基本編

1つの表だけでもここまで読める! 逆転や落差から探すサイト改善のポイント

―何を解析すればいいのかわからないあなたに―

Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座

1つの表だけでもここまで読める! 逆転や落差から探すサイト改善のポイント

ウェブサイトは大量のページからなり、複雑にリンク構成されている。1人の担当者が扱うのは無理じゃないか、と思えるほどだ。しかし、訪問者は決してそのすべてを見るわけでもなければ、混乱もしていない。アクセス解析から一番基本的な「アクセス数ランキング」を読み解くだけで、その複雑な糸を解きほぐし、次の一手を見極める方法を覚えよう。

アクセス解析からウェブサイト改善方法を読み取る

多くの会社から「アクセス解析ツールを導入していろいろ見ているのだが、解析結果からどうサイトを改善すればよいのかわからない」「今の解析ソフトが役に立たないので、違うものに乗り換えたい。どんな機能のあるものを選べばいいのだろうか」といった相談を受ける。

優秀なアクセス解析ツールやサービスはたくさんあるが、私の受けた相談の場合、ほとんどは「ツールが使いこなされていない」というのが実際の原因だ。アクセス解析ツールが悪い、と考えることもできるが、その前にもう少し使いこなしの腕を磨いたほうがいいと感じることが多い。今回は特に、一番オーソドックスなアクセス解析結果の「表」を使って、たった1つの表からでも、サイトの改善方法をここまで読めるのだ、もっと使えるのだ、というお話をしたい。ぜひ現在のツールをもっと活用して、サイトを改善してもらいたい。

ランキングの上位には「当たり前」が並ぶ

表1 ページごとのウェブ訪問者数
ランキングデータ
順位ページ訪問者数
1トップページ30,000
2製品情報 トップ20,000
3製品A 扉15,000
4企業情報 トップ12,000
5製品B 扉10,000
6会社概要8,000
7製品B 詳細7,500
8採用情報 トップ7,200
9新卒採用6,500
10製品C 詳細5,500
11事業所一覧5,000
12製品A 詳細4,500
13製品C 扉4,000
14転職採用3,200
15会社沿革3,000
16組織図2,500
17IR情報 トップ2,000
18資料請求1,500

アクセス解析を行うと、一般にはランキングデータが表示される。ページごとに、訪問者やページビューが多い順に並べられた表ということになる。まずは表1を見てほしい。これは典型的なアクセス解析結果の1つで、ページとそれぞれの訪問者数が表示されている(表1)。典型的なアクセス解析結果の一種として、このランキングデータを読み解いていこう。

多くの場合、企業人は「数が多いことが良いこと」と考えているため、こうした表を読み取るのが難しくなるのではないだろうか。たとえばこの表1を見ても、ランキングの上位には「当たり前じゃないか」という項目が並んでいる。

最も訪問者数の多いのは「トップページ」である。当たり前だ。次に多いのが「製品情報 トップ」で、トップページの3分の2にあたる人が訪れている。続いて出てくるのが主力製品である「製品A 扉」のページ。トップページや製品情報トップで中心的な扱いをされているし、他での宣伝費ももっとも多く使っている。だから、これが製品の中で一番に出てくるのは当たり前なのだ。ひどい人になると、リストをここまでしか見ない。上位3つを見ればだいたいわかる、といった感覚かもしれない。

4番目以降は「企業情報 トップ」、2番手となる「製品B 扉」、企業情報の中で一番見られるであろう「会社概要」と続く。多くのサイトでこれぐらいまでは当たり前の数字が続くものだ。たいていのホームページは扉をはさんだ階層構造になっているから、重要な扉ページが並ぶのは極めて自然なことと言える。

「どれも予想どおりのことで、アクセス解析しなくてもわかっていたことではないか?」

そう思う人も多いかもしれない。ところが、もう少し下まで見ると、多くのサイトで問題が見つかるのである。

逆転現象や落差から対策が見えてくる

7番目に多く見られているのは「製品B 詳細」となっている。製品情報などは、扉ページにイメージ写真や特徴があるだけで、詳しい説明は詳細ページで見てもらう形になっていることが多いだろう。詳細ページを見たら資料請求にもつながってくる。そういうわけで扉ページの役割は、製品への関心を高め詳細ページに誘導することだ。だとすると、製品Bの扉ページは非常に良い状態だと考えられる。1万人が扉を見て、その4分の3にあたる7,500人が詳細ページを見ているのだから、この扉ページは十分に役割を果たしている。

ところが、製品Aはどうだろう。扉こそリストの上位になっているが、肝心の詳細ページがなかなか出てこない。本来なら、扉ページの訪問はBよりもAのほうが多いのだから、詳細ページもAのほうが先に出てきてしかるべきなのだ(表2)。

表2 扉ページと詳細ページの比較で製品Aと製品Bの「逆転現象」が発見できる
表2 扉ページと詳細ページの比較で「逆転現象」が発見できる
扉ページの訪問者数が多くても安心してはいけない。詳細ページの訪問者を見て、初めて評価ができるのだ。さらに詳細への誘導が良いページであっても、安心してはいけない。他ページから扉ページへの誘導を高めることが課題となる。

ほとんどのサイトでこうした逆転現象が見つかる。製品Aの扉はリストの上位に出てきたから「良いページ」に見えていたが、それは製品情報トップの誘導力のおかげであって、実は詳細ページに訪問者を誘導できていない、成績の悪いページである、と評価が一変してしまうのだ。製品Aでは、扉ページを直して、詳細への誘導を高めなければならない。一方、製品Bでは、詳細への誘導は良い状態なので、他のページから扉ページへの誘導を高めることが課題となる。

