像ではないでしょうか。猫背でうなだれ、二重あごを作り出し、ともすればお腹も突き出しているような「ライザップ前」から、ポージングを決めた「ライザップ後」に変化するわざとらしさです。

そもそも広告は「チャンピオンデータ」を紹介するものです。チャンピオンデータとは、最も効果の顕著な結果のことで、10回に1回の成功例を紹介するのが広告の鉄則です。ずるいと思うでしょうか? その発想が間違っていると考えるのが広告です。

演出は親心と同じ

すべてのデータを開示するのは、正直という名の傲慢か、良心の呵責をお客に押しつけているのです。素人にデータの精査はできません。仮に、10人中9人が肥るダイエットプログラムなら詐欺の誹りを受けますが、過半数に効果があるのなら、胸を張ってチャンピオンデータを紹介すべきです。そもそも、自信を持って世に送り出した商品やサービスならば、最もよく見られるための努力をするのが「広告」なのです。

ライザップのCMにおいては、よく見るまでもなく、体験前後で衣装が替わっており、シェイプアップ後の映像で髪飾りが風に吹かれはためく女性もいます。これは「演出」です。それは「お受験」に挑む我が子に、できるだけ上等な服を着させる親心と同じです。だれが責められましょうか。この演出が基本の1つ目。そして、ビフォアーアフターも基本テクニックそのものです。

基本1:チャンピオンデータを加工(演出)する

最初は身内の体験から

ライザップによる「結果」はCG処理されていないといわれています。ファンデーションやライティングで映像的な体のメリハリはコントロールできるので、CG加工する必要はないとは余計なトリビア。すなわち、香取慎吾や赤井英和のビフォーアフターは体験によるもので「客の声」になります。客の声という広告のキラーコンテンツを使うことが2つ目の基本です。

基本2:体験談=客の声を使う

芸能人の出演をうらやむのは筋違い。当初、ライザップの「モデル」を務めていたのは、ライザップのスタッフと紹介された妙齢の女性です。その次に登場したのも「スタッフ」。いわば「身内」を使っていたのです。しかし、身内でも「体験者=客の声」に違いはありません。これは広告づくりの基本「できるところ手をつける」です。高望みして足踏みすることなく、いまできることにチャレンジします。

ライザップは、いきなりSMAPに到達したのではなく、人のよさそうな「身内のおばちゃん」から始めたのです。

洗脳効果といってもよい

前回に続き、雑談ネタを1つ提供しておきます。ライザップのスタートダッシュに、アフィリエイターの存在があることは前回紹介しました。

その1人は「成功」を誇るブログにマッチョ風となった写真を掲載し、「お腹を引っ込めて撮影」とキャプションを添えます。また、入会を申し込んでから、トレーニングが始まるまでに1か月ほどのタイムラグがあり、「自主的」に食事制限とトレーニングで4キロ減量。さらに「成功」と喧伝した体重は、本当の目標に2キロ届かなかったと告白。効果効能には個人差があるようですが、本人の「満足」にはコミットしたようです。このブログの文責は、アフィリエイターにありライザップにはありません。

「結果にコミットする」は、もはやライザップの代名詞。さらに「たった2か月」。極論すればこの2つのキーワードしかCMは発していません。シンプルなキャッチフレーズでアピールすることが3つ目の基本です。

基本3:メッセージは簡潔にする

記憶に残すためには

15秒の短いCMに多くの情報を盛り込んでも、お客がそのすべてを理解することは不可能です。そこでライザップは、この2点に絞り込んでいるのです。つまり、伝えたい内容をワンフレーズ、あるいは2つ以内に抑えることが、広告効果を高める基本の3つ目です。他の広告でも同じですし、文字数制限のあるリスティング広告ならそのままです。

広告効果を高める3つの基本
  1. チャンピオンデータを加工(演出)する
  2. 体験談=客の声を使う
  3. メッセージは簡潔にする

これらの基本は、規模の大小、商売の種類を問わずに効果を発揮します。つまり、効果の乏しい広告はこの反対をしているのです。

最後にもう1つ、ライザップは広告における「奥義」も使っているので紹介しておきます。究極奥義「ヘビーローテーション」です。執拗に同じ内容を頻繁に繰り返すことで、視聴者を一種の洗脳状態に追い込む広告手法で、アイドルグループが飽きるほどテレビ画面に登場していると、人気に火がつくのも同じ理由です。一般企業がこの奥義を使うには、規模に応じたアレンジが必要です。

今回のポイント

広告効果を高める基本は3つ

複雑な情報は伝わらない

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