日本のLINEユーザーは4700万人突破、スマートフォン時代のコミュニケーションプラットフォームへ
世界2億3000万ユーザー突破、スマホ時代のコミュニケーションインフラへ
LINE株式会社は8月21日、ビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」を開催し、無料通話・メールアプリ「LINE」の利用状況や今後の事業戦略、新機能などを発表した。
オープニングに登壇したLINE株式会社 代表取締役社長の森川亮氏は、2011年6月23日に誕生したLINEの成長を振り返りながら、最新の利用状況を解説。昨年8月時点では5000万人だったLINEの登録ユーザー数は、世界2億3000万人を突破(前年比460%)、日本のユーザー数は4700万人で世界第1位。また、世界での1日あたりのメッセージ送信数は70億件(前年比440%)、1日あたりのスタンプ送信数は10億件(前年比488%)を超える。
LINEについて、バーチャル上だけでなく、リアル世界のコミュニケーションにも影響を与えるツールになったと森川氏は語る。たとえば、最近ではスタンプだけを使ったコミュニケーション文化が根付きはじめており、スタンプの表情や動きをマネする人も登場してきている。こうした動きは世界中に浸透し、欧米メディアも注目する。また、新しい価値として、公共性や緊急性の高い情報を災害時に伝える際のインフラにもなりつつあることがあげられた。
タイムラインのアクティブユーザー数は国内トップクラス
続いて「LINE」のプラットフォーム戦略を、執行役員・CSMOの舛田淳氏が解説した。昨年の第1回カンファレンスでは、「LINE」の新たな戦略として、「コミュニケーションツールからプラットフォームになる」と発表している。
その戦略実現のため、スマートフォン時代の新しいプラットフォームとして昨年発表されたのが、ユーザーと価値のあるサービスをつなぐエコシステム「Line Channel」の構築。プラットフォーム構築から1年、LINE Channelに接続する連携アプリ数(ファミリーアプリ)は52タイトルになり、「LINE Camera」「LINE Manga」「LINE PLAY(アバターサービス)」やゲームなどの総ダウンロード数は2億9千万件に上るという。
また、「実はLINEのタイムラインはいらないのではないかと言われたことがある。これまでも実績を発表したいと思っていた
」と語る舛田氏は、タイムラインの実績を初公開。2013年7月実績で月間ユニークユーザー数は世界7300万人、日本のみで2900万人を超えると発表した。ユーザーにとっては、初めて見るタイムラインがLINEという場合もあり、身近で安心できるものとなっているのではないか、と舛田氏は話す。
広告モデルだけに依存しない、LINE 4つの収益モデル
LINEはユーザー数やアクティブ率とともに収益も順調に伸ばしており、2013年第2四半期の売上は98億円と、前年比3,257%の成長を見せている。
この成長要因について舛田氏は、「既存のSNSのマネタイズは極めて限られている。たとえば、広告モデル、有料アプリ、ゲームなど、どれか1つのビジネスモデルに依存することで脆弱になり、成長に陰りが見えると考えてきた。複数を組み合わせることで、LINEならではのビジネスモデルを構築し、展開できるのではないかと考えプラットフォーム構想にたどり着いた
」と語る。
LINEプラットフォームによって実現されている、主な収益源は次の4つ。
- LINEアプリ内での課金
現在、1万種類以上の有料スタンプを販売。月間のスタンプ売上は10億円以上(昨年のイベント開催時点では3億円)。スタンプビジネスは、キャラクターのライセンスを保有する各国のライセンサーから新しいビジネスモデルとしても評価されている。
- ファミリーアプリ内での課金
LINEファミリーアプリすべてを合わせた月間売上は31億円。ゲームを除いた同社の月間売上ランキングを見ると、App Storeでは世界2位、Google Playでは世界1位を獲得している。
- 法人向けマーケティングソリューション
LINEユーザーとコミュニケーションを取りたいという企業のニーズに応えるマーケティングソリューション。公式アカウントとスポンサードスタンプのほか、店舗などのローカルビジネスに特化した「LINE@」などを展開。
- キャラクターライセンス事業
LINEのオリジナルキャラクターは世界中でグッズ展開されており、スタンプを除くキャラクターグッズの市場規模は40億円に達している。また今後のグッズ展開は、「LINE FRIENDS」のブランド名に統一して各国で展開していく。
3C戦略でコマース事業に参入
今後は10億人規模のプラットフォームを目指し、ユーザーやパートナー企業との協力を築いていきたいとする舛田氏は、9月リリース予定の「LINE Web Store」を発表した。
LINE Web Storeでは、スタンプやゲーム内アイテムなどの支払いに、プリペイドカードや電子マネー、キャリア決済など利用できるようになる。LINEには新興国のユーザーも多く、カード決済の敷居が高い場合もあるため、多様な決済手段によってサポートする。まず日本と台湾でサービスを開始し、プリペイドカードは9月からセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンで販売される。
