企業ホームページ運営の心得

30歳を過ぎてもWeb担当者で生き残る脳トレはコレ!

「コラボ脳」とは「コラボレーション」を生み出す脳の力で、Web担当者必見の脳活用法です
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百七十参

アイデンティティの喪失危機

会社を辞め独立したころ、物忘れが気になるようになりました。当時、30歳です。前日の晩ご飯のメニューを思い出せず、甥や姪の誕生日も忘れています。脳ドックで異常は見つかりませんが、症状が改善される気配もありません。アイデンティティとは「記憶」に準拠するもので、記憶がなくなるとは自分が自分でなくなることだと、恐怖が私を支配します。さまざまな文献を文字通り漁り「脳科学」の本に答えを見つけ、ホッとすると同時に「コラボ脳」という武器を発見します。

「コラボ脳」とは私の命名で、「コラボレーション」を生み出す脳の力で、30歳を過ぎたWeb担当者必見の脳の活用法です。

半世紀のヤスリ職人

今週末、公開される話題の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 3 奴らを開放せよ!」のスピンオフムービー「係長 青島俊作」が「ドコモ動画」で配信されています。これはただの「コンテンツ配信」ではなく、利用者を囲い込みたいドコモと、ドコモユーザーに映画を告知したいフジテレビとのコラボです。これをひらめくのが「コラボ脳」。コラボはドコモでなくても、織田裕二さんがいなくても可能です。

工具通販を手がける「ヤスリ.jp」を運営する株式会社ユニークは「コンテンツ」に力を注いでいます。単なる「通販」に埋没すれば「価格競争」に飲み込まれることが明らかだからです。しかし、製麺機械の麺切り刃の調整ヤスリといった、特殊すぎるものはコンテンツとして不向きで、あるいは商品名をだせば誰もが知っている製品の仕上げに使うヤスリは「秘密保持契約」から公開することはできません。市販品のヤスリを紹介しただけでは「普通」です。そこで「手打ちやすり職人 五百川ヤスリ製作所」とコラボします。

コラボ企画の意味とは

高度経済成長期からバブルまで、国内のモノヅクリは盛んでヤスリが売れたといいます。ヤスリは「削る」だけではなく「切る」「磨く」に使え、形状と「目」を変えることでエンジンのシリンダーから、エレキギターの加工まで、なんでも使える万能工具です。ところが日本が豊かになるにつれ、モノヅクリの拠点は海外に移転し、製造業を支えてきたヤスリの需要も減りました。また、五百川ヤスリ製作所のような「手打ち」の職人は日本全国でもいまや数えるほどしかおらず、近い将来「失伝」するかもしれない技術です。

これは別の機会に譲りますが、営業マンの極意の1つに「物語を売る」というものがあり、これはネットでも有効です。このヤスリ職人の「物語」をコンテンツとして、「ヤスリ.jp」という「媒体」で配信します。

Web屋だからできるコラボ術

五百川ヤスリ製作所の主人である五百川さんにとっては、ネットで紹介されることで取引拡大が期待できるというメリットがあります。両者にメリットがなければコラボではなく搾取です。

コラボは物語だけではありません。本稿読者に多い「ホームページ制作業者」ならば、クライアントであるA社とB社のコラボ(ビジネスマッチング)を企画して提案します。幅広い業種を取引先にもつ「ホームページ屋」だから可能なことで、これにより「制作業者」という下請けから「ビジネスパートナー」へと昇格できます。実際、私もヤスリ屋にメガネ職人を紹介し、行列ができる焼き肉屋「スタミナ苑」には包丁研ぎを提供しています。ちなみにマージンは頂いていません。それはクライアントが発展してくれることが私のミッションであり、おこぼれが我が社の懐を潤すことを知っているからです。

コラボ脳は加齢により加速する

私の「物忘れ」は独立したことが理由でした。頭の中は仕事のことだけが占め、前日の晩ご飯や誕生日を覚えておくスペースが脳内になくなっていただけでした。それが証拠に新しい技術や情報収集などの「仕事」に絡むもので忘れたものはありません。そして「コラボ脳」を発見します。

正しくは「結晶性知能」というそうですが、知識と知識を結びつけて別の答えを引き出す「脳力」が人間にはあるといいます。しかも、30歳を過ぎてから高まっていく傾向があり、蓄積した知識や経験を係数として、鍛えれば鍛えた分だけ強くなるというのです。もちろん個人差はありますが、計算力や短期記憶力などは加齢により衰えていき、いつか「若者」には勝てなくなります。しかし、「コラボ脳」は知識と経験と訓練により伸ばすことができ、「若造」に勝ち続けることができる脳力なのです。「鍛え続けなければならない」ところも気に入りました。「継続は力」という格言を大半の人は実行できないので、続けるだけで結果的にライバルを出し抜けるという打算です。

脳科学を学んだ書籍名は残念ながら覚えていません。「仕事」に関係のないことだったもので……失念して失礼。オジサンになると「駄洒落」が増えるのは「コラボ脳」の仕事かも知れません。

現場の心得のネタもと

その後、ホームページ屋としてご飯が食べられ、「もの書き」を続けられているのは「コラボ脳」を鍛えてきたからだと断言できます。サイトを設計する時には「どこかとコラボできないか」と考え、できごと同士を「関連」づけることでネタが生まれます。そして鍛えて使うほどコラボ脳の働きが強くなることを年々実感しています。

コラボの事例で紹介した「踊る大捜査線」と「ドコモ動画」を見てこんな言葉を思い出しました。

IDOかな

直前まで「ドコモ」のCMに出演していた織田裕二さんが、ライバル会社「IDO(現KDDI、au)」のCMでつぶやいた台詞です。ライバル企業への出演は広告業界では「タブー」で、誰もが凍りつきました。これは、当時「ぽっと出」だった広末涼子さんを人気の高まりに合わせて重用し、主役級として迎えたはずの織田裕二さんをドコモが粗雑に扱ったことへの意趣返しと噂されたものです。コラボがその恩讐を越えました。ちなみに広末さんの当初の担当は「ポケベル」でした。

話題の最新映画から10年以上前のゴシップを絡めて「現場の心得」に仕立てるのも「コラボ脳」のお陰様です。

今回のポイント

コラボレーションでコンテンツを増殖。

30歳を過ぎてからの脳トレはコラボ。

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