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はてなが訊く「オウンドメディア成功の法則」

企業ミッションに基づいたシマノのオウンドメディア戦略とは?

企業理念に沿ったオウンドメディアを継続する秘訣は何か? 自転車部品メーカー・シマノの「Cyclingood」の運営を担当する阿部竜士氏、鈴木迪子氏にお話をうかがった。
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株式会社シマノ 阿部竜士氏(右)、鈴木迪子氏(左)

本連載では、株式会社はてなの磯和太郎氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。第5回は、株式会社シマノ バイシクルコンポーネンツ事業部 企画部 文化推進室 課長 阿部竜士氏、文化推進室 自転車と健康係 鈴木迪子氏にお話をうかがった(両氏とも所属・役職は取材当時)。

Cyclingood
2015年にオープン以来、阿部氏、鈴木氏が運用を担当。「Health」(健康)、「Life」(生活)、「Social」(社会)の3つのテーマで、自転車がもたらす豊かさについてさまざまな情報を発信している。

はじまりはフリーペーパー。社内にあった調査データを発信

磯和:シマノさんのオウンドメディアの活動を知ったきっかけが、以前に「Cyclingood」で、はてなの自転車通勤の取り組みを取材していただいたことです。「Cyclingood」は、2015年にオープンしてから継続的に発信を続けられていますが、どういう経緯で開始したのでしょうか。

阿部:実はWebの「Cyclingood」を始める前から、同タイトルのフリーペーパーを発行していました。

私たちが所属する文化推進室では、自転車と健康に関連する調査研究を大学と共同で行っており、以前からさまざまなデータを持っていました。このデータを私たちが持っているだけでなく、広く多くの人に公開していきたいと考えるようになり、それがフリーペーパーという形になりました。

鈴木:フリーペーパー版「Cyclingood」の最初の頃は、イラストや漫画を入れていましたが、取り扱っている内容は実験データをもとに自転車の健康への影響を解説していました。したがって、論文の要約のような見え方になっていて用語も難しく、自転車と健康というテーマに親しみを持ってもらうにはほど遠い内容でした。そこで途中で編集方針を変えて、より身近に感じられるような表現や紙面デザインにしています。

フリーペーパーは、まだ自転車には乗っていないけど、健康的なライフスタイルの実践に関心のある潜在層をターゲットにしている一方で、業界や自転車販売店の方々がお客さまに自転車の健康効果を伝える際のツールとして役立てていただきたいと考えています。実際に来店したお客さまが手にとって、自転車に関心を持っていただくケースも増えてきていると聞いています。

さらに、より多くの人にこの情報をお届けするためには、Webでの発信も必要だということになり、Webメディアも立ち上げることになりました。

Webサイトのカテゴリは「Health」「Life」「Social」

磯和:Webサイトの掲載内容は、フリーペーパーと同じ内容になるのですか?

鈴木:フリーペーパーの取材内容をもとに、さらに深掘りするような形で記事を作成しなおしています。

フリーペーパーの編集方針を変えるタイミングで、活動の目的を見直し、コンセプトを「自転車と一緒につくる健康的で豊かな暮らし」としました。Webサイトでは、このコンセプトから「Health」(健康)、「Life」(生活)、「Social」(社会)の3つのカテゴリをつくり情報を発信しています。

阿部:自転車は健康にいい、と言いますが、自転車のどういう特徴が、どのような健康効果につながるのかを説明できる人は、自転車業界でも多くありませんでした。そこで調査データに基づいた健康効果を伝えているのが「Health」カテゴリです。

しかし、自転車は健康にいいということがデータで伝わっても、自転車に乗るモチベーションにはつながりません。そこで通勤やサイクリングなど、自転車の楽しみ方や活用方法のご提案をしているのが「Life」カテゴリです。

そして、自転車が社会にどう役立つのか、またその可能性を持っているのかを私たちの視点でとらえ、紹介しているのが「Social」カテゴリです。企業、行政などが、働く人の健康増進のため自転車通勤を推進し始めていますが、こうした取り組みなどを紹介しています。はてなさんの取り組みもここで紹介しました。

また、自転車通勤にのみ特化した「MIND SWITCH(マインドスイッチ)」というオウンドメディアも運用しています。

コンセプトストアで自転車のあるライフスタイルを提案

磯和:お二人が所属している文化推進室というのは、調査研究や発信などを通して啓発活動をするような部署なのでしょうか。規模はどのくらいですか?

