DSP/RTBの基本的な仕組み | DSP/RTB入門書特別公開 #1
最新のアドテクノロジーであるDSP/RTBは、目に見えない入札・応札の広告オークションを瞬時に実現している。
ユーザーの属性や行動履歴などのデータから1配信ずつきめ細かく配信を最適化する画期的な技術である。
広告の売り手と買い手をコンピューターで結ぶ
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは、その名のとおり、デマンドサイド(需要側)、つまり広告主(や広告会社)など広告を買う側が使うプラットフォームということになる。対になるのは、SSP(サプライサイドプラットフォーム)で、広告を供給する側、つまり媒体社が使うプラットフォームになる。DSPが広告を買う側の都合の良い条件(配信対象者や掲載面、配信時間など)をもとに入札し、SSPがそれに応札するという関係である。
ネット広告の配信単位。ウェブページが表示された回数の単位をページビューといい、広告スペースの表示回数単位をインプレッションという。
このDSPによる入札とSSPによる応札を、コンピューターによって瞬時に、しかも1配信(インプレッション)ごとに行っているのがRTB(リアルタイムビッディング)と呼ばれる仕組みになる。
DSP/RTB/SSPの情報の流れ
では、情報の流れを詳しく見てみよう。
ユーザーが広告掲載面のあるページにアクセスすると、従来はアドサーバーにリクエストがかかり、広告画像が配信されていた。しかし、DSP/RTB/SSPが介在すると、まずSSPにリクエストがかかり、SSPはDSPにビッドリクエスト(こんなユーザーが見に来ていますが、ここに広告を表示させますか? というリクエスト)を行う。ビッドリクエストにはアクセスしてきた人を識別するユーザーID(クッキー)やIPアドレス、ブラウザー、OSなどの情報、また広告の掲載先ドメインとコンテンツカテゴリー、広告枠ID、広告サイズ、掲載を許可する広告主、その業種、などの情報が含まれている。
DSP側はこのリクエストの分析を行う。たとえば「買い」が入っている広告はターゲットに合っているか、「買い付け」条件に合うものがあるかなどを瞬時に判断し、金額を含めたビッドレスポンスを返す。これがDSPの入札となる。
これを受けたSSPは、広告主側の入札価格がOKであれば、これを応札し、SSP内のオークションでの勝者となったDSPに広告の配信タグを戻すという一連の作業を一瞬のうちにやってのけるのである。
つまり、たった1インプレッションについて、ユーザーが広告掲載面のあるページにアクセスした瞬間に「買う」側と「売る」側が買うか買わないかとリアルタイムにやり取りをして、売買を成立させるという仕組みである。
図1-2-3は、RTBによる情報の流れを詳しく見たものである。DSP/RTBでは、広告の入札、応札をDSPに対してSSPが行う。実際には複数のDSPとSSPが存在するので、SSPからのビッドリクエスト(入札リクエスト)に対して複数のDSPから入札が入ると最もいい条件で入札したDSPの発注に対して広告が配信される。DSPはSSPの応じる条件を返すだけでなく、他社のDSPに入札条件で勝つ必要がある。
配信を最適化するコンピューター能力
このときに起きるトランザクションは実に多く、従来、広告配信1インプレッションのためにこれだけのやりとりをするのはコスト的にも見合うものではなかった。
アドテクノロジーが進化するなかで、こうした仕組みが実現するに至った理由は主に2つある。
ひとつは、アクセスするユーザーごとに配信する広告を差し替えるという、ネット広告にもともと備わっていた技術の上に、配信対象を特定するデータ(特に購買を含めたユーザーの行動データ)を分析することが可能になったことである。これによって、広告を買う側が広告を配信する相手を特定して無駄な配信を避けたいという長年の夢を叶える機会を得たということだ。これを追求することで、ついに1配信ずつという最少の単位を最適化するまでに至ったのである。
もうひとつは、技術の進歩によって、膨大な作業を一瞬で行うコンピューティング能力が実現したことである。
もちろん、メディア環境として多くのユーザーが普段からネットに接続し、購買行動を含めたさまざまなアクションを起こし、膨大なページビューをつくっているからこそ、インターネットが広告媒体として非常に大きな価値を生んでいる。この環境のなかで、テクノロジーとデータ処理のスピード、回線容量の驚異的な向上が、こうしたアドテクノロジーを実用可能にしたと言える。
日本では数百億インプレッションにもなる広告在庫において、人間技では決してできないこうした作業を瞬時に膨大なコンピューティング能力を駆使して行う。それがDSP/RTBという技術である。
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