この記事は、書籍『ひらめきが加速する 企画エクササイズ』の内容を、Web担当者Forum用に抜粋してオンライン版として公開するものです。
脳内脂肪を燃やす
発想の新体操68本!
企画のもとになるアイディアは日常の関心事から生まれてくるもの。そのアイディアと消費者ニーズが重なったときに、企画は成立します。プランナー「くぼたつ」こと久保田達也による、企画を立てるプロセスで実践する方法を「発想」「共有」「表現」「思考」「分析」の5章立てで紹介。いますぐできる脳のトレーニングを68プログラム用意しました!
『~ひらめきが加速する~企画エクササイズ』
- ISBN978-4-8443-2461-4
- 1,659円(税込)
- 久保田達也 著
客観的に
ビジネスを分析しよう
本書をオンラインだけでなく書籍ででも読んでいる方は、P.172~P.190の「ネットでマーケティング①~⑥」の記事で、データから消費者ニーズを読み解く重要性をわかっていただけたと思います。ここからはマーケティングの仕事の本質に入っていきましょう。僕がかかわったケースから、マーケティングが解決するビジネスの課題を紹介します。みなさんも一緒に考えてください。
【課題例】水にまつわる新商品開発
これからの消費者ニーズとヒット商品コンセプトは何かという課題のマーケティング会議は、どんな業種でもとても多いものです。このときは水にまつわるものでした。
ミネラルウォーターが今はやっています。昔は水道の水を飲んでいたのに、水を買う時代になったわけですね。次に浄水器が売れ、水を買わなくても、水道水をきれいにすれば飲めるという考えが起こってきました。では、その先にはどういう商品が考えられるか、という課題です。皆さんだったら、どういうふうに考えますか。
まず、僕が考えたのは水不足です。ペットボトルを買って捨てれば環境に悪い。水不足や食料不足が起こるのになぜ水を買うのか。環境への懸念が起こり、お金だけで解決するのはどうも変だという考えが起こってくるのではないかと考えました。
そこで出した新しい商品のアイディアが「マイ水筒」です。自分の水筒に、朝、浄水器から水を入れて持っていってもよいし、自分の好きなお茶を入れてもよい。コーヒーも自分のブレンドしたものを持ち歩いてもよいでしょう。そうすると、保温性や携帯性をどう実現すればよいか。これは実際に考えて開発していったら当たったというもので、マーケティングをもとにした商品開発の一例です。
【課題例】ハンバーガーの国際戦略
ある商社から呼ばれ、世界を相手にハンバーガーの世界戦略を開始します。あなたはどこの市場を攻めますかと聞かれました。今思うと、漠然とした質問ですね。
僕は、世界の胃袋と照らし合わせて考えました。攻めるところは、BRICs(ブリックス)。ブラジル、ロシア、インド、中国の4つの国で、世界の人口の50パーセントを占めています。このBRICsに向けて、ハンバーガーを開発しようという提案をしたのです。それぞれの国の共通項や味覚を見極めて、世界の人口の50パーセントに向けた味付けをして売っていったらよいのではないかと考えました。
そうしたら、今度はどの国で生産したらよいかと聞かれました。それで、僕はベトナムを指しました。海に面していてものを売りに行ける。陸路もある。それから親日家で勤勉。人件費も安い。そういうふうに、胃袋はここ、生産拠点はここに置くのがよいだろうと提案していく。こうした国際展開に際して戦略を立てるのも、マーケターの仕事です。
このように、マーケティングは、客観的にビジネスを分析する情報業務だといっても、単に情報を集めればよいというものではありません。「ヒット商品」をつくることを目標にマーケティングを行うなら、常に未来を「予知」することが求められます。特によく求められる問いかけは、次の3つです。
どんなビジネスが来年ヒットするか
来年はどんなビジネスがヒットすると思うかというブレーンストーミングはとても多いものです。この場合、求められるのは、現在の情報ではなくて、動向や可能性などを先読みする力。発想法でいうと、「演繹法」(「アイディアは演繹法、マーケティングは帰納法で考える ~『発想する』エクササイズ」を参照)です。
この業界はどこへ向かえばよいか
この業界はどこへ向かっていると思うか、と聞かれることも多々あります。この問いに答えられるのは、数値の資料があるからではありません。
いろいろなマーケティングの中でも、特に重要なものが、フィールドマーケティングです。現場に行って、自分の目と耳と鼻と舌と皮膚、五感で感じ取ってみたものを観察すること。数字や既存の資料をまとめたものとは違い、五感で感じたことのほうが、情報の密度は高いのです。
一番よいのは、数値データとしての資料と、自分が現場に行って感じたこと、見抜いたことの両方を一緒に持っていることです。資料から学び解くことは、消費者や競合他社、新製品、業態動向、技術動向などの分析です。これは第4章で紹介した「帰納法」であり、りんごとみかんから「くだもの」を発想することです。ここにフィールドマーケティングによる五感情報が加われば、生きた情報となって、業界の将来を答えられるようになるでしょう。
次期市場はどこを狙えばよいか
わが社はここまできた。続いて新しい市場を狙いたい。どこを狙えばよいのか、と聞かれたとします。このときの答えは、その会社のビジョンです。まずその会社が10年後どうなりたいのか、5年後どうなりたいのかを知らないと、将来は言い当てられません。まず、長期ビジョンとして、5年先はこうなりたい、3年先はこうなりたいというのを調べておきます。そして今度は短期ビジョンとして、来年はどうなりたい。来月はどうなりたい。ということも共有しておきます。そうすると、次期の市場は、10年後はこうなるのではないか、来年はこうなるのではないかと、市場を限定して相手に伝えることができます。
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