Web素材データ、まだメールでやり取り? 企業向けファイル共有サービスで解決、さらにCMSとの連携も
画像や動画ファイルなど、Webサイトのコンテンツ用素材データのやり取りに頭を悩ませているWeb担当者やマーケッターは多い。たとえば、メールに添付できるファイルサイズは限られているし、外部のファイル転送サービスはセキュリティ面から利用が禁止されている企業もある。このような企業のデータは「デジタルアセット」と呼ばれるが、どの企業でもその規模が大きくなる一方で、その管理と運用が課題になっている。
そこで今回は、Webサイトを運用するうえで避けられないデジタルアセットの管理問題を整理しつつ、それを解決するエンタープライズ向けファイル共有サービスについて紹介する。
Web担当者を悩ませるデジタルアセットの運用管理
画像や動画、デザインカンプや印刷用のデータは、サイズが数百メガから数ギガくらいあるので受け渡しが大変!
メールに添付するとすぐにメールボックスがパンクしてしまうし、かといって社内ではオンラインストレージやファイル転送サービスの利用が禁止されているし……
デジタルマーケティングにおけるファイルのやり取りで、こんな悩みの声を聞いたことはないだろうか。
Webサイトのコンテンツ制作やマーケティング施策に必要な素材データのやり取り、管理、公開は、Web担当者やマーケティング担当者にとって日常業務の1つといってもよい。このようなデジタルデータは「デジタルアセット」と呼ばれるが、実はその運用管理が意外に面倒で、多くの担当者を悩ます原因になっている。
一般的に、外部の制作会社や広告会社などとのデジタルアセットのやり取りは、大きく次の4つに分けられる。
- メールに添付して送信
- 記録メディア(USBメモリやDVDなど)で手渡しや送付
- ファイル転送サービスを利用
- 自社のファイルサーバーなどを利用
このような手段を経て納品されたデジタルアセットを、Webサイトやプレスリリースなどにレイアウトし、確認、承認フローを経て、公開するのが一般的な制作の流れだ。しかし、上記のファイル納品の手段には次のような課題もある。
- メール添付
- 添付するファイルサイズに制限がある
- ファイルに頻繁に修正が入ったときに、やり取りするメールの数が増大する。
- 検索性が悪く、あとから探しにくい。
- 記録メディア
- 人手を介するため、手間と時間がかかる。
- 万一の紛失による情報漏えいのリスク。
- ファイル転送サービス
- ファイルを外部に預けるため、セキュリティ面が心配。
- ファイルの保存期間やダウンロード回数などが制御できない。
- 自社サーバー
- 新たにサーバーを立てる際の設置、設定の問題。
- コストや時間、技術を要するため、マーケティング活動ではスピード感を欠く。
さらに、納品されたデジタルアセットの管理まで考えると、次のような課題もある。
- 必要なデータがすぐに見つからない
- デジタルアセットの数量が増えてくると、必要なデータを必要なときにすぐに探し出せなくなる。
- 改変の繰り返しでどれが最新版かわからなくなる
- 利用目的や掲載場所の違いによって、1つの素材から微妙に異なるバージョンを作ることがあり、バージョン管理が煩雑になる。特に複数人で担当している場合は、取り違えや上書きによる先祖返りなどのミスも起きやすくなる。
ここで挙げているファイル納品手段や課題は、実際に多くのWeb担当者が「これが当たり前」と思っており、そもそも課題として認識されてさえいない。しかし、さまざまな制約やリスクのある手段を使うことは、必ずどこかで時間や労力のロスが生じており、最悪の場合はそれがミスにつながってしまう(メールで間違ったファイルを送ってしまったり、宛先を間違ってしまったりしたという話はよく聞かれる)。
上記のような手段を日常的に使っているWeb担当者は、あらためてその手段の改善やよりよい代替手段がないかを考えてほしい。それによって仕事の精度やスピードは上がるし、何よりも自分自身が楽になるのだ。
デジタルアセット納品時の課題を解決するファイル共有サービス
こうしたデジタルアセットの納品時の課題を解決するサービスがある。オラクルが提供する「Oracle Documents Cloud Services」(以下、DoCS)というエンタープライズ向けファイル共有サービスだ。
これは、Webブラウザはもちろん、デスクトップアプリ(Mac、Windows向け)やモバイルアプリ(iOS、Android向け)といったクライアントも提供されている、マルチデバイス対応のファイル同期・共有サービスだ。デスクトップブラウザからDoCSにアクセス、ログインするとファイル一覧が表示される。
共有設定も自在に行える。共有設定はコンテンツファイル単位、フォルダ単位で細かく設定できる。DoCSのアカウントを持っているユーザーであれば、「メンバーリンク」として、共有先のメンバーに加えることができる。これは社内での共有を想定している。
また、アカウントを持っていない社外のユーザーに対しては、「パブリックリンク」として、URLを発行したり通知したりすることで共有が可能だ。
