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eコマース企業もしくは事業の売却で知っておきたいこと&会社の価値を最大化するポイントを解説 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

3 years 7ヶ月 ago
eコマース企業および事業の売却について、価値を高めるためのポイント、手続き、売却をスムーズに進めるためのポイントなどを解説します

eコマース企業の売却を準備するのに最適な時期は、今です。評価額を最大化するため、買い手にとって魅力的な会社を構築しましょう。

ビジネスを評価する4つの特徴

企業は通常、EBITDA(税引き前の経常利益に利息の支払い・受け取りを加えた数値に、減価償却費を加えた数値)の倍率で評価されます。EBITDAは、税引前キャッシュフローの略語です。理論的には、EBITDAを使うのは正しくないかもしれませんが、業界標準となっています。

EBITDAの倍率は、低いもので2倍から3倍、高いものでは15倍から20倍以上にもなります。収益性の高いeコマース事業および企業のほとんどは、EBITDAの5倍から15倍の間で売却されています。

何がこの差を生むのでしょうか? 買い手は何を求めているのでしょうか?

ビジネスは多くの側面から評価されますが、以下の4つの特徴が際立っています。

  1. 競争がある産業・業界
  2. ビジネスの規模
  3. 事業の潜在的成長力
  4. 事業の収益性

競争がある産業・業界

成長が期待される産業は、成長が遅れている成熟産業よりも高く評価されます。たとえば、小さな機器を販売する会社は、商品を出荷しなければビジネスは成り立たないため在庫を抱えます。これは実質的に商品コストとなります。

しかし、非在庫のサービス業は、商品の限界費用が実質的にゼロになり得るため、より高く評価されています。

ビジネスの規模

規模はいくつかの理由で評価されます。
大企業は、中小企業よりも強力な経営陣と、より多くのシステムや統制を有していると考えられます。従って、大企業は簡単に倒産しないのです。
より大きなビジネスは、損益計算書上で目立った変化をもたらすことが可能です。
規模の大きな事業は、より多くの負債を抱えることが可能です。負債能力は、その企業を買収するために必要な株式の量を減らし、その結果、株式リターンを増加させます。

事業の潜在的成長性

買い手は未来を買います。そのため、成長率が重要な要素となります。5~15%の売上成長率は「普通」です。一方、年間20%~30%の成長率は、買い手にとってエキサイティングな数字です。

事業の収益性

収益性こそが、私たちがビジネスをする理由です。

他に価値を高めるものは?

独自性のある商品は、Amazonなどとの競争で有利になるため、eコマースビジネスにとって重要です。同じ商品でなければ、価格比較はより難しくなります。

強力な経営陣は、買収者にとって、ビジネスが一個人に過度に依存していないことの安心感を与えます。

過去と現在の強力かつ正確な財務情報は、将来の業績を確信を持って予測するための基礎になります。

再マーケティングが可能な大規模な顧客データベースがあれば、ライフタイムバリュー(LTV)が高まります。

優良な見込み客を多く抱えていれば、事業の継続的な成長が可能です。

リピートビジネスは、企業が顧客に対して再度アプローチすることで、LTVが高まります。一般に、既存顧客は見込み客よりも反応がよく、消費額も多いです。

検索エンジンでの上位表示は重要ですが、自分ではどうすることもできません。SEM、Eメール、郵便、有料マーケティングは、企業がコントロールできるものであり、それゆえ評価されます。マーケティングの予算が増えれば、それに伴って売上や規模も増えるはずです。

平均注文額が高ければ、顧客獲得に多額の費用をかけることができるのが一般的です。

レビューが高く、ネットプロモータースコアが高ければ、セールスポイントになります。

価値を減少させるものは?

運転資金需要

商品を運搬・出荷するビジネスには、在庫リスクとファッション・リスクがあります。また、企業が成長するにつれ、運転資金への追加投資は、利用可能なキャッシュフローを食いつぶしてしまいます。さらに、陳腐化した在庫や動きの遅い在庫は、通常、購入価格に反映されます。

情報システムの不備

投資には情報が必要です。貧弱なシステムは、数字に対する信頼性を低下させます。さらに、将来の設備投資の必要性も指摘されます。

集中度

ベンダーや顧客の集中(通常、仕入れや売上高の25%以上)は、サードパーティによる変更が売上高や利益に影響を与えるリスクを生み出します。

Amazonや他のマーケットプレイスに依存しすぎることは、問題であることを忘れてはいけません。Amazonはライバルであり、パートナーではないのです。

1つのマーケットプレイス経由の年間売上高が全売上高の10%以上を占めるようなことがあってはいけません。Amazonのみで展開するブランドを専門に買収する企業もありますが、こうした投資家は通常、控えめなEBITDA倍率しか払いません。多くの伝統的な買い手は、マーケットプレイスを好みません。それには次のような理由があります。

  • マーケットプレイスによっては顧客情報を開示しないため、再販が困難
  • マーケットプレイスの手数料
  • マーケットプレイスは企業のデータにアクセスでき、商品をたたき売りしたり、企業に卸売り関係を強要することが可能
  • マーケットプレイスは、販売者のビジネスとは関係なくルールを変更できる

不採算のeコマース企業を売却することは可能か?

はい、可能です。しかし、以下の点を考慮する必要があります。

  1. 黒字化への道筋はあるか?
  2. 買収する企業は、買収した企業を黒字化するために、経費を削減したり、売上高を伸ばしたりできるか?
  3. 買い手に価値をもたらす独自資産やユニークな資産があるか?
  4. 売却価格は?

その他のeコマース関連事項

ドロップシッピングを戦略として採用している企業にとって、ドロップシッピングの在庫はどのような効果があるでしょう? そこには、相反する2つの考え方があります。

典型的なのは、運転資金が少ない業態なので、価値を高めることができます
しかし、商品は独自のものではありません。独自性は、顧客をがっちり掴んでいない限り、より重要になります。ビジネスの価値は、商品を所有するか、顧客を所有することにあるのです。

eコマース事業売却のプロセス

eコマース企業の売却プロセスは、ほとんどの企業の売却プロセスとよく似ています。このプロセスには、4つの重要な段階があります。

準備期間(1-2ヶ月)

投資銀行との契約が締結されると、プロセスが本格的に開始されます。4週間から8週間の間に、投資銀行は次の3つの重要な項目を準備します。

1.  買収候補企業リストと連絡先

このリストには、投資銀行がアプローチする財務および戦略的買収候補者がすべて含まれています。通常、売主はこのリスト、特に候補者の数や個々の戦略的候補者に大きな影響力を持ちます。

リストは、1社の買収候補から数百社の候補までさまざまです。よりターゲットを絞ったリストは、広範なリストよりも取引の成功の可能性を低下させます。しかし、多くの売り手は、ビジネスが売りに出されていることを市場に知られるリスクを避けたいと考えています。

ダイレクトマーケティング同様、投資銀行が100社の買収候補者にアプローチする場合、CIM(機密情報メモ)のコピーを受け取るためにNDAにサインするのは50社程度でしょう。次に、10~15社だけが、Indication of Interest (IOI)を提出するでしょう。

最後に、5〜10社が「拘束力のないオファー」を出すかもしれません。つまり、クライアントは完璧な買い手を知思い描いているかもしれませんが、このプロセスはちょっとした数字のゲームなのです。投資銀行の間では、"One buyer is no buyer. "(買い手が1人では成立しない)という言葉もあります。

2. 機密情報メモ(CIM)

CIMは、事業内容を詳細に説明するものです。CIMには、潜在的な買収者が予備入札を行うかどうか、またその価値を判断するために必要なすべての情報が含まれていなければなりません。CIMは、約25ページから100ページ以上にも及びます。

会社の歴史、財務データ、eコマースデータ、商品、オペレーション、経営陣など、すべてCIMの中で議論されます。

3. エグゼクティブサマリーまたはティーザー

ティーザーは通常、企業のセールスポイントと説明を1ページにまとめたものです。このティーザーは、CIMを受け取るためにNDAにサインする、潜在的な買収者を引き付けるように設計されているため、ほとんどの場合、無記名で機密情報として提示されます。

その他の準備ツール

売り手のQuality of Earningsレポート(Q of E)は、スムーズな取引のなかでは、すでに一般的になっています。売り手は、会計事務所を雇い、財務内容を確認し、調整を行い、継続的な経費を調査します。

買い手は通常、デューデリジェンス売り手の「Q of E」を実施します。そのため、近年は売り手も攻めの姿勢で「売り手のQ of E」を作成し、買い手の「Q of E」で指摘されそうな問題を想定しているのです。

マーケティング(2-3ヶ月)

ティーザーとCIMが完成したら、投資銀行は、Eメール、電話、郵便などで買収希望者にコンタクトを取ります。銀行は、ティーザーと電話での会話を利用して、買い手候補にNDAにサインするよう働きかけます。

NDAは、買い手候補が情報と取引の可能性を秘密にし、情報を買収の評価目的にのみ使用することを明記します。通常、買い手は、アドバイザーがNDAに従うことに同意すれば、そのアドバイザーと情報を共有することが許可されます。

1-2ヶ月後、銀行はIndication of Interestで予備入札を依頼します。IOIの提出後、複数の買い手候補が招待され、経営陣と会い、施設を見学し、売り手に直接質問をします。この経営陣との面談は、LOI(Letter of Intent)を求める前段階のものです。IOIを提出したすべての人が、この経営会議に招待されるわけではありません。IOIを提出した方全員が招待されるわけではなく、IOIの審査に「合格」した方のみが招待されます。

交渉(1-2ヶ月)

経営陣のミーティングの後、投資銀行は利害関係者にLOIの提出を求めます。ここでは、価格、対価の種類、主な補償の原則、資本調達先など、すべての主要なビジネス条件が提示されます。投資銀行と売り手は、LOIを提出した当事者と交渉し、価値を高め、条件を改善していきます。ある買い手が他の買い手を出し抜こうとするオークションが発生するのは、ごく普通のことです。

最終的には、1社の買い手候補との間でLOIが締結されます。LOIは重要な条件を明記していますが、拘束力はありません。提示されたすべてのデータを検証し、既知および未知の負債をすべて明らかにするために、精緻な調査を行う必要があります。LOIは、正式な握手契約のようなものです。

デューデリジェンスとクロージング(2〜4ヶ月間)

デューデリジェンスは、非常に疲れる作業です。まず、売上高、利益、マーケティング、流動負債、コスト、給与など、事業のすべての事実を確認し、調査します。

次に、すべての法的文書を調査します。契約書、会社書類、従業員の福利厚生など、すべて最新で完全なものでなければいけません。最後に、すべての負債と資産を検証します。税務上の負債、環境条件、情報システム、在庫の質など、すべてが詳細に調査されます。

デューデリジェンスによって、買い手はビジネスの隅々まで非常に徹底した調査を行うことができます。一方、eコマース企業にとって、常に問題となるデューデリジェンスの領域がいくつかあります。

