コンプライアンスやWeb標準など標準への対応
コンプライアンスやWeb標準など標準への対応
企業に対してコンプライアンスを求める声は依然として高い。企業サイトにおいても同様だ。コンプライアンス管理というと、リスク管理ととらえられる場合が多いが、近年では、社会貢献や積極的な情報公開など、信頼性やブランディングの向上も視野に、Web標準準拠やアクセシビリティなどに取り組む企業も増えてきている。
手作業でWebページを制作していた時代は、ページ内の誤字脱字はおろか、ヘッダー・フッターすら統一されてなかったり、リンク切れがあったりと、企業の顔であるべきWebサイトがずさんな状態になっていることも少なくなかった。もちろんそのようなサイトで消費者の信頼を勝ち取れるわけがない。
CMSを導入すれば、コンプライアンス対応に求められる作業の多くを自動化することもできる。CMSでコンテンツを一元管理しておけば、過去のコンテンツを参照することができ、いつ誰が変更を加えたのか、バージョン管理も容易だ。一度テンプレートに落とし込んでしまえば、ガイドラインに沿った統一したデザインでWebページをミスなく生成できる。もちろんリンク切れなども起こす心配は不要だ。
こうした記事の間違いやリンク切れなどのミスは、単なる作業ミスから発生するというよりも、Webサイトの運用フローが作られておらず、責任者が明確でなかったり、特定の人間に作業が集中していたりすることが原因の大きな部分を占めていることも多いが、先に述べたように、CMSの導入を機に運用フローを見直す企業も多い。CMSのユーザー権限管理機能を使って、多くの人が記事の入力はできるが、それを公開できるのは一部の権限を持ったユーザーのみとすることで、基本的なトラブルはある程度回避できるだろう。こうしたユーザーごとの権限設定ができるのもCMSの特長だ。リスク管理はもとより、担当者が必要な作業にだけ集中できるメリットは大きい。また、ユーザーごとの責任の所在をはっきりさせることで、Webへの参加意識や関心をも社内スタッフに与えることもできる。
加えて、記事投稿時には承認手続きを設定すれば、記載内容や表現などのチェックする体制も整い、さらにコンプライアンスが徹底されることになる。すばやい対応が求められるWebサイトだが、正確でなければ意味がない。情報公開までのワークフローを確立することで、間違った情報が公開されることを回避できるだろう。
進化するCMSがWeb戦略をさらに加速させる
ここまでCMSが活きてくる活用シーンを紹介したが、まだ「CMSはシステムにガチガチに縛られた融通の利かないツールで、ニュースリリースのような画一的で無機質なWebページしか生成できない
」というイメージを持っている人は少なくないのではないだろうか。
たとえば、承認手続きを厳密に設定したために手続きが煩雑になってしまい、更新性が落ちることを心配している人がいるかもしれない。そういった場合でも、同じ部署内など近しい関係性内ならば承認プロセスを省略してスムーズに記事公開までたどり着けるように設定し、別部署や海外など円滑なコミュニケーションが取りにくいような場合には承認プロセスを明確に設定してミスや誤認をフォローできるように対応する、といった具合に、社内の関係性を柔軟に取り入れた承認手続きをワークフローに組み込むことも可能だ。
ブログや更新機能に特化したタイプのCMSには、商品情報と関連情報を紐付けられない、関連商品を表示できない、といった制限があるものもあるが、最近のCMSではレコメンドエンジンと組み合わせて、さらに濃密なサイト内リンクを構築することも可能になっており、AmazonなどのECサイトでよく見かける「この商品を買った人は他にこのような商品も買っています」を自社サイトで実現することもできる。このようにリアルタイムで集計されている人気商品を関連付けて消費者に提示するといった見せ方は手作業での更新は現実的ではなく、動的ページを生成できるCMSが必須になる。
また同一内容を異なる見せ方で表示しどちらの見せ方が効果的なのかを調べるいわゆる「A/Bテスト」にも対応しているCMSもあり、Webサイト運用の効率化だけではなく、成果を最大化するためのツールとしてもCMSが有効に機能している。
他にも、先進的な企業ではCRMシステムと連携して既存顧客に対してきめの細かいフォローをするなど、CMSに既存システムのデータを取り込み、パーソナライズしたコンテンツとして自社サイトに反映させるなど、Webサイト管理のさらに一歩先に進んだ例も見られる。