また、LINEの新たな戦略として、「Communication」「Contents」「Commerce」という3C戦略も発表された。CommunicationおよびContentsとしては、ビデオ通話機能の「Video Call」と音楽配信サービスの「LINE MUSIC」を年内にリリースする。
Commerceとしては「LINE MALL」を今秋リリースし、LINEが持つ国内4700万ユーザーのリアルグラフとスマートフォンを軸としたコマース事業を展開。BtoCだけでなく、CtoC取引もできるモールとして開発は大詰めの状況で、「いつでもどこでも、だれもが売り手と買い手になれる。スマートフォン時代のショッピングを提供したい
」と舛田氏は話す。
公式アカウント開設は100社以上、スマホ広告のリーディングメディアへ
LINEの法人向けソリューションでは、企業がユーザーと直接コミュニケーションできる「公式アカウント」、独自スタンプの「スポンサードスタンプ」、飲食店などのローカルビジネス向けの「LINE@」などを展開。公式アカウントの採用企業は1年で100社を突破し、LINE@はリリースから8か月で1万1,000の店舗や企業が参画している。
「LINEはスマートフォン広告のリーディングメディアになった
」とする取締役の出澤氏は、他メディアとの違いとして、電話帳を通じて親しい友人同士と強いリアルグラフを形成しており、そのコミュニケーションは最も身近なメディアになりつつあるスマートフォンを通じて行われることを例としてあげた。そのため、ユーザーの反応がアクティブだという。
また、公式アカウントのメッセージは、トークやタイムラインを通じて、友人と会話するように自然な形でシェアされるのも特徴だ。企業スタンプも、企業広告を利用するという認識をもたず、多くが通常の会話のなかでやりとりされている。これらのマーケティングソリューションを活用した広告主の具体的な成果もいくつか紹介された。
- 公式アカウント
公式アカウント第一弾のローソンでは、これまでにクーポン配布によって少なくとも50万人が来店。高い店舗誘導効果を示している。
- LINE@
女性向けファッションブランドの「LIP SERVICE」では、LINE@でのセール告知によって、売上が前週対比150%に。セール来場者の調査を行ったところ、25%がLINEの告知をきっかけに来店。大企業だけでなく、アパレルや飲食店などのローカルビジネスにも強い誘導効果があるという。
- スポンサードスタンプ
2012年11月にロッテが実施したコアラのマーチスタンプは、4週間の配布期間で593万ダウンロードされ、2か月間の利用期間中のスタンプ利用回数は4,000万回以上。スタンプ配布期間中の売上は前年比116%となった。「スタンプによって再想起され、実際の売上にも貢献できた事例だといえる」(出澤氏)。
- MUST BUY STICKERS
商品に付属したシリアルコードを使ってLINEスタンプを入手できる、販売に直結するサービスとして2013年4月に開始。7月にJTが実施した「桃の天然水」のキャンペーンでは、4週間でスタンプが20万ダウンロード。対象期間中の全出荷数に対して、スタンプの利用率は16%。同様の施策のなかでは、過去最大の効果を示した。
9月からはグリコが「ポッキー」のキャンペーンを開始する。
- タイムラインでの情報発信
2013年6月から試験的に開始。現在、公式アカウントを開設する企業のうち、70%がタイムラインを活用して情報を発信している。タイムライン上の1投稿あたりの「いいね」は1万を超え、多いものでは10万を超えるという。
LINEがハブとなり、すべてのマーケティング施策をつなげていく
マーケティングセッションの最後、出澤氏は今後の目標として「2つのボーダーを越えていきたい
」と話す。1つは国境を越えて、新しいマーケティング手法を展開していくこと。すでにタイや台湾では日本と同じようにマーケティングが行われているが、これをされに拡大していく。
そしてもう1つは、広告業界に長く存在するボーダーを越えることだと、出澤氏は語る。
テレビに代表されるマスメディアと、DMやクーポンなどの販促。企業にとって商品を売るというゴールは同じでも、施策の内容やKPIが異なるため、社内で分断されてしまう傾向にある。しかし、企業と消費者の接点が多様化し、従来のマーケティング手法が効きづらくなるなか、隔たりを越えて、マーケティング施策を総合的、有機的に組み合わせていくことが重要。
LINEがやりたいのは境界線を打ち消す「though the Line」。LINEだけでマス広告に匹敵するような認知を取ることもできるし、店頭への強力な販促施策を打つこともできる。テレビやウェブ、店頭、すべてのマーケティング施策のハブとなり接続する機能をLINEが果たしていきたい(出澤氏)。
マーケプラットフォームとしてのLINEはスタートしたばかりであり、今までの広告やマーケティング手法にとらわれず、チャレンジしていきたい。企業とユーザーの関係作りを多様な手法でサポートし、ブランド認知や理解促進、購買行動喚起まで一気通貫に行えるようなマーケティングプラットフォームになっていくと、出澤氏はまとめた。
このほか、イベントでは新作ゲームの発表や各国のビジネス戦略なども発表された。
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