  • 売上税の負担:Wayfairの判決以来、企業は各地で売上税を納付する責任があります。未提出の場合、責任は売り手にあります。ほとんどの買い手が、クロージングまでに各州や管轄区域の税金を支払い、最新の状態にすることを売り手に要求します
  • 帰属:売上税ほどではありませんが、買い手は、クロージングまでにその金額を送金するよう要求することがあります
  • 老朽化した在庫:起業家は、1 年以上経過した在庫や、売れ行きの悪い在庫を抱えることが多いですが、買い手は通常、古い在庫の価値を割り引いて考えます。これは、正味運転資本調整額を計算する際に問題となります
  • プライバシー:カリフォルニア州やヨーロッパでは、プライバシーポリシーやCookieに関する規制が進んでいます。企業がPCIに準拠するためには、すべての規制について最新の情報を入手することが必要です
  • 新型コロナウイルス:コロナがビジネスに及ぼした影響を正確に見積もるために、売上と利益を正規化することが一般的です
  • サイバーセキュリティ:適切なソフトウェアと手順を調査します

デューデリジェンスには、売り手の収益の質に関する報告書が含まれることもあります。その他、専門家である第三者(会計、税務、従業員、人事)が作成するレポートが典型的です。買い手は、自分たちが何を買っているのかを正確に知りたがるのです。

デューデリジェンスと同時に、最終的な書類の準備も行われます。売買契約書(P&S)、従業員契約書、競業避止義務契約書などは、取引を成立させるために必要な法的文書です。P&Sは、重要な文書で、P&Sには、価格以外に、買い手と売り手が合意した条件と保証が記載されています。経験豊富なM&A弁護士を使うことは、経験豊富な投資銀行を使うことと同様に重要なのです。

クロージングは、楽しい期間です。書類にサインし、時には十数枚の書類にサインし、代金を振り込みます。おめでとうございます、これでは売却完了です。

売却をスムーズに進めるために売り手ができることとは?

  • ビジネスをExcelでモデル化する……そうすることで、何が利益や売上につながるかを双方が理解できるようになります
  • 新規顧客の獲得コスト(「CoA」)と顧客の生涯価値(「LTV」)を把握する……ビジネスは、LTVがCoAより大きいことを前提に構築されるべきです
  • 売上高が5000万ドル以上の企業は、過去の財務状況を監査してもらう……売上が5~5千万ドルでも、少なくとも会計の "見直し "をすることが必要です
  • すべてのソフトウェアライセンスを最新に保つ
  • eコマースの関連データを長期的に収集する
    • チャネルごとの獲得コスト
    • チャネル別のLTV
    • リピーター率
    • 訪問回数とコンバージョン数
    • チャネルごとの広告の広がり
    • 季節性
    • 出荷収益
    • フルフィルメント費用
    • 平均注文単価
    • 商品荒利率
    • 売上高

ビジネスオーナーは、売却するために投資銀行を必要とするのでしょうか?厳密には、必要ありません。しかし、優れた投資銀行は、いくつかの方法でビジネスの価値を高めることができます。

  • 投資銀行は、経営者がビジネスの運営に集中できるようにサポートします
  • 投資銀行は、取引交渉の経験を持っています
  • 優れたプロセスは、価値を高めるための競争につながります
  • 投資銀行は、買い手となりそうな企業の多くを知っています

なぜ投資銀行を雇うのでしょう?

  • 中級市場にフォーカスするのは非効率的です。投資銀行は、複数のオファーを調達しようとします。オファーが大きく異なることもあります。最高値のオファーが最低値のオファーの2倍から3倍であることは珍しくありません
  • 複数の買い手候補がいるプロセスを実行することで、取引が成功する可能性が高まります。書類上では「完璧な買い手」が存在するかもしれませんが、その「完璧な買い手」が会社を購入する準備ができている、あるいは喜んで購入するという保証はどこにもないのです

企業が投資銀行に求めるべきものは何でしょうか?該当する業界において、過去に成功した取引実績があることです。

投資銀行は、コンサルタント料と成功報酬の両方が支払われることを期待します。優秀な投資銀行は、毎月コンサルタント料を請求します。これは、銀行のリスクを低減し、オーナーが売却に真剣であることを確認するためです。コンサルタント料なしには、強固なプロセスを期待することはできません。しかし、成功報酬が総報酬の80-90%であるべきです。投資銀行は、取引が成立した場合にのみ「儲かる」のです。この取り決めは、潜在的な売り手と投資銀行の利害を一致させるものです。

なぜ取引が成立しないのか?

優秀な投資銀行は、始まったプロセスの75%から90%を成約させるべきです。しかし、取引が成立しない理由はさまざまです。

取引が成立しない理由の第一は、企業の基本的な業績が予測された数値に達しないからです
2番目の理由は、"取引疲れ "です。企業がプロセスに対する準備を必要以上に怠っていると、プロセスが長引くことがあります。買い手と売り手は、スムーズで整然としていないプロセスには見切りをつけるでしょう

さらに、デューデリジェンスによって、以前は開示されていなかった負債があることが判明し、取引が成立しないこともあります。たとえば、売上税はすべての州で支払う必要があり、これは売り手の責任ですが、すべてのeコマース企業が一貫して売上税を納付しているわけではありません

しかし、75-90%の取引は成立するはずです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

Digital Commerce 360

店舗とECでID共通化、組織再編、従業員とのコミュニケーション深化。ブックオフのオムニチャネルが成功した秘訣とは

3 years 7ヶ月 ago
コロナ禍を内部に向き合うチャンスと捉え、インナーコミュニケーションを活発に行ってきたブックオフコーポレーション。店舗の売り上げや客単価の向上に貢献した施策を語る。

直営店・フランチャイズ店を合わせて全国に800店舗を展開するブックオフコーポレーションは、2018年に基本戦略「ひとつのブックオフ」を打ち立て、オムニチャネルを推進している。これまでの取り組みやコロナ禍での変化、リユースならではの課題解決策、これからのブックオフの姿について、ブックオフコーポレーションの千田竜也氏とオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏が語った。

ブックオフコーポレーション マーケティング部 部長 千田竜也氏
ブックオフコーポレーション マーケティング部 部長 千田竜也氏
CaTラボ 代表 オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏
CaTラボ 代表 オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏

30年間、国内リユース市場の成長に貢献してきたブックオフ

総合リユース事業を手がけるブックオフコーポレーションは、1990年に「BOOKOFF」の直営1号店を開店し、現在は直営店とフランチャイズ店を合わせて約800店舗を展開している。2007年にECサイト「ブックオフオンライン」を開設し、2018年に公式アプリも開設。買い取りと販売を合わせると、年間の利用者数は延べ約8000万人、取引点数は約6億点にのぼるブランドとなっている。

近年は「あるじゃん!」というキャッチコピーでブランディングを推進。この「あるじゃん!」というキャッチコピーには、店舗の価値が込められているという。

「リアル店舗の良さとは何か」を改めて振り返ったとき、なんとなく店舗をうろうろしたりページをめくったりしているうちに、目的以外のものが欲しくなる、いつか買おうと思って忘れていた商品を買いたくなるような、非合理な体験こそがリアル店舗の良さではないかと思った。

そのリアル店舗の良さを伝えるワードとして考え付いたのが「あるじゃん!」だった。(ブックオフコーポレーション マーケティング部 部長 千田竜也氏)

国内のリユース市場は年々右肩上がりで成長しており、2020年時点で約2.4兆円に達し、2022年には3兆円を超えると予測されている。ただ、ここ数年はメルカリに代表されるようなCtoC(個人間)取引が市場成長率をけん引しているという見方もあり、1兆円を超えるCtoC販売の市場規模がBtoCの店舗販売を上回っている状況だ。

そのなかで、30年以上にわたってリユース市場の成長に貢献してきたブックオフコーポレーションは2018年、新たに「ひとつのブックオフ」という基本戦略を打ち立てた。

新たに掲げた基本戦略「ひとつのブックオフ」とは?

ブックオフコーポレーションは創業以来、「事業(会社)」と「従業員(人)」を同等に重視する理念を持ち続けている。「人が成長することによって会社が成長し、会社が成長すると新たな成長の場が生まれて、また人が成長していく」というように、事業と従業員は成長を加速する上で相互に影響し合う関係にあるからだという。

「事業(会社)」の成長に向けたビジョンには「リユースのリーディングカンパニーとして最も多くの人が利用するチェーンとなる」を掲げ、「従業員(人)」の成長に向けては「従業員が自信と情熱を持って安心して働き、成長できる会社になる」と掲げている(図1)。

図1 ブックオフコーポレーションは「事業(会社)」と「従業員(人)」のそれぞれに理念とビジョンを掲げている

こうしたビジョンは主に社内向けのスローガンと言える。一方、消費者に向けたサービスコンセプトでは「生涯を通じて利用できる最も身近なリユースショップ」をめざすとしている。主力の書籍は、老若男女問わずすべての人が楽しめる商品カテゴリーであるため、生涯を通じてブックオフがそばにある状態をどう作るかがテーマだ。

また、現在は書籍以外にもブランドバッグ、キャンプ用品、玩具・フィギュアなど、取り扱う商品カテゴリーが大幅に増えているため、どのようなライフステージのユーザーもリユースを通じてさまざまな体験ができるような拠点になっていきたいと考えている。ブックオフコーポレーションは、アプリを通じてユーザーに最も良い利用体験を提供するというブランドデザインのもと、「ひとつのブックオフ」を打ち立てた。

この“ひとつ”には、「店舗とネット」というチャネルの面と、「販売と買取」というサービス面の双方の意味合いが込められている。具体的には、

  1. 店舗の商品がECで購入できる
  2. どの店舗に入荷したかをEC上で確認できる
  3. ECで注文した商品が近くの店舗で受け取れる
  4. チャネルを問わずIDを共通化し、共通IDでアプリから購入できる
  5. 買取をキャッシュレス化し、アプリがあれば買取代金がポイントで受け取れる

などをあげている。

チャネルやサービスの違いを超えてシームレスな利用体験を提供する取り組みは新しくないように思われるが、ブックオフの場合はまず、多くのフランチャイズ店を巻き込まなければ実現できない。加えて、30年の歴史で構築してきたバックエンドシステムの整備も必要な改革となるため、時間をかけながら着実に進めてきたという。「ひとつのブックオフ」を推進する上で、店舗とアプリ(EC)の顧客体験について簡単に整理すると、それぞれ図2のようなメリット・デメリットがあげられる。

図2 店舗とアプリ(EC)それぞれの顧客体験で生じるメリット・デメリットを相互に補完

店舗は場所や営業時間の問題で来店できないユーザーがいるほか、リユース店舗の特徴である「商品がいつも違う」「必ずあるとは限らない」などが長所でもあり弱点にもなりやすい。しかし、全国800店舗の在庫から探せるようになれば、欲しい商品が見つかる可能性が各段に増すと考えられる。

