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『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

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『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

評者:斉藤 彰男(編集者、システム・エンジニア)

考える頭脳を活性化するためのトレーニングマニュアル
推定を楽しみながら、問題の核心に迫る

  • 細谷 功 著
  • ISBN:978-4-492-55598-9
  • 定価:1,600円+税
  • 東洋経済新報社

「シカゴにいるピアノ調律師は何人いるか?」「カラスは止まらずにどれくらい飛べるか?」「砂浜に砂は何粒くらいあるか?」といった難問に短時間でおおよその数を計算することを求められたら、あなたはきっと頭をかかえてしまうだろう。この種の問題を学生や友人に機会あるたびに好んで投げかけていたのが、マンハッタン計画にも参加したイタリア人物理学者エンリコ・フェルミである。さまざまな要素の中から数値を決定する主要な因子を選び出し、それらの関係式を単純化して組み立てることで数値を概算する方法は「フェルミ推定」と呼ばれ、物理現象のモデル化はもとより、最近ではマーケティングやプロジェクトマネジメントといった分野でも注目されるようになってきた。

本書は、そのフェルミ推定を使うことによって「考える力」を鍛え、問題解決の力を向上させるための指南書である。タイトルにある「地頭力」(じあたまりょく)という言葉は、ひらたく言えば“思考能力”といったものだ。人間の頭脳には、ほかに記憶力や判断力といった能力が備わっているが、グーグルがネットのあちら側に「世界中の情報すべてを整理し尽す」ために疾走する今日においては、とりわけ情報の大海の中から必要な情報を選び出して駆使する「地頭力」こそが必要と著者は指摘する。

さて本書のキモはと言うと、その「地頭力」を鍛える方法が具体的に解説されている点にある。『MINDパフォーマンスHACKS』にも通じるような、頭脳を活性化させる具体的な方法が多くのチャートを用いながら示されているのである。

第1章「地頭力とは何か」では、地頭力には単純に考える「抽象化思考力」、全体から考える「フレームワーク思考力」、結論から考える「仮説思考力」の3つの思考力があると紹介。また第3章「フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか」では、「日本全国に電柱は何本あるか?」という問題を題材にして、(1)アプローチ設定、(2)モデル分解、(3)計算実行、(4)現実性検証の各ステップごとに具体的なプロセスが紹介され、フェルミ推定の訓練を繰り返すことで地頭力の3つの思考力とがどのように鍛えられるかを解説。さらに第5章から第7章では、3つの各思考力について、具体的な手法や実際に適用する際のポイント、留意事項などが詳細に紹介されていて、さながら“思考のマニュアル”といった感じである。

最近は、マイクロソフトに限らず採用試験にフェルミ推定的な問題を出題する企業が増えてきているとか。本書の帯には“面接試験「定番問題」に3分で答えが出せるようになる!”とのアオリ。それはともかく、考えることを楽しみながら思考力を鍛えることができる本書は、お勧めの一冊である。

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