初代編集長ブログ―安田英久

「Web担当者」から「ウェブマスター」へ

御社では「ウェブマスター」の役割を果たす人は、どれくらい「マスター」としての仕事ができているでしょうか
Web担のなかの人

今日は、「ウェブマスター」の話を。そう、Web担当者ではなく、ウェブマスター。企業ウェブサイト全体を司る役割です。御社では「ウェブマスター」の役割を果たす人は、どれくらい「マスター」としての仕事ができているでしょうか。

最近、「ウェブマスター」という役割の重要性が増していると思いませんか? それを解説する前に、まず「Web担当者」と「ウェブマスター」について考えてみましょう。

Web担当者Forumの前身は『Web Master完全ガイド』という臨時ムックでした。しかし、本格的にメディアとして立ち上げるにあたって、日本では(当時)、本職として企業のWeb戦略を担当して全体を管理するような仕事をしている人はさほど多くなく、「ウェブマスター」という言葉を見て「これは自分向けの情報だ」と思う人は意外と少ないのではないかという意見がありました。

そして、悩んだ結果「Web担当者」という言葉を作り、今まで使ってきました。「ウェブマスター」のような大仰なものではなく、全体の予算も足りないなか、まずは企業ウェブの形を作って成果につながていくために現場の作業をがんばって少しずつ実績を作っていく人のイメージですね。

おかげさまで2006年7月26日のWeb担オープン以降、それまでなかった「Web担当者」または「ウェブ担当者」というキーワードでの検索が出現して伸びています。

Web担当者 + ウェブ担当者

とはいうものの、2006年からの4年で世の中は変わりました。

多くの企業がウェブの力を認識してウェブを重要視するようになり、企業のなかでウェブの果たす役割が大きくなってきました。企業サイトで扱う情報は膨大になり、広報もマーケもプロダクトもサポートも販売も扱うため、関係する部署の数も多くなりました。各部署でのウェブに対する期待も高く、さまざまなリクエストがWeb担当者に届けられるようになりました。

場合によっては「ウェブだから」という理由で、自社サイトと何の連携もしないTwitterマーケティングの相談がWeb担当者に来るような状況にもなりました。

Web担当者の仕事の質も変わってきました。サイトそのものに関する仕事よりも、社内調整や全体の方向性を定める仕事の重要性が高まってきたのです。やりとりする外部のパートナー企業も増えています。

昔のように自分でただがむしゃらにHTMLを書いてFTPでアップロードするようなことはなくなり、各事業部がそれぞれ制作会社と契約していたり、CMSに各部署の担当者がログインしてコンテンツを更新していたりといった状況になり、「ウェブサイト運用ガイドライン」といった類のものも、改めて注目されています。

Web広告研究会のサイトマネジメント委員会が、企業サイト向けのガイドラインの実用的な標準テンプレート「次世代ガイドライン・フレームワーク」を2010年夏に公開したのも、そうした流れが世の中に増えてきたことを受けてのものだと考えられるでしょう。

・企業サイトの次世代ガイドライン・フレームワークをフリーライセンスで公開
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/08/30/8711

そう。今は企業ウェブのガバナンスを司る「ウェブマスター」としての役割が、本格的に重要になっているのです。

改めてウェブマスター的な仕事とはどんなものかを整理すると、次のようなものになるのではないでしょうか。

  • 企業のWeb戦略を立てる ―― 自社サイトだけでなく、トリプルメディア・トリプルスクリーンを考慮した展開の全体像を、経営戦略に基づいて立てる。

  • ビジネス目的と目標を設定する ―― 経営指標につながるビジネス目的をサイトやアクションそれぞれについて設定し、その達成状況を管理する。

  • リソース調整をする ―― 社内各部署からのリクエストに対して、全体戦略と重要度に応じて適切に採用・却下または調整し、有限である各種リソースの配分を適切に決定する。

  • システム化する ―― 属人的な作業に依存せずに、リソースを無駄なく最大限に活用するための仕組みやルールを作り、運用する。

上記のようなことを、組織としてオーソライズされた形で実行することが重要です。戦略や目標は経営陣も認めたものである必要がありますし、リソース配分を行う人はその決定権限が組織的に認められていなければいけません。ルールは社内規定として罰則を含めて定めて周知しておくべきでしょう。

もちろん、「Web担当者」としての現場の作業がなくなるわけではありませんし、すべての企業でこうした役割が重要だとは限りません。特に経営陣がネットの活用にコミットしきれていない場合は、上記のような提案をする前に、社内に対する啓蒙と教育とモチベートを行う必要があるでしょう。

すでにここで言う「ウェブマスター的な」仕事をしているWeb担当者さんも多いことでしょう。でも、現場で作業をすることに追われている人は、改めて自社にいま必要な役割が「担当者」なのか「マスター」なのかを考えてみてはいかがでしょうか。

※ちなみに、もしかしたらですが、こうした役割は、当初は「社外ウェブマスター」として外部の人にやってもらうほうがうまくいく場合もあるかもしれません。特に、戦略や指標に関しては経営的な視点とネットの知識の両方が必要になりますし、リソース配分に関しては社外の人のほうがキッパリと行える可能性がありますからね。この「社外ウェブマスター」に関しては、コストや責任や立ち位置など考慮すべき点が多いと思いますが、考えがまとまったら今後また整理して書いてみるつもりです。

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