一方のECは、1冊だけ買いたいときなどに送料無料ラインが気になることや、不在時の再配達も課題となってしまう。それに対して、店舗受け取りなら送料がかからないようにすればECの不便さもある程度解消できる。さらに、アプリ会員になってもらえればポイントが多く付与されるほか、お得な情報も届くようになる。このように、店舗とECの強みと弱みを細かく洗い出し、相互に弱みを補い合いながら利用体験を向上させる施策を細かく具体化していった。

「ひとつのブックオフ」に向けて組織を再編

「ひとつのブックオフ」を推進するために、組織を再編。もともとECの運営を手がけていた子会社のブックオフオンラインを本社と経営統合した。現在は「ひとつのブックオフ」を推進するマーケティング組織として、プロモーション、フロントエンド、コールセンター、インナーコミュニケーションの部署を本社内に設置している(表1)。

表1 ブックオフコーポレーションのマーケティング組織
役割KPI
プロモーション担当広告コミュニケーションによる新規休眠顧客の獲得来客数
会員コミュニケーションによる既存顧客の再来店促進MAU、LTV
フロントエンド担当EC/アプリのUI/UX改善によるEC売上の最大化アプリ経由売上、CVR
コールセンター担当ユーザーボイスの集約によるサービス改善提案
インナーコミュニケーション担当情報集約と発信による店舗と本部の橋渡し役アプリ会員数、アプリ売上構成比

再編時のポイントは、店舗側の課題を集約して本部にフィードバックする役割として新設されたインナーコミュニケーションの部署だ。「ひとつのブックオフ」に向けた施策を経営陣や本部から店舗に向けて一方的に押し付けるのではなく、日々店舗に訪れるユーザーが少しでも不便に感じた点、細かなエラーが起こった出来事など、本部では気付けないような詳細な不具合を把握し、改善するように努めているという。

「ひとつのブックオフ」以前は事業ごとに会社も顧客IDもバラバラ

「ひとつのブックオフ」を掲げる前までは店舗とECを運営する会社自体が別々だったため、PL(損益計算書)もそれぞれに持つような状態だった。そのため、それぞれが打ち立てた目標に対してはそれぞれでコミットするものの、当然ながら両事業のシナジーは創出しにくかったという。加えて、同じ「ブックオフ」ブランドにもかかわらず、店舗とECでは会員IDも別々に管理されており、在庫や価格設定などの商品管理も別々に行っていた。

「ひとつのブックオフ」を打ち立ててからは組織が統合され、会員IDの共通化も完了。在庫も店舗の商品をECに“出品"するという形で、ECでも買える状態が実現している(図3)。

図3 店舗とECは運営会社も会員IDも別々だったが、統合・連携を進めている

商品を買い取った店舗でそのまま売れれば最も利益率が高くなるが、リユース品・中古品は一点もののため、全国800店舗のうちの1店舗で商品を抱え込んでしまうと、いつ売れるかわからないというリスクが生じる。その点、ECでも買えるようになれば全国どこからでも商品が購入できるメリットは大きい。

しかし、一点ものをECで販売するとなると1つひとつに商品コードを設定する手間がかかってしまう上、ECで注文した商品を店舗で受け取れるようにすると、フランチャイズ店も含めた店舗間の商品の移動、買い取った店舗と受け渡した店舗のフィーの問題が生じる。こうした問題を軽減するため、店舗で買い取った商品をすべてECに出品するのではなく、一定の条件を満たした商品のみ出品するという運用ルールを策定。現在も試行錯誤しながら改善を続けている。

コロナ禍の課題と取り組み

コロナ禍の外出自粛で、ECが伸長したという企業は少なくないだろう。ブックオフコーポレーションも、2020年のコロナ禍以降、EC売り上げは大幅に伸長している。しかし、全社売り上げに占めるECの割合は約10%で、残り90%を占める店舗がコロナ禍の影響を大きく受けており、単純に喜べる状況ではないと捉えていた。

ECの売上比率が全体の半分ほどあれば、コロナ禍で店舗が苦戦してもECの伸長によってカバーできると思う。しかし、ECのシェアが10%ほどの場合、ECが倍に伸長しても店舗の売り上げをどこまでカバーできるかは簡単な計算の話だ。冷静に全社を見なければならない。(CaTラボ 代表 オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏)

コロナ禍では人流の減少に伴って店舗が落ち込む一方で、EC売り上げが急に跳ね上がると「一気にECを推し進めるぞ」という論調が出やすくなると思う。当社もEC売り上げが1.5倍に急増したが、9割の売り上げを占める店舗が前年比10%減になった状況では、ブックオフ全体として落ち込んでいることに変わりはないと認識していた。(千田氏)

従来までは店舗とECを別々に運営していたが、全国の800店舗こそが資産だと再認識したブックオフコーポレーション。さらに、そこで働く従業員を重視した理念を掲げているからこそ、「店舗を生かすためのEC=ブックオフのオムニチャネル」という考えを繰り返し確認しながら「ひとつのブックオフ」を推進しているという。

30年にわたる店舗の歴史の延長線上にオンライン関連などの新しい技術を取り入れて、顧客体験とサービス価値を向上しようと努めている。

店舗受け取りの3割がついで買い。「ECの売り上げが増えると、店舗の売り上げも増える」構造へ

店舗を展開する企業がECやオムニチャネルに力を入れようとすると、店舗側から「ECが繁栄すると店舗が衰退する」など利益相反するイメージを持たれてしまい、事業間の軋轢が生じるケースは今なお少なくないだろう。ブックオフコーポレーションは、「ECが発展すると、店舗も売り上げが増える」という実感を持ってもらうために、じっくりと時間をかけて取り組んできたという。

「店舗のためのECだ」ということを、私たちのようなデジタルを推進する担当者が本気で思っていなければ上手く進まないもの。本部から店舗に「これをやって」と押し付けるだけだと、来店したお客さまがスタッフに質問しても「本部が勝手にやっていることなのでわかりません」という事態が起こってしまう。

店舗の従業員がしっかり納得した上で一緒に進めてもらわなければサービスの価値は向上しないので、時間がかかっても焦らず説明し続けていくことが重要だ。(千田氏)

店舗とECで相乗効果を生み出した代表例が「店舗受け取りサービス」だ。現在、アプリで注文した商品の約60%が店舗受け取りで購入されており、このうち約30%の利用者が店舗でついで買いをしているという。

図4 店舗とECで相乗効果を生み出した代表例が「店舗受け取りサービス」

仮に1冊の書籍を受け取るだけの利用者ばかりだと店舗間の送料が利益を圧迫してしまうため、当初は不安を持ちながらトライアルを行っていたが、結果として商品を受け取る店舗の売り上げ貢献や客単価の向上につながっている。店舗受け取りをしてもらえれば必然的に来店してもらえるし、来店すれば他の商品を購入するきっかけが発生しやすくなる

私は以前からさまざまな企業に対して「店舗受け取りはメジャーな手段になる」と述べてきていたが、フランチャイズ展開のブックオフでも、お客さまの行動パターンに大きな差はないことがわかった。(逸見氏)

店舗受け取りの効果はついで買いによる客単価アップだけでなく、新規顧客の取り込みにも寄与したと千田氏は見ている。

店舗受け取りは新規会員にも多く利用されている。これは、自宅受け取りしかなかったときには見えていなかった落とし穴があったことの裏返しではないかと思う。当社はマスプロモーションを中心に新規獲得を図っているものの、「店舗受け取りができます」といったCMなどを流しているわけではない。まずは店舗に来ていただいて、そこから商品やサービスの選択肢の多さや利便性を知ってもらうような、立体的な設計をしている。

わかりやすいフックで店舗に誘導して、その後のフェーズでさまざまなサービスを利用していただくうちに買い取りの幅も広がっていく、こうしたサイクルを回している形だ。(千田氏)

中古品は状態確認も兼ねて店舗受け取りが選ばれる

たとえば、店舗で買い取った書籍をそのまま店舗で販売する場合、状態の良い商品は定価の半額の値を付けて、ダメージのある商品は100円コーナーに陳列するといったオペレーションが可能だ。

しかし、ブックオフコーポレーションのECは1マスターにつき1価格を付ける単品管理の仕組みになっているため、商品の状態ごとの価格設定ができない。その点、「EC×店舗受け取り」であれば、豊富な在庫から簡単に探せる利便性と、状態を確認してから入手したいニーズの双方に応えられているのではないかと分析する。

中古品の場合、チャネルがECだけでは不安の多い商品カテゴリーなのかもしれない。ブックオフでは店舗で確認して受け取れるため安心感と顧客満足度が向上し、結果的に購買頻度の増加につながる仕組みが構築されつつあるようだ。

「何をやるか?」よりも「何のためにやるのか?」を従業員に納得させることが大事

本部側は「オムニチャネルやDXで何をやるか?」と考えがちだが、実際にオペレーションをするのは日々ユーザーと接する店舗の従業員だ。だからこそ、ブックオフコーポレーションは「何をやるか」と合わせて、「何のためにやるのか」を十分に説明する姿勢を大切にしている

マーケティングを担当していると「顧客ファースト」ばかりに目が行きがちだが、当社のような事業会社は顧客ファースト一辺倒ではなかなか上手くいかないと思っている。やはり、事業の根底には従業員やその他のステークホルダーから見たベネフィットもあれば、大義や思い、ロジックや経営的な数字など、重視すべきものが各所にあるからだ。

店舗の従業員と話す際も、店舗の歴史・文化をしっかり理解した上で、相手の言葉で話さなければいけない。マーケティング部門でも「ブックオフ語が話せないとダメ」とよく話しているが、まさにインナーコミュニケーションがその大きな役割を担っている。

外部とのコミュニケーションがなかなかできなかったコロナ禍は内部に向き合うチャンスだと捉え、内部向けの時間をたくさん作ってインナーコミュニケーションを活発に行ってきた。(千田氏)

内部に向き合う活動に注力する間にも、競合他社が新サービスをリリースする様子などを見て焦りを感じることもあったというが、「ES(従業員満足)の向上が『ひとつのブックオフ』に向けた業務改革の土台となるため、踏みとどまることも重要だった」と千田氏は振り返る。

こうした内部とのコミュニケーションから、コロナ禍で需要が顕在化したサービスが「キャッシュレス買取」だ。コロナ禍以前は買い取りのユーザーが店舗に多く来店し、休日は1時間待ちになることもしばしばあった上、買い取り後に現金を受け渡すために再度店舗に戻ってきてもらうケースも多かったという。しかし、コロナ禍では3密回避のために滞在時間を減らし、現金の受け渡しも非接触な決済に移行することが求められた

キャッシュレス買取」を用いれば、ユーザーは店舗の受付に売りたい品物を渡した後、その場で査定を待つ必要はない。スマホで査定結果を通知し、電子マネーやブックオフ買取ポイントで買取金額が受け取れる仕組みだ(図5)。

図5 「キャッシュレス買取」は、査定までの待ち時間解消と非接触の決済を実現

「キャッシュレス買取」はユーザーの不便を解消するだけでなく、店舗の売り上げにも貢献している。これまでは、売り上げが大きくなるピークタイムでも、買い取りの査定に人手が取られて売り場で品出しができないといった事態が起こりやすかった。しかし「キャッシュレス買取」であればオフピーク時間に査定をして、ピークタイムは売り場に出るなど、売り上げのチャンスロスが防げるといった効果が表れている

