ペルソナを利用し、カスタマー・セントリックな会社に――ジョナサン ブラウン氏/WAISレポート
【WAIS JAPAN 2008 基調講演1】
ペルソナを利用し、
カスタマー・セントリックな会社に
フォレスター・リサーチ・ジャパン株式会社/ジョナサン ブラウン氏
10月17日に行われた「Web担当者Forumミーティング WAIS JAPAN 2008」
最初に行われた基調講演では、ペルソナを活用し、顧客中心になって顧客満足度、企業価値を高めるために企業は何をすればいいのか? について、カスタマー・エクスペリエンスのシニアアナリストである、フォレスター・リサーチのジョナサン氏が講演を行った。
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ペルソナは顧客との関係作りに最も強力なデザインツール
WAIS JAPAN 2008のキーである“本当のユーザー視点の獲得”において重要な役割を果たすのが、基調講演のテーマでもあるペルソナだ。ペルソナとは、“企業が提供する製品・サービスにとって最も大事な顧客の属性、行動、ゴールを表す象徴的なモデル”。想像によるユーザーや抽象的な存在ではなく、姓名、写真、ストーリーなどをもった具体的な人物像を設定するデザインツールだ。
このペルソナを活用し、顧客中心になって顧客満足度、企業価値を高めるために企業は何をすればいいのか。カスタマー・エクスペリエンスのシニアアナリストである、フォレスター・リサーチのジョナサン氏が講演を行った。
ペルソナは、米国では金融業界、製造業を中心に10年以上前から主流なデザインツールとされており、日本でも大企業を中心にここ2年で広がりを見せている。ジョナサン氏は、「フォレスター・リサーチでは、10年以上、企業とWebサイトの改善などをディスカッションしているが、八方美人のWebサイトを作ろうとする企業は必ず失敗します。どのお客様が大事なのか、どのお客様から最も理解を得るのか、あるいは売上が最も高いお客様はなど、セグメントを決めてからモデルを作るのがペルソナのポイントです」
と、実在する人間の行動を観察することがポイントになることを解説。顧客中心を実現するのに強力だが、その作成には間違いもあり、想像のペルソナを作らないことなど注意が必要であることも指摘した。
優れたペルソナに欠かせない実在の人物から得た定性データ
こうしたペルソナのポイントをふまえた上で、ジョナサン氏は、日本の優れたペルソナ導入事例としてアサヒビールを例に解説。アサヒビールでは、20年前よりビールのブランド「スーパードライ」を売り続けているが、同じブランドを売り続けると、少しずつそのロイヤルカスタマーが変化してくる。そのなかで、ブランドが元気に続くためには、新しい顧客をブランドに取り込まなくてはならない。
一方で、ロイヤルカスタマーである50歳~60歳の顧客を失わないように、かつ20代、30代の新しい顧客に魅力的なブランドを見せなくてはならないという課題があった。「この事例で興味深いのが、定量データと定性的なリサーチを合わせて優れたペルソナを作ったこと。アサヒビールは、スーパードライの開発に5000人の調査データを用いるなど、定量データ活用のエキスパートでした。しかし、20年経った今、新たなブレイクスルーを行うには、より感情的なイメージ、顧客のモチベーションなどを深く知る必要があるのを理解した」
こうした課題をクリアするために、アサヒビールでは、「従来からのロイヤルカスタマー」「最近スーパードライを好きになったという人」「他のブランドをよく飲む人」「発泡酒好きの人」といった、4つの重要なセグメントの仮説を立て、複数の人々にインタビューを行いペルソナを作成。定量データだけを使って顧客を想像すると、必ず“ゆらぎ”がある。しかし、ペルソナを作成した結果、ビールのデザインやメッセージで大勢のスタッフがかかわるなかで、スタッフがゆらぎのない1つの顧客像を持てるようになったという。
ここで大切なのが、セグメント化した顧客すべてに満足してもらおうとしないことだ。企業にとって重要なペルソナに優先して加重をかけ、新しい味やメッセージを企画するときは、最も大事なセグメントの意見を尊重するのだ。
社内での理解が活用の第一歩
ペルソナを初めて利用するには、まずいかに社内でメリットを理解してもらうかが大切であると、ジョナサン氏は語る。限られたWebの予算では、ユーザーリサーチにかける予算が確保できないといったことが、多くの企業であるが、そういった場合は、Web以外の部署にペルソナが生み出す利点を説明し、予算を獲得することも必要であると説いた。その際には、大手企業のWebサイト評価や、カスタマー・エクスペリエンスの改善により得られる費用対効果などを伝えることがポイントになるとした。
フォレスター・リサーチ(英語)
Jonathan Browne's Blog(日本語+英語)
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