Webに関わる人材はどう雇っていくら払う? ― 業界の給与事情を徹底解明/エイクエント国際給与調査
マーケティングやクリエイティブ部門に特化した人材派遣会社であるエイクエントは、2008年2月から3月にかけて実施した国際給与調査の調査結果を『The Aquent Orange Book 2008| 2009』としてまとめ、発表した。同調査は、アジア・パシフィック・ヨーロッパを中心に世界14か国28都市を対象とし、日本国内では、さらに福岡、名古屋、大阪、東京の4都市に区分されている。調査対象のサンプリングや設問の設計などを統一することで、国際間での比較を可能とした貴重なデータとなっている。
また、雇用側(採用責任者)と応募側(社員)の2軸からの分析を行い、両者の乖離もみることができる。今回は、数ある設問の中から日本国内の東京のデータを中心に、アジアの諸外国との比較も含め特徴的な数値を追っていきたい。記事の末尾には基本給与の一例を用意したので合わせて参考にしてもらいたい。
本調査記事は、エイクエントが実施した「国際給与調査」の調査結果をもとに、エイクエントの許諾を得たうえで編集部が一部データを抜粋し執筆・作成している。調査結果の完全版レポートを希望する場合は、別途エイクエントに申し込みをすることで入手可能である。
雇用年数は3年未満が半数弱だが、他国と比べると長い
まずは、平均雇用年数を業種部門と都市別にみた結果である(図1-1)。よく言われる“3年”というスパンで比較してみると、ほとんどの都市・業務部門において、雇用年数が3年未満の社員が3割を越え、中には同比率が半数を超えている都市・業務部門も存在する。日本全体では46%という結果になった。
しかし、この水準はアジアの諸外国と比較すると低く、日本・韓国を除く多くのアジア地域における勤続年数3年未満の社員の比率は6割を超えている(図1-2)。
次に、2007年日本のWeb業界の離職率は平均して11%となり、2005年の12%に比べ若干ではあるが減少している(表1)。この水準は他のアジア諸外国に比べて低く抑えられており、日本、韓国以外ではおおむね20%前後の数値となっている。
平均離職率 | ||
---|---|---|
2005年 | 2007年 | |
オーストラリア | 28% | 17% |
中国 | 19% | 17% |
香港 | 18% | 23% |
台湾 | - | 19% |
日本 | 12% | 11% |
韓国 | 15% | 12% |
マレーシア | 25% | 21% |
ニュージーランド | 25% | 21% |
シンガポール | 19% | 18% |
人材確保の経路は
「就職/転職エージェント」「求人Webサイト」「クチコミ/推薦」
続いて、優秀な人材を確保するための手段を、採用を担当する責任者(雇用側)(図2-1)と実際に働いている社員(応募側)(図2-2)の2軸から調査した。
責任者(雇用側)の意見をみると、東京では「就職/転職エージェント」「求人Webサイト」を人材確保の源泉の上位項目に挙げている。また、他都市のデータは掲載していないが、「クチコミ/推薦」はすべての都市において3番手だった。
社員(応募側)の立場からみても「就職/転職エージェント」「求人Webサイト」の比率が高いのは変わらず、雇用側・応募側いずれも上位3項目に違いはみられない。
派遣を必要とするのは、繁忙期や専門スキルを要するとき
派遣社員を採用する理由に関しては「繁忙期の対応」「専門スキルが必要」「予定外のプロジェクトの発生」が上位3項目となった(図3)。一過性の生産能力の増加としての活用がうかがえるが、「専門スキルが必要」とされている点には注目したい。
社員を留まらせる秘策は、賞与のほかに研修や柔軟な勤務体制
日本の離職率を低く保っている“辞めないための対策”を調査したところ、都市間での違いは大きいものの、「社内研修」や「柔軟な勤務体制」「変動賞与」などが支持を集めているようだ(図4)。
年間基本給与の一例(東京:Web制作関連)
やはり気になる「Web業界の給与」はどうなっているのだろうか? エイクエントの調査データから、東京のクリエイティブ部門の年間基本給与のデータを紹介しよう。
中央値 | |
---|---|
Flashクリエイター | ¥5,000,000 |
Webプロデューサー | ¥6,000,000 |
Webディレクター | ¥4,800,000 |
Webデザイナー/モバイルデザイナー | ¥4,150,000 |
Webプログラマー | ¥5,000,000 |
この給与データは徹底給与調査でのヒアリング結果にエイクエントの実績に基づいた数値を組み合わせたものである。
- 現地通貨による年間基本給与を示している
- 退職金や各種手当などは含まれない
- 同じ役職名でも人材のレベルや業務内容が大きく異なる
『The Aquent Orange Book 2008 | 2009』にはその他の多くの職種や地域の給与データも掲載されているが、残念ながらここでは紹介できない。データを見てみたい場合は、エイクエントに問い合わせてほしい。
調査概要
- 調査の目的:同分野の専門職を切り口とした給与水準を明らかにすることにより、今後の状況改善の基礎資料として役立てられる。また、統計として他社の給与水準を知ることができ、今後の給与設定に活用できる。
- 参加国と有効回答数(※本記事内ではヨーロッパ地域を除く7か国を対象としている)
アジア・パシフィック 有効回答数 ヨーロッパ 有効回答数 日本 474 イギリス 483 中国(香港、台湾含む) 738 スペイン 75 韓国 93 ドイツ 235 シンガポール 428 フランス 201 マレーシア 139 チェコ 112 オーストラリア 1445 ポーランド 197 ニュージーランド 312 オランダ 115 - 日本国内の対象都市:東京、大阪、名古屋、福岡
- 調査対象:広告会社、一般企業または制作会社の人事担当者、管理職、または経営者および該当ポジションに勤務する正社員
- 調査方法:人事担当者との面会による聞き取り調査およびオンラインによる調査
- 調査の内容:マーケティング、コミュニケーション、クリエイティブ分野の正社員の給与やその他雇用に関わる項目
- 調査期間:2008年2月1日(金)~3月28日(金)
- 完成:2008年10月
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