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『デジタルな生活 ITがデザインする空間と意識』

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『デジタルな生活 ITがデザインする空間と意識』

神野 恵美(編集者、ライター)

“化身”を開放する異空間へとITが導いた?
人々の暮らしも意識も変えた四半世紀のデジタル史

『デジタルな生活 ITがデザインする空間と意識』
  • 『デジタルな生活 ITがデザインする空間と意識』
  • 小川 克彦 著
  • ISBN:4-7571-4101-7
  • 定価:本体2,500円+税
  • NTT出版

筆者によると、“デジタルな”生活の誕生は今から四半世紀前。マイコン炊飯器、ウォークマン、自動車電話、日本語ワープロ、表計算ソフトなど今ではなじみ深いというよりも、むしろレトロな響きさえ感じられるそれらの機器が我々の暮らしに登場したのは1979年。それらが社会にもたらした変化とは何か?

筆者は、ITの生活への浸透は、人々を単に利便性やそれがもたらす時間的豊かさへと導いただけではないと説く。ITによるいちばんの変革は、電話機に代表されるように、人々を“公”から“家”、“家”から“個”へと連れ出したことだという。そして、その空間の移動がまた人々の意識を大きく動かすだけでなく、今日のネット空間における“化身”という個人の第二、第三のパーソナリティを生み出した点に言及する。

確かにデジタル中心の生活の営みによって“内”と“外”という概念は、物理的なものから意識的な反意語として我々のなかに認識される傾向が強くなったように思う。さらにそれは“仮想”=“ネット空間”という異空間を生み出し、我々に新たな居場所を与えたのだ。

しかし、この2つの空間の差異がもたらす、現実世界における“現実感”の欠如が凶悪犯罪を生むとして、問題視される昨今。筆者は、今後は意識の上でもネットとリアルが融合した“デジタルな個人”が誕生し、個人の強い意志や他人に対する愛情や思いやりが養われていくだろうと楽観的な見方で締めくくる。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』 掲載の記事です。

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