また、従来型の買い取りと「キャッシュレス買取」で、精算と受付にかかる時間を計測したところ、「キャッシュレス買取」は買い取り1件あたり34秒も削減できたという。1店舗あたり月に何百件もの買い取りに対応しているため、業務効率化にも大きく寄与している。

このように、店舗とユーザーにとってのメリットを具体的な数字をもって草の根活動のように説明し続けたことで、「キャッシュレス買取」に対応する店舗は順調に拡大しているようだ。

行動が制約される機会はコロナ禍に限らない。準備しておくことが重要

消費者の行動に制約がかかったり、財布の紐が固くなったりする機会は、コロナ禍に限ったことではない。これまでも増税や災害など、さまざまな出来事のたびに起こってきたことであり、こうしたことは今後も起き得ると考えられる。加えて、国内では人口減少時代を迎えている。そのなかで「どういった準備をしておくかが重要だ」と千田氏は話す。

当社の準備としてはまず、アプリでつながるお客さまを増やすこと。コロナ禍でも、お客さまに営業再開のお知らせができた店舗ほど明らかに立ち直りが早かったため、改めて重要性を実感した。

そして、チャネルや決済手段、配送方法など、時代に合った選択肢を複数準備しておくこと。古典的なマーケティングの教科書に載っているような当たり前のことだが、お客さまが「買わない(使わない)理由」を減らしていかなければならない。(千田氏)

一方で、千田氏は「制約は需要が顕在化するチャンス」とも話す。たとえば、フードデリバリーや非接触のQR決済などは数年前からサービス展開されていたが、コロナ禍になって需要が一気に拡大している。つまり、制約によって需要が明るみに出たということだ。こうしたサービスに以前から対応し“準備”していた事業者と、コロナ禍になって慌てて対応し始めた事業者とでは、受けられた利益に差があったものと考えられるだろう。

マーケティング業界では、ビッグデータやオムニチャネル、DX、アフターコロナ/ウィズコロナなどのさまざまな言葉がバズワードのように頻繁に登場するが、それらに振り回されるのではなく、顧客のニーズと従業員にしっかり向き合っていれば、おのずと成果がついてくるという。

「向き合う=コミュニケーションをちゃんと取っている」ということ。ブックオフコーポレーションは何かの仕組みを導入するときも、何のために導入するのか説明と議論を内部でしっかり行っている。内部が強固だからこそ、世の中が揺れ動くような事態が起きても着実に前進し続けられているのだと実感する。(逸見氏)

よりいっそう、エンゲージメントが求められる時代へ

ブックオフコーポレーションが重視するエンゲージメントは、次の3つだ。

  1. お客さまと企業のエンゲージメント
  2. 店舗と本部(働く人同士)のエンゲージメント
  3. お客さま同士のエンゲージメント

「ひとつのブックオフ」として、店舗とネットでユーザーにどのようなサービスが提供できるのかは、1番目が中心の話になる。だが、そのためのプロジェクトを実現するためには社内が一丸となることが重要だ。それゆえに、本質は番目がカギを握るという。社内が1つになってユーザーに喜ばれるサービスが提供できれば、UGCのようにユーザーがブックオフの良さを発信してくれるなど、3番目にもつながっていく。

千田氏は「マーケティング担当として、従業員にも選ばれるブランドをめざしていかなければいけない」と常に心掛けているという。オムニチャネルコンサルタントとして多くの企業を支援してきた逸見氏も、ブックオフコーポレーションの考えや取り組みに共感の意を示した。

オムニチャネルは、単なる販売チャネル論やマーケティング論だけでは実現できない。外に向けてオムニチャネルを展開するためには、まず組織の壁を溶かして内部がしっかりとつながることが最も大事だ。オムニチャネルを推進する企業には、ぜひ意識してほしいと思う。(逸見氏)

この記事は2021年11月17日に「ネットショップ担当者フォーラム2021秋」で行われた講演をまとめたものです。

朝比美帆

デサントジャパンがレビュー・クチコミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入。パーソナル情報表示、Q&Aを実装

3 years 7ヶ月 ago

スポーツ用品やウェアなどを販売するデサントジャパンは、公式通販サイト「DESCENTE STORE オンライン」の利便性向上に向け、レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入した。

レビュアーのパーソナル情報表示などを実装

レビュアーのパーソナル情報、詳細な商品レビューで、購買を検討しているユーザーの後押しにつなげている。

カスタマーレビューでは総合的な星評価に加え、商品のサイズ感(5段階)、使用用途をグラフで確認でき、実際に商品を購入した際のイメージをサポートする。

ZETA ZETA VOICE レビュアーのパーソナル情報、星評価を表示
星評価やレビュアーのパーソナル情報を表示

また、商品のQ&Aを実装。ユーザーの質問に対して企業が直接回答することで、購入前の不安・疑問解消につながる上、Q&Aを見た他のユーザーに取っても有益な判断材料になる。

Q&Aは透明性の高いマーケティングの実現、新たな顧客接点・コミュニケーションの場にもなるという。

ZETA ZETA VOICE Q&A機能を実装
Q&Aで新たな顧客接点の場を創出

「ZETA VOICE」とは

サイト自体や提供する商品・サービスに対して、複数の評価軸を用いた多面な評価によるレビューコンテンツをサイトに実装できるエンジン。点数による評価やフリーコメント、スタッフレスポンスなどの機能を有するほか、投稿レビューデータの分析、A/Bテストでの活用ができる。

ZETA VOICE 主な機能
「ZETA VOICE」の主な機能(画像は「ZETA CX」サイトからキャプチャ)
藤田遥

基本機能を無償化した「ノバセルトレンド Free」

3 years 7ヶ月 ago

ノバセルが、指名検索数でテレビ広告の効果を可視化するツール「ノバセルトレンド」の基本機能を無償提供。約4,500ブランドのテレビ広告の放映量(インプレッション)と指名検索数の簡易分析を無料で行える。

https://corp.raksul.com/news/press/220802novasell_trend_free/

noreply@blogger.com (Kenji)

京王電鉄がLINE上でECモール「トレくる by KEIO」を展開、商品は電車で配送し受け取りは駅ロッカー

3 years 7ヶ月 ago

京王電鉄は8月17日、LINE上に専用ECモール「トレくる by KEIO」を新設する。注文した商品は最短当日中に駅の専用ロッカーで受け取れるのが特徴。京王沿線の京王百貨店や京王プラザホテル、うかい、富澤商店などが厳選したコスメや菓子、酒など100点以上の商品を取りそろえる。

「トレくる by KEIO」は、注文した商品を新宿駅、明大前駅、桜上水駅、八幡山駅、国領駅、調布駅にある専用ロッカーで受け取れるのが特徴。10時までの注文に対し、最短当日16時頃から受け取ることができる。最大7日先までの予約が可能。商品は鉄道で配送することにより、環境面にも配慮する。

京王電鉄がLINE上でECモール「トレくる by KEIO」を展開、商品は電車で配送し受け取りは駅ロッカー
「トレくる by KEIO」のイメージ

商品の納品から翌々日の正午頃まで専用ロッカーに保管するほか、夏場でも安心して受け取れるよう、温度管理機能を搭載する。店舗の閉店時間や混雑を気にせず、顧客の好きなタイミングで商品が受け取れるようにする。

LINEの「トレくる by KEIO」公式アカウントを友だち追加すると、専用ECモールへのアクセスすることが可能。専用ECモールから、受取駅(ロッカー)・受取日・商品を選んでクレジットカードで決済すると、注文が完了する。注文後、配達が完了するとLINEで配達完了通知を顧客に届ける。通知内のロッカー解錠用二次元コードを準備の上、専用ロッカーで商品が受け取れる仕組み。

京王電鉄がLINE上でECモール「トレくる by KEIO」を展開、商品は電車で配送し受け取りは駅ロッカー
「トレくる by KEIO」の受け取りロッカー

購入商品の代金のほか、商品ごとにサービス利用手数料が発生する。サービス利用手数料には配送料のほか、ロッカー保管料も含まれる。なお、サービス利用手数料は商品により金額が異なるため、詳しくはLINE上の専用ECモール「トレくるby KEIO」(8月17日開設)に掲載する。

京王電鉄は今回の取り組みについて、実証実験を2022年8月17日から2023年2月28日まで行う。これまで、道を活用した商品配送の実証実験として、飛騨高山の農産物の配送やECの返品商品の集荷を継続的に行い、鉄道配送における安全性と有効な配送手法が確立したため、2022年度から本格的な運用を開始している。

今回の実証実験の商品配送では、駅近の店舗から商品を集約して鉄道で配送することで、配送の速達性を向上させるほか、道路混雑を回避した定時性を確保する。今後は「トレくる by KEIO」の配送商品およびロッカー設置駅の拡大も見据えるほか、顧客のニーズと社会的課題解決に向けた新たな物流サービスも検討していく。

石居 岳

「流行りものを追いかけるより圧倒的に費用対効果の高い結果が創出できる」。DINOS石川さんが考える、EC事業者が今日からでも考えるべきこととは【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

3 years 7ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2022年8月1日〜7日のニュース

「自社の強みを最大限に活かす」。よく耳にする言葉ですが、強みってなかなか見つかりません。そんなときは、新入社員や中途採用の社員などの新鮮な目を頼るとうまくいくようです。

何に対してお客さまがお金を出してくれているのかを考える

ユナイテッドアローズ、ディノスの責任者が語る、大企業における「DX推進」「EC強化」「オムニチャネル」の進め方 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/9658

昨年11月に「ネットショップ担当者フォーラム2021秋」で行われた講演をまとめた記事が公開されました。参考になることが多いので、ユナイテッドアローズでDX推進の責任者を務める藤原義昭氏と、DINOS CORPORATIONでEC強化の推進役を担う石川森生氏の発言から、名言というかこれは心に残しておきたいという部分だけをピックアップしていきます。

藤原テクノロジーに精通している人材は中途採用で入ってくることが多く、社内のことはまだ全然わからないものです。システム的にも人的にもキーになるものを熟知していて、より分けをどうするべきか目利きができる人の存在は結構重要ですよね。

石川すごく重要です。DINOSの場合は経営側が最初からそれをわかってくれていたので、40年プロパー選手のような社内を熟知した人を私のすぐ近くに置いてくれました。今からやりたいことをその人に相談すると、「それをやりたいならケアすべきところはここ」と教えてくれる、そういう存在です。ケアすべき部門に私が直接行くよりも、その人が地ならしをしてから行くと話が通りやすかったので、経営側がそういうチーム構成にしてくれたことはすごく助かりました。

中途で入社した人は実力があったとしても社風や仕組みがわからないので、それに慣れるまでなかなか力が発揮できません。それどころか、社歴の浅い社員や若い社員で固めることによってベテラン社員と衝突してしまい、物事がまったく進まなくなることもあります。