CMS導入を成功させる必要条件
ここまで読んでCMSは良いこと尽くめのように感じた人は少なくないとはずだ。実際、Webサイトを運営していく上でネックとなってくる問題の多くはCMSで解決できるだろう。しかし重要なのは、「CMS導入がWeb戦略成功のゴールではなく、導入してからが本当のスタート」だということだ。
CMSは企業が持つコンテンツ資産を戦略的に運用できるツールだが、コンテンツ自体を自動的に生成するわけではないので、コンテンツを増やしていくことが重要になってくる。CMSはあくまでもWebサイトを戦略的に運営するためのプラットフォーム作りを助けるツールであって、Webサイトと同様に自社内で育てていかなくてはならない。
当然CMS導入の成否は、「コンテンツは自分達で作っていくんだ」という社内スタッフの意識にかかっているのだが、それが単なるモチベーション頼りだと、やはり人依存の状態になってしまい結局限られた人間しかCMSを活用しなくなっていく。そういった事態に陥らないためにも、CMS導入後に社内スタッフが自発的に更新していく仕掛けこそがCMSを活かすためには必要なのだ。イントラサイトでの情報共有を促すために、投稿記事の評価を業務評価に加えている企業もある。
CMSを導入したものの誰も更新しなくて、結局、記事の入力やコンテンツ制作を制作会社に依頼するようになってしまっては、CMSを入れた意味がない。導入コストも考えると2重の意味で無駄になってしまう。
また企業サイトに見合ったCMSを選択することも重要だ。今までに挙げた機能をすべてのCMSが持っているわけではない。まず必要なのは、今自社サイトに足りていないものはなにか、何を優先して改善したいのかという現状認識と目的設定だ。そのためには現状の課題をしっかり洗い出して、それに必要十分なCMSを実装してくれるCMSベンダーや制作会社を選択することが望ましい。CMSに大は小をかねる、ということはなく、サイト規模やWeb戦略とミスマッチなCMSでは、たとえ高機能なCMSであっても無用の長物と化すだろう。
現に、ある企業では親会社がグループ会社全体のコスト削減や業務効率改善を目的にCMSを選定して導入したが、各社の運営方針に合わずに、数社でしか使われていないといった例もある。また、将来性を見越して大規模なCMSを選んだのはいいが、実際に役立っているのはコンテンツの入力作業だけという話もある。
- 導入後の運用管理体制を決めていなかったため、社内でほとんど更新されていない
- 現場の声を聞かずに導入したため、利用されていない
- 将来に向け拡張性の高いCMSを導入したが、ごく一部の機能しか使われていない
極端な話、ニュースリリースを更新するだけであれば、ブログツールだけで事足りてしまう。しかし「肥大化するコンテンツを一元管理したい」「顧客満足度を上げ、カスタマーロイヤリティの向上を目指したい」「ペーパーレスで効率的な承認手続きを行いたい」「ワンソースマルチユースを実現したい」といった運用を行いたいのならば、そういった用途に向いたCMSを選択すべきだ。
CMSは導入後に人の手で育てていくことが不可避なツールだが、登録されたコンテンツは有機的に他のコンテンツと関連付けられ、消費者の心に響くような形で提示してくれる。ユーザーが望む情報をスピーディかつ的確に提供することがWeb戦略の大前提であり、その要件を満たすツールがCMSだと考えれば、CMS単なるWebページ作成・運用ツールの域を超えて、Web戦略を強力にサポートしてくれる存在として注目を集めていることに納得がいくだろう。
もしあなたがCMSの導入を考えているのならば、改めて、今あなたが担当しているサイトでは、どんな戦略を推進しようとしているのか考えてみてほしい。本当にCMSが必要なのか、どんなCMSが適しているのかは、その戦略から導かれるのだから。
- さまざまな顧客ニーズに応えるために、Webサイトでの正確かつすばやい情報発信が欠かせない
- 企業内に蓄積されたコンテンツ資産を有効活用してビジネスチャンスへ活かす
- WebサイトのPDCAサイクルを効率化し、攻めのWebサイト運営へとシフトせよ
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