初代編集長ブログ―安田英久

その調査データ、ガセの確率71%ですよ。信じちゃうの?

先週あなたが企画書に添付したグラフは、本当に信頼して大丈夫?
Web担のなかの人

今日は、マーケティングリサーチなどの調査データを読む・利用する・公表するときに、少なくともこれぐらいは注意したい点について。

日々、いろんな調査データが公表されていますね。

でも、今日あなたが社内向けに「この調査見ておいて」とメールした調査データや、先週あなたが企画書に添付したグラフは、本当に信頼して大丈夫なのでしょうか?

または、御社がせっかくがんばって作った調査データなのに、公開する際の付随情報の見せ方が適切でないために、見た人に「こりゃダメ、使いものにならん」と切り捨てられてしまっていないでしょうか?

「だれが」「何のために」「どんな人を対象に」「どういった手法で」行った調査データなのか、そうした背景がわからないデータは、役に立たないどころか悪害を為すゴミです。何らかの判断をするのにそんな素性のわからないデータを利用するぐらいなら、サイコロを振る方がマシだと私は考えます。

考えてみてくださいよ。たとえば、SEOのために、キーワードごとに検索数を調べて、検索ボリュームの多いキーワードにフォーカスしてSEO施策を行ったとします。でも、実はその検索数データが5年前のデータが流用されたものだったり、だれが使っているのかわからない弱小ブログシステムのブログ内検索のデータだったりして、実際の姿と乖離していたらどうでしょうか?

調査データというのは、そういったことがないように、その素性が明らかになっていないと意味がないのです。

ですから、調査データを見て考えたり、他人に伝えたりする際には、必ずその調査が行われた背景(多くの場合は「調査概要」として記載されています)をチェックしてください。調査概要が書かれていないデータは、眉唾ものとして信用性95%オフぐらいの意識で読むべきです。

あなたがリリースや製品説名の文章を書くときに「企業の○○%が△△している」というデータを記載する場合は、必ずそのデータはソースを(脚注ででもいいので)記載してください。それが「筆者調べ」であったとしても、ソースの記載なしのデータよりはよっぽどマシです。

あなたが調査データを公表する際には、必ず調査概要を記載してください。だれが何を目的に行う調査として企画して、実際に調査を行ったのはどの機関で、いつ、どんな人に対して、どういうフィルタリングをしたうえで、何人から回答を得たのかといった情報です。

本来ならば調査票まで含めて公開するべきなのですが(質問の仕方によって回答の傾向は変わるため)、そこまでできなくても、少なくとも前述の調査概要を出しておきましょう。これがあれば、そのデータをどう読むべきかがわかりますが、なければ判断のしようがなく、「ダメ、使い物にならん」と放置するしかありません。

自社のユーザーを対象とした調査ならば、そう明記すればいいのです。そうすれば、データを読む人が「これは○○のサービスを利用している人が対象だから、回答者にはこういう傾向がある可能性がある」と判断でき、一般的な調査データではないがある特定の市場の調査データとして利用できます。

最近は、ブログやメディアや企業サイト、いろんなところでいろんな調査データが公開されています。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディア上を流れていくうちに素性が不明になってしまうデータもありますし、正直なところ、商用メディアの顔をしている媒体でも、調査統計の知識がゼロの企業担当者が出した、調査データとして扱うべきではないデータを、調査統計の知識がゼロの記者が、さも適切なデータであるかのように扱っている場合もあります(そしてそれを信頼しちゃう人がソーシャルメディアなどで拡散させる)。

私も調査統計の専門家ではないので、「インターネットサーベイML」に参加されているようなプロの方々から見ると足りない点があるかと思います。自戒を込めて、かつ、Web担でもこうした点に留意して記事を作るよう内部での周知を兼ねて、整理してみました。

あ、そうそう。記事のタイトル「ガセの確率71%」っていうのは、もちろん「根拠のないデータ」を揶揄したもので、特に「71%」に意味はありません。これぐらいあからさまだと「あ、ネタね」とわかりますが、これと同じぐらいガセな内容を堂々とした顔で載せられると、意外と「へー、そうなのか」と信じちゃったりするんですよね。

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