Twitterのなかは暇人と業界人と政治家ばかりか? 中小企業の商用利用心得
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の百伍十参
政治家の台所事情
政治家に大ブレイク中のTwitter。「ネット選挙解禁」を睨んだ事情が見え隠れします。広告業界では有名な話しで「露出」と「好感度」は比例し、ヘビーローテーションで流されるCMと街角に貼られた「国政報告会」と銘打った政治家のポスターも狙いは同じで、情報に接した機会が多いほど「親近感」は増します。それがTwitterなら無料でネットの住民に「露出」でき、ついでに「国民の声」をつまみ食いすることも可能ですから使わない手はありません。
Twitterはテレビ、ラジオ、雑誌と広がりをみせています。いわゆる「メディア業界」が売れるものに飛びつくのは、黒潮にのった鰹の群れを発見した漁師と同じです。そして中小企業Web担当者でも利用したいと考えてくる人が現れるでしょう。そこで、今回は「Twitter利用心得」について。
Twitterの商用利用の心得
まず、利点。それは手軽さと気軽さと取り組みやすさです。140文字という手短さに加えて「誰の場所」という敷居がないことが気軽なコミュニケーションを実現します。ブログのコメント欄を友人宅での会話とすれば、自宅のベッドに寝ころんでのメールのやり取りがTwitterで、感覚は「自宅」です。他者とのやりとりや「相手の場所」へ訪問する必要もなく、自分のアカウントページで作業が完結するので自宅どころか「自室」かもしれません。
また情報を発信する際の作業負担も軽く、従来の「ネットツール」と比較すると下記の図になります。足立区の石谷歯科医院では、こうしたTwitterの気軽さと手軽さを活かして上手に患者とコミュニケートしています。
その光と影の相克
中小企業の商売用で特筆して利点として挙げられるのはここまで。短文のやり取りというシンプルさに、リアルタイムの多方向制、かつ柔軟に第三者とつながるという「インターネットの性質」をそのまま体現したTwitterを商用利用するのは、素人には難しすぎます。例えるならナイフ。料理に自信があればナイフ一本で切る、剥く、刻むは思いのままです。しかし、素人の皮むきにはピーラーのほうが便利ですし、千切りにはスライサーを使います。友達限定の情報交換なら「ミクシィ」の方がわかりやすく、情報収集なら「ヤフーニュース」でこと足ります。一方、Twitterを使いこなすには一定のネットリテラシーが不可欠です。
これには反論もあるでしょう。ネットリテラシーが低い有名人がTwitterにはまったというエピソードも少なくないと。
聖書レベルの神話
東京マラソンを完走した市民ランナーは取材に対し口々にこう答えます。
(沿道で応援してくれた)みんなの声援があったからゴールできた
声援は力となります。これをブログで経験した人も多いでしょう。友達や仲間が訪問し、沢山のコメントが励みとなりノウハウを身につけたことです。有名人のTwitter体験記をみると、強力な推薦者やサポーターとなる紹介者がいて「導いて」くれているのです。「ヒウィッヒヒー事件」でTwitter業界の「伝説」となった広瀬香美さんは、多くのフォロワーをもつ経済評論家の勝間和代さんのすすめではじめたといいます。
無名の輩より有名人の「つぶやき」をみたいと思うのは素朴な好奇心です。新約聖書の有名な一節に「富める者はますます富み」とあり、こうした「富の集中」をマタイ効果と呼びます。クリック1つで有名人を「フォロー」できる、Twitterの気軽さと手軽さが、マタイ効果を最大化します。平たく言えば「セレブの追っかけ」。かくしてリアル有名人とIT業界著名人はその恩恵に信心を深め、布教の声を日々大きくします。
Twitterとは禁断の果実
有名人に次いで布教活動に熱心なのが雑誌や新聞の編集者です。原稿待ちや締め切りに追われ、狭い世界を走り回っている彼らにとっては外界とつながる窓がTwitterであり、光明がツイート(Twitter内での発言、つぶやき)なのかも知れません。しかし、そのツイートをみていると微苦笑を禁じ得ません。最盛期には数分おき、数秒おきの「つぶやき」が10や20と重ねられ、終盤に差し掛かると定型文のように「時間がない」とつぶやきます。
……あえてつっこみません。私も原稿に追われる身、現実逃避にネットは便利なツールです。Twitterに浸るにつれて増える「フォロワー」を係数としてツイートが積算され、滞在時間が積み上げられます。さて、非IT中小企業のWeb担当者にそれほど「ネットどっぷり」に浸れる時間があるでしょうか。あるいはその姿を後ろで見た上司はなんと言うか。