こうならないためにDINOSさんがとった方法は、ベテラン社員を補佐役としてすぐ近くに置くということ。何かしようと思った時のこの人に確認すれば、誰がキーマンでどうすれば動いてもらえるかがわかるのでスムーズになります。

藤原デジタル推進に向けたツールや方法論など、教科書のようなものは世の中にたくさんあるけれども、人の心が変わらないと教科書だけでは実行できないですよね。会社が進むべき方向性があり、かつインパクトの大きい変化はどうしても失敗ができないので、そういう場合は入り口をしっかり温めてから一気に加速させることが重要だと私も思います。

こちらも進め方についての重要な部分です。理屈でわかっていても心が動かないと体が動きません。そのためにはどうしても一緒に汗をかいたり、念入りに説明することが大切です。大きな企業は動きが遅くなるものの、一度動き出したら止まりません。そのあたりの構造も理解しておきたいところです。

藤原私は「KPI作りすぎ問題」が懸念されると思っています。巻物のようなExcelがあっても、見ているところは1か所といったことはよくありますし、その帳票を作るために毎週時間を取られるメンバーがいるというケースもしばしば見られます。要らない作業を排除してあげることと、「本当に効いている施策は何か」を見つけていくことが重要です。そのために、自分が経営側と現場のつなぎ役をしっかりと担って、会社として見るべきポイントを一致させていかなければならないと常に自覚しています。

誰かに新しいことをやってもらおうと思うなら、既存の業務を減らしてあげないといけないですよね。業務を増やすだけでは疲弊してしまうので。数値の管理や報告書などはポイントを絞って、アクションにつながるものだけを出してもらうようにしていけばお互いに幸せです。世の中はこれができない人が多いので、増やすところと減らすところのバランスをとるようにしましょう。

石川先ほども出ましたが、やはり「アセットの整理」だと思います。まず、自社を冷静に見たときに、他社と比べて何が秀でていて、何に対してお客さまがお金を出してくれているのかということをしっかり整理すること。その上で、デジタルを活用した面白い施策を企てていく方が、流行りものを追いかけるより圧倒的に費用対効果の高い結果が創出できると思います。今一度、自社の強みを整理してみてはどうでしょうか。

自分たちがいつも見ているものってウリにはならないと思っている人が多いです。しかし、部外者や新入社員、中途入社の人たちから見るとすごいことだらけだったりします。それ活かすためにデジタルや店舗の接客をどうしていくかを考えたほうがうまくいくことが多いです。

本で読んだようなこと、誰かに聞いたこと、今までうまくいった方法ではなくて、その場にあった手段を選ぶようにしましょう。デジタルと言えども最終的には「人」です。

今週の要チェック記事

メルマガって配信すべき?ネットショップにおけるメルマガの重要性と成果が出るポイントについて安藤さんに聞いてみた。 | よむよむCOLLAR ME
https://shop-pro.jp/yomyom-colorme/86544

なんとなく配信するだけなら意味がないですが、数値を見て検証するなら配信する意味があります。

【セミナーレポート】GA4は何が変わったのか?小川卓氏が語るGA4の魅力と変更点(Q&A付き) | 株式会社Sprocket
https://www.sprocket.bz/blog/20220729-ga4-seminar.html

そろそろ機能が出そろってきた感のあるGA4。勉強するタイミングです。

「いかがでしたか?」問題に「欲しい情報が出ない」問題… Google検索の第一人者が語る、検索で不満が募る“意外な理由”とは | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/56122

「SEO事業者の9割くらいは“良い会社”とは言えないので…」日本のネット検索の5%を担う第一人者はいかに生まれ、何を目指すのか | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/56123

SEOの今についての記事。あまり良い業者がいないようですので、パートナー探しは慎重に。

海外からリピート購入される「Tabio(タビオ)」の靴下。海外ユーザーが語る「越境してまで購入する理由」とは? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/9989

商品に対する圧倒的な信頼感があります。日本製だからではなくて、その会社固有のファンなのでご注意を。

アパレルECで伸ばすべきはトップラインか利益率か | ECzine
https://eczine.jp/premium/detail/11479

【TSIホールディング、アダストリアに聞く】アパレル企業における顧客接点のあり方と自社ECの役割 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10034

2記事とも冒頭の記事の具体例として読むと効果的です。考え方と実務の記事はセットで。

ヤフーの新生「Yahoo!ショッピング」は商品画像“シンプル化”に。「テキスト要素2割以内」「送料無料や価格の表記禁止」など | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10041

「ガイドラインに反する画像入稿に対して、検索順位の低下、商品非表示などの不利益措置を予定している」。とのこと。

今週の名言

ブルーピリオドを読んでアートに興味を持った私が海外美大院生になる話 | りほ | note
https://note.com/rlho/n/n4b6f701386b6

決めるまではやらない理由を探し続け、覚悟を決めてからはやり方が見えてくる、というのは本当だなと実感しました。

覚悟を決めるというか、やると決めるところまでどう持っていくのか? 新しいことを始めるときに考えるのはここ。

筆者出版情報

「未経験・低予算・独学」でホームページリニューアルから始める小さい会社のウェブマーケティング必勝法

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発売日 2021年10月15日
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この連載の筆者 森野誠之氏の著書が翔泳社から発売されました。小さな会社の“ひとり担当者”が、未経験、低予算、独学でホームページのリニューアルからウェブマーケティングまでを成功させるための指南書です。電子版、オンデマンド印刷版ともにAmazonで発売中です!

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店舗とECの「併用顧客」の来店頻度・購入金額は2倍以上。パーソナライズされたUXでロイヤリティ向上を実現する青山商事の事例

3 years 7ヶ月 ago
店舗とECの両方を利用する「併用顧客」の拡大を目指す青山商事。店舗・EC双方で購入を後押しするポイントや、施策の事例が語られた。
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店舗とECの両方を利用する「併用顧客」の拡大を目指す青山商事。展開するブランドのひとつである「THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)」では、戦略的に併用顧客を拡大すべくOMO型店舗の展開・運営や、ECサイトでは消費者視点を重視したパーソナライズされたUX実現のための改善に取り組んでいる。

ネットショップ担当者フォーラム 2022 春」に青山商事の小島蘭野介氏と、同社のマーケティングを支援するRepro(リプロ)の三田裕寛氏が登壇。店舗とECの両方で購買を後押しするためのポイントについて語った。

(左)Reproの三田 裕寛氏(右)青山商事の小島 蘭野介氏
(左)Repro株式会社 Customer Success Division 三田 裕寛氏
(右)青山商事株式会社 THE SUIT COMPANY & UNIVERSAL LANGUAGE ECコンテンツデザイングループ グループ長 小島 蘭野介氏

店舗とECの両方を利用する「併用顧客」の拡大へ

青山商事は「洋服の青山」のセカンドブランドとして、2000年11月から「THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)」を展開している。出店戦略もそれぞれ異なり、「洋服の青山」が郊外のロードサイドを中心に約700店舗を出店しているのに対し、「ザ・スーツカンパニー」は都心部を中心に64店舗を出店。また、64店舗のうち6店舗は、青山商事の展開する4ブランドを集結したブランドミックスのOMO型店舗「TSC SQUARE」として運営している。

ビジネスウェア事業で今期もっとも力を入れているのが、店舗とECを相互利用する「併用顧客」の拡大に向けた施策だ。2022年3月期時点で約1400万人にものぼるデジタル会員数を最大の強みとして生かし、今期も引き続き会員数の拡大を図りながら、戦略的に併用顧客を拡大していきたい考えだという。

メルマガ、アプリ、SNSなどのデジタル会員数は約1400万人。青山商事の最大の強みとなっている
メルマガ、アプリ、SNSなどのデジタル会員数は約1400万人。青山商事の最大の強みとなっている

「店舗の接客×ECにおけるパーソナライズされたUX」でブランドロイヤリティを向上させる

青山商事がOMOを推進し、併用顧客を拡大しようとする背景には、自社の店舗とECがそれぞれどういった役割を持っているのか、消費者の視点で整理したことにあった。

スーツはカジュアルなアパレル商材に比べて特にサイズが気になる商材であり、採寸や裾上げなども必要となりやすい。このため、店舗は消費者に寄り添った接客が大事なポイントとなる。

一方のECはデジタル会員にパーソナライズされた顧客体験(UX)を提供するワン・トゥ・ワンマーケティングが可能となる。そこで消費者に店舗とECの双方を利用してもらえれば、「消費者に寄り添った接客」と「パーソナライズ」が掛け合わさり、併用顧客の増加とともに、ブランドロイヤリティのさらなる向上につながると考えたという。

5年前の併用顧客の比率は5%ほどだったので、店舗とECの両方を利用するお客さまは確実に増えている。今期はユニークユーザーの10%が併用顧客になることを目標としている。(小島氏)

店舗とECそれぞれの役割を掛け合わせるとブランドロイヤリティの向上につながると考え、「併用顧客」の拡大を推し進めている
店舗とECそれぞれの役割を掛け合わせるとブランドロイヤリティの向上につながると考え、「併用顧客」の拡大を推し進めている

店舗スタッフの接客を受けながらオンラインショップで注文できる「DIGI-lab試着室」

OMO推進施策の一例が、「TSC SQUARE」で実施している「DIGI-lab試着室」だ。「DIGI-lab試着室」は、“店舗とECが融合した新しいお店のかたち”として展開。店舗スタッフの接客を受けながら、サイネージやiPadを用いてECの豊富な在庫からスーツをオーダーでき、出来上がったスーツは自宅で受け取ることもできるサービスとなっている。

青山商事が展開する4ブランドはそれぞれ個別に店舗を構えているが、「DIGI-lab試着室」を利用すれば1店舗で全ブランドから選べる点もユーザーメリットとなる。また、青山商事にとってもコストの削減と在庫の抑制に効果を発揮しているという。

店舗とECそれぞれの強みを融合させた「DIGI-lab試着室」
店舗とECそれぞれの強みを融合させた「DIGI-lab試着室」

「DIGI-lab試着室」の導入により、店舗スタッフの接客業務にもよい変化が起きているようだ。

スーツは仕立て直しが必要となる商品のため、お客さまには受け取りのために再度来店していただかなければいけなかった。それが自宅で受け取れるようになればお客さまにとってのメリットになるだけでなく、店舗スタッフにとっても新しくスーツを買いに来店しているお客さまの接客や採寸に集中できるようになる。新生活が始まる時期など店舗の繁忙期にも、お客さまを待たせずに対応できることは当社にとっても大きなメリットだ。(小島氏)

パーソナライズされたUXの実現に向けた施策と課題

OMOを推進するため、ECの機能改善にも取り組んだ青山商事。ECに求められる役割「パーソナライズされたUX」を実現するため、マーケティングソリューションを提供するRepro(リプロ)とともにさまざまな施策を実施した。その一部を紹介する。

