ECモールに出店している競合店の売上動向、売れ筋商品、ジャンルなどさまざまな指標を分析できるマーケティングツール「Nint EC」を提供するNintと、流通・小売業向けのコンサルティングを提供するNHN JAPANは、EC実施企業のデータドリブンなサイト運営をサポートする取り組みを始める。
サービス名は「データドリブン・コンサルティングサービス」。さまざまなデータを可視化する「Nint EC」と、データから導かれた国内主要モールに出店する店舗の状態を踏まえて適切な施策を提供するNHN JAPANのコンサルティングによって、EC実施企業のデータドリブンに基づいて売上拡大を実現するという。新サービス提供の理由や具体的なサービス内容について、両社の責任者が語り合った。
日本のEC市場はまだまだデータドリブンの考えが根付いていない
「Nint EC」は、競合店・競合メーカーの動向や売れ筋ジャンル、人気価格帯、効果の高い広告クリエイティブなど、さまざまな指標からECモールの販売データを統計・集計・分析するマーケティングツール。中国で3000社超、日本市場ではすでに900社以上が利用している。
NHN JAPANには、パートナーとアライアンスを組んで業界の問題・課題を解決するソリューションを、自社や他社のサービスと組み合わせて提供する部署「パートナー事業部」がある。今回、「Nint」を直販のみで提供していたNintが初めて外部企業と連携。「Nint」とNHN JAPANが抱えるソリューションやノウハウを合わせたデジタル時代のEC支援サービス「データドリブン・コンサルティングサービス」の提供をスタートした。
Ninの取締役 西尾宗哲氏(以下、西尾):5年ほど前からEC事業者に「Nint EC」を提供している経験上、アクションを行うための意思決定が属人化していたり、海外のプラットフォームと比較して公開情報が少ないため、勘や経験に頼った意思決定をしている現場をたくさん目にしてきました。「Nint」は精度の高いECモールに関するデータを提供していますので、EC事業者には正しい意思決定ができるような俯瞰したデータを提供し、ユーザーの事業発展に寄与したいと考えています。しかし、昨今の人手不足などで、多くのEC事業者にデータの重要性を理解していただくまでには時間がかかると感じています。
NHN JAPANのパートナー事業部 事業部長 齋藤 直氏(以下、齋藤):NHN JAPANは、流通・小売視点でのオムニチャネルや通販・ECという切り口で、さまざまな問題・課題を解決するソリューションを、パートナーとのアライアンスで提供しています。EC業界向けには、独自ドメインのECのコンサルティング、モールのコンサルティングです。
西尾:今回の連携は、「Nint EC」で収集、整理、推計して得た大量のデータと、NHN JAPANが保有するECノウハウを組み合わせてクライアントごとに戦略設計、施策立案などのコンサルティングサービスなどを提供していくものです。流通・小売に加え、ECの知見があるNHN JAPANと連携することで、より良いサービスの提供、データの重要性とデータドリブンに基づいたマーケティングを啓蒙できるのではないかと考えたのです。

「Nint EC」の画面イメージ
ECモールを丸裸にする「Nint」、そのデータを施策に生かすにはノウハウが必要
「Nint」のサービス提供の対象事業者は、モール出店者、独自ドメイン事業者、メーカー、小売業など幅広い。データ提供先の事業者の業態や規模によって異なるものの、比較的規模の大きいメーカーやEC事業者はデータ分析を行う部門があり、データ取得後は自社でデータを分析して次のアクションにしっかりと生かしているケースが多いという。一方、データの重要性を理解していなかったり、そもそもデータを生かしていない、データ自体を有効活用する手立てを見い出せていなかったりするケースも少なくないようだ。
西尾:Nintのカスタマーサクセス部門が、お客さまに適した施策の提案、使い方といった説明をしていますが、いまはECビジネスに欠かせない情報を先ずより多くの事業者に提供することを優先している為、私たちがデータを元に戦略を作り、施策の実行可否をEC実施企業の責任者に提示していくといったコンサル領域にあえて踏み込んできませんでした。
齋藤:データの利活用ができているEC実施企業はほんの一握り。本当にECビジネスへ直結する役立つデータは「Nint EC」のようなツールを使わなければ取れません。たとえ「Nint」を使ったとしても、取得したデータを自社の品ぞろえや商品開発、マーケティング施策に生かすにはデータを扱うノウハウが必要になるからです。