シェリーの告白
「商売用」でTwitterに取り組む際の最大の心得は「自制心」です。「やらない」というのも自制心。やる以上はハマりすぎないとするのも自制心。
東京MXテレビの情報番組「U・LA・LA@7」の「8minutes朝カフェール」は、MCのシェリーさんと料理研究家の高沢紀子さんが協力して8分間で「朝食」を作るコーナーで、時間の少なさから毎回大騒ぎしています。番組はTwitterと連動し、視聴者のつぶやきが画面にリアルタイムで投影され、番組内で折に触れツイートを紹介するのですが、2010年1月18日のコーナーでは、まったくその余裕のない慌ただしさで、シェリーさんは最後になってTwitterに気がつき、こうつぶやきました。
見てらんなかった
Twitterの1つの断面で、「ヒウィッヒヒー事件」の非IT界での認知度はほぼゼロです。そして冷静な声も聞こえてきます。『さおだけ屋はなぜつぶれないのか?』の著者、山田真哉さんは「東京IT新聞(2009年12月8日号)」の取材にこう答えています。
TwitterはTwitterでしかない。これ以上、過大な期待をかけない方がいい
良記事でバックナンバーもネットで入手できるので、詳しくは紙面をご覧いただきたいのですが、利用体験を通じてのメリットを踏まえつつ課題の本質を突いた的確なコメントに唸りました。
今回のポイント
手軽でも相応のリテラシーが求められる。
これほど温度差のあるネットサービスも珍しい。
※テレビ出演情報
2月6日(土)16時、関西テレビ他放送の番組、健康情報番組 S-コンセプト「男と女のしあわせ脳研」(司会:雨上がり決死隊)に宮脇睦がVTR出演予定です。
- 電子書籍『マンガでわかる! 「Web担当者」の基本 Web担当者・三ノ宮純二』
- 企業ホームページ運営の心得の電子書籍
「営業・マーケティング編」「コンテンツ制作・ツール編」発売中! - 『完全! ネット選挙マニュアル』
現場の心得コラムの宮脇氏が執筆した電子書籍がキンドルで2013年6月12日発売! - 『食べログ化する政治』ネット選挙が盛り上がらなかった理由はここにある(2013年8月1日発売)
コメント
当然
たぶん、ここに書かれているようなことは皆さん当然承知のうえで、今はTwitterというオモチャで遊んでるだけなんじゃないでしょか。
そうですね(微笑)
そうですね(微笑)アップルさん、さすがです。
中小企業は
必要な労力に見合う効果は期待しにくいので、むやみに手を出すべきではないと理解しました。
twitterって有効?
いつも拝見しています。
楽しい記事をありがとうございます。
先日N○Kのニュースの中で、twitterを使った商売のセミナーの一部を紹介していました。
どこかの方が壇上で、「これのコツは、いかにもセールスっぽく書かないで、一般の人のコメントのように装って…」などと言っていました。
これって一応法律かすってませんか?
まあ良くある事だと理解はしますが、いかにも素人っぽい人が目をキラキラさせて「これからネットビジネス始めるんです!参考になりました!」と言っていたり、こういったニュースを好意的に(「最近、twitterが流行なんですよ!こういった事が出来るんです!」てな調子で…)流してしまう○○Kの方に、なんだか眩暈を感じてしまいました。
いい加減見破られている手法なのですが、本気で有効だと思っているのか、私には疑問です。
ちなみに私は、twitter、1日で飽きました。
みなさん
コメントありがとうございます。
ツイッター的にはスルーしてもいいのですが、本サイトにおいて安田編集長からも読者と積極的に交流するようにと指令もでておりますので記事の蛇足な補足を
もちろん、ネットリテラシーの高い方は本稿など読むに値しないでしょうが問題はリテラシーの低い人が踊らされる、つまり情報の非対称性がネットの商用利用の門戸を狭くしているところへの問題提起も含んでのことです。
もしかしてIT業界の方でしょうか? ならばあえて箴言を。
「これぐらい知っているだろ?」
は一般社会の非常識に属することは少なくありません。
特に商売においては。
難しいこと抜きに、
難しいこと抜きに、とりあえず体感してみるのが早いんじゃないでしょか。
新しいことにはとりあえず首を突っ込んでみる。
そこから新しい発想が生まれることも多くあります。
商売においては。