施策①サイズの不安を払しょくしてCVRアップ

スーツは購入に際して特にサイズが気になる商材だが、カジュアルなアパレル商材に比べて独特なサイズの表記がされているもの。このため、ECでスムーズに検討・購入する上ではサイズに対する不安の払しょくが不可欠だ。

青山商事のECサイトは従来からサイズの表記を確認できるガイドページを設けていたが、商品ページからクリックして別ページに移動する仕組みだったため、ユーザーの離脱を誘発してしまうことが課題となっていた。

そこで、サイズ表記の確認画面をポップアップで表示させる仕組みに変更。最終的に購入に至るコンバージョン率は、従来に比べて約107%改善したという。

サイズ表記の確認を、別ページに移動する仕組みからポップアップで表示する仕組みに変更したことで、コンバージョン率が改善
サイズ表記の確認を、別ページに移動する仕組みからポップアップで表示する仕組みに変更したことで、コンバージョン率が改善

施策②ECの在庫がない場合に「店舗在庫を見る」に促す

欲しいサイズの商品がECの在庫になかった場合、「再入荷のお知らせ」が受け取れるボタンが表示される。この「再入荷のお知らせ」ボタン付近のひと目でわかる位置に、店舗の在庫が確認できる「店舗在庫を見る」のボタンも設置した。

ECで商品を探すユーザーの多くは、EC上に在庫がないとわかったときに店舗在庫からも探せることを気付いていないのではないかという仮説のもと、この施策を実施。「店舗在庫を見る」ボタンの押下率は、従来に比べて約149%改善した。店舗の在庫を調べられる機能の認知も広がっているという。

ECの在庫がない場合に店舗在庫を確認しやすいUIにした
ECの在庫がない場合に店舗在庫を確認しやすいUIにした

施策③「店舗在庫を見る」のページで、在庫のある店舗を上位に表示

「店舗在庫を見る」をクリックすると在庫がある店舗とない店舗の一覧が表示されるが、以前は在庫の有無で店舗の並び順が整っていなかったため、ユーザーはスクロールしながら近くの店舗の在庫状況を確認しなければいけなかった。しかし、これでは探す手間が発生してしまうため、購入に至らないユーザーが増えることが懸念される。

この課題を解決するため、Reproのツールを用いて在庫がある店舗だけを上位に表示するようにした。その結果、店舗在庫の取り置きを依頼する比率が約148%改善。取り置きを依頼する分、購入に近いところまで誘導できていると考えられる。

「店舗在庫を見る」のページで、在庫のある店舗だけを上位に表示するようにした
「店舗在庫を見る」のページで、在庫のある店舗だけを上位に表示するようにした

私たちはスーツのプロなので、Reproとの取り組みによってサイズ表記の確認方法1つを取っても、お客さまの視点がまだまだ抜けていたところがあるということに気付かされた。また、「店舗在庫を見る」ボタンをわかりやすくすれば店舗に誘導できる可能性が高まり、「併用顧客」の拡大にもつながると期待できる。

今まではEC上で最後の購入まで至りやすいような導線設計を意識していたため、こうした細かなところでも店舗と連携できる施策を提案していただけたことはありがたかった。施策を実施した結果、EC売り上げも拡大している。(小島氏)

「店舗とECの壁」をどう取り除いてきたのか?

OMOを推進する中で、店舗とECの壁が多くの企業で課題となりがちだ。壁を取り除くためには「店舗とECの双方向のコミュニケーションが大事」(小島氏)とし、青山商事では“実施している施策の丁寧な共有”と、“施策効果の理解促進”に努めてきたという。

データをもって併用顧客を拡大させる重要性を共有

まず、「なぜ事業全体として併用顧客の拡大に力をいれなければいけないのか」を、具体的な数値をもって説明した。下の図の通り、店舗のみを利用する消費者と、店舗とECを併用する消費者では、年間の来店頻度が約2倍、年間購入金額は約2.8倍もの差が生じている。

これまでは数値や詳細なデータを店舗に公開する機会が少なかったというが、「店舗とECで一緒に売り上げを構築していこう」という考えのもと、現在では定期的にしっかりとデータを共有するようになっているようだ。

「併用顧客」が拡大すれば店舗へのメリットも大きいことを数値的根拠をもって説明
「併用顧客」が拡大すれば店舗へのメリットも大きいことを数値的根拠をもって説明

店舗とECの相互送客施策に理解を深めてもらう

店舗側と共有している具体的な相互送客の施策は次の4つだ。店舗とECが連携した施策は双方に効果をもたらし、事業全体の成長につながっていることを常に共有するようにしている。

①Google Map戦略
Google Mapに表示される店舗情報をEC側で定期的に配信。

②デジラボ戦略
ネットとリアルが融合したシステム「デジラボ」。利用場所は店舗で、運営はEC側が担う。

③コンテンツマーケティング戦略
SEO対策の一環として、サイト内に記事コンテンツコーナーの「ザ・スタイルディクショナリー」を設置。フォーマルスーツのマナーやビジネスウェアの悩みなどを解決する記事を掲載しており、閲覧した消費者が店舗に来店している実績も出ている。

④Web広告で営業店支援
Web広告をクリックしたユーザーが店舗に訪れているデータが、ロケーション履歴から明らかになっている。

店舗とECの相互送客のために実施・共有している具体的な施策
店舗とECの相互送客のために実施・共有している具体的な施策

店舗側からも、併用顧客を拡大させるメリットと、そのための施策について、深く理解をしてもらえている。詳しいデータをとるまでは、ECのショッピングに特化したWeb広告からも店舗への送客につながっているとは想定もしていなかったが、その辺が明らかになったことでますます「全体で売り上げを築いていこう」という気持ちになれていると思う。(小島氏)

「ツール×プロのマーケティングチーム」で収益最大化を支援するRepro

ReproはWebサービスの売上向上を目的としたマーケティングプラットフォーム「Repro」を提供している。“リプロはツールにプロがつく”のキャッチコピーの通り、ツールだけでなく、導入各社に対して分析・戦略設計・施策立案・効果検証までを一貫して行うプロのマーケティングチームを組織して支援することが特徴だ。

現在、世界66か国、7,300以上のサービスでReproが活用されている。国内でもECのほか、金融、エンターテインメント、人材などの幅広い業界で導入が進んでいる。

Reproを導入している主な国内企業
Reproを導入している主な国内企業

Reproは1つの業界に特化したサービスではないため、多業界の知見を持ったマーケティングのプロが在籍していることが強みだ。EC・OMOを深掘りしたノウハウはもちろん、ほかの業界から得た知見をEC事業者が有効的に活用いただける点も、導入メリットとして提供できていると思う。(三田氏)

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朝比美帆

通販・ECのプロが答えた年商5億円・10億円・30億円・50億円のフェーズで直面する壁と突破のヒントとは

3 years 7ヶ月 ago

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施した。

102人に通販事業を立ち上げた際の年商規模を聞いたところ、「50億円以上」が60.8%、「40億〜50億円未満」が18.6%、「30億〜40億円未満」が18.6%。

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施
主なトピックス

通販立ち上げ時に直面した「壁」は、「どのような商品が売れるのかわからない」が52.0%、「どのような販路で展開したらよいかわからない」が50.0%、「自社にあったカートシステムがわからない」が45.1%だった。「特にない」「わからない/答えられない」以外の回答者に、回答以外の「壁」を聞いたところ、「専門的な知識のある人材の不足」や「在庫管理」などの回答があった。

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施
通販立ち上げ時に直面した「壁」

通販事業で年商5億円をめざす上で直面した「壁」は、「新規顧客は獲得できるがLTVが低い」が52.9%、「新規顧客が思うように獲得できない」が50.0%、「コスト(販管費)が掛かりすぎている」が48.0%。

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施
通販事業で年商5億円をめざす上で直面した「壁」

通販事業立ち上げ時の年商規模で「30億円以上」の回答者に聞いた「壁」では、「新規顧客が思うように獲得できない」が46.0%、「新規顧客は獲得できるがLTVが低い」が45.0%、「コスト(販管費)が掛かりすぎている」が44.0%。

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施
通販事業立ち上げ時の年商規模で「30億円以上」の壁

「通販を立ち上げした経験を踏まえて、もし今後、通販立ち上げを行うとしたら、どのようなことを意識したいと思うか」を質問したところ、「市場規模とターゲットの整合性」や「専門の人材やツールの導入」などがあがった。

通販立ち上げの際の壁について「特にない」「わからない/答えられない」以外の回答者に、「壁」にぶつかった際に必要なサポートを聞いた結果、「顧客育成(CRM)」が51.0%、「顧客管理システムの改善」が49.0%、「顧客対応(コールセンター等)」が49.0%だった。

東通メディアは、通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人に対し、通販立ち上げ・拡大における「壁」の調査を実施
「壁」にぶつかった際に必要なサポートを

まとめ

年商5億~10億円をめざす際の「壁」として、「LTVの低さ」に悩む担当者が最も多かった。年商30億円は、「新規顧客獲得」が最多。年商50億円は、「新規顧客獲得」よりも「顧客対応が煩雑になり運用がまとまらない」が悩みとして多い。

また、通販立ち上げ~事業拡大の中で「壁」にぶつかった際に、半数以上から「顧客育成(CRM)」に関するサポートを必要としていたと回答。通販立ち上げした経験を踏まえ、今後通販立ち上げを行う際には「市場規模とターゲットの整合性」や「専門の人材やツールの導入」などを意識する声があがった。

調査概要

  • 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー」の企画によるインターネット調査
  • 調査期間:2022年7月19~21日
  • 有効回答:通販事業(年商30億円以上)の立ち上げに携わったことがある102人
石居 岳

D2Cの基礎&成功に必要な3つのポイントをわかりやすく解説 | 店舗ビジネスに役立つ『口コミラボ』特選コラム

3 years 7ヶ月 ago
顧客により良い顧客体験を提供し、ブランドイメージを高めることがD2Cの成功には不可欠です。顧客体験とは、商品の購入前から購入後にかけて得られるすべての体験を指します

D2C(Direct to Consumer)とは、広告代理店や小売店を介さず、メーカー(製造者)が消費者と直接取引する販売方法です。これまでにもあった直販とは違い、SNS展開やテクノロジーを活用した新しいビジネスモデルを指します。

現在多くの企業がD2Cに参入し、市場規模が拡大しています。

背景には、新型コロナウイルスの感染拡大があります。実店舗における販売機会が制限され、Webを介した取引へのニーズが高まりました。

この記事ではD2Cの概要やメリットに加え、成功に必要な3つのポイントを解説します。

D2Cとは

D2C(Direct to Consumer)とは、広告代理店や小売店を介さず、メーカー(製造者)が消費者と直接取引する販売方法です。SNSやWebサイトを活用し、顧客と積極的に交流できる新しいビジネスモデルといえます。

