DSP/RTB/SSPの取引形態 | DSP/RTB入門書特別公開 #2
DSP/RTB/SSPによる広告取引は、時々刻々と価格が変動する「株取引」に似ている。
広告におけるこのオープンな取引形態によって、広告主と媒体社をつなぐエコシステムが実現している。
広告の価格はどのように決まるのか
「DSPが入札し、SSPが応札する」という仕組みには定価が存在しない。価格は売り手と買い手がその都度決めることになる。まさに株価の「成る」のとよく似ている。
DSP/RTBの場合、リアルタイムに「売り買い」を成立させていくメリットは非常に大きい。そもそもネットの「広告枠」というものは、ユーザーがアクセスしてはじめて広告を掲載できるものなので、ある意味「先物」を売っていることになる。当然、事前にどのくらいの広告が配信できるかを想定したうえで売られる。または「量り売り」で配信量を保証する課金モデルもある。いずれにしても、ネット広告は従来のマスメディアによる広告と同様に、先物を「在庫」として、事前に受注し、媒体社が掲載(配信)を実行し、掲載後のレポートを広告主に送るという「取引」形態であった。
しかし、この仕組みだと、ネット広告の媒体社は営業マンと在庫管理や受注した掲載を正確に行い、レポートを作成するといった進行などのためにそれなりの人員やシステム投資が必要である。いわゆる「手売り」による「広告枠」の管理と販売には、コストがかかる。
「枠」売りの限界を超える
一方で、広告掲載面がいくらで売れるかということで言うと、「枠」数を超える受注がない限りは、買う側のコストパフォーマンスに合った価格にまで、ディスカウント圧力がかかる。また、逆に「枠」数を超える受注があったとしても、定価以上に価格を上げるわけにはいかない。
そして「枠」で売る限りは、ユーザーからのアクセスがあるたびに広告レスポンスが良いと思われる(最適な)「広告原稿」を配信するのは難しい。できたとしても、媒体社が自社の営業で受注した広告だけで最適化を果たすのは難しい。媒体社側のSSPも多くのDSPとつないで、最も広告レスポンスが期待できる「広告」を受注することで、1配信、1配信の受注単価を最大化できる。そのためには、広くオープンな受発注環境につないで、メディアが自社の広告掲載面にアクセスがあったその瞬間に、そのユーザーにとって一番反応が期待できる「広告受注」を広く募って配信するほうが、結果として広告収入を最大化できるということになる。もちろん「枠」売りのための人員コストなども削減できる。
広告主と媒体社をつなぐエコシステム
買いたい側は、「買う側の理屈」に合わせて広告を買う。売りたい側も、広く受注を募って最適な広告受注を果たす。
その意味でも、DSP/RTBは「買う」側と、「売る」側の両方にとって都合が良い仕組みであり、その意味で「広告主と媒体社をつなぐエコシステム」だと言える。
こうした体系が確立すると、上場株のほとんどがオープンな取引市場で売買されるように、ネット広告も今後ほとんどがこのような仕組みで取引される可能性は高い。
金融工学から生まれたアドテクノロジー
アメリカでDSP/RTBというシステムが成立した背景には、リーマンショックで失業した多くの金融工学のエンジニアがIT、広告業界に転職したこと、また一方で、広告主もこの不況下にあって、より効率的で、かつ可視化できる広告バイイングの仕組みを求めていたというニーズが重なったことにある。DSPが誕生した地がニューヨークであったことも、象徴的なことだろう。
DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門
ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命
マス広告だけで物やサービスが売れた時代は終わり、いまや企業はネット広告やソーシャルメディアなど多様なチャネルで顧客とのコミュニケーションを続けることが求められている。本書は「枠」(掲載面)ではなく、「人」を特定して配信するターゲティング広告の最新テクノロジーDSP/RTBの基本的な仕組みと、それを活用したオーディエンスターゲティングの実践方法を解説した初めての本。受け手の反応を見ながら1配信ずつ最適化するDSP/RTBを中核に、顧客の反応を最大限に活かすビッグデータ時代のマーケティングを学ぶことができる。
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