企業ホームページ運営の心得

究極のマーケティングはエモーション。数字だけでは見えてこない世界

Webはアクセスログで数値が取れますが、マーケティングには数値だけでは測りきれない部分もあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百四十壱

商売人の矜持を見る

総選挙で自民党が負け、歴代首相(自民党)をキャラクタにした、みやげ物を販売していた会社にメディアが取材に行きます。あまりの大敗に社長は寝込んでしまったと担当者が応じると、記者は今後の予定を訊ねます。つまり、民主党関連のグッズは作らないのかという質問に、担当者はこう答えました。

「今まで(自民党グッズで)儲けさせて貰ったので考えていない」

これを見て嬉しくなりました。商売人にとって機をみるに敏であることは悪いことではありません。自社の名を冠するプロ野球球団を持ちながら、同じリーグの別球団の優勝を祝うイベントを開催したネットモールが同じ質問をされたなら、民主党の勝利に乗じたかも知れません。しかし、この会社は「義理」を優先したのです。そこに矜持をみました。

仕事の手を止めて、この会社のホームページを探し、問い合わせページから励ましのメッセージを送ります。返事など期待していません。ただ商売人の端くれとして、矜持をみせてくれたことへ「ありがとう」と伝えたかったのです。

さらなるサプライズが届く

私はWebで「ありがとう」を意識的に多用しています。おもしろいコンテンツにはありがとうと書き込みをし、感銘を受けたサイトには実名を添えてメールで謝意を述べます。返信や見返りを求めてのことではありません。誹謗中傷とまではいかなくても、鋭角な言葉が氾濫するWebが少しでも和やかになればという願いを込めてのことです。

みやげ物会社へのメールも同じです。寝込んでいると聞き、少しでも励みになればと送ったのですが、すぐに社長からお礼のメールが届きました。そして翌日、宅配便が届き梱包を解くと、この会社からの「みやげもの」がそこにありました。饅頭と前総理の人形ストラップです。

キャビンアテンダントの席替え

私の「ありがとう運動」に返事が届くことはまれです。すでに述べたようにリアクションを期待してのことではありませんが、商売人の視点から見るともったいないと呟きます。メールの返信は無料ですし、定型文だとしても届けば嬉しいもので、それが顧客ロイヤリティを生むからです。

マーケティングを「感情」という切り口で紐解く名著『エモーショナル・バリュー』(生産性出版)では、顧客ロイヤリティを「感情口座」で説明します。銀行口座のように顧客ロイヤリティは出し入れされ、口座の残高がいわゆる「顧客満足度」だということです。すると「ありがとう」へのノーリアクションは、わずか数秒の手間で入手できる貯金を捨てていることと同じです。

旅行中にすべての荷物が盗まれた女性は、帰路となるユナイテッド航空のビジネスクラスにようやく座った時に泣き出しました。その様子を心配して客席乗務員が話しかけると苦難の続いた旅路を語ります。話を聞き終えた客質乗務員は「何をしてさしあげられるか、考えてみましょう」と言い、しばし後、彼女の座席をファーストクラスへ変更したと告げに来ました。

ヒルトンがヒルトンである理由

前掲の『エモーショナル・バリュー』にあったエピソードです。こうした思いもよらない対応は感情口座に多額の顧客ロイヤリティを入金します。しかも費用はほとんどかかりません。空席のファーストクラスに案内するだけなら実質無料なのですから。

打ち合わせが私の誕生日と重なり、クライアントがヒルトンホテルのレストランでご馳走してくれました。個室に通されシャンパンが注がれ、いざ乾杯という時に給仕係が数人部屋に入り整列します。そして「ハッピーバースデー♪」と歌い出します。クライアントが予約を取る際に誕生日だと告げていたことから、手の空いているスタッフを集め歌ってくれたのです。いい年こいたオッサンにとっては照れくさいものでしたが、その心づかいに感動しました。感動をこう解説するのは野暮ですが、手の空いたスタッフを使っているので「無料」です。しかし、プライスレスです。

感情口座に小さな積み立て

数字には魔力があります。その昔、「ヒルズ族」がワイドショーを賑わせていた頃、ある起業家がこんなことをいっていました。

「5億円稼ぐとね。もういいやとは思わないんだ。次は10億円って考えるんだ」

数字で表せるものは積みあげることに価値を見いだすようになります。今週最終回を迎える漫画「Web担当者 三ノ宮純二」で主人公の三ノ宮が数字に固執したのも同じ理由です。マーケティングには数字がつきもので、WebではPVやKPIなどがあります。Webはアクセスログから顧客の動向を調査でき「数値化」しやすい反面、注意が必要です。数字だけを追っていても「客の気持ち」のすべてがわかるものではないからです。

習性と矜持のあいだに

アクセスログは既存のコンテンツへの評価に過ぎず、「顧客満足度調査」といったアンケートから得られるのは設問に対するリアクションだけで、励ましのメールに商品が届き、不幸話がファーストクラスに化けたといったイレギュラーケースの数値化は困難です。「顧客ロイヤリティ」に直結するメール対応なども同じです。「数字」で測りきれない部分があるのもマーケティングの妙味で、感情口座という概念は数字の不得手な「エモーション(感情)」を補完します。

感情口座を黒字にするために何ができるか? とは数字だけ見ているとおろそかにされるマーケティングアプローチです。

今後、地方に行く際の「東京土産」を選ぶ時には冒頭のみやげ会社のものから選ぶと心に決めています。それは「麻生太郎ストラップ」を貰ったからではありません。率直に感謝を表せる会社を応援したいからです。つまり私の感情口座は限度額一杯まで預金されています。そして商売人として私もかくありたいと襟を正し、一方で感動体験すら「ネタ」にする「物書き」としてのあさましさを少しだけ恥じます。

今回のポイント

人は感情で動く。

感情口座の黒字化を意識する。

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