企画開発からマーケティング、製造、販売といったすべての工程を自社で担うことで、中間的なコストがカットできます。

さらに商品やアフターサービスへの感想を顧客から直接得られるようになり、新たな開発やサービス改善に生かしやすいのも魅力の一つです。

D2Cと従来の販売モデルとの違い

D2Cと従来の販売モデルとの違いは、顧客の元に商品が届くまでの工程を、自社で進めるか否かで説明できます。

従来のモデルでは、企画、開発、マーケティング施策、製造といった段階までをメーカーが担当していました。仕入れや販売の工程は、小売店や通販サイト(通販プラットフォーム)に任せていたのです。

対してD2Cは、商品完成後も引き続きメーカーが担当します。自社サイトを運営し、インターネット上で受注からアフターサポートに至るすべての工程を取り扱うのです。

D2Cと混同しやすいB2CやECとの違い

D2Cと混同しやすい用語として、「B2C」と「EC」があります。

B2C(Business to Consumer)は、企業と消費者の取引全般を指します。メーカーと消費者の直接取引であるD2Cは、B2Cモデルの一つといえます。

たとえば小売店や通販サイトは、消費者と直接取引があるためB2Cに該当します。しかし商品を自ら企画・製造しているわけではないため、D2Cには該当しません。

EC(Electronic Commerce)は、インターネット上における商品やサービスの取引を指します。D2Cはビジネスモデル、ECは取引方法を表す用語です。

D2Cのメリット

D2Cの主なメリットは、次の4つにまとめられます。

  • 収益性を高められる
  • 顧客とコミュニケーションしやすい
  • 顧客データを活用できる
  • 自由にマーケティング展開できる

それぞれ説明していきます。

収益性を高められる

D2Cの大きなメリットは、収益性の高さです。

通販サイトや小売店、代理店を利用すると、少なくない手数料や流通コストがかかります。

D2Cは商品企画から販売まですべての工程を自社メーカーが担当するため、中間的な経費が必要ありません。その分利益率が上がりやすく、資産の少ない中小のスタートアップ企業も参入しやすくなっています。

顧客とコミュニケーションしやすい

D2Cには、顧客との距離が近く、本音を直接聞けるメリットがあります。顧客の声を比較的早く反映でき、ニーズに合わせた商品企画やサービス改善に取り組めます。

顧客とともにブランドを育成していくと、愛着を抱いた顧客がファン化しやすくなります。高評価の口コミ増加や、リピーターによる売上アップも期待できます。

顧客データを活用できる

D2Cは、従来の販売法に比べ、より詳細な顧客データの収集と蓄積が可能です。自社ECサイトへの訪問回数や閲覧履歴、滞在時間から、顧客の関心や売れ筋商品を探れます

顧客の潜在的ニーズをつかみ、新商品の開発へと役立てるには、商品購入に至る思考の分析が欠かせません。顧客との積極的なコミュニケーションと同時並行で進めることで、ブランド成長への相乗効果が期待できます。

自由にマーケティング展開できる

自社ECサイトやSNSを利用するメリットとして、メーカー独自のマーケティングやキャンペーンの展開が挙げられます。

ECサイトの履歴を活用し、自社ターゲットに焦点を当てた販売法を展開できるためです。販売業者の都合に合わせる必要はなく、フィードバックもすみやかに反映できます。

D2Cのデメリット

D2Cのデメリットは2つあります。まずは運営にかかわるすべてを自社が担うため、顧客を獲得するための商品力やマーケティングノウハウが必要な点です。また、運営が安定化するまでのコストも課題です。

商品力やマーケティング施策が必要

D2Cでは販売の自由度が高い反面、広告やマーケティング施策すべてを自社でしなければなりません

このため顧客の注目を集められる商品の開発が、もっとも重要な課題に位置付けられます。商品自体に魅力がなければ、どんなに話題になっても一過性で終わってしまうからです。

商品力の高さだけではなく、販売ノウハウも手に入れておかなければなりません。顧客の手元に届くまで、継続したきめ細やかな対応が求められます。

運営が安定するまでのコスト

D2Cは、顧客との関係を深めながらブランドを育成していくビジネスモデルです。売上の増加やリピーターの獲得までは、中長期的な戦略が欠かせません。

顧客が熱心なファンとなり、運営が安定するまでには費用や時間を要するためです。

マーケティング施策の展開やECサイト運営といったそれぞれの工程でのコストを見積もっておく必要があります。

D2Cの成功に必要な3つのポイント

D2Cを成功させるには、顧客といかにコミュニケーションを取り、関係を深めるかがカギを握ります。

  1. SNSを利用して顧客と交流する
  2. ブランド力を高めてファンを増やす
  3. よりよい顧客体験を提供する

これら3つのポイントを解説します。

1.SNSを利用して顧客と交流する

積極的にSNSを活用することで、潜在的なニーズの引き出しや新商品の開発、そしてブランドの成長が期待できます

Instagramで新商品情報を発信したり、定期的にライブ配信をしたりと、顧客と企業が交流する機会の創出が重要です。交流で得られた顧客の声をすぐに反映できれば、「ユーザーの意見に耳を傾けている」という姿勢のアピールにもつながります。

2.ブランド力を高めてファンを増やす

D2Cで売上アップを図るには、企業や商品のファンを増やさなければなりません。顧客のファン化を進めるには、ブランド力を高める必要があります

D2Cの強みである顧客との距離の近さを活かし、さまざまな意見を取り入れることで、競合他社との差別化が図れます。

商品の質の向上やニーズに合った価格調整はもちろんですが、「なぜ商品を作るに至ったか」という売り手側のビジョンを顧客に伝えることもポイントです

3.より良い顧客体験を提供する

顧客により良い顧客体験を提供し、ブランドイメージを高めることがD2Cの成功には不可欠です。顧客体験とは、商品の購入前から購入後にかけて得られるすべての体験を指します。

商品説明がわかりやすい、アフターフォローが丁寧といったポジティブな体験は、商品自体の価値にプラスの印象を与えます。

D2Cで得た顧客データを分析し、ニーズに応じた顧客体験を提供していくことが求められます。

D2Cは自社ブランドと顧客を直接つなぐビジネスモデル

D2Cではメーカーと顧客が直接つながり、積極的なコミュニケーションがはかられます。

顧客との関係が深まれば、高評価の口コミやリピーターの獲得につながり、新規顧客に対してもブランドの認知度を向上できます。結果として、顧客が商品やサービス、ブランドそのものに愛着を持ち、ファンとなる可能性が高まるのです。

注意点として、すべてを自社で行うコストも考慮に入れておかなくてはなりません。しかし、とりわけ資金面に課題のある中小企業にとって、中間マージンの削減は大きなメリットです。

インターネット上で顧客とつながるD2Cは、新しいビジネスチャンスとして検討しておきたいキーワードといえます。

この記事を書いた「口コミラボ」さんについて

「口コミラボ」は、様々な地図アプリ・口コミサイトの監視、運用、分析を一括管理できる店舗向けDXソリューション「口コミコム」が運営する店舗ビジネス向け総合メディアです。近年、企業の評判管理が重要視されるなか、特に注視すべきGoogleマイビジネスを活用したローカルSEO(MEO)や口コミマーケティング、それらを活用した集客事例から、マーケティング全般、店舗経営のハウツー、業界動向データにいたるまで幅広い情報を紹介します。

口コミラボ

これからBtoB-ECに取り組む人のための、カート・受発注システム情報③ アラジンEC(アイル)

3 years 7ヶ月 ago
『BtoB-EC市場の現状と将来展望 2022』(インプレス総合研究所)より、カート・受発注システムについての情報をお届けします(連載第3回)

『BtoB-EC市場の現状と将来展望2022』より、これからBtoB-ECに取り組む事業者のために、主要なカート・受発注システム事業者について7回に渡って各社の概要や特徴をまとめるシリーズ。第3回はアイルが運営する「アラジンEC」について解説する。

 第1回 Bカート
 第2回 EC-CUBE
 第3回 アラジンEC(今回)
 第4回 ecbeing BtoB / ecWorks
 第5回 SI Web Shopping
 第6回 ebisumart
 第7回 まとめ

『BtoB-EC市場の現状と将来展望 2022』についての詳細はこちらへ

「アラジンEC」の概要

「アラジンEC」(アイル)
会社名:株式会社アイル
URL:https://www.ill.co.jp/
所在地:東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー(東京本社)
設立:1991年
資本金:3億5400万円
代表者:代表取締役社長 岩本哲夫
事業内容:基幹業務管理システムの開発・販売、Webシステムの開発・販売など
社員数:820人(連結 / 2022年4月1日時点)

「アラジンEC」は、国内約5,000社の導入実績を持つ販売管理システム「アラジンオフィス」を開発・提供するアイルが、2014年より販売しているBtoB専用カスタマイズ型パッケージシステム。自社製品に限らず、他社基幹システムとの連携も可能。約30年間にわたる販売管理システムの提供実績により業種・業界別の商習慣の違いやカスタマイズ特性を把握しているため、得意先に合わせて価格表示を変えたいなど、細かな要望にも柔軟に対応できる。

「アラジンEC」のサービス・ソリューション

「アラジンEC」(Aladdin EC)は、約30年にわたり、BtoBビジネスを展開する企業約5,000社に導入してきた販売管理システム「アラジンオフィス」を提供するアイルが、2014年に販売開始したBtoB-EC専用パッケージ。「得意先からの受注業務をデジタル化し、注文データを販売管理システムと連携させたい」という、アラジンオフィス導入企業からの要望を受け製品化した。

BtoB-EC支援に参入する企業は、BtoC向けECシステム開発が出発点になっていることも多いが、アイルは、創業当初からBtoBに特化した製品づくりに力を入れている。BtoB-ECの場合は、業種や企業ごとに商習慣が異なることから、1社1社に対して業種ごとに精通した担当システムエンジニアやプログラマーを配置。特に引き合いの多いアパレル、食品、理美容・化粧品、建築資材・住宅設備などでは専任チームも設置している。

これにより各業界独自の課題を踏まえた最適な提案が可能であるとともに、企業ごとのきめ細かなカスタマイズニーズにも柔軟に対応できる。また、アイルは販売管理システムを提供していることから、システム連携のノウハウと実績を豊富に有しており、他社の提供する販売管理システムをはじめ、多種多様な外部システムとのスムーズな連携が可能である。

「アラジンEC」は“カスタマイズのしやすさ”を重視し、パッケージの内部構造強化を常時図っている。パッケージを基に導入各社が必要な機能だけをカスタマイズする仕組みのため、フルスクラッチよりも低コストで開発・運用ができる。

アラジンECのポジションマップ
「アラジンEC」のBtoB-EC市場におけるポジションマップ( アラジンECのWebサイトよりキャプリャ)

