企業ホームページ運営の心得

リソースを最大活用するタイムマネジメント

自分の時間と他人の時間の違いを理解することで、仕事の効率が変わります。
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の261

ビッグトゥモロウふたたび

今週発売される雑誌「ビッグトゥモロウ」にちらっと登場しています。「ちゃんとやらなくても成果を上げるには?」という企画に「言われた通りやらなくていいんです」と腕組みして断言する私がいます。

20世紀の終わりごろ、これからの街角の広告屋はネットにシフトしなければならないと会社に提案したところ、それを否定され、創業以来の業務を優先するようにという指令が下されます。これを無視したお陰で、独立することができ、年収1,000万円を越えたという自慢話です。

上司の指示を無視したのは「時間の概念」が理由です。「時間」は万人に等しく1分は60秒で1日は24時間です。しかし、自分が使える1日の時間は48時間にも72時間にもすることができます。そして、ホームページは時間を増やすのに最適なツールだと気づいていたのです。時間が増やせるという夢のような話を、上司の指示1つで簡単に捨てることなどできません。

2つの時間概念

自分が使える時間は2種類あります。Web担当者なら打ち合わせやコンテンツ管理といった自分が直接作業をする「自分の時間」と、もう1つは「他人(ひと)の時間」です。

店頭販売では「自分の時間」を使い接客し、会計手続きまでやらなければなりませんが、ホームページやECサイトでは客が客の時間を使ってレジに進み決済までしてくれます。すなわち「他人の時間」をつかって商売をしているのです。そのあいだWeb担当者は「自分の時間」を自分のために使うことができます。つまり「時間が増える」のです。

もともと「他人の時間」という概念は効率よく仕事をすすめるための「心得」として発見しました。たとえば2か月後、新しいファッションブランドのネット通販を始めることになったとします。ブランドに関する情報を「ネットで検索」して調べれば「自分の時間」なので1日は24時間のままです。一方、友人、家族、恋人、同僚に事情を話して、知っていること、気がついたことを教えてほしいとお願いし、10人がそれぞれ30分協力してくれたならば、総計5時間の「他人の時間」を「自分の時間」にプラスできます。つまり「マルチタスク」で情報収集しているイメージです。

金で買える時間

さらに過去の「他人の時間」も使えます。上司や先輩に教えを請うとは、彼らが技能を身につけ、経験を得るために投資した「他人の時間」を譲り受けるのと同義です。上司が10年かけて得た教訓を得ると考えれば、多少の自慢話を聞いてあげてもバチは当たりません。

金で買える「他人の時間」もあります。最たるものは取引先で、彼らの技能と経験という過去の時間と、作業時間という未来の時間をお金を払って得ることができます。金で買える「他人の時間」はまだまだ沢山あります。理髪店のサービスもそうですし、有料のセミナーや勉強会も講師が学んだ時間に金を払う行為で書籍も同じです。著者が結論を得るために費やした時間と費用からみれば、わずかな金額で技能や経験を手に入れることができます。

金で買える他人の時間とは、Web担当者風にアレンジすれば必要なときだけ利用できる、時間の「クラウド化(SaaSのほうが適している気もしますが)」といったところでしょうか。

時間を大切にする方法

つまりは多くの人が無意識に「他人の時間」を使っています。しかし、「自分の時間と他人の時間」という「2つの時間」という概念の有無は仕事の効率を大きく左右します。

時間の概念が変わると、1日のはじまりに「何をしようか」ではなく、外注業者、部下、上司、同僚に「何をさせようか」と考えるようになります。これを「図々しい」と眉根を寄せるのは正当な評価ではありません。「他人の時間」を上手に使うには、あらかじめ準備し適切な指示が不可欠です。先ほどの情報収集を依頼するにあたっても、ファッションブランドの概略、具体的に調べてほしいことなどを、あらかじめ指示しておかなければなりません。

つまり「リソース」を最大限活用するという発想が生まれ、1日のはじまりが変わるのです。反対に他人のリソースを斟酌しない一方的な命令や発注こそが「図々しい」ものであり、その正体は「甘え」です。

最悪の経験から

会社組織に身を置くなら「何をさせるか」という視点はより重要となります。部下が「指示待ち」で手を止めている時間は「他人の時間の浪費」ですし、上司への報告書を早めに出すことで、上司に十分な「考える時間」を与えることができます。つまり「他人の時間」を使うには、相手の置かれている状況を理解し、先回りすることが不可欠で、それは「甘え」ていてはできないことです。

母親が営んでいた軽作業の工場では、親会社同然の受注先の営業マンの不手際で、資材の入荷待ちが日常的に起こっていました。資材がなければ作業はできず、仕事がなくても出社してくれたパートさんに給料を払うのは子会社社長の母親です。そして、しばらくもせずに工場は倒産しました。私もフリーター時代に手伝っていましたが、最後は給料どころか借金しながら働いていました。

他人の時間へのお返し

営業マンからみれば些細な約束の取り違えや、伝票の記載ミスぐらいだったのでしょうが、それを許す心が「甘え」です。彼は母とパートさんの時間を無駄遣いしたのです。これが反面教師となり「他人の時間」の大切さを学びます。

「他人の時間」という概念が身につくと仕事が順調にまわりはじめます。「他人の時間」を利用できるからではありません。「他人の時間」を借りるために、その人が気持ちよく仕事ができるように先回りするようになるからです。そして時間が増えたことで、まったくの未経験から短期間で新規事業を立ち上げ……と、最初の自慢話にたどり着きます。

先の営業マンは母の工場が倒産すると発注先に困るようになりました。「他人の時間」へのリスペクトがない仕事ぶりは、他の工場でも同じで、無理ばかり言われる下請けが次々と離れていったからです。そして彼自身が会社を辞めなければならなくなるまでそれほど時間はかかりませんでした。

今回のポイント

他人の時間を上手に使う

甘えではなく「リスペクト」して

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