このように、データを見てその落差や逆転に注目すれば、単に良いところ悪いところではなく、「何の目的で、どこを変える必要があるか」という、個別の対策が見えてくるのである。

独自に集客しているらしいページの発見

では、製品Cはどうか? これはさらに不思議な状態で、詳細ページのほうが、扉ページよりもアクセスが多いことがわかる。実際こういうこともよく見受けられる。製品情報トップページなどであまり選ばれておらず、詳細ページが検索エンジンなどから直接集客しているのであろう。

製品Cは社内での序列が低く、製品情報トップでの扱いもなかなか良くならない。ウェブ以外でも会社からの支援が少ない状態だ。広告も多く打てない。となると、独自にウェブで検索などから集客する他ない、ということになるだろう。こうやって詳細ページが直接集客していることは非常に良い状態だといえる(表3)。

表3 詳細ページの訪問者数が多いのは、非常に良い状態
表3 詳細ページの訪問者数が多いのは、非常に良い状態
製品Cの場合、詳細ページが検索エンジンなどから直接集客していると考えられる。他製品と検索キーワードなどが競合していなければ、非常に良い状態と考えていい。

多くの会社で、ウェブの予算配分は、ウェブ以外での成績に応じて決まっているように見える。保険会社のサイトなどを見ると、放っておいても外交員が売りに来るような主力商品について多くのページが割かれており、一生懸命顧客側がネットで探している情報(たとえば女性専用の保険、子供のための保険の情報など)は、深い階層に少しだけページがあるといった状態が多い。本当は、ウェブ以外の販売チャンネルが弱い商品ほど、ネットに力を入れなければならないのだが……。

ただし、注意する必要が1点ある。それは、製品Cの詳細に訪れているキーワードが、もしかすると、製品Aにも役立つものかもしれない、ということだ。その場合は事業部間競合というか、キーワードを奪い合う形になる。これは実際に多くの会社で起こっていることだ。

新規顧客になるはずの人がサポートページに来てすぐ帰ってしまっていたり、日本人が英語版ページに行っていたり……。どのページがどんなキーワードニーズを受け止めているのかを調べて、より望ましいページが入り口になるように調整すること。それが本当のSEOというものではないだろうか。

全体の訪問者数との比較から何が見えるか?

もう少しこの表を基に読み取っていこう。このサイトの総訪問者数が6万人だとすると、この表はどう見えるだろうか。

そうすると、トップページを訪問者数の半分しか見ていないことがわかる。現実にはもっと少ないサイトも多い。全体が10万人で、トップが3万人といった比率だろうか。それぐらい、現在のウェブではトップの比重が下がっているのである。これではトップページをいかに工夫して作っても、効果は限定的だし、訪問者をうまく誘導できていない原因の1つとなる。予期しないページからやってくる人をどう出迎え、社名を覚えさせ、望ましいページに導くか。「ボタンを1つだけにする」といった強引な戦術ではなく、訪れた人のキーワードなどからそのニーズを捉え、そうしたニーズを持った人ならどんな情報を見たいと思うか論理付けることだ。その論理に基づいて訪問者のモチベーションを高めていくことが、動線設計の基本となる。

つまり、「あ、この資料、ほしい!」と思わせれば資料請求は増えるし、「会員になるとこんなにメリットがあるのか!」と思わせれば、会員登録は増えるのである。

「そんなにうまく行くのか?」と思われるかもしれないが、こういった論理付けで資料請求を5倍にしたサイトも実在する。考えてみれば当たり前のそうした誘導策さえできていないのが現在のウェブなのである。

コンバージョンを増やすための出発点

さらに表を見てみよう。この表の最後には「資料請求」が現れている。1,500人が訪れているようだ。総訪問者数が6万人なら、2.5%ということになる。これでは恐らく、資料請求数は満足のいく数字になっていないだろうとすぐ想像が付く。ここから10%が資料請求したとしても150人。総訪問者数に対し、0.25%ということになる(表4)。

表4 総訪問者数をふまえて、各ページの訪問者数の比率を考察するべき
表4 総訪問者数をふまえて、各ページの訪問者数の比率を考察するべき
総訪問者数が6万人とすると、トップページは訪問者の50%しか見ていないことになるが、それぐらい、現在のウェブではトップの比重は下がっている。それなりの数値だが、トップページに来ない訪問者をどう出迎えるかも考えるべきだろう。一方で資料請求は2.5%ということになる。これは低すぎる数値。このサイトでは、真っ先に「資料請求への誘導が弱い」と判断するべきだ。

多くの人が「コンバージョンレートは1%は欲しい」と言うが、それはつまり、総訪問者数の10%が資料請求のページに移動し、そのうちの10%が実際に資料請求完了まで進む、という数字だということを忘れてはならない。

このサイトでは、真っ先に、「資料請求への誘導が弱い」と判断するべきだ。仮に今、グローバルナビゲーションに「資料請求」というボタンを置いているとしたら、それでは不足だということになる。では、どこからどんなモチベーションに基づいて訪問者は資料請求に進むのか? どこにボタンを増やしたら良いだろう? たった1つの表を見るだけで、次に何を行うべきか、という指針が明らかになるのである。

◇◇◇

次回はユーザーニーズをつかみ、「今どんなコンテンツが足りないか?」を考えるための方法を考えていこう。使うのはまた「たった1つの表」だけである。

用語集
SEO / アクセス数 / アクセス解析 / グローバルナビゲーション / コンバージョン / ページビュー / ランキング / リンク / 検索エンジン / 見える化 / 訪問 / 訪問者
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