料金体系や大まかな費用感

  • 初期開発費用 :200万円~。300万~2000万円の実績が多い
  • 保守費用 :6万円~。「月額固定型」で提供。9万〜20万円(月額) の契約が多い

外部サービス・事業者の提携

販売管理システム、WMSシステム、決済代行サービス、運送関連サービスなど、多数の外部サービスとの連携が可能。

基幹システム名(販売管理・ERP)企業名(略称)
アラジンオフィスアイル
SAPSAPジャパン
GROVIA富士通
OBIC7オービック
SMILEシリーズ大塚商会
スーパーカクテル内田洋行
商奉行/商蔵奉行オービックビジネスコンサルタント(OBC)
楽商シリーズ日本システムテクノロジー(JST)
PCA商魂/商管ピー・シー・エー
販売大臣応研
弥生販売弥生
EXPLANNERNEC
ASPACシリーズアスコット
GRANDITGRANDIT
Pro ActiveSCSK
Future Stage日立
MCFrame/mcframeシリーズビジネスエンジニアリング(B-EN-G)
Microsoft Dynamics日本マイクロソフト
Enterprise VisionJBCC
酒快Do三菱電機ITソリューションズ
FLUSHシリーズコンピュータ・ハイテック
AS/400各システムベンダー
自社オリジナル開発/フルスクラッチ自社エンジニア/各システムベンダー
「アラジンEC」と連携可能な基幹システム例(出典:株式会社アイル)
※連携方法などは各社の仕様やベンダーによって異なる
※企業名、サービス名などの詳細:https://aladdin-ec.jp/function/system/

導入・開発期間

カスタマイズボリュームによって異なるが、半年〜1年程度が多い。

主な顧客層

●業種・業態

様々な業種・業態の企業で実績がある。卸売業・商社系が7割、メーカーが3割程度。また、BtoB-ECシステムを新規導入する企業が8割、リプレイスが2割程度である。

●年商規模、商品特性

  • 企業規模 :年商10億〜300億円がボリュームゾーン。100億円以上の割合が増加している
  • 商品特性 :多種多様。商品を製造して卸すメーカーや、商品を仕入れて卸す卸売業・商社などはすべて対象となる

●顧客事例① 株式会社ヤナセウェルサービス

外国車・輸入車を販売するヤナセのグループ会社で、グループ全体の購買部門にあたるヤナセウェルサービス。全国の販売店など、グループ内の1,000以上の部門から受注した事務用品や車の整備用品、販売促進商品といった備品全般を提供する業務を担っている。

以前はそれぞれ別会社が構築した販売管理システム、売上管理システム、Web購買システムを利用していたため不便が多かった上、古いシステムだったために不具合があると手作業で修正する必要があり、効率も悪かったという。しかし、同社の販売管理システムは本社独自の会計システムと連携しなければならず、その複雑さからリプレイスするにもハードルは非常に高かった。

商習慣に合わせた販売管理システムと、グループ内のWeb受発注システムが構築できる上、販売管理システムにWeb受発注システムと本社の会計システムを連携できるアイルに委託。2017年冬に「アラジンオフィス」と「アラジンEC」が稼働した。

「アラジンオフィス」の導入により、売上締日が集中する月末の業務負担は半減したほか、会計処理のミスも大幅に削減された。また、「アラジンEC」にはITスキルが様々なグループ内の発注者からも「画面の操作性が良く、使いやすい」「在庫状況や自部門の購入データも見やすく便利」といった評価の声が多く寄せられており、グループ全体の円滑な業務推進に寄与している。

●顧客事例② フランスベッド株式会社

ベッドや寝具など家具製造・販売のインテリア事業と、福祉用具や在宅医療機器の製造・レンタル・販売などのメディカル事業を行う同社の、両事業部にて「アラジンEC」を導入。

インテリア事業部では、商品情報がカタログのみでは伝えづらいことや、FAX注文をシステム入力する負荷などが課題となり、先にメディカル事業部にて同システムが安定稼働していた安心感から、2018年に導入を決定。

それまで、関連会社の1社から月に約2,000件のFAX注文があったが、システム導入後、展示会注文などシステム化が難しい2割を除いた8割の注文がEC化。月45時間ほどの業務時間が削減された。エラー注文の自動制御により目視の確認が不要になったほか、受注生産品は即生産にまわせるようになりリードタイムが短縮、在庫品の注文には自動で在庫確保メールを返信でき、対応時間も削減されている。

小物の注文品は得意先から配送委託を受け、自社の物流拠点から顧客に直接配送するサービスも開始。発注時にEC上に入力された顧客情報を基幹システムに取り込めるようになったことで、サービスレベルも向上した。

発注者からは、「EC画面が一般のネットショッピングと変わらず使いやすい」といった声が挙がっている。システム導入の担当者は、「システム知識がなくても、アイル担当者のわかりやすい説明と素早く丁寧なフォローで安定稼働まで導けた」と、対応面も評価している。

売上傾向

新規契約件数は、2020年まで前年比120%ほどで伸長してきたが、2021年には過去最高の同150%を記録。特に年商100億円以上の企業による導入実績が増加している。

「アラジンEC」の強みや他社との差別化ポイント

BtoB-ECの場合、基幹システムとの連携が必須となるが、基幹システムの仕様は複雑かつ広範囲であることが多い。特に導入企業が他社の基幹システムを利用している場合、複雑な連携仕様に対応するための高度な理解力が求められる。

アイルは約30年にわたって自社で販売管理システムを開発し、他社のWebサービスと連携させてきた実績から、受注データ/マスターデータ/在庫データなど、ECサイトと連携するために必要な基幹システム側の様々な要件を深く理解していることが強みとなっている。

また、業界ごとの独特な商習慣を社内全体で理解していることも特徴だ。同じ業界であっても、日本の中小企業は商習慣が統一されていないことが多く、各社が独自のルールにしたがって商取引を行っている。

そのため、これまでアナログで行ってきた取引をデジタルに置き換えるには、ほとんどのケースでカスタマイズが必須となる。特に単価や送料などは、各企業が得意先に応じて細かく変えるケースが多く、カスタマイズニーズが高い。創業以来、BtoBビジネスを支援してきた経験と実績のもと、業界ごとのカスタマイズ特性を踏まえたサービス開発に尽力している。

「アラジンEC」の導入に際しては、業種・業態ごとに精通したシステムエンジニアが担当につけくだけでなく、業務システム、基幹システム、販売管理システムの分野に長けた「アラジンオフィス」の営業経験者も導入前からサポートにあたり、具体的なポイントを押さえたヒアリングを行う。導入後のシステム連携の設計がされ、費用を含めた十分な事前確認をした上で導入できることが信頼につながっている。

市場の現状と展望

企業のデジタル化やシステム化自体は数年前から注目をされ始めているものの、BtoB-ECの活用はまだ“普及”と言えるほどには達しておらず、いまだに電話やFAXに依存している企業は多い。しかし、コロナ禍という大きな出来事に加え、日本の行政においてもデジタル庁が発足し、脱ハンコ・脱FAXに向けた動きも本格化している。

行政が力を入れる取り組みは必ず民間にも影響を及ぼすため、企業の経営者や管理職クラスがデジタル化に向けて本腰を入れる動きは、ますます加速していくと見られる。その状況下では、BtoB-ECを活用する企業と、そうでない企業に明らかな差が生じてくるだろう。

なぜなら、取引先にとっても在庫・価格の確認や発注がWebで簡単にできる環境が当然となり、それができるか否かが選ばれる基準になる可能性が十分に考えられるからだ。何らかの理由をつけてデジタル化に向けて舵を切らない企業も一定数あると思われるが、発注する側も業務効率と生産性を向上させたいと考えていることを念頭に置いておかなければならない。

企業の中にはアナログ作業がまだまだ多く残っているものの、給与システムを導入していない企業がほとんどないことと同様に、受発注業務がシステム化していない企業が珍しいとなる時代は目前に迫っている。

今後の戦略と課題

DX化に向けて、何に取り組むべきか悩んでいる企業が多く見られるが、特に中小企業にとってはBtoB-ECがまさにDXのわかりやすい事例だ。その証拠に、「アラジンEC」をはじめ、BtoB-ECシステムは様々な業種・業態で企業活動のプラスになるツールとして活用されている。

ただ、単にシステムを導入すること自体がDXと考えてはならない。デジタルを取り入れてしっかりと稼働させることで、人材がより価値の高い業務で力を発揮でき、生産性を向上させていくことこそがDXの本質なのだ。

本質的なDX推進を後押しする取り組みの一環として、アイルでは「アラジンEC」の導入社に対して、取引先のEC利用率を向上させるための支援サービスを開始。一般消費者向けのBtoC-ECと違い、BtoB業界は商材や取引先の業種・業態によっても利用率向上の施策が異なってくるため、今後各社からヒアリングを行いながら、セミオーダーに近い形で企業ごとにマッチした研修プログラムを組んでいく。

今後もますますBtoB-ECを導入する動きは加速すると予想される上、システムと支援サービスの双方でカスタマイズが必要とされやすいBtoB-ECにおいて、カート・受発注システム事業者側ではBtoB業界に精通した人材育成が急務となっている。アイルも引き続き、システムエンジニアや導入社サポートにあたるメンバーの採用促進とスキル向上に努め、リソースをより一層強化していく方針だ。

『BtoB-EC市場の現状と将来展望 2022』についての詳細はこちらへ
BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引き2020[今後デジタル化が進むBtoBとECがもたらす変革]

『BtoB-EC市場の現状と将来展望2022』

  • 監修:鵜飼 智史
  • 著者:鵜飼 智史/森田 秀一/朝比 美帆/インプレス総合研究所
  • 発行所:株式会社インプレス
  • 発売日 :2022年1月25日(火)
  • 価格 :CD(PDF)+冊子版 110,000円(本体100,000円+税10%)
    CD(PDF)版・電子版 99,000円(本体 90,000円+税10%)
  • 判型 :A4判 カラー
  • ページ数 :250ページ
朝比美帆

バニッシュ・スタンダードが「STAFF START」の新機能「店舗接客」を提供開始

3 years 7ヶ月 ago

バニッシュ・スタンダードは、スタッフのDXアプリケーションサービス「STAFF START」の新機能「店舗接客」をリリースした。

買い物体験の向上につながる「店舗接客」とは

「店舗接客」は、店頭の商品についているバーコードを読み込むことで、ECサイトの商品詳細ページを表示、QRコードを作成し配布できる機能。

バニッシュ・スタンダード STAFF START 店舗接客
「STAFF START」の新機能「店舗接客」

従来の「QRメモ機能」を改良・機能追加しリニューアルしたもので、機能は次の通り。

EC客注:自店に色やサイズなど在庫がない場合、ECサイトの在庫を確認し購入ページの案内ができる。販売実績が個人の成果として可視化されるため、店舗スタッフの商品提案、接客の幅を広げることにつながる。

疑似試着:接客時にECサイトの情報を利用することで、店頭では表現しきれないコーディネート、使用方法の紹介ができる。顧客が気になっている商品について、試着前に複数のコーディネートの提示が可能。

複数の店を見て回り、価格、スペック、デザインなどを比較して購入を決める買い回り時にも、QRコードを提供することで、購買率及び顧客の買い物体験向上につながる。また、大型商品など持ち帰りが難しい商品の販売にも結びつけやすいという。

どのくらいEC売り上げやPVが発生したか、スタッフ1人ひとりの「店舗接客」による販売実績が可視化されるため、本部は実績を店舗やスタッフ個人の評価に役立てられるという。

藤田遥

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