企業ホームページ運営の心得

みんながツイッターで遊んでいる今こそ古典の活用を

Twitterで集客するも、その先にある本命のコンテンツがおろそかになっては本末転倒です
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百六十八

わすれがちな旨味

工具販売の「ヤスリ.jp」には水曜日の深夜1時過ぎに沖縄県から来店があり、メガネ販売の「クラフト」では朝の3時に「メガネの洗い方」を知るために客がやってきます。弊社には日曜日の深夜(あるいは早朝)2時55分に「営業戦略」、4時12分には「楽天市場 出店 失敗」、朝を迎えた7時に「セブンイレブン 戦略」……お気づきでしょうが、これはそれぞれのサイトに来る訪問者の話。

ホームページは365日24時間営業。アドバイスから販売まで対応するのが「コンテンツ」です。ホームページはコンテンツが命というのは基本なのですが、油断をすると「コンテンツ」は疎かにされます。いまなら「ツイッター」が理由でしょうか。

営業戦略といえば

女性専門の鍼灸院「表参道ビオ東洋医学センター」サイトには膵臓の不調や肝臓シップを紹介したコンテンツへ毎日多くの客が訪問します。「ヤスリ.jp」では「ダイヤモンド工具の使い方」が人気で、弊社は「営業戦略」の概念を紹介したページがダントツの1位です。

インターネットで情報を求める際に、多くの人は「検索」をします。検索結果の大半はもちろん「コンテンツ」です。最近ではツイッターのなかで「誰か教えて」と、検索すらしない人間が現れていますが、親切なお人好しが教えてくれるのもどこかの「コンテンツ」がほとんどです。つまりコンテンツを充実させればリスティング広告もツイッターでつぶやく人件費も使わずに「集客」ができる……のは当たり前の話ですよね?

「ドロリッチなう」などいらない

ツイッターのなかでは多くの「Web担当者」を見かけます。しかし、Web担当者のツイートがクリックされたとしても、訪問者が到着するのはツイッターであり、あなたの会社のサイトではありません。プロフィール欄の「Web」にあるリンクをクリックしてくれる人は少数で、さらに「リアルタイム性」が担当者の常時接続(タイムラインに張り付いている状態)を要求し、小さな企業にとってはその人件費の負担は重すぎます。ブログやメルマガのバックナンバー同様に、ツイートを保存して公開する方法もありますが、独自のコンテンツとするのに「140文字」は少なすぎます。

コンテンツは一朝一夕にすべて作れるものではありません。サイトを運営しながら、客の声に耳を傾け、あるいは経験をまとめて増やしていきます。弊社で発行している「メルマガ」は、バックナンバー(コンテンツ)としてすべて公開しており、ここへのアクセスが毎日のPVの3割を占めます。積み重ねが「ロングテール」と同様の効果を生んでいるのです。

ツイッターとコンテンツ

ツイッターは公と私という分類でみれば「私(わたくし)」に親和性の高いツールです。グリコのチルド珈琲「ドロリッチ」を飲んで「なう」とツイートし、それを個人的におもしろがることには向いています。しかし、どれだけ時間を費やしてつぶやき続けても企業の「コンテンツ」にはなりません。

こんな主張もあります。「ツイッターは備忘録。あとで整理してコンテンツにする」。ブログブームの時に同じ主張がありましたが、実現した人はわずかです。作家やジャーナリストのように「書く必然性」がある職業を除けば、ツイート(あるいは、自分の書いた文章)を読み返して整理する人はいません。また、コンテンツ作りにおいて、ツイッターの利用が生み出すリスクがあります。140文字の短文を繰り返していると(コンテンツになる程度の)長文を書く忍耐力と思考力が衰えるのです。これは短めのコラムばかり書いていたために、書籍のような「大作」が苦手になった私が保証します。

ある折込屋のコンテンツ

そもそもビジネス用のコンテンツは難しいものではありません。 日常の業務の一部を切り取るだけです。冒頭の事例は、すべて日常業務から切り出してコンテンツにしたものです。

「チラシ折込」を主業務にしている広告代理店は「曜日別の出稿量の割合」をグラフにまとめて発表しています。チラシを配布するクライアントにとって、配布する曜日は頭を悩ませます。チラシは週末に集中し、平日は少なくなるので目にとまるという考えもあります。一方、買い物に出掛けづらい平日のチラシは無視して、週末にじっくり見る人を狙うという客の声もあるのです。「曜日別の出稿量の割合」はクライアントに検討材料を提供します。この独自の「コンテンツ」は他社との差別化となり、ビジネスへの発展が期待できます。

自社で取り扱ったチラシの集計なら毎日の業務の延長で特別な労力は不用です。

自分で更新することなど

コンテンツの大切さを語るのにツイッターを持ち出したのは、最近こんな言葉をよく耳にし、目にするからです。

ツイッターばかりでブログの更新が止まっている

ニヤリと笑ってしまいます。フォロワーからリアルタイムにリアクションがあるツイッターは楽しく、同時にネットに接続し情報発信している作業と適度な疲労がWeb担当者に達成感を与えてくれます。一方、1人パソコンに向かいコンテンツを作る作業は孤独で、公開してもすぐに手応えを感じることはありません。そして疎かにされてしまいます。しかし残るのは「コンテンツ」で、ツイートは刹那で消費されていきます。

こんなコンテンツ作成法はいかがでしょうか。制作途中のコンテンツを随時ツイッターで紹介し、反応を見ながら修正を加えるのです。これなら寂しくありませんし、「俺たちが作りだした!」という自負はネットの住民の大好物です……が、これはネットコミュニティの歴史上「古典的」な手法で私のオリジナルではありません。

ツイッターにいそしむWeb担当者の「フォロワー」を増やすことで客を呼べるという主張は本末転倒です。誘導先にコンテンツがなければ失笑を買うだけで、大手企業のツイッター成功例(自称)は、商品開発や広報担当といったコンテンツを作る人が別にいるから成立していることをお忘れなく。

今回のポイント

オリジナルコンテンツは長期間美味しい。

つぶやきでは作れない「作品」。

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