ファイル管理という点では、「バージョン履歴(世代管理)機能」も重宝しそうだ。ファイルを編集、修正後に上書き保存すると、修正前のバージョンも保存してくれる。各世代のファイルはバージョン履歴画面で一覧できるため、あとで前のバージョンのファイルが必要というときにも、簡単にファイルの世代を遡ることが可能だ。
また、セキュリティ面での機能としては、アクセス履歴の機能も備える。これにより、ファイルやフォルダに対していつ、誰が、何をしたかを確認できるようになっている。
その他、検索機能としてファイル名だけでなく、ファイルの中身の文字列を対象にした全文検索もできる。
もちろん、モバイルともシームレスに連携する。アプリを起動し、ID、PWでログインすれば、外出先からスマホやタブレットを使ってファイルを閲覧できるし、ファイルをダウンロードすれば、オフライン環境でもファイルの閲覧が可能になる。外出の機会が多い担当者にとってはありがたい機能だ。
エンタープライズ向けファイル共有サービスとCMSの連携でWeb公開もシームレスに
そしてもう1つ、DoCSを用いたデジタルアセットの入稿からWeb配信までの運用のメリットとして挙げられるのが、同じオラクルが提供するCMS「Oracle WebCenter Sites」(以下、WCS)と密接に連携できることだ。
WCSは、デジタルアセットの管理からWebサイト構築まで可能なエンタープライズ向けのCMSである。DoCSと組み合わせて利用することで、デジタルアセットの管理や再利用、さらにドラッグ&ドロップによるWebコンテンツの作成など、よりシームレスな運用が可能になる。
マーケティングにおける効率的なデジタルアセットの運用について、日本オラクル株式会社のFusion Middleware事業統括ソリューション本部の平井健人氏は次のように語る。
「制作会社は、デジタルアセットの納品時に、作成したファイルをDoCSにアップロードします。Web担当者やマーケティング担当者は、その納品データをWCSの管理画面から直接確認し、そのままWebコンテンツにレイアウトして配信できます。
これにより、たとえばファイルの納品後に微調整が入ったという場合でも、担当者が電話で話しながら修正点を指示して、制作会社はDoCSに修正後のファイルをアップロードすれば、WCS上でDoCSのアップロード内容が即座に同期され、担当者は修正後のファイルを確認しながら、Webページにレイアウト、公開することが可能になります
」(平井氏)
DoCSのアセット管理機能とCMSとして実績のあるWCSの連携により、素材の一元管理と再利用という効率的なデジタルアセット運用が可能になるだろう。
きめ細かいセキュリティ設定とAPIによる連携でビジネスユースを強力サポート
DoCSは、WCSと連携させて使うことで、より効率的でスピーディなデジタルアセット運用が可能になる。もちろん、クラウド型サービスとして単体でDoCSを利用してもよいし、すでに導入しているCMSと連携させて使うことも可能だ。
「DoCSの大きな特長として、API(REST API)を無料で利用できる点が挙げられます。これを利用すれば、新しいUIを作ったり、DoCSの画像を呼び出してCMSに表示させる機能をモジュール化したりすることも可能です
」(平井氏)
また、企業によっては、セキュリティ面の心配から、Dropboxなどのコンシューマー向けのオンラインストレージは利用できないというところもある。
「DoCSにアップロードされたファイルは、画像であれ動画であれ、Oracle Databaseと同じアーキテクチャを持つ『Oracle Cloud Database Service』にて管理されます。また、管理されるファイルはOracle Database Transparent Data Encryption(TDE)により暗号化されるため、データの漏えい防止という点で非常に強力なセキュリティ性を備えています。
また、DoCSは、各テナント(=企業)ごとにそれぞれ独立したデータベースのスキーマを割り当てているので、一般的なパブリッククラウドのように、お客さまが預けたデータが他社のデータと混在することがありません
」(平井氏)
セキュリティ面の配慮は、共有の細かい設定にも表れている。昨今、クラウドサービスに預けた企業の機密情報が、意図せず外部から閲覧可能になるといった事例も多発しているだけに、心強い機能である。
「『パブリックリンク』は、データを共有する際に、アップロード先のURLを付与して、そのURLを共有したいユーザーに通知します。これは、URLさえ知っていれば誰でもデータにアクセスが可能ですので、アクセスレベルやダウンロードの有効期限、ファイルを開くためのパスワードなどを設定していただけるようになっています。
また、アクセス履歴の確認機能も他社サービスにはない機能の1つです。このあたりも、企業が安心してDoCSを利用していただける大きなポイントです
」(平井氏)
マーケティング活動におけるデジタルアセット運用を強力にサポートするDoCS。特に、CMSであるWCSとの連携は、アセットの入稿からWeb配信までの運用負荷を低減するソリューションとして、これからデジタルマーケティングを強化したいと考える企業からますます注目を集めそうだ。
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