阿部:文化推進室に所属する人は、全体で15~20名です。シマノが運営する店舗が2つあって、私たち2名以外は全員店舗勤務です。

店舗の一つが、2006年にオープンした東京の南青山にある「Life Creation Space OVE(ライフクリエーションスペース オーブ)」で、日常の中の価値あるライフスタイルを自転車とともにご提案し、体験していただけるコンセプトストアです。

もう一つが大阪の梅田にある「SHIMANO SQUARE」で、こちらは都市生活の中に自転車や釣りを取り入れた、“アーバンスポーツライフ”をご提案しております。またSHIMANO SQUAREでは、シマノの製品、歴史などもご覧いただけるギャラリーも備えております。

磯和:施設での情報発信も、広い意味でのオウンドメディアですから、徹底されていますね!

阿部:自転車に乗ることで、日々の暮らしが充実する人が一人でも増えてほしい、という思いから、これらのような発信活動をさまざまな方面から行っています。

株式会社シマノ 阿部竜士氏

KPIは模索中。調査データのダウンロード数の増加に手応えを感じる

磯和:フリーペーパーは自転車販売店で来店したお客さまに配布しているということでしたが、Webサイトの場合はターゲットをどのように設定していますか?

阿部:弊社ではスポーツ用自転車の製品から、日常生活用の一般車向けの製品まで製造・販売していますが、Webサイトも含め、Cyclingoodがターゲットとしているのは、自転車の入り口にいる方や健康的な暮らしを送りたいと思っている方です。大きく分けると、「まだ自転車に関心のない潜在層」「自転車に関心のある顕在層」「もう自転車のある生活を実践している方」の3つの層の方を意識しています。

磯和:KPIの設計はどうしていますか?

鈴木:フリーペーパーに関しては、配布先の件数が重要なKPIとなっています。1部を店頭において、お客様に閲覧していただいている場合もあるので、部数よりも配布先を増やしていきたいですね。最近はようやく、販売店に浸透してきたので、より潜在層にアプローチができる新しい配布先を開拓していきたいです。

阿部:Webメディアについては、ユーザー数、直帰率、滞在時間などを通して、コンテンツを読んでもらっているかどうかを見ています。ただ、課題として訪問者がどれくらいになれば成功と言えるのか、多ければ多い方ほどいいという考え方でいいのか、ということは気になっています。

磯和:オウンドメディアをブランディングなどの目的で活用している場合は、何によって成果を判断するか、迷っている企業も多いです。シマノさんでは、会社の方針として情報発信に力を入れていると思いますが、何か運用する中で手応えのようなものは感じていますか?

鈴木:サイト内に、資料ダウンロードページを用意していて、「Health Data File」という自転車と健康に関するデータをダウンロードできるようにしています。2016年に「自転車活用推進計画」が閣議決定されて、地方自治体がそれぞれ計画を立てるようになりました。自転車が健康によいことをアピールするための根拠として、行政が私たちの公開しているデータをご活用いただくケースも増えてきております。

内容を理解してもらって、価値のあるデータと認められたからこそ採用されているのだと思いますので、そこは成果だと思っています。会社としても、自転車業界そのものを盛り上げていかなければならないと考えているので、Health Data Fileなどのコンテンツが一役買っていると思います。

株式会社シマノ 鈴木迪子氏

フリーペーパー、Webサイトは同じチームで制作

磯和:フリーペーパーを含め、コンテンツの制作体制はどのようにしていますか?

鈴木:私がメイン担当です。フリーペーパーもWebサイトも同じ制作会社に依頼しています。フリーペーパーを年4回発行しているので、基本的には編集会議を2、3ヵ月に1回開催して、制作会社、阿部、私が参加して、企画などを決めています。Webサイトの場合はコンテンツで打ち合わせが必要なときに不定期で、開催するようなイメージです。

磯和:CMSは何を使っていますか?