西尾:「Nint EC」のデータを多くのEC実施企業がサイト運営に活用できるにはどうすればいいのか?「Nint EC」が提供できるデータに対する理解やサポート、市場・商品・価格帯などのアドバイスを含め、流通・小売りに知見の高いNHN JAPANと組むことが、多くのEC実施企業により良いデータドリブンなサイト運営を実現できるサービスを提供できるではないかと考えたのです。
齋藤:「Nint EC」の魅力は、ECモールで発生している商品軸の事象(各店舗の販売価格、販促など)をデータですべて確認が取れるということ。加えて、店舗軸の情報、つまり競合店のデータも取得できます。ECモール内のさまざまなデータを取得できる「Nint」と、NHN JAPANが持つデータと知見を組み合わせて精度の高いアドバイスを行います。つまり、EC実施企業に対し、経営者や店長の“経験”“勘”ではなく、数字の裏付け、根拠に基づいたコンサルティングを提供できるようになるのです。

Nintの取締役 西尾宗哲氏
“経験”“勘”による施策実行といった課題を解決する
2社のナレッジを組み合わせた新たな「データドリブン・コンサルティングサービス」をEC実施企業が利用すると、国内主要ECモール内における各種データとコンサルティングのノウハウから導き出された的確な施策の実行が可能になるという。EC実施企業が抱えている“経験”“勘”による施策実行といった課題を解決し、売上高の向上に寄与するとしている。
西尾:「データドリブン・コンサルティングサービス」は、ECモールに出店している店舗から申し込みをいただいた後、NHN JAPANが店舗の現状などをヒヤリングします。NHN JAPANが現状のデータと独自に保有するデータを組み合わせて店舗に関する各種数値を収集・分析。それを元に、アクションプランを設計し店舗へ提案するといったフローになります。もちろん店舗側が保有しているデータを付け合わせていくことで、KPI管理、広告運用などを実施していきます。
齋藤:NHN JAPAN 側が手がけることを詳しく説明すると、「Nint」から収集できるECモールのジャンル、トレンド、競合を含む店舗などの各種データを分解し、特定サイトの売れ筋やラインアップなどの分析を行います。特定商品の売り上げ状況、トレンドなども調査できる商品分析、競合ショップの純広告や検索広告の履歴なども確認できますので、各種データを「Nint」から収集し分析します。そして、私たちが保有するデータ、店舗側が持っているデータなどを組み合わせて、戦略の策定から販促施策の立案・実行に移していきます。
たとえば、広告選定、クリエイティブの内容、販促時の商材選定、リピート率の改善などデータドリブン な考えを元に具体的なアクションを立案します。昨今のECモール店での大きな課題である利益率。利益改善も細かく見るので、競合他社と比較しながら利益を最大化できるような改善サポートを行い、複合的にデータを組み合わせて支援します。
西尾:すでに両社の顧客から、コンサルティングをしてほしい、競合データが欲しいといったニーズがあります。店舗が持つデータに基づくコンサルティングではなく、「Nint EC」と市場を俯瞰したデータ、そして店舗のデータを掛け合わせるデータドリブンなコンサルティングサービスは間違いなく一定のニーズがあり、いままで解決が難しかったような課題を解消できると思っています。

NHN JAPANのパートナー事業部 事業部長 齋藤 直氏
夏にこたつが売れているのは知ってた? データを見るからこそわかることがある
EC実施企業が「データドリブン・コンサルティングサービス」を利用すると、勘や経験に頼らない、データに基づいた需要予測、仮説と検証、施策の実行が行えるようになると西尾氏と齋藤氏は言う。
齋藤:「データドリブン・コンサルティングサービス」を端的に説明すると、打率を向上させるお手伝いができるということです。さまざまなデータが可視化されているので、可能性の高い施策が打てると同時に、施策の失敗といったリスクを低減できます。野球にたとえると、ID野球とかデータ野球といったところでしょうか。
データを活用すれば「誰が」「どこで」「いつ」「何を」「商品を見ていたけど買わなかった人がどれだけいるのか」「特定商品をどの店がどれだけ売っていたのか」「どのように露出を上げたのか」「競合店はどのようなことをやったのか」といったことが見えるわけです。それが直近のことだけではなく、1年前の同じ時期のデータがわかれば、今年はその状況を踏まえて打ち手を考えることができます。
西尾 :データを踏まえて施策を打つのは面白いですよね。極端な例で言うと、こたつ。一般的には夏にこたつは売れないと思いますよね。だから、どの店舗もECモールなどで広告は出稿しない。しかし、「Nint EC」のデータを見ると、“夏のこたつ市場”は「楽天市場」内で一定の市場規模があります。意外ですよね。女性アパレルのトップスで8月に何がもっとも売れているか? Tシャツよりもカーディガンが売れるというデータもあるんです。こういうことは、実際にデータを見なければ気付かない。大事なのはなぜそれが売れているのかを、季節要因や担当者の経験など定性的な情報を踏まえて仮説を立てる、そしてインサイトを見つけ、次の一手を考えることです。

