BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『行動経済学 経済は「感情」で動いている』

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『行動経済学 経済は「感情」で動いている』

森山 和道(サイエンスライター)

感情、直感、記憶など、心のはたらきを重視し、
経済学を再構築しようとする「行動経済学」とは何か

『行動経済学 経済は「感情」で動いている』
  • 『行動経済学 経済は「感情」で動いている』
  • 友野 典男 著
  • ISBN:4-334-03354-7
  • 定価:本体950円+税
  • 光文社

標準的経済学は、人間は全て合理的に価値を判断して行動すると想定している。人間は自分の好みを明確に把握しており、自分の「効用」が最大になるように行動を選択するという。それに対して現実の人間はというと、当たるはずのない宝くじを買ったり、くだらないものに価値を見出したりして大金を投じている。株価が上がったときにはなかなか売らないくせに、ガクンと下がったときには「やがて上がる」と思って損切りできずに持ち続けてしまう人も多い。そもそも自分が欲しいものが何なのか、自分自身できちんとわかっている人など、ほとんどいないだろう。

人間が自然に持っている感情や直感を重視して経済学を再構築しようという学問分野が「行動経済学」だ。小柴氏と田中氏がノーベル化学賞を受賞した年、カーネマンが「プロスペクト理論」という人間が心に抱く価値に関する研究でノーベル経済学賞を受賞した。本書はそれらの成果をはじめとした行動経済学全体をざっと紹介した一冊。文章も平易で気楽な行動経済学入門書だ。

サンクコストと呼ばれる取り戻すことのできないコストが将来決定に大きな影響を与えるとか、選択肢は多くても客の満足は大きくならないといったことが明らかになり、モデル化されつつある。今日では脳科学の知見とも融合し、行動経済学は、より深く「人間」を理解する学問へと深化しつつある。とりあえず本書の内容くらいは把握しておきたい。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』 掲載の記事です。

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