セッションを超えたアクセス解析でアトリビューションも分析
セッションを超えたアクセス解析でアトリビューションも分析
編集部● アトリビューション分析も徐々に話題になっています。海外での状況やサイトコアのお考えを教えてください。
サイファート● 多くの場合、アクセス解析では「トラフィック」を計測しますが、それとコンバージョンはさほど密接な関係ではありません。大企業では多くのコンバージョンがありますが、それぞれ異なる意味と価値があります。トラフィックの価値を示す指標と、トラフィックの量を示す訪問者数とは別物なのです。
アトリビューションについてサイトコアでは、どの検索エンジンからの来訪が多いか、どのソーシャルメディアで会話されていることが多いかを分析し、どのチャネルの貢献が大きいかを明確にします。どこから流入するかというだけでなく、ドリルダウンすることでより詳細な情報を見ることもできます。
編集部● 貢献度はどのように計るのでしょうか。
サイファート● 貢献によってポイントを加算していきます。たとえば、最初にグーグルからやってきたとします。その時はポイントは加算されません。その来訪者がその後、ダイレクトで5回アクセスすると、グーグルに100点加算されるといった感じです。
この仕組みがマーケティング担当者に示しているのは、「本当に貢献しているのはどのチャネルで、どこへ投資するのが効果的か」ということです。すべてのアクセスについて、どこから流入したか平等に計測するのではなく、もともと何によってその商品やサイトを知ったのかがわかるからです。
陥りがちなのは、とてもよいコンバージョンがあった場合、そのチャネルにばかり注目し、コンバージョンしたユーザーがそれ以前にどこで自社のことを知ったのかを見失うことです。サイト訪問者は複雑な動きをして最終的にコンバージョンに至るので、最後のアクセスがどこから来たのかだけを見るのでは、どこへ投資するのが広告効果が高いかはわからないのです。コンバージョンに至ったラストタッチのセッションだけを分析するというやり方は、すでに一昔前の考え方です。
クラウドにも対応しハイブリッドが可能
編集部● 日本でもクラウドが注目されていますが、クラウドについてはどう考えていますか。
サイファート● モバイルサイトを含めたウェブサイトなどのデジタルアクティビティがクラウド化するのは、自然の流れだとは思います。クラウドは電気のようなもので、将来的にはスイッチをひねれば誰でも簡単に、世界中の好きな場所で必要なだけクラウドを通じてさまざまなシステム機能を利用できるようになるのが理想です。そうなれば、ウェブはすべてクラウド化するかもしれません。
サイトコアは、マイクロソフトのAzureによるクラウドに対応していますので、クラウド型として利用することも可能です。
編集部● 現状ではデータセンターにウェブサーバーを置いて運用している企業の方が多いのですが、方向性としてはどんどんクラウド化し、クラウドCMSになるべきだとお考えですか。
サイファート● 必ずしもそうだとは限りません。自社でプライベートクラウドを構築できる能力のある企業なら、それが可能でしょう。しかし、各企業が社内システムをどのように構築するかの戦略によって、異なる結果になるはずです。
片山● クラウド化に関しては、我々が「こちらへ行く」と決めるわけにはいきませんが、お客様に選択肢を提供できるようにしておくことが重要だと思っています。
企業によっては自社内で持っておかなければならないデータもあります。そういうケースでは、オンプレミスのシステムとして提供します。一方で、サイトへのアクセスの増減が激しい場合には、ハードウェアを購入してセットアップしてということでは間に合いませんからクラウドを利用しますよね。その場合にはクラウド型で提供すると。
編集部● CMSをクラウド化するかどうかの判断基準は何かありますか。
サイファート● 基本的に、トラフィックの増減の激しいものはクラウドを利用し、機密保持が重要な分野ではオンプレミスのシステムを使うべきですね。MSN産経ニュースのサイトはいい例でしょう。編集や管理のシステムは社内に置いていて、配信はAzureでクラウド化と使い分けるハイブリッドモデルです。
編集部● スケーラビリティかデータの機密保持かの判断ということですね。
片山● その他に、一年間のうち特定の期間だけ使うような季節物の場合も、クラウドを利用するケースが多いですね。さらに震災以降は、事業継続性という面から災害対策用に遠隔地のクラウドにデータを置くというケースが注目されています。
編集部● サイトコアが考えるデジタルマーケティングの現在と将来について教えてください。
サイファート● まず、ウェブをめぐる新しい市場ができつつあると感じています。ウェブコンテンツ管理という分野に、さまざまなマーケティング手法やeコマース、ソーシャルメディアなどの異なる分野の製品が近づいてきて、複合的なものとしての市場ができているのではないでしょうか。
サイトコアは2006年にコンテンツ管理システムからスタートしてこの新しい市場に向かっているのですが、最近は特に動きが激しいですね。たとえばIBMはマーケティングツールのUnica Corporationや分析ツールのCoremetricsを買収しましたし、共通管理基盤のWebSphereを持っています。アドビもコンテンツ管理のデイ・ソフトウェアや分析のオムニチュアを買収しています。彼らは、異なる業種からこの新たな市場への参入者です。市場規模の面でも、CRMやERPにひけをとりません。
編集部● ウェブ担当者はコンテンツ制作のみならずマーケティングや分析など、すべてをやらなければならない状況になっているということでしょうか。
サイファート● そういったすべての分野に熟達したエンジニアというのは、ごく限られているでしょう。それぞれスキルが必要で、メールマーケティング1つとっても成功させるのはそれほど簡単ではありません。重要なのは、サイトコアのようなプラットフォームを使うことによって、コンテンツやマーケティングに関するすべてのことを一元的に概観できるということです。
編集部● CMSは、サイト管理者の作業が楽になるという明確なメリットがありました。
サイファート● それがそもそもの目的ですね。
編集部● サイトコアは、そのような単純なメリットがあるというよりは、ビジネス全体を考えていくうえで有効なものだということでしょうか。
サイファート● その通りです。サイトコアの利用者は、事業戦略について考え、さまざまなシステムを構築していこうとする人たちです。
編集部● 単なるCMSではないということですね。
サイファート● CMSを核として、さまざまな機能を備えたプラットフォームです。個人的には、CMSという言葉は好きではありません。最も重要なのはビジネスの視点です。コンテンツ管理もさることながら、顧客との対話がより重要なのです。
サイトコアは、今後マーケティング施策を展開していくにあたって必要となるものは、単にコンテンツ管理・運用する場だけではなく、企業(マーケティング担当者)と顧客とが効率よく「会話」する場になると考えています。そのためには、コンテンツ管理・コンテンツの効率的な展開・分析/解析を複数のシステムで実施するのではなく、1つの統合プラットフォームで展開し、顧客行動の変化に合わせて、マーケティング担当者自らの手で簡単にすばやくPDCAサイクルを実施できるプラットフォームを開発・提供していきたいと考えています。
パートナー企業とも協力して、日本のお客さまのお役に立ちたいと思っています。顧客やパートナー企業との絆を大切にすることこそが、サイトコアの重要な価値なのです。
編集部● ありがとうございました。
サイトコアは2001年にデンマークのコペンハーゲンで設立された企業で、複雑化するWebサイトの構築・管理・運用をシンプルにするSitecore Web CMS(コンテンツ管理システム)に、顧客との接点の質を高めるためのWeb解析・最適化ツールを組み込んだ「顧客エンゲージメントプラットフォーム」を提供している。サイトコアのソリューションは世界各国の大手企業や政府機関で採用されており、2万4,000以上のWebサイト構築に使用されている。
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