BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

Firefox 3の使いこなし術を日本のスペシャリストが伝授/書評『Firefox 3 Hacks』

ブックレビュー

BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『Firefox 3 Hacks――Mozillaテクノロジ徹底活用テクニック』

評者:斉藤 彰男(編集者、システム・エンジニア)

Firefox 3の活用テクニックを紹介したHACKS本が遂に出版
デザイナー、システム開発者、サイト担当者には必携の一冊

Firefox 3 Hacksの書籍画像
  • 江村 秀之、池田 譲治、下田 洋志、松澤 太郎、dynamis 著
  • ISBN:978-4-87311-375-3
  • 定価:2,800円+税
  • オライリー・ジャパン

最近ユーザーが急増しているWebブラウザ「Firefox」。日経BP社が10月20日に発表した調査レポートによると、主に使うブラウザで、Firefox(29.3%)はIE7(31.9%)に次いで第2位を獲得したと報告している。以前に使っていたブラウザ調査では、第1位のIE6が60.2%を占めていることと比較すると、Firefoxの勢いの程が理解できるだろう。

本書は、そのFirefoxの最新バージョン「Firefox 3」のHACKS本である。Firefoxについては、2005年8月にNigel McFarlane著『Firefox HACKS』の翻訳版が刊行されたが、本書はその改訂版ではなく、オライリー・ジャパンの独自企画による書き下ろしである。

Firefoxは、使い勝手がよい、動作が速いといった、どのようなユーザーにも評価される特長があるが、特筆すべき点は、カスタマイズのしやすさと拡張性にある。本書では、このカスタマイズと機能拡張のためのテクニックを52のHACKSに凝縮して解説している。

内容を簡単に説明すると、1章「Firefox 3の基本」では、Firefox 3の新機能を中心に、ブラウザの概要を解説している。ブラウザのテーマ、ツールバー、タブといったユーザーインターフェイスのカスタマイズ、機能拡張、言語パック、プラグイン、辞書といったアドオンの管理方法、またWebサイトにログインするパスワードの管理方法などについても述べられている。

続く2章「新世代の拡張機能」では、Firefox 3のために提供されている拡張機能の中で、一般ユーザー向けのものが解説されている。マウスジェスチャーのための「FireGestures」、広告や不要なメニューを消す「Adblock Plus」、Webページの中から必要な部分を切り出す「ScrapBook」、マクロでブラウザの動作を自動化する「iMacros」、WebページのCSSをカスタマイズする「Stylish」などの使い方が述べられている。ユーザーがあえてFirefoxを選択する最大の理由は、このような拡張機能が数多く提供されていて、簡単にインストール・更新できることにあると評者は考える。

3章「Firefox 3向けの拡張機能開発テクニック」には、Firefox 3の拡張機能を開発するための、さまざまなノウハウが紹介されている。この章には本書の約40%のページが割かれているが、1章・2章が“ユーザーズガイド”的な内容であるのに対して、“デベロッパーズガイド”的な内容になっている。

残りの4章「アプリケーションプラットフォーム」と5章「FirefoxとWebを支える技術」は、Firefoxを使うことで実現できること、Firefoxがこれから実現しようとしている機能などについて解説されていて、興味深い内容となっている。とくに「Google Gears」と連携してオフラインでWebアプリケーションを利用可能にするHACKS、Firefoxが採用しているXULRunnerプラットフォームについての解説は見逃せない。後者はMozilla Labsが提供する「Prism」を使って、実際にGmailクライアントを作成する手順や、オリジナルのWebブラウザを5分で作る方法などが紹介されていて、一般ユーザーもすぐに活用できる内容になっている。またHTMLの中に人名や連絡先、イベントの日時などの情報(セマンティック)を埋め込むテクノロジ「Microformats」は、これからの普及が期待されており、これまた要チェックである。

本書の内容を全体的に見ると、Firefoxを活用するためのノウハウがぎっしりと盛り込まれていて、Firefoxユーザーにとっては間違いなく“必携の書”と言える。ただ、3章の扱いには多少の無理を感じざるを得ない。一般ユーザーにとっては内容が高度すぎて理解が難しく、いっぽう開発者に向けては、主にFirefox 3で新たに利用可能になった機能とFirefox 2以前とFirefox 3で変わった部分に焦点を当てて解説しているので、とくに拡張機能を始めて開発する人にとっては、十分な内容とは言えない。そのため、本書の著者陣が立ち上げたサポートサイトで「Firefox 拡張機能開発チュートリアル」をダウンロードして学習することが推奨されているが、一冊の書籍として見ると“帯に短したすきに長し”といった感が否めない。

評者としては、今後はFirefoxの利用者増がさらに期待されることから、一般ユーザーにターゲットを絞り、Firefoxでも特に有用な拡張機能、たとえばJavaScriptのデバッグのみならずCSSなどの設定チェックにも有用な「Firebug」の解説などに、さらに多くのページを割いた方がよかったのではないかと思える。

用語集
CSS / Firefox / HTML / JavaScript / Webブラウザ / アドオン / ダウンロード / ブラウザ / 書評 / 開発
この記事が役に立ったらシェア!

最新のニュース

メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

Google広告
Google検索、YouTube、Googleマップ、Google Playスト ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]