鈴木:Movable Typeです。当初、社内でバラバラに立ち上げたメディアがあったので、共通のプラットフォームに整理するタイミングで、Movable Typeを採用しました。

ブログのように私たち自身がコンテンツの制作をすることはないので、専門的な作業をする人が使いやすく、読者にとって読みやすく、世界観が伝わるデザインができることを優先して選定しました。あとは、信頼性、コスト面などを踏まえてMovable Typeにしました。

磯和:今後の展望などはいかがでしょうか。

阿部:例えば、ワインのポリフェノールが体にいいという話は、世の中に広く浸透していますよね。それくらいに自転車がなぜ健康にいいのか、ということをより多くの方々に広く理解されて浸透している状態を目指したいです。それを達成して、私たちの活動が必要なくなることが、究極の目標です。

磯和:そのゴールを達成するために今後予算や記事の分量を増やすようなことは考えていますか?

鈴木:ターゲットのニーズに合わせてコンテンツの内容を変えていくことは必要ですが、発行回数は現状の年4回を保っていきたいと思っています。自転車は季節の移り変わりを感じてもらえる乗り物なので、季節に合わせて年4回発行しています。また、品質を保って企画・制作を実現するには現状のペースが最適だと考えています。

運営する中で見つけたコアターゲット。30代女性に届くコンテンツに注力していく

磯和:今後、挑戦したいことはありますか?

鈴木:もっと女性に自転車に乗ってもらいたいので、そのための提案をしていきたいです。具体的には30代の女性ですね。この世代は、買い物やちょっとした移動の手段として自転車を活用していますが、健康という切り口では自転車をとらえていません。

コロナ禍において、密を避ける移動手段として自転車が注目されているこのタイミングに、自転車が健康によいことをもっと伝えたいですね。健康というと年配の方に響くキーワードですが、寄り添い方としてかっこよさを含めた健康をテーマにコンテンツを展開して、30代女性を狙っていきたいです。

阿部:30代女性というターゲットについては、読者にアンケート調査をしたところ、Cyclingoodのコンセプトやコンテンツに特に共感してくれた人がこの層だったため、今後コアターゲットになりえると考えています。ウェブのアクセス解析などで見るとまだまだこの層を拡大する余地が大きいことがわかりました。彼女たちにファンになってもらえるようなコンテンツを模索し、届けていきたいです。

磯和:世の中に広く届けるよりも、コアターゲットを見つけて、ヒアリングし、その人たちのニーズにマッチした情報届けるようなデザイン思考ですね。

鈴木:若い方をファンにしていかないと、次の世代につながらないとも思っています。一般的に健康に関心のある層は50代以上ですが、それより若い世代の潜在層にアプローチするためのキーとなるのが30代女性だと考えています。

フリーペーパーとWebサイト、両輪で進めていきたい

磯和:今後も守っていきたいポリシーはありますか?

鈴木:フリーペーパーは継続していきたいです。紙媒体だからこそ店頭に置いてくれる販売店がありますし、紙媒体だからゆっくり読めるという方がいるからです。Webだけでなく、アナログなツールも使いながら、「Cyclingood」の世界を伝えていきたいです。

阿部:守っていきたいことの一つが、「自転車と健康」という出発点です。先ほども述べたように、「健康のために乗る」というのは、継続のモチベーションになりにくいですが、楽しさ、活用方法だけでは他のメディアと変わらなくなってしまいます。私たちがやる意義の原点は健康にあるので、それはコアとして持ち続けたいと思います。

迷ったときは基本理念(ミッション)に立ち返る

磯和:他の企業のオウンドメディア担当者へのメッセージをお願いします。

阿部:シマノは「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する。」という基本理念を掲げていますが、私たちの活動はこの基本理念につながる活動だと考えています。なんのためにやるのか、なぜ私たちがやらないといけないのか、私たちが提供することの価値を考えるときに、この原点に立ち返ることを常に意識しています。

磯和:海外のコンテンツマーケティングのカンファレンスでも、企業ミッションからコンテンツまでを一貫してできるストーリーテリングの重要性が議論されています。それを実践されているところがすばらしいと思います。また、フリーペーパーについても、最近はコロナで少し事情が変わっているものの、Webだけでなく紙媒体やリアルな接点なども含めた情報発信が注目されています。それを以前からやっていることは、強みだと思いますので、この連載はもちろん、さまざまなマーケティングイベントなどにも登壇して発信していってほしいです。

阿部・鈴木:ありがとうございます。

磯和 太郎(いそわ・たろう)

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー

大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。

2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、 現在は企業向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」およびはてなのブロガーリソースなどを活用したコンテンツ制作支援を含むコンテンツマーケティングサービスの開発を統括している。

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