マルチデバイス対応を攻略! 4つの手法のメリット・デメリットを解説
Webサイト構築の最新テクニックとCMSの今後について語った「CMS DAYS TOKYO 2013」の第3部「Web共通基盤によるWeb戦略の最適化とROIの最大化」をレポートする。
登壇したミックスネットワーク代表取締役社長CEOの吉川隆二氏は「CMS製品の機能ということではなく、今後の方向性などを話していきたい」と挨拶し、次のように説明した。
CMSはコンテンツ管理ツールであるが、他のツールと連携して、パフォーマンス処理、開発ミドルウェア、マルチデバイス配信、マルチサイト管理などを提供する「Web基盤ツール」であると吉川氏は話す。
その上で、Webサイトが解決すべき課題は、コスト削減、スピードアップ、効果の最大化などのさまざまなものがあるが、今回の講演では「ターゲットデバイスの増加」ということに焦点を絞って解説するとした。
マルチデバイス対応の4つの方法とそのメリット・デメリット
デバイスが多様化するなか、同じ属性の1人の人間がPCやタブレット、スマートフォンをシチュエーションによって使い分けてWebにアクセスしている。コンテンツを配信する企業側は、スクリーン(デバイス)ごとに異なる属性の人がいて、その属性に合わせてコンテンツを配信すると考えがちだが、同じ属性の人が置かれたシーンによって使い分けるデバイスにいかに最適化したコンテンツを届けるかが重要になる。
これらのターゲットデバイスの増加に対応する方法について吉川氏は、「各デバイスサイトを個別構築」「自動変換サービス」「レスポンシブWebデザイン」「基盤ツール(CMS)の活用」の4つがあり、実現するサイトの規模や目的によって、それぞれ長短所があると説明する。
メリット
デバイスごとに個別のサイトを構築する方法では、デバイスに合わせたデザイン、レイアウト、情報発信が可能で、閲覧性や操作性が高いサイトを作ることができる。デメリット
初期構築費用が高い、デバイスごとに更新する手間がかかる、サイト個別管理でマーケティングデータが分散される、更新に専門知識が必要で社内運用が難しい、URLがデバイスごとに異なるのでSEOに不利、新しいデバイスが出るたびにサイト構築が必要になるなどがある。
メリット
外部サーバのコンバーターなどの自動変換サービスを使う方法では、構築・運用が楽、導入の手間やコストが低い。デメリット
月額費用のサービスではPV数で料金が異なるためハイコストになる場合がある、外部サービス利用で表示に時間がかかり動作が重くなる場合がある、デザインの自由度が低いサービスはクオリティが重要なサイトには不向き、デバイスに合わせた訴求ができない、サービスによってはデバイスごとにURLが異なるのでSEOに不利といったことがある。
メリット
CSSやJavaScriptで表示を調整して、デバイスごとに表示を合わせるレスポンシブWebデザインの場合は、コンテンツの一元管理ができる、端末機種が増えても画面サイズの違いに対応できる、URLを一本化できるのでSEO効果が高い、といったことがある。デメリット
設計構築に費用や期間がかかる、構築後の改修や新規コンテンツ追加に設計の変更が必要になる場合がある、同じデータ量を読み込むので表示に時間がかかる場合がある、高い専門知識が必要なので社内運用が難しい、デバイスや端末に合わせた訴求ができない、IE6などの古いブラウザやフィーチャーフォンへの対応が難しいといったことがある。
メリット
基盤ツール(CMS)を利用する場合は、CMSだけでマルチデバイスに対応できるわけではない。多くのCMSは従来からPCファーストのコンセプトで作られており、マルチデバイス対応の機能がないツールや不十分なツールが存在する。CMSがマルチデバイスに対応の機能を備えている場合は、コンテンツを一元管理しながらデバイスに最適化できる、URLを一本化できてSEO効果が高い、コンテンツの更新・追加・管理に専門知識が不要、CMS側でマルチデバイスや新しいデバイスに対応、大規模サイトや複数サイトに対応できるといったメリットがある。デメリット
初期導入や構築に費用と期間がかかる、自社で更新や管理を行う場合に使用方法を習得する必要がある。
マルチデバイス対応と4つの手法について、ここまで講演で解説した内容は、SITE PUBLISのスペシャルコンテンツのページでも解説しており、吉川氏はそのURLhttp://www.sitepublis.net/special/multidevice.htmlを紹介している。また、パフォーマンスの確保やWebシステム開発についてもSITE PUBLISのスペシャルコンテンツのページで解説しているという。
複数サイト運営では共通のインフラ基盤整備が有効
吉川氏は、複数サイトを運営する場合の課題について話しを移す。企業サイトだけでなく、企画サイトやECサイトなど、さまざまなサイトを運用するケースがあるが、その際はサイトごとに個別に運用するケースが多く、コストがサイトごとにかかり、マーケティングデータも個別となりやすい。また、そのような個別運用されているWebサイトをマルチデバイスに対応させようとすると、運用サイト数×デバイスの種類で高額なコストが発生することになってしまう。
Webサイトのガバナンスにも注意しなければならない。企業サイトはセキュリティをしっかりと行っていても、企画サイトは予算も少なく、外部サービスやフリーツールなどを利用しているとプラグインなどがセキュリティホールとなりやすいという。企画サイトであっても、改ざんや情報漏えいがあれば企業の信用を失う結果となりかねない。
「これらの課題に対処するために、サイト運営のための共通インフラ基盤を持つことをお勧めしたい」と吉川氏は説明する。複数サイトを運営する場合は、共通インフラ基盤によって無駄が省け、コストや管理の手間も低減される。
その基盤上でWebを構築するための部品群や運用ルール、ワークフローなどを共通化し、それぞれのサイトに実装していくことによってリスクを排除しながらサイト運用・構築の生産性を上げることが可能となる。そこからマルチデバイス対応を行えば、各デバイスに対して施策を行え、一元化されたマーケティングデータを使うことができることを示し、吉川氏は講演を終えた。
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