SEOの戦術は死すともSEOは死せず――検索の未来と「見つけられる」こと
少し前に「SEOmoz」がブランドを「Moz」に変更したせいで、当然の反応というべきか、こんな投稿が相次いだ。その数は今年だけで4789本に達する。
SEOは死んだ(SEO Is Dead)
この記事では、こうした「SEOの崩壊を宣言する言葉」には未来についての基本的な何かが欠けていると僕が考える理由について説明したい(僕らがMozとしてブランドを拡大する理由についてはランドが詳細に語ったからね)。
これは、もう何年も頭の隅に引っかかって離れない問題だったのだが、ようやくそれをテーマに書くべき時期が来たように思う。
今回は哲学的な内容になるだろうから、興味がなければ読むのを止めてサンドイッチを作りに行ったっていい。止めはしないよ。
検索の本質
まずは、一見とても簡単そうに見える質問から始めよう。
インターネットはどれくらい大きいのだろうか?
ちょっとバカバカしくもあるグラフを作ることで、この問いに答えてみよう。
インターネットはあまりに大きすぎて、グーグルでさえ2008年の時点で数えるのにうんざりしてしまったし、今も幾何級数的に成長し続けている。
グーグルのインデックス化したページ数が1兆を記録したと発表されてから5年になるが、URLのバリエーションによってインデックス化される可能性のあるページが理論上は無限になることを、前出のグーグルの記事では示唆している。
どういうことかというと、インターネット全体を印刷して暇なときに読むなんてことは、もうできない状態になっているんだ。
僕らにはフィルタ、つまり集められた情報をふるいにかけ選別する方法が必要で、それこそが検索の本質だ。
検索がどう進化しようとも、あるいはこの先グーグルに何が起きようとも、人類の知識は、勢いを増しながら拡大し続けるだろう。技術の大崩壊にでも見舞われない限り、これからの人類の歴史にとっては何らかの形で検索が必要だ。
検索する側とされる側
検索が存在する限り、
- 何かを見つけたい人
- 見つけられたい人
という2つの集団ができるのは当然だ。
前者と後者はいつでも入れ替わる。見つけられたいと思う「人々」は、会社かもしれないし、政府かもしれないし、ほかのものかもしれない。だが、すべての検索において、見つけられたい(検索結果で目立つ位置を占めたい)と願う者たちが存在するだろう。
見つけられたいという願望は、目新しいものでもないし、オンライン検索に特有のものとかいうわけでもない。メルヴィル・デューイに尋ねてみるがいい。あるいは、イエローページで「AAA Aardvark Plumbing」を探してみよう。すぐにわかるはずだ。
オンライン検索に特有なのは、
- システムが複雑になりすぎて
- 「見つけてもらえるのは誰か」を自動化された技術が管理するようになり
- 情報の範囲が広がるにつれ、その状況は変えようがなくなる
ということだ。
「誰が見つけてもらえるべきか」をシステムが管理するということは、その自動システムをよく理解し、個人や団体が「見つけてもらえる候補」に載る手助けをできる人が常に必要となる状況が、いずれ来るだろうということだ。
小手先で操作する「ブラックハット」的なやり方では、この状況に対処できない。
- データを構造化し
- ルールをまとめ
- たくさんあるパズルのピースを適切な場所に置いて
- 僕らの公開する情報に、それをカタログ化しフィルタにかけるシステムに対する親和性を持たせる
といったことが必要になるからだ。そうしたシステムは、時間がたつにつれて洗練されるだろうが、完璧なものになることは決してない。検索が存在する限り、情報を最適化して簡単に見つけられるようにする専門家は必要になる。
SEOは単一の戦術ではない
僕らが「SEOは死んだ」と言うとき、最新流行の戦術やグーグルの発表に反応していることが多い。だが、突き詰めると、次の2つのことがわかってくるはずだ。
1つは、「SEO」という何か1つの戦術があるわけではないということ。「見つけてもらえるようにする」ためにはさまざまな要素があり、それぞれの要素に対する施策を組み合わせる必要があるのだ。
もう1つは、現在グーグルが市場で優位に立っているが、SEOはグーグルと生死を共にするのではないということ。僕は42歳だが、僕らが今知っている「誰もがアクセスできるインターネット」というものができてからの年月は、僕の人生の半分にも満たない。つまりグーグルはまだ十代の若者だということになる。僕とグーグルのどちらが長く生きるかといわれれば、僕だろうと思っている(少なくともグーグルが優位を占めている期間よりは長生きするはずだ)。
検索が変化しているのは疑いようがないし、僕らの業界はまだ幼年期を脱してすらいない。だが、広い意味で「発見しやすい情報を作り」「その情報に人々を引きつけるのを助ける」人間が必要とされる状況は、いかなる戦術よりも、そしてまた、SEOを専門とする個人、さらにはどの検索エンジンよりも長くこの世に残るだろう。
さて、将来の検索はどんな風になっているだろうか。こんな風になっているのかもしれない
2063年の検索「The Construct」セルゲイは、大人になってからずっと「The Construct」の操作方法を学び続けてきたのだが、15年前、考えられないことが起こった。
集められた人類の知識があまりにも急激に増大したため、アクセス可能な世界にはもはや、それを保存するスペースがなくなってしまったのだ。インターネットは「The Construct」となり、空間と時間の両方にまたがって存在するようになった。
4次元のデータを適切に理解できる人間はいなかった(ニューラル・インターフェイスを利用した初期の試みは、数人の先駆者たちを狂気に追いやった)ので、The Constructは、真空空間に浮遊する3次元の球体上に投影するしかなかった。
その球体は、愛情を込めて「スペース・エッグ」(宇宙の卵)と呼ばれている。
セルゲイは、10年を超える実務経験を経て、5つ星レストランのシェフがブランチ用のオムレツを作るようにこの卵をうまく操った。顧客たちは彼に、37ドルのミモザ(シャンパンとオレンジジュースのカクテル)も高すぎるとは思わずにいられるほどの報酬を払ってくれる。
今朝の状況はかなり厳しかった。The Constructの人工知能(AI)が許容できないレベルの操作を検知し、Core Algo(中心のアルゴリズム)を調整していたのだ。
セルゲイには、卵の表面が書き換えられていく様子が見えていた。こうした変化は、1分過ぎるごとに彼のクライアントたちに莫大な損害を負わせた。幸運なことに、防御ボットがすでに働いていて、意味データを書き換え、Core Algo内の波紋に同調させていった。少なくとも今回は助かったようだ。
何がどうなるかわからない世界だが、確かなことが1つだけあった。スペース・エッグ最適化(Space Egg Optimizer)の生活には、退屈はあり得ないということだ。
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