ECモール店も「データドリブンな運営を」と話す西尾氏と齋藤氏
モール出店者の売上向上に貢献していく
Nintのミッションは「データ世界を自由にする」。データが公開されればされるほどEC業界は進歩していくと考えている。ビジネス上、データはとても重要だが、モールなどのプラットフォームは出店者に対して多くの情報を公開していない。テクノロジーを使い、収集できる情報を得る――。集まったビッグデータを推測することによって、それを店舗に活用してもらう「データの自由化」を、EC事業者に根付かせていきたいという。
西尾:昨今、大手企業以外の小売業が利益を伸ばしていくには、自社のオリジナル商品やブランドを持っていなければ難しくなっています。最近はプライベートブランド(PB)、D2Cが話題になっていますが、自社でプロダクトを持ってやっていかなければ生き残ることが難しくなるという状況ですよね。私たちは今後、データでECモール出店者、小売業、そして物作りの支援までを行いたいと考えています。メーカーももちろん、「Nint EC」のデータによって新たなサービスの創出、新しい商品の開発などをサポートをしていきたいですね。
齋藤:流通・小売業の最大の課題は2つあり、1つは「訪問してきたけ ど買わない」。2つ目が「消費者はなぜ訪問してこないのか」ということ。優良顧客候補となる新規の獲得、既存顧客の優良顧客化はすごく重要。私たちは最終的にはそれを解決するためのソリューションを提供していきたい。今回の連携もその一環です。今回の座組では、とにかくEC実施企業の売り上げを伸ばしていくことに貢献することが2社のめざすところ。モールを主戦場としている企業に対して、どんなことが起きているのかをきちんと把握してもらい、お客さまに対して意味のある価値を提供していきたい。
西尾:NHN JAPANと一緒に、データドリブン なECサイト運営という一歩上のレベルを見据えて事業を展開できるよう、ECに関わるメーカーや小売業を支援していきたいと考えています。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「ECモール店も『データドリブン』な運営が必要ですよね」――NintとNHN JAPANが提唱する競合に負けないサイト運営法
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まとめると、
10月31日に飛び込んできたこのニュース。記事タイトルと要約だけを見ていると誤った理解をしかねないので、ちょっと丁寧に説明します。
これまでの経緯
そもそもの発端というか、プラットフォーマと呼ばれる企業に対して、公取委などが動き出したのが昨年の12月でした。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/dec/181218.html
これは平成30年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のために、2019年中に基本原則を定めるというもの。基本原則は以下の7つ。
https://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/platform/kaisai_files/190218_1.pdf
急成長したプラットフォーマーは「社会経済的に不可欠な基盤を提供している」としながらも、「デジタル市場における公正かつ自由な競争を確保するための独占禁止法の運用や関連する制度の在り方を検討する」としています。つまり、みんなに必要なものだけど新しいものなので法制度が追い付いておらず、まずは状況を把握して専門家の組織で検討し、法制度を整備していこうということです。
もちろん、Facebookによる個人情報の不正利用や、Googleが欧州委員会に独禁法違反で制裁金を科されたことなど、世界的な動きもあり、取引実態の調査が行われました。Amazonの全商品ポイント還元1%が話題になった頃なので、覚えている人も多いかと思います。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/feb/190227.html
また、これ以前にも公取委は大手ECモールと出店者の間で独占禁止法違反に該当する問題が生じていないかの調査を実施しています。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jan/190129.html
その後、中間報告を経て今回の発表となったわけです。
今回の発表の概要
