IBMの企業Twitterアカウントは30以上、全社員が自由に活動するためのガイドライン/日本IBM
フォロワー数を2倍にした@IBM_JAPANの震災対応
IBMでは震災後すぐに災害対策本部を設置し、速やかに震災に対する対応方針を決定した。震災後には「震災復旧・復興支援ポータル」も開設しているが、Twitterの利用方法については検討されたのだろうか。
「社員との情報共有は原則として、社内のイントラネットであり、安否確認については、会社から届いた携帯メールに社員が返信すると安否情報を一元管理できる仕組みを設けていたので、Twitterの利用はまったく検討されませんでした
」
だが、実際には被災した社員向けのツイートがリアルタイムにつぶやかれていた。当時はどのような状況だったのだろうか。
「社員に安否確認のメールを送っても返信がなかなか返って来なかったのです。電話もつながらずメールも遅延していた状況でしたが、Twitterは動いていたので@IBM_JAPANからも安否確認の返信依頼をツイートし、携帯メールが利用できない場合は直接社内のDBに安否確認を入力するよう呼びかけました。また、社員向けの情報は原則としてイントラネットに掲載しますが、災害などの緊急時は社外の人も閲覧できるホームページ上に社員向けの情報を出してもいいというルールがあります。社外向けホームページに掲載できる情報ならTwitterで流しても問題ないだろうと判断し、イントラネット内の文章を要約して積極的にツイートすることにしました。そうすることで、PCを会社から持ち出せない、自宅が停電でLAN経由で社内にアクセスできない、派遣社員で自宅から社内へログインできないなど多くの社員のためになると思ったのです。結果的に、@IBM_JAPANのツイートは、多くの社員から反響があり、社内での認知も急速に高まったので震災後の3連休と土日はずっとつぶやくことにしました
」
東日本大震災を通してTwitterの利用方法に変化は生まれたのだろうか。
「有事におけるTwitterがこれほどまでに有効とは思いませんでした。社内向け情報をサマリーしてつぶやくことで、結果として、詳細を求めてイントラネットにアクセスする社員に情報を伝えるという社内広報部門のミッションにも使えると改めて気づかされました。
また、震災後は節電のために会場を利用したイベントが少なくなるかもしれません。米国ではイベントの代替ツールとしてTwitterなどソーシャルメディアを利用する動きが活発と聞いています。米国では元々、国土が広く都市が分散しているのでインターネットを使ったイベントの活用が進んでいますが、日本では大都市圏に人が集まっているのであまり注目されてこなかったと思います
」
今後はマーケティング視点での活用方法も検討
IBMで運用する企業アカウントについて運用ルールを強化していくべき、といった話は社内から出てこないのだろうか。
「ちょうど今月(2011年4月)から私を含めて比較的ソーシャルに精通している社内のメンバーを集めた、ソーシャルに関するバーチャルチームを作ったので、今後はそこで運営していくことになっています。メンバーは、社内広報、社外広報、マーケティング、ibm.comホームページのブランドを担当しているチームなどから参加しています。まずは、社内メンバーで運営しているソーシャルメディア・アカウントの把握を含めた管理体制を整えていきます。IBMの電話セールスを担当するibm.comチームも積極的にソーシャルメディアの活用を始めたことで、今後はマーケティング目的のターゲットがでてきますから、ソーシャルを利用してどのぐらいのパフォーマンスを上げてビジネスにつなげていくか、といった定量的な評価もできるようになると考えています
」
バーチャルタスクに対する栗原氏の思いを伺った。
「私個人としては、あまりルールでガチガチに固めてしまって、自由な活動を阻害することはないようにしたいと思っています。IBMでは、ビジネス・コンダクト・ガイドラインを守ってさえいれば、いかなるコミュニケーションも個人の判断で行うことができます。ただ、社員のなかには、炎上などを警戒して不安に思っている人もいると思います
」
バーチャルタスクではどのようなことを検討する予定となっているのだろうか。
「まず、会社・組織名のソーシャルメディア・アカウントも増えてきたので、どの部署にどのアカウントがあるかを明確にします。今後はアカウントを開設する際には必ず知らせてもらうような仕組みにします。弊社内のSNSであるLotusConnections上に共有DBを作り、どの部門の誰がどのアカウントを運営しているか、社員の誰もが参照できるようにしました。また、読むべきガイドやグローバルからの最新情報、成功や失敗などの事例もまとめて情報共有を進めます。場合によっては、教育マテリアルも用意する予定です
」
社員教育ではどのようなことが教えられているのだろうか。
「基本的にはソーシャル・コンピューティング・ガイドラインやビジネス・コンダクト・ガイドラインを守りましょう、ということをわかりやすく伝えるようにしています。私に相談があった際によくアドバイスするのは、ビジネスの話だけでなく発信者の個性やパーソナルな面も出るような内容を心がけるよう伝えます。また、他者の著作権や肖像権を侵害しない、そして自身のプライバシーも守るということも重要ですね
」
会社組織のミッションとしてではなく、個人としてTwitterを通してユーザーとコミュニケーションをしてきたという栗原氏。最後に、コーポレートサイトとの連動や、Facebookなど他のソーシャルメディア活用をどのように考えているのか伺った。
「Facebookは基本実名ですから、ビジネス利用時のターゲットを明確にできるメリットがありますね。イベントの事前告知で盛り上げ、参加いただいた方への事後のケアやサポートのための情報提供に有効ではないかと注目しています。Twitterは匿名性が高いので、大多数に広めるという利用に長けていますね。
弊社ウェブサイトとの連動については、今後ソーシャルメディアからウェブサイトへの誘導、ウェブサイト内へのソーシャルメディアの組み込みなどが増えていくでしょう。米IBMのウェブサイトをご覧いただくと、TEDの動画やTwitterのウィジェットを埋め込んだものも見られます。IBMが開発した質問応答システムであるワトソンがクイズ番組に出演した際には、ソーシャルメディアの情報をまとめた専用のウェブページが設けられました。IBMは、今年100周年を迎えることもあり、日本のウェブサイトも一新されました。今後はよりソーシャルメディアと融合したウェブサイトに進化していくと思います
」
◇◇◇
Twitterの企業活用は、マーケティングやPRの側面で語られることが多いため、社内の情報共有ツールとして利用している同社の取り組みは興味深く感じられた。企業向けのソーシャル・ネットワーク・サービスとしてはYammer(ヤマー)などを利用することで社員限定のクローズドな利用も可能だが、顧客情報を含まない業務連絡や企業に関連したニュースなどの情報共有については、あえてTwitterを利用することで、ユーザーとのコミュニケーションを生み出すきっかけとして役立てることができるのかもしれない。
コメント
あまりビジネス色が
あまりビジネス色が出すぎるのも硬く…⇒堅く ですね