ネットショップに関わる人は出店者だけでなく、広告代理店、制作会社などのサポートする企業の皆さんにも読んでおいてほしい資料です。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/oct/191031c.pdf
第1部は時代背景など。上記で説明した内容がまとまっています。世界的な流れなので皆さんご存知ですよね。
第2部は実態調査、市場の概要。まとめられている調査結果は皆さんにも実感しているものが多いかなと思います。例えば、P.8にある調査結果では以下のようにまとめられています。一方的な規約の変更や新決済システムの導入などです。
規約に同意したくなければモールなどを使わなければいいのですが、モールの売上が大きければそうもいきませんよね。「みんなで頑張ってECを盛り上げていこう!」と言っておきながら、結局はそうなるのか……と思っている人も多いはず。
ただし注意したいのは、調査に意見を寄せる人たちの多くは、何かしらの不満を持っている人たちということです。モールに満足していたら、こうした調査にわざわざ意見する人は少ないですよね。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い……ではないですが、一歩引いたスタンスでこれらの結果を見ておいた方がいいでしょう。
第3部にはまとめと今後の取り組みについて書かれています。まとめとしては、なにかしらの「独占禁止法上問題となるおそれがある」。となっていて、それに対してどう対応するのかが書かれています。それが話題となった検索アルゴリズムの公開などです。
モールやアプリストアの検索順位については言いたいことはたくさんありますよね。これはGoogleの検索結果にも言えます。しかし、これをオープンにすると悪質な業者がどんどん上位に来る懸念もありますし、技術力のある企業だけが上位に来て中小企業は太刀打ちができなくなる可能性もあります。ある程度わからない部分があるから良いこともあるのではないかと、個人的には思っています。
出店者はどうすべき?
こうした流れをふまえ、EC事業者がどうすべきかということですが、1つの考え方は「脱・プラットフォーム」です。今年の8月にこの記事を紹介しました。
https://www.commerce-design.net/blog/archives/3644
まさに「プラットフォーマーも、我々をより尊重することに」なってきそうな流れですよね。そして、売れるかどうかよりも、「自分たちが何をしているのか?」「どんな人の役に立ちたいのか?」といったことを明確にして、外部環境に左右されにくい商売をするということ。9月に紹介したこの記事を覚えている人もいるかと思います。
https://www.businessinsider.jp/post-197793
中川政七商店の緒方恵さんも坂本さんと同じくお客さんの信頼を得ることからと述べています。それができないからモールをやめる。不満があるからではありません。そして、先週もこんな記事が。
https://www.future-shop.jp/magazine/interview-saihoku-talklore
こちらもまったく同じ。顧客満足よりも売上を優先してしまうことを恐れたということです。
もちろん多店舗に展開して、トータルで利益が出るようにする方法もあります。多店舗管理ツールもありますし、AmazonはAmazon広告を使うことで一気に売り上げを伸ばすこともできます。あくまで選択肢の1つとしての「脱・プラットフォーム」を考えてみても良いかなと思います。
大切なのは「商売」をするということ
2年ほど前の記事ですが私が強烈に覚えている記事を紹介します。私がインタビューをした記事なのですが(笑)。
https://eczine.jp/article/detail/5038
プラットフォーマー(モール)ついて吉村さんはこう話されています。
スッキリバッサリです。多少のことがあろうと集客してくれて売れる場所を作ってくれてるんだから、手数料は払って当たり前という考え。前述の「脱・プラットフォーム=自社ECサイト」では、この集客コストを自社で持たなければなりませんから、そう簡単に切り替えられないのが現実です。
吉村さんによると、ネットショップに関わる人が考えておくべきことは以下の3つだということです。
まさに流れをつかんでいれば、今回の報告書を受けて何かしなければならないこともないと思いますし、プラットフォーマー側の変更にも早めに対応ができるはずです。急に何かが発生することはないので、ちゃんとニュースを読んでおきましょう。2つ目と3つ目については言うまでもないですね。
売れないのは誰かのせいにしたくなりますが、規模が小さくてもちゃんと生き残っているお店もあります。不平不満を言うのではなく、目の前のお客様